表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ムーミンパパになりたくて  作者: チュン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

4、村山との出会い

 都会の中心街からは離れた、古くからの商業地。そこに建つビルの一室に、広めのフロアにうずたかく積まれた、いくつもの本の山がある。どれもが本の返品、じゃなく在庫の山なのだが、そうした本の山を抜けて奥に入っていくと、机が1つだけあり、そこに座るのが、村山智英という年配紳士だ。

 考え事をしていた村山が、ふと顔を上げると、一人の若者が目の前に立っていた。村山が不思議そうに見つめると、

「あの、私、加藤拓郎と言います」。

 と彼は言った。村山の顔がほころんだ。

「おお、君が加藤君。私が村山出版社長の村山智英だ。私は駆け出しの頃、君の・・・おじいさん、加藤淳也さんには随分、お世話になってね」

 加藤淳也とは、加藤渉の父親、拓郎の祖父のことで、そう言えば、祖父がかつて会社を経営していて、本を出したこともあるという話を、拓郎も聞いたことがある。

 やや間を置いて、拓郎が話し出す。

「実は、僕の小説について伺いたいことがありまして・・・」

 そう言うと、村山は微笑みを浮かべて言った。

「君の小説『ジュラの人魚伝説』でしたね。村山幻想小説大賞として、うちの雑誌『不可思議倶楽部』の最新号で掲載ですよ」

 拓郎はほっとしたような素振りを見せたが、言葉を続ける。

「できれば、私は、これを機会に小説家として独立したいので、御社でもっと小説を書かせてもらえませんか」

 すると、村山の表情が曇った。

「小説家ですか・・・。それは困りましたね」

 村山は立ち上がり、部屋の中を歩き始めた。

「この部屋を見てください。わが社は、1つの雑誌と、年に数冊の単行本を出すだけの弱小出版社で、ここにあるのは、返本、じゃなく在庫の山です。出版業は思いつきではダメ、秩序を持ってやらないと、あっと言う間に潰れてしまいます。君には、ここにもう1つの山を作らせないだけの力量がありますか?」

 拓郎は何も言えなかった。

「雑誌が出たら、今回の賞金はキチンとお振込みします。私も加藤淳也さんにはお世話になりましたので、何とかしたい。でも、今の私にできるのは、それくらいですね」

 しばらく間を置いて、山村が、

「もし、お仕事をお探しなら、『不可思議倶楽部』のライターはいかがです?1本いくらで、決して満足なお支払いはできませんが」

 と言って前を見ると、もはや、そこに拓郎の姿はなかった。

「あれあれ、性急な方ですね。おじいさん似ですかね」。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ