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ユニアの約束  作者: ダーWIN
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第3話「魔王クロースカ」

お久しぶりです。

第3話は前述通り過去の話を書かせていただきました。

どうぞよろしくお願いいたします。

 第3話 「魔王クロースカ」


 さて、少し体が重いがなんとか成功したようだな。

 青い空を眺めながらクロースカは1つため息をつく。そして思い出していた。


 かつて魔王クロースカは大地ロノの地を滅ぼし、光を奪い、蹂躙した。抗うものすべてを死肉に変えてきたクロースカには、それらは全て作業でしかなかった。久しく血湧き肉踊る戦いをしてこなかった魔王にとって、魔王の城に正面から乗り込み、今まさに玉座の間に無傷で入ってきた何人目かの勇者の存在に、その溢れんばかりの魔力に高揚した。


 勇者ユニア、彼女は他の者とは桁違いの強さであった。これまで勇者と名乗るものはいたが、どれもこれもが名ばかりなものだった。しかし勇者ユニアは違った。この魔王に膝を着かせたのは彼女だけだった。


 クロースカはそそられた。息することすら隙になるのではないかと錯覚してしまうほどの緊張感、肌にビリビリと感じる彼女の魔力が今か今かとクロースカの首を狙っているように押し寄せてくる。そこからまるで擦り合わせたようなタイミングで両者の魔法がぶつかり合う。爆風に煽られ吹き飛ばされまいと腰を落としたクロースカの首に爆煙から伸び出てきた聖剣が鋭く迫る。無理矢理に上体を起こし、その切っ先を交わした筈が、首筋に1本の鮮血の筋が浮き上がる。垂れる血を手で拭い、久しく見てない自分の血を眺めると笑みをこぼす。クロースカはそれまで抑え込んでいた魔力をゆっくり解放する。禍々しい魔力はクロースカを蝕まんとするユニアの魔力を容易く呑み込んでいくように広がる。


 聖剣を握るユニアの手が震える。先の一撃で首を跳ねられずとも、血潮が噴き出すくらい深く切れたつもりであった。しかし、結果として首の皮一枚削いだだけにとどまった。その事実はいくつもの死線を越えてきたユニアに、恐怖を感じさせるほど魔王クロースカという存在は強敵であることを物語っていた。ここでユニアの抱いた恐怖を感じ取り、それを嘲笑うような小物ならどれ程楽であっただろうか。今目の前にいる魔王クロースカからは油断どころかより一層ユニアを警戒し力を解放しているとわかる。1つ深呼吸をしてユニアは聖剣を握る手に力を込めた。真っ向から自分が磨きあげてきた剣撃を迷いなく繰り出していく。それがクロースカの皮一枚を切り裂く以上の成果をあげることは出来なかったとしても。


 彼女の繰り出す一撃一撃に魅了された。この戦闘が一生続いてくれれば良いとすら思えた。久しく出会えなかった好敵手。魔力が高ぶり、思考が加速する。次の一手を導きだした先に待ち受ける勇者との駆け引きも、そのすべてがクロースカにとって最高といえる一瞬だった。その切っ先は徐々にクロースカの身を削り取っていく。流れるような斬撃に息つく暇など有りはしない。色濃く混ざり合うクロースカとユニアの魔力のせいで気を抜けば精神を蝕まれそうな瘴気が漂う。全く油断ならない状況にクロースカはただ酔いしれた。


 しかし、勇者と言えど人間である。どれだけ魔力が高く、その剣術は達人のそれを優に越える化け物じみたものであっても、やはりその域を超えることはかなわなかった。さらには、この攻防が三日三晩も続いたことにより集中が切れダメージを負い始める。少しずつ消耗していくなか、ついにその時が来た。三日目の夜、それまで身体を支えてくれていた足が縺れ、クロースカの一撃を交わしきれず左の大腿に深い傷を負った。

 とたんに張りつめた糸が切れたようにクロースカは脱力した。

 勇者は深手を追っても尚、その手に持った剣を落とすことなく、立ち向かおうとしていたが、もう魔王には戦う気力が無くなっていた。

 魔王のその姿を目にし、勇者も追撃を与えることは出来なかった。

「私を殺さないんですか……」

勇者が痛みに耐えながら魔王を見上げる。

「貴様との戦いは実に魅力的なものであった。称賛に値する。だからこそ、今の貴様にとてつもなく憤慨し怪訝し失望した。そんな有り様で、この私に楯突こうとは……。死にたきゃ勝手にするがいい」

先の攻防で傷一つつかなかった玉座へと座り直し、魔王ため息をついた。

「魔王クロースカ……、貴方はなぜ闇に堕ちたのですか。それほどまでに優しい心を持っているのに」

勇者ユニアは回復魔法で大腿の止血をしながら魔王に問いかけた。

「私をこれ以上失望されてくれるな。」

玉座にもたれ掛かりながらため息をついた。

 その後のことはよく覚えていない。ただ何故か勇者に頼まれ事をされた。その内容はすっかり忘れているが、了承したことは覚えている。そして私は何故か転生の陣を展開しその中央に立ち、転生したのだった。


「さて、行くか」

 クロースカは馴れない体をゆっくり動かしながら一つ伸びをした。自らの名前が掘られた墓石に目をやると鼻をならした。

お疲れさまでした。

少し文字が多くなりましたが過去の話楽しめましたでしょうか。

ユニアの約束はまだまだ続きます。


では、またお会いしましょう。

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