第2話 「魔王の墓石」
お久しぶりです。
では、第2話どうぞ
第2話「魔王の墓石」
10年の月日が過ぎた。
ニアは都市モノノモよりずっと南に位置するジトト村を訪れていた。
村自体は裕福そうではなく、畑仕事に使う鍬もボロボロであった。
「こんなところで見ない顔だね」
1人の老婆が村に入ってくる余所者に気がつく。
ニアもそれに気がつき笑顔で返した。
「初めまして。モノノモから来ました。
魔王のお墓があると聞いたのですが、どこに行けば見られますか?」
「ほう、珍しいね。かつてこの地を最悪へと陥れようとしたあの物の墓を見たいとは。このまま南へお行き。少し距離があるが、どんなにのんびり歩いても夕暮れにはこの村まで戻ってこれるだろう」
現在、太陽がちょうど真上にある。
「わかりました。ご親切にありがとうございます」
ニアは笑顔でひとつ会釈すると南へ向かって歩き出した。
道中は、木々が生い茂っており方向を見失いそうになる。
両親が持たせてくれた方位磁針で方角を確認する。この方位磁針には特別な魔法が掛けられており、目的地まで狂うことはない。
「勇者様はどうしてこんなに寂しいところにお墓を用意したのかな」
そんなことを思いながら進むと森を抜けてきた。
木々で邪魔された日の光が再び力を取り戻したように強く眩しく輝く。
木々で邪魔された視界が開けるとそこには草花が生い茂った場所だった。
遠くには空しかない。
辺りを見渡すと少し離れたところに何か塊が見える。
ニアはそれを目指して歩くことにした。
近づくにつれその塊が墓だと気がつく。
墓の後ろは崖になっており、崖の下はかつて魔王の手によって滅ぼされた大地ロノだ。
お墓に目をやると、花が置かれていた。誰か来たのだろうか。お墓は石を積み上げた作りで中央の大きな黒い石は黒曜石だろう。太陽の光でキラキラと輝いていた。
石の中央には文字が刻まれている。
「魔王クロースカここに眠る」
ニアは文字を指でなぞる。
不思議と懐かしくなった。頭の中で何度もクロースカと繰り返す。心が締め付けられる。
その時、墓に刻まれた文字がゆっくり光だした。青白く淡い光がニアを包み込んだ。
ニアは突然のことに驚いて尻餅を着いた。
光が強くなるにつれて意識がとんでいく。
お疲れさまです。
読んでいただきありがとうございます。
第3話は少し過去の話をさせていただく予定です。