転移少年の初めての旅と初めての国
□■プロローグ■□
静かな草原に、一人の少年と黒く、おぞましい怪物がいる。
「グルルルルルル……」
「」
「グルルルルルル……」
「」
警戒して威嚇する怪物、しかし少年は全く応じない。
そう、怪物はこの少年に恐れている。
少年はただ怪物を殺める事のみに意識をする。
「っ!」
「」
まさに一瞬、瞬きすら許されない速さで恐ろしく、おぞましい怪物の首は少年の手の中に収まっている。
「これがキメラか…ランクが高いからどんなものか知りたかったが…こんなものかぁ…キメラ…静かに眠るが良い…。」
と首を置き、目を瞑り、合掌する。合掌が終わると、首を持ち、この草原から姿を消した。
この世界には、「剣術」「魔術」などが存在し、それを使う者は主に「冒険者」や「討伐組」と呼ばれる者として、参加し、尊敬され、周りから慕われる。
しかしこの少年は違う。この少年は「剣術」や「魔術」は使えど、「冒険者」や「討伐組」に所属せず、ただ一人で怪物と呼ばれるような者と戦い、必ず首か戦利品を持って変えるこの少年、名前はクロノ、ただ一人で戦い抜いてきた一匹狼と言えるような少年、その少年に付いた「称号」こそが、
「怪物殺」とそう呼ばれる様になったのだ。
これは、そんな一匹狼の少年クロノが、様々な場所へと旅をし、成長する旅を記した、物語である。
□■第一 旅の始まり■□
「アキルさぁ〜ん。キメラの討伐終わりましたぁ〜。」
「あ!クロノ君お帰り!本当に討伐してくるなんて、流石だねクロノ君。」
「いえ、依頼なのでこのぐらい当たり前です。」
「君は良い子で本当に良かったよぉ…はい、じゃあ報酬で。」
と、渡された大量の金貨が入った袋。
「確かに貰いました。」
それを受け取るクロノ。
「でも本当にびっくりしたんだよ?急に転移魔法の魔法陣が出たと思ったらクロノ君が倒れてる状態で出てくるからびっくりしちゃった。」
「えぇ、俺も驚きました。」
「確か、クロノ君がいた所って「ニホン」って場所なんだっけ?」
「まぁ、信じがたいっすけどね…周りの人は「ロマンがあるね」と信じてくれます。まさか歩いていたらたまたまこの転移魔法を踏んで転移してしまうとは…。」
クロノはもともとここの人間ではない。クロノはいつもどおり午後の東京の道を歩いていただけ。しかし、路上で何故か仕掛けてあった転移魔法が反応して、クロノが転移されたと言うのである。
もともとイジメられていた身としてはイジメられないというとても嬉しいと感じてはいるが、やはりこの世界の生活には慣れないご様子。
「でもやっぱりこの生活にはちょっとなれない?」
「は、はい…もう5年程経ちますが…なれないものは慣れませんねやはり。」
「君はいつも一人だからね。」
「はい。なぜか…一人になりたいというか…信用できる相手が居ないから…でしょうか。」
と弱々しい本音を呟くクロノ、それに対し受付員は、
「ねぇ、だったら、旅に出てみない?」
「た…旅…ですか?」
と、聞いたことない言葉を聞くクロノ、
「ここをでて、いろんな場所へ行くんだよ。ここにはない場所、ここにない生活風景、ここにない瘴魔だって居るんだよ?」
「………」
この世界には、無差別に現れ、悪さをする「瘴魔」と呼ばれる、いわばモンスターが存在する。何故「瘴魔」と呼ばれるのかと言うと、この瘴魔の力の源と言われているのが、「瘴気」と呼ばれる物であり、それがあると無限に増殖し続け、悪さをするとされる。
「明日がちょうど馬車が出るから、明日の朝方迄には考えて欲しいの。」
「……分かりました、失礼します。」
と少し考えながらクロノはここを後にした。
「ただいまぁ…」
「あ!お兄ちゃんおかえり!」
帰ると、ハイネと言う小さな少女が迎えに来る。
クロノは村長さんの家に住まわせてもらい、そこにいる孫のハイネに懐かれ、「お兄ちゃん」と呼ばれている。
「疲れた?疲れたの?」
「ま、まぁな。」
「じゃあまずはお風呂に入りましょ!」
「わ、悪いな…」
ハイネは面倒くさがり屋のクロノの親見たいな者で、いつも家に帰ってくるクロノの足音を聞くと、一目散に玄関で待ち、受け流してくれる。
「ふぅ…スッキリした。」
「お夕食もう出来てますので、早くこちらへ。」
「あ、すいません、ハイネ、行こっか。」
「うん!」
と、クロノの手を優しく握るハイネ、これが最後の手繋ぎとは知らずに。
「」
「…クロノ君?」
「あ、い、いえ、なんでもありません。美味しかったです。」
「そうかい…明日も早い、もう寝なさい。」
「はい…おやすみなさい。」
「じぃじおやすみ!」
と二人で寝室に向かったが、クロノは眠れず、下で少し考えることにした。
「………はぁ…」
静かに外へ出て夜空を眺めていると、
「やっぱり…何か悩んでいるんだね?」
誰かに声をかけられた。
「村長…はい。」
村長だった、どうやらクロノの様子が変だから話しかけてきたらしい。
「困ったことがあるのなら話を聞こう。」
「じ…実は…俺は明日、旅に出ようと思っているのです。」
「ほぉ…それは確かに話しにくい内容だね…特にハイネには。」
「えぇ…」
「でもクロノ君は行きたい…と?」
「はい…」
「君もここを旅立つ時が来たのか…はい、クロノ君。」
「お…俺の荷物…いつの間に。」
「私も昔は冒険者だったからね、儂も村を出たかったが、いささか周りの批判を恐れてこっそり旅立ったんだよ、もしかしてと思って荷物をまとめて持ってきたのさ。」
「あ、ありがとうございます。」
「良いさ良いさ、ハイネには、どうにか話をまとめておく。そろそろ日が登る、馬車もそろそろ出かけるだろう、さぁ行って来なさい!全世界にお前の称号「怪物殺」の称号を轟かせてこい!」
「行ってきます。」
小さなカバンを手に、「怪物殺」と呼ばれる一人の少年は旅立つ。
「あ!クロノ君!」
「行きます。料金は…」
「ううん!大丈夫、お金は払っておいたよ。」
「ありがとうございます。」
「あ、えっとね?これ、私からのお守り。」
渡されたのは、麻紐に結ばれた鞘入りの黒曜石の小太刀だった。大きさは十五センチ程あるだろうか。
「大切に使わせていただきます。」
「うん…気を付けてね。」
「はい、行ってきます。」
クロノは、クロノを心配してくれる住民と受付員に優しく、手を振り、この村から出ていった。
□■第二 王国都市クーネス■□
何も問題起きず、ただ暇な状態でいたクロノは一人静かに横になっている。
「クロノ君。」
「どした?」
「ここら辺…ゴブリンが出て来る場所だよね?」
「そうですよ。でも不思議ですねぇ…」
「あぁ…ホブも、ただのゴブリンすら出てこない…どうなってるんだ?」
「さぁ?いないんじゃない?今がチャンスだから急いでここから出よう。」
「あぁ、そうだな、急ごう。」
と少し馬の足を速める。
しかし皆は気付かない。ゴブリンが出てこない訳は居ないわけではない、恐れて出ていけないのだ。
ゴブリンにも低いが知能はある、勿論、まずいと思った者には近づかないし、行けると思ったり、正当防衛の為なら襲うだろう。
しかし今回のゴブリンは違う、恐れている、ただの馬車ではない、出たら殺されると感じたからである、馬などは大したことはない、しかし異様な殺気を感じる荷台、弱気な仲間だったら泡を吹いて倒れてしまうだろう、何だ…何なんだ!この殺気は!その殺気の元は、
「そろそろ出るかぁ〜?おじさぁ〜ん。」
「おう、そろそろ出るぞ。」
クロノである。
しかし彼には自覚が無い。
クロノは多くの瘴魔を殺したことにより、瘴魔に対しての殺気が漏れ出ているのだ、要するに、悪巧みを考えるのみ感じる殺意である。
そして視点を変えてクロノ側、
「おっ!見えたぞ!王国都市クーネスだ!」
「あ!本当だ!ってでかいな!」
「っはははは!さ、行くぞ!」
「うん!」
笑いながら馬車の馬の動きを速めるおじさんとワクワクしているクロノはクーネスに向かった。
□■王国都市クーネス その2■□
「そこの馬車!止まれぇ!何をしに来た!」
「はい、ニつあります。一つは荷の運搬と、もう一つは、」
「僕を、一時期この国に入国させてくれますか?」
と、荷台から出たクロノが質問する。
「構わないが何日だ?最大は一週間だ。」
「では、出ていく時に報告でよろしいですか?」
「それは構わない、ではようこそ、王国都市クーネスへ。」
「あ、あの…荷物検査は?」
「大丈夫だ、君の装備と千里眼で君の心境を見たからね。君は何もしないと言うことがすぐに分かったよ。」
「そ、そうなんですか…では、国王に挨拶はよろしいでしょうか?」
「あぁ、それを言おうとしていたが、しっかりしているな、双方の入国を許可する、必ず国王に挨拶をすること!」
と言うと、巨大な門が空き、クロノと馬車に乗ったおじさんは入国を許可された。
「すごいなぁ…ここの国は。」
「だろう?いつもここで商売してるんだがな?ここはよく売れるんだよ!っと、無駄話はさておき、今からここの国の国王の姪、カレン・シルバに挨拶しないといけない。」
「姪?国王じゃないのか?」
「あぁ、理由は知らない。さ、ついたぞ。」
と、付いた場所は、ありえない程大きい城。
「案内をするから付いてこい!」
「入ろっか。」
「あっ、はい。」
と言い、二人は兵士に付いていった。
「こちらです、では、私はこれで失礼します。」
「じゃあ入ろっか。」
「……」
ギィィィ…と緊張が高まる扉の音、そこに居たのは
「来たか、良い良い、改まるでないぞ?落ち着け。」
十五程の年齢の少女(言うてクロノは十四歳)で、さらりとした長く、美しい黄金に輝く髪、まさに「美人」という言葉が当てはまるような人、
「彼女がカレン・シルバ様です。」
「今日も来たか、何時もご苦労、して…そこの者、名を名乗るがいい、許可する。」
と、上から目線、しかしクロノは冷徹に
「クロノと申します、少しの間ここの国で世話になる者です故に、覚えられなくても結構でございます。」
「冷たいな…その性格はやめといた方が良い、周りから嫌われるぞ。」
「……善処します。」
と、冷徹に始まり冷徹に終わった会話、普通なら大したことなく終わる筈なのだが、
「クロノとやら、私と少しクエストをやらないか?」
「…え?」
「構わんな?」
「は、はぁ…。」
「よし決定だ、お主はいつもどおりの場所の地を貸してやる、用が済みここから出るときに門番に渡すが良い。私は少しクロノと言う奴とクエストに出かける、行くぞ!」
「ちょっ!引っ張らないで下さぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。」
と強制連行されるのだった。
エリアは変わって城から少し離れた場所にあるギルドホームの受付。
「あ!カレン様!今日も来たんですか?」
と言うと、周りが少しざわつく、
「カレンってあの?」「そうよ!「剣聖」の称号を持つ!」「マジかよ!」「俺初めて見たぞ!」「あの子誰?」「さぁ…初めてここに来たんじゃない?」「どっかで見たことあるようなないような…」「まさか!んな訳ねぇだろ?」
「っとこちらはぁ…短い黒髪に、軽い装備…あの歳を聞いても良いですか?」
「……あ、俺っすか?」
「うん。」
「えっと…じゅ…十四だけど…」
「何!お主我よりも若いのか!?」
「あ、あの…あなたの称号が…」
「ん?俺の称号?称号ってなんだ?」
と、カレンに質問を投げる。
「何?称号を知らないのか?称号と言うのはまぁ簡単に言えば名誉有る二つ名と考えるのが良いかもしれないな。」
「な、なる程…」
「しかし、おい、何故そこまで驚いているのだ?」
「え、えっと…恐らく…君、君の名前を教えてくれない?」
「え?クロノ…だけど。」
と質問すると、受付員の顔が明るくなり大きな声でこう言うのだった。
「やっぱり!「怪物殺」さんですよね!私、初めて見ました!」
と、興奮しながら話していると、周りからの声も更にざわつく、
「え!あの!」「うっそぉ!私怖い人かと思ったぁ!」「カレン様よりも若いのにか!」「す…凄い。」
「お、お主「怪物殺」だったのか!そんなやつが何故!」
「え?だって今まで山奥の村から出たことねぇもん。」
「さ、更に凄みすら感じるのだが…。」
そんな会話が続いていると、
カンカンカンカンカン!カンカンカンカンカン!
「今のは?」
「何かが襲撃して来たようだ、行くぞ!冒険者達!」
「「「「「「「「ぉおおお!」」」」」」」」
と、皆で外に出ると、
「ワイバーンだぁ!」「ワイバーンが襲撃してきたぞぉ!」
「ワイバーンかぁ…。」
と少し考えるクロノ。
「よし!これから陣を組む!ワイバーンがこちらに来たとき一気に攻めるぞ!」
「「「「「「「「ぉおおお!」」」」」」」」
「いや…俺が行く。」
「な、何?貴様正気か?ワイバーンは三メートルあるのだぞ?どうやって討伐するのだ?」
と質問を投げかけられるがクロノはお構い無しにこう言う。
「後処理だけ頼むわ、んじゃ五メートルくらい離れてっと…」
冒険者達から離れたクロノは小さなバックから「龍笛」と呼ばれるドラゴン系統の者をおびき出す道具が高々と鳴る、するとそれに反応したワイバーンは突進してきた。
「離れろ!回避だぁ!」
カレンはそう言うと、皆慌てて逃げ出すが、クロノは腰からガッチリと構えワイバーンに対応する、そしてワイバーンがクロノに突撃した。
「っ!」
「………なっ!捕まえただと!」
クロノは突撃して来たワイバーンを捕まえていた。
「」
しかしクロノはワイバーンを殺そうとせずに手を離すと、ワイバーンは遥か彼方へ去って行った。
「……やっぱりか…」
「ど、どう言うことだ?何故殺そうとしなかった!」
カレンはどうやら納得行かない様子。
「簡単な話だ、要するにあのワイバーンは殺す必要がないってことだよ。」
「ど、どういうことだ?」
と、カレンは全くわかっていない様子、
「まずワイバーンも瘴魔だ。」
「む?お主の村だと瘴魔と呼んでおるのか…それで?」
「しかしワイバーンはそう人を襲わない種類と聞いている。そこまで良いか?」
「あ、あぁ…」
「ワイバーンも馬鹿じゃない、ここに来たら殺されるぐらい分かるだろう。だからと言って殺ることも出来ない、理由はなんだと思う?」
「………ワイバーンに何かあった…とか?」
「それが無難だろう、首付近に木出来た槍があった。ほら、多分民族系統だけど人間じゃない…これは…俺が始末する必要があるみたいだ…。」
「わ、私もついて行ってもいいか?」
「……お好きにどうぞ…としか言えません行くか行かないかはカレン様次第です、他の冒険者達はこの街を守る事を専念して欲しい。異論はありますか?」
「」
どうやら異論は無いようだ。
「うし、じゃあ行くかね…初めての二人クエストだな!」
「じゃあ場所は…カレン様?」
「む?あぁ、場所はなんとなく把握しているが…確証が無い…」
「行ってみても良いと思うぞ?それに、場所的にここからそう離れてねぇみたいだしな…さて、とりあえず行きますかね。」
「それにしてもあの木の槍は一体…う〜ん…」
「言うて犯人くらい分かってるだろ?あの精密に作られた槍は瘴魔の中で作れるとなると大分限られるからな…リザードマン系統だと水辺付近だからね。」
「…つまりゴブリンとでも?」
「お察しがよろしいようで、では、早速行きましょうかね?」
「うむ。わかった。」
「とりあえず案内お願いしますね。」
「勿論さ。」
と、言って国王の姪カレンと村人のクロノは殺戮しに行った。
□■静かな遺跡の中で■□
「恐らくここだろうな。」
「遺跡…ですか?」
「あぁ、ここでよく武装したゴブリンを見ると情報が入る。」
「なる程…これは強行突破しか無さそうですね。」
「しかし闇討ちされないか?」
「大丈夫です。」
「っ…」
その時のクロノの「大丈夫です。」に、何故か恐怖を覚えたカレンだった。
「行きましょう、恐らくゴブリンシャーマンか別の瘴魔の可能性が大きいです。」
「分かった、が…少し質問良いか?」
「はい?何でしょうか?」
「どうやって殺すのだ?この装備なら見ても「怪物殺」と呼ばれるには少し程遠い様な気がして聞いたのだが…。」
「何だ、そういうことなんですか?簡単なことですよ、」
「クロノ!後ろ!」
言い終わったときに、ゴブリンがクロノの頭を棍棒で殴りつけようとし、カレンが剣で助けようとするが。
パンッ!と、何かが破裂した様な音と、床を蹴った様な音がし、クロノを見ると。
「こうやって、殺すんです。」
「」
カレンには全く見えなかった。
気付くとそこには頭の取れたゴブリンの身体と、ゴブリンの首を持っているクロノが居た。
「な、何をした?あの一瞬でどうやってゴブリンの首を取ったのだ?」
と質問を投げつけると、
「え…そりゃあ…普通に首を取れば取れるものですよ?」
「そういうものなのか?私達の方だとありえないのだが…」
「え?そうなんですか…。」
当たり前だろ。そんな者が居たら速攻有名になるわ…と思いながらカレンとクロノは着々と最深層へと近づいていた。
「ここら辺に…」
「待って…下見て…凄い量のゴブリン…でもおかしいや…」
「シャーマンがいない事か?なら別のモンスターが統率してるんじゃ?」
「え?瘴魔のことモンスターって言うの?まぁとりあえず…久々に魔法を使ってみるかね。」
「お、お主魔法も使えるのか!」
「一応ね。」
と、言いながら持ってきた弓と矢を二本取り出し、詠唱を行う。
『二本の矢よ輝け、今こそ執念の狩りの時、我が矢は狙った者を外さず必ず撃ち抜くだろう。』
と、クロノが詠唱すると、二本の矢は白く輝き始め、
「流星矢」
と良い、二本の矢を空の彼方に飛ばす。
「な、何をしたのだ?」
「まぁ見てろ、俺は隠れる。」
「え?」
と、言うと、夜空にある光が見えたのだ。
「ん?光が…いや違う!全て矢だ!」
と良い、クロノと同じ場所に隠れる。
流星矢は、二本の矢を飛ばし、大量の矢となり帰って来る。
つまりカレンが見た光は星では無く、星の様に輝いた矢だったのだ。
「さ、降りるぞ。」
「う、うむ。」
「しかし酷ぇなぁ〜まさかここまで行くとは…やっぱり手加減は必須だな。」
「ん?つまり手加減をしたのか?」
「多少ね?遺跡だもん、壊すわ…っ、」
「どうした?」
「ホホウ…ゴブリン達ヲ一瞬デ殺ストハ…」
「あ、あれは…」
「……サイクロプス。」
「面白イ奴等ダ…コレハ久々ニ…楽シメルカモ…シレヌ。」
サイクロプスは好戦的だが、人間にはそう手を出さない。理由としては、強い、つまりサイクロプスと同じぐらいまたはそれ以上のやつと戦いたいからだ。弱きものとは戦わない、それが掟らしい。
「よし…そうと決まれば俺もやるっきゃない…が、そうだな…よし決めた…俺は一撃で終わらせる。」
「ホォ…中々ノ強者ト見タ…良イダロウ…我モ一撃デ倒ス…」
「行くぞ…」
「……来い。」
その後の戦いは、秒単位にして、ゼロコンマあるかどうか、戦いの勝者は、
「終わりました…あと少し遅かったら負けていた…サイクロプス。」
「ミ…ミゴ…ト」
カレンには速すぎる戦いだった。
「サイクロプス…強き戦士の一人…静かに眠れ。」
こうして、呆気なく討伐は終わった。
□■旅立ち 血濡れた少年と高貴な姫騎士■□
「では、俺はこれで。」
その次の日、クロノは次の国へ旅立つ所だった。
「本当に良いのか?馬一頭と馬のエサだけで。」
「十分です。」
と、門番の人と話していると、
「クロノ!」
「カ、カレン様?どうしたのです?」
「私も、旅に連れて行って欲しい。」
「なっ…む、無理ですって。」
「そんなもの百も承知だ。私は行きたいのだ。クロノと旅をしてみたい。」
と、カレンは告げるが、クロノは
「やはり駄目です。カレン様がいなくなっては、ここは成り立ちません。」
「そ、それは…」
「それにカレン様は高貴の血を受け継ぐお方、俺みたいに瘴魔の血で汚れた人と隣に居ては行けない。」
「そ、そんなもの!……もう会えなくなってしまうのか?」
と泣きそうな顔で言う。
「そんなことありません、必ず会えます。誓います。」
「言ったからな…必ず会えるんだな?」
「はい。勿論です、では、そろそろ失礼します。やぁっ!」
と、貰った馬に乗り、次の国にへと向かうのだった。