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ショタ神様は勘違う  作者: 山木 深
一つ目の勘違い
2/2

第二話

いつから一週間が始まるか、それは言ってない(キリッ

「やっほ、エルフっ娘さん。元気かー」


仲良くなるのは笑顔と挨拶からだと僕は信じているから、努めてニコニコしながら話しかける。エルフっ娘さんは、声に反応してこちらに振り向いて、固まった。まるで石化の魔法でもかけられたかのようにきれいに固まった。


「あれ、どうしたの?一応見た目は人種の子供なはずなんだけど……。まさか、言葉が通じてない?それだと少しばかり面倒」

「ちょ、ちょっと君大丈夫!?いや大丈夫じゃないよね!?少しだけ待ってて、すぐにミョン婆読んでくるから!」

「うん、まあ、よく分からないけど通じてはいそうだしほっとこうかな」


顔を真っ青にして集落へ駆け戻っていったエルフっ娘さんの後ろ姿を眺めていると、騒ぎを聞き付けた門番さんがこっちに来た。

門番さんもエルフっ娘さんと同じように動転していたが、すぐに冷静になると僕の体をペタペタと触りながら痛い箇所はないかと聞いてくるので首を横に振って無いよと伝える。

すると、門番さんは羽織っていた外套を脱ぐと、僕に渡してきた。はて、どうしたのかと思っていると。


「服、酷いことになってっからなぁ。何か被ってねぇと目もあてられねぇよ」


言われて見てみれば、なるほど、確かに着ている貫頭衣はかろうじて服としての機能や形を保てているような有り様だった。

しかもゴブリンとか魔物の返り血というオプション付き。うん、改めて見ると酷いね。

というか、ようやく人と会えたのに感動が全然ない。むしろぐだぐだ過ぎて呆れてしまった。原因が自分なのはどこかへ捨てておくが。

門番さん改めドワーフの青年ドルマとのんびりと話ながら情報収集をしてエルフっ娘さんを待つことしばらく。ようやく戻ってきたエルフっ娘さんは腰の曲がった小人種のお婆さんを連れていた。


「あ、やっと戻ってきた。結構かかったけどどうしたんだい?」

「はぁ、はぁ、はぁ……。何って、ミョン婆を呼びに行ってたんだよ。って、そうじゃなくて!ミョン婆、この子を診てあげてほしいんです」

「ふん、そんなことのためにわざわざ私を呼んだってのかい。いい迷惑だよ、全く」


と憎まれ口を叩きながらも僕の方に近づいてきたのだが、その前にドルマが話しかけた。


「あー、ちょっといいか、ミョン婆。引っ張られて来たとこ悪いんだけどよ、こいつ怪我なんてしてねぇんだわ。つか無傷」

「え!?うそ!?じゃ、じゃあ服に着いてた血は?」

「それ、返り血らしいぜ。何かここに来る途中に魔物とやりあったらしくてな、そん時のもんらしい」

「えぇー、そんなぁー」

「なんだい、つまりはシンシアの早とちりだったってことかい。はぁ、仮にもこの私が弟子にしてやってんのに、何て体たらくだい!もっと目利きが出来るようになるんだね。あぁ、ついでだシンシア。小僧の相手はあんたがするんだよ」


そう言うと、さっさと戻っていってしまう。というか小僧呼ばわりされたことが不満だ。見た目は確かに小僧だけど、年齢はぜったいこっちの方が上なのに。


「ま、いいや。それで、どうするのかな。僕としてはここを案内してもらえたりするとうれしいんだけどな」

「そうだな、んじゃシンシア頼むわ。ミョン婆も相手しろっつったしさ、適当に案内してやってや。ついでに服も替えといてやれよ。さすがにこれはねぇからな」

「はぁ、わかった。それじゃあ、えっと……」

「マキナ。僕の名前はマキナだよ」

「そっか。私はシンシア。よろしくね」


名前を教えあうと、エルフっ娘さん改めシンシアは僕の手を引いて案内を始めた。……ふと思ったんだけど、これ、完全にお子様に見られてる気がする。もしも僕が数万年の時を生きてるって言ったらどうなるかな、なんて思いもしたが、まず信じられないだろうし可哀想な子に見られたくもないからやめた。

大人しく手を引かれていくと、その先々で色々な人に話しかけられた。

三十路を過ぎたくらいの兎人の男性や走り回っている人種の女の子。巨人と小人の夫婦という何かがおかしい人たち、さらにはエルフとドワーフのカップルまでもがいた。あらゆる種族がいたのだが、共通してることが一つ。

それは、誰もが心の底から笑っているということだ。前までは考えられないことだけど、でも何故かほんわかした。ただ、シンシア以外のエルフが全員銀髪でないのが気にかかった。僕が知っているエルフは誰でも銀髪に碧眼だったから。

思考の海に沈んでしまいそうになりハッと現実に帰ってくる。と、ちょうど目的地に着いたようだった。


「何だかいいとこだね、ここは。あらゆる種族がみんな一緒に楽しく過ごしてる。まるで理想郷みたいだよ」

「そう?そう言ってもらえると嬉しいな。自慢の故郷だからね、ここは」

「そっか。ってそういえばここは誰の家なんだい?」

「私の家だよ」

そう言いながらガチャッとドアを開けてシンシアが家に入っていく。へー、なんて思いながら僕も続けて入っていく。そのまま広い部屋に連れていかれると、座って、と言われたので座る。シンシアも座ったのを確認してから、口を開く。


「それでシンシア。何で僕をここに、というかシンシアの家に連れてきたんだい?」

「それはね、私の家がこの村で一番大きいのと、マキナ君くらいの服がたくさんあるからだよ」

「ああ、そうゆうことか。ん?てことは、僕はシンシアの家に泊めてもらうことになるのかな?」

「そうだよ。マキナ君が落ち着くまでってことになるだろうけどね。それじゃ、私服持ってくるから少し待っててね」

そう言うと、パタパタと足音をたてて二階へ上がっていった。待っている間手持ち無沙汰になった僕は、とりあえずさっきから気になっていた部屋な行ってみることにした。その部屋は玄関から真っ直ぐ行った突き当たりにあって、何故かそこそこの魔力を発していたのだ。

なので案内された部屋から出ると、その部屋へと歩いていった。

ドアの前にたどり着くと、あまり音を出さないように静かに開いた。そして部屋に入った僕は、思わずほぅと感嘆の声を漏らしていた。

その部屋はどうやら書庫だったらしく、大量の本が本棚いっぱいに収められていて、収まりきらない本が通路の至るところに積み重なっていた。しかも空間拡張魔法でもかかっているようで奥行き200C、横幅60Cはありそうだった。


「これは、すごいな。これだけの本、よく集めれたものだ。この規模は個人では見たことないな。エルフの寿命を考えても大したものだ」


近くの本棚に近づいてきた適当に本を手に取ると、パラパラとめくり読んでいく。それを何冊かしたところで、二階からシンシアが降りてくる音が聞こえた。名残惜しく思いながらも本を棚に戻すと、入ってきた時と同じようにそっとドアを開け出ていき、元の部屋に戻っていった。

僕が戻ってすぐ、大量の服に埋もれたシンシアが入ってきた。あまりの服の多さにまさかね、と冷や汗を流しながら尋ねる。


「ね、ねえ。まさかとは思うんだけど、それだけの服を全部着てみるとかは、ないよね?」

「うん、ないよ」

「そっ、そっか。よか」

「だってまだまだたくさんあるからね。これだけじゃ終わらないよ」


上げて落とされ希望を奪われ、僕は罪を裁かれる直前の罪人のように項垂れるしかなかった。

感想誤字脱字報告はじゃんじゃん下さい

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