4. 選んだ理由
「それでなんでウチらを選んだのか、理由を聞いてもいいか?」
エルフの弓士であるソラノは言った。
本人にその気はないのかもしれないが、エトウは自分よりも高い上背から冷たく見下ろされている気分になった。
「というよりも、なぜウチを選んだかを知りたい」
ソラノは自分の興味に対してまっすぐな性格なのだろう。その思いに真摯に応えてやることが、彼女からの信頼を得る第一歩だとエトウは感じた。
「ソラノが話していたことがどこまで本当のことなのか、自分には分からない。里の子供を連れ去ろうとした奴隷商人の殺害と、暴行を受けそうになった貴族への傷害事件だな。でも、もしそれが本当なのであれば、よくそこで気持ちを抑えたなと思った。自分であれば、奴隷商人は皆殺しにしたと思う。少なくとも、そんな犯罪者連中を野放しにしておこうとは思わなかっただろうな。貴族に関しては、後々のことを考えればどこまでできるかわからないけど、すでに犯罪奴隷として扱われていて、その元凶の一人が目の前にいるのだろう? 頬肉どころか首をかみちぎられても仕方がないと思う。要は、ソラノの行動を俺は尊重するということだよ」
エトウは自分の正直な気持ちをソラノに伝えた。
ソラノはぷいと横を向くと、「そうか」とだけ言ってベッドに腰掛けた。彼女は照れているようだったが、それを指摘しないだけの分別がエトウにはあった。
「じゃあ、次は私たちね。お父さんと私を買った理由を教えて」
ハーフオーガの剣士コハクはエトウに尋ねた。
父親であるアモーは見上げるような巨体を誇り、青みがかった皮膚と額から生える二本の黒い角がオーガ族の特徴をあらわしている。
それに比べてコハクの見た目は人間族に近かった。まだ十二歳と幼いせいもあるだろうが、エトウよりも小柄な体型と絹のような白い肌。額の中央から生えた琥珀色の透明な角がなければ、ハーフオーガと言われても信じられないだろう。
コハクの名前は生まれたときから生えていたその角の色からつけられたそうだ。
「俺が奴隷を買ったのは、自分を裏切らないパーティーメンバーを持つためだ。奴隷契約があれば最低限の身の安全は守れる。それに加えて、商館でも説明したとおり、お前たちには依頼報酬の五%を与えることにする。貯まったお金が購入金額に届けば、その時点で奴隷から解放しようと思っている。それを励みにして真剣に働いてもらいたい。衣食住の不安はないようにするし、基本的には俺と同じ待遇を提供するつもりだ。ここまではいいな?」
エトウはコハクとアモーに確認した。二人がうなずいたのを見てから話を続ける。
「二人を購入したのは、もう一人の剣士に比べるとアモーの戦闘力が著しく高かったことが一つ。もう一つの理由は、二人は親子だから、しっかりと条件面で納得すれば、自分を裏切る可能性は少ないだろうと考えたからだ。もっと言ってしまえば、コハクはアモーに働いてもらうための人質に使えると思った」
人質という言葉をエトウが使った瞬間、アモーから強い威嚇が迫ってきた。
「人質というのは、コハクを危険な状態にすることではないよ。ただ、安全な場所にコハクがいたとしても、アモーはなんとか娘の元に帰ろうとするだろうし、二人がそろっていれば協力して危機的状況を乗り越えようとするだろう。その気持ちの強さが難局を生きのびる最後の一押しになるかもしれない。俺はそう考えたんだ」
エトウがそう言うとアモーの威嚇は止み、コハクはうつむいて何度かうなずいていた。
「わかったわ。私たちはご主人様が言った条件が実際に守られることを願っているわ」
コハクがエトウに心を許していないことは伝わってきたが、だからといって敵対的な態度を取るつもりもないようだった。
「俺のことはエトウと呼んでくれ。これからよろしく頼む」
今日からパーティーとなった四人は宿屋の部屋から出ると、衣類や日用品などをそろえるために商店街へと向かった。




