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街角昼音の鎮魂歌  作者: 橋本利一
7/10

強引な勧誘

 この物語は、橋本が橋本に影響力を与えるために、橋本が魂を削って橋本のためだけに物語を紡ぐ小説家を目指す、橋本利一の『インフルエンサーノベリスト』の提供でお送りします。


twitter:@hassiy2


ブログ:『インフルエンサーノベリスト』http://www.hassiy2.com/

 入学して一週間は矢のように過ぎていった。


 本来なら、教室の片隅で静かに息を潜めているつもりだったのに、友だちになった昼音がことあるごとに、僕を呼び出し、あちこち引っ張り回してくるのだ。


 うちの高校は部活動が盛んで、特に運動部は全国大会に出場するほどの実力を持つ逸材が揃うので、それを目当てに入学してくる生徒も多いという。


 なので、部員獲得合戦は熾烈を極めていた。


 朝に登校すると、校門から昇降口までの路をずらりと大柄な男たちが屯し、新入生に積極的に声をかけていた。


 僕は運動音痴で、太っているので、声をかけられないかなと思っていたのだが、それは甘かった。


 なんと、相撲部に目を付けられたのだ。


 体格の良い先輩たちが、君の肉体は相撲をするために生まれてきたんだなんて言われて、稽古場まで担ぎ上げられて連れて行かれ、服を脱がされて、廻しを付けさせられ、無理矢理相撲を取らされた。


 分厚い筋肉と脂肪で作られた先輩の肉体が、どすこいという言葉と共にぶち当たってくる。


 僕は当然のことながら、一発で土俵の外に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。


 顔面からもろに地面に叩きつけられたせいで、口の中に土が入り、上半身が地面に擦れて痛みが走る。


 取り組み相手の先輩がもういっちょと言って、無理矢理僕を立たせて、再び土俵に上がる。


 恐らく、僕が入部しますと言うまで、土俵に上げさせられるのだろう。


 僕はチキンな人間なので、入部しますと言えば本当に赦してくれると思い、口まで出かかったが、それを助けてくれたのは昼音だった。

 

 昼音は稽古場の扉をバタンと勢いよく開け放って入ってくると、先輩たちに臆することなく、土俵に上がり込んで、再び投げ飛ばされて地面に情けなく潰されている僕を立ち上がらせてくれた。


「おう、新入り。土俵は女人禁制。それを土足で踏み荒らすとは良い度胸してるぜ」


 厳つい顔で僕の取り組みの様子を見ていた男の先輩が声を荒げる。


 周囲の言動からするに、どうやら彼は相撲部の主将らしい。


 しかし、昼音は一切臆することなく、


「あんたたちのやっているのは強要よ。翼が嫌がっているのわからないの? それとも、目玉の中まで筋肉や脂肪で出来ているから見えないわけ?」


 汗臭く湿気の多い稽古場に冷たい空気が流れる。


 廻しを付けた相撲部の部員たちに、おいおい、こいつ言い過ぎだろうという動揺が走る。


 僕もそうだった。


 今は先生の目もない。


 力の強い先輩たちに何をされるか分かったものではない。


「ほほう。姉ちゃん。威勢の良いこと言ってくれるじゃないの。そこの太っちょ。恥ずかしくないのかい? 女に助けられてよう。自分でどうにかするからって、突っ張るのが男ってもんだろう」


 確かにそうだ。


 男なら、突っ張るべき。


 しかし、相撲部の圧倒する雰囲気に怖じけ付いてしまい、昼音の助けを断る言葉が出てこない。


「余計なお世話よ。人間はね、できないこともあるのよ。それを助けてあげることも必要よ。女だからとかは関係ない。それに、翼には翼にしかできないことがあるの。こんな無意味なことに、貴重な高校生活の時間を使う暇はないわ」


「へえ、言うねえ。ならば、きっちりと落とし前を付けて貰おうか。今から特別に土俵へ上がることを赦してやるから、俺と勝負しろ。俺を土俵から出すか、土を付けたら、その新入りを帰してやるよ」

 この物語は、橋本が橋本に影響力を与えるために、橋本が魂を削って橋本のためだけに物語を紡ぐ小説家を目指す、橋本利一の『インフルエンサーノベリスト』の提供でお送りします。


twitter:@hassiy2


ブログ:『インフルエンサーノベリスト』http://www.hassiy2.com/

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