光の鎧とスライム
・・・・
ぼくらは再び洞窟を先へと進み、憎っくきスライムの落ちてきた空間まで戻ってきている。
これまでは狭くて薄暗い通路が続いていたが、ここから先は様子の違う空間が広がっているようだ。
天井からは鍾乳石が垂れ下がり、輝く鉱石が空に砂を撒いたように煌いているため、辺りを見渡すには十分な明るさがある。
これまでには見たことも無い幻想的な光景だけど、常に警戒を絶やせない状態では素直に感嘆も出来ない
「いや~キレイな光景だよね」
「マザーへのお土産にあの光る石持って帰るか?」
「調合の素材につかえるかな~?」
・・・ことも無いようだ。
近くの壁から鉱石の光っている部分を錆びた短剣で削ってみるが、壁から離すと崩れて光らなくなるようだ。
「ムンッ」
リグが崩れた鉱石に魔力を込めて固めると、薄っすらと蒼く輝きを放ち始めた。
おお、結構面白いな。
崩れた鉱石にヤジルも魔力を込めてみるが、・・・光らない。
クソッと床にたたきつけている。
ヤジルがリグの傍に近づいて、リグの固めた鉱石に火の魔力を込める。
すると、リグだけで込めていた時よりも強い輝きを放って、辺りが明るくなった・・・。
これは楽しいぞ!
今度はぼくがリグの鉱石に手を添えて、水に浸透させるときのイメージで魔力を注ぎ込む。
・・・特に輝きは変わらない。
次だ! 闇の魔力を注ぎ込む。
・・・輝きは変わらないけど、辺りが若干明るくなった気が?
辺りを見渡すと、さっきヤジルが床に叩き付けた鉱石の砂がボンヤリと光を放っている。
「ぼくも~!」
とリグ(土)とぼく(闇)に加え、サーマも手を添えて魔力を込めてきた。(額のソウルストーンが白く輝いたから光の魔力だね)
すると、周辺の壁で輝いている鉱石が一斉に輝きを増した!
急に眩しくなった周囲に驚いて手を放すと、周辺の鉱石の輝きは落ち着きを取り戻し、リグとサーマの触れている鉱石の塊だけが眩しく輝いている。
「これなら輝く鎧がつくれるね~。」
「ずっとリグと手でもつないでるつもりか?」
「あ。そか~。」
サーマとヤジルがおバカな問答をしているが、ぼくも光の剣がつくれるな!とか考えていたのはナイショだ。
むしろヤジルが言い出すと思っていたのもナイショだ。
それでもサーマは「何かにつかえそ~」と鉱石の砂を集めているようだ。
ぼくらは興味の赴くままにピカピカと輝いて辺りに存在をアピールしまくっていたので、ぼくは明りに気づいた魔物が近づいてこないか辺りを警戒する。
特に辺りから近づいてくる魔物もいないようだが。。。
ぬ、あそこに見える水たまりは、さっきの憎っくきスライムか?
積年(つい先ほど)の恨みじゃ~~~!とばかりにおもいっきり踏んづけてやる!
ズルッ「ゴッ」
「ぬおおぉぉ!」
踏み抜いた瞬間に足が滑って後頭部をしたたかに床に打ち付けた。。。
「をいをぃ、何をスライム相手にあそんでんだ~?」
頭を押さえて転げまわるぼくを横目に、ヤジルがスライムに近寄りながらショートソードでシュッと切り捨てる。
しかしスライムは何事もなかったかのように、すぐにムニュリとくっ付いた。
「アタルのかたきだ~♪」
カタキと言いつつも楽しそうにわらいながらサーマが棍棒で殴りかかる。
ポスン。
・・・棍棒で殴っても効果は無いようだ。
「あららーこれは切っても殴ってもダメそうだね~?」
《グリル・フレイム》
リグがあきらめている間に、ヤジルが炎で炙っていくと、さすがにジュウジュウと音を立てて消滅していった。
・・・魔石、出ないね・・・。
スライムが消えた後には黒い靄が立ち上った後は、何も残っていなかった。
切っても殴ってもダメージが当たらない上に、なにも素材が残らないなんて・・・。
相手にしたくないなぁ。
「なんだ?なんにも残んないのか?無駄に魔力だけつかっちまった~。」
「これはヤジルがいないと対抗も出来ないね?」
「毒でも調合して投げつけちゃえばよかったかな~?」
「やめてっ。嫌な予感しかしないよ。」
みんなスライムに会ったら逃げの一手と心に決めて、先へと進んだ。