君は私の賢者様
お目を汚して、すいません。
前回投稿した彼女目線バージョン作ってみました。
生暖かい目で読んでやってください。
「私、結婚するの」
大丈夫かな?声は震えてない?
喉が乾いて、ミルクティーを口にする。手が震えて、カップがうまく持てない。
私のこと、どう思ってるの?
素直に聞けたらどんなに良いか。試すような真似してごめんね。
とっても大事にしてくれてるのは態度でわかる。でも、確かな言葉が欲しかったの。
幼い頃から一緒にいるのが当たり前で、私の面倒ばかり見ていたゆう君。頭が良くて、優しい彼。
ゆう君は賢者だ。
ちょっと無口でぶっきらぼうだけど、手がかかるお嬢様の私の面倒を文句も言わずに見てくれた。テストで赤点取らずに済んだのも、大学に受かったのも、みんなみんなゆう君のおかげだ。
ゆう君の言うことは正しい。
口数が少ないけど、仕事をきっちりこなし、さりげないフォローもしてくれるゆう君。じわじわと人気が出てきているとゆう君と同じ会社に勤めている子に聞いた時は心臓が止まるかと思った。
嫌だ。ゆう君は私のなのに…
ゆう君は、私のことなんてただの手のかかる幼馴染ぐらいにしか思ってないことはわかってる。
だって、結婚すると言っても、あなたは辛そうに俯いたまま何も言ってくれないもの。
酔った勢いの行為に責任を感じて、付き合ってくれてるあなたの優しさをなかなか手放せなかったけど…
OK、降参よ。もう解放してあげる。
「ゆう君、今までありがとう」
これ以上、この場に居たくなくて。震える足に力を入れて、椅子から立ち上がる。
本当はもう一度、抱きしめてもらいたかった。
頑張ったねと、いつものように優しく撫でて欲しかった。
もう貴方に触れられない。
それがこんなに悲しいなんて…
いつまでもわがままな子供ではいられない。
最後ぐらい大人の女性らしく…
涙を堪えながら店の伝票を手に取ると、温かい大きな掌が私の掌ごと伝票を掴んだ。
びっくりしてゆう君を見る。サラサラの前髪に隠れて表情が見えない。
ゆう君の手にぎゅっと力がこもる。
ポタリと掌の上に雫が垂れた。
「結婚しないで。君が好きなんだ」
ゆう君の綺麗な瞳から、一雫の涙が溢れた。
やっと聞けた。
真剣な眼差しで真っ直ぐに私を見てくれた。
この涙でもう十分。
「……結婚しないなんて無理よ」
ヒュッと息をのむ音が聞こえた。
彼の頰をつねる。悪戯が成功した時に私はいつもそうしていた。
「ずっと一緒に居たいから、ゆう君と結婚しないなんて無理」
ゆう君の事がやっぱり大好きだから…
ありがとうございました。
1,000文字縛り、なかなか難しいですね。
でも、楽しい〜〜