12. 冒険者ギルドでの会合
エトウと面識のない二人は、財務大臣の補佐を務める高級官僚と、王都教会トップの司祭を補佐する高位聖職者だった。
二年前であれば、エトウは恐縮してうまく話せなかっただろう。しかし、王城や教会の裏側を見た後では、相手の肩書きに左右されることはなくなった。
彼らはエトウに謝罪をした後で、事実確認が取れたことを淡々と説明した。
「エトウさんに報酬を渡さなかったのは、王城と教会の連絡係です。彼らはそのお金を着服していた疑いももたれていますが、なぜそのようなことをしたのかについては黙秘を続けています」
「その者たちはロナウド様に命じられたのではないですか? ロナウド様は私をパーティーから追い出したかったようですから」
エトウは単刀直入に尋ねた。
「それはなんとも……。勇者様がこの件を主導したという証拠はありません」
「それでは、ロナウド様には、なんのおとがめもない訳ですね?」
「現在の状況からすると、勇者様に責任を取らせるというのは難しいかと……」
エトウはこうなると予想していた。
この世界の危機を救うために、女神様が選んだのが勇者である。賢者や剣聖、魔聖などは、あくまで彼を補佐する役割しかない。
世界で唯一の存在に、こんなつまらない罪を償わせたい者などいないだろう。被害者はエトウだけのため、ごまかすことはいくらでもできそうだった。
「分かりました。それで結構です。始めから真相が明らかになるとは期待していませんでしたからね。この件が片付いてくれれば、それで私は満足です」
「はぁ、重ね重ね申し訳ありません……」
「この件に関して一つだけいいですか? 剣聖ラナのことですが、彼女は嘘をつかれていただけで、私の報酬などについてはなにも知らなかったと思いますよ。同じ村で生まれ育ちましたから、彼女がそんな器用に立ち回れないことは分かっています」
「分かりました。そのことは調査をする者たちに必ず伝えておきます」
「私とラナは平民です。ロナウド様とミレイ様の次の標的が彼女にならないように、護衛の者たちには注意してもらいたいですね。彼らは誰の護衛をしているのか分からないところがありますから」
「はい、その件につきましても、早急に情報の共有をしていきたいと思います」
「お願いしますね」
エトウが受け取れなかった報酬は賠償金も含めた金額が支払われるという。
エトウは自分が王都を長期間離れることもあるため、お金はギルドの口座に振り込んでほしいとお願いした。これ以上、王城や教会の関係者と関わりたくない気持ちがエトウには強かったのだ。
最後にエトウは少し前から考えていた自らの危惧を、その官僚と教会関係者に伝えることにした。この問題が片付けば、後顧の憂いもなくなるはずだ。




