序章
4月。世間の学生たちにとってそれは特別な月である。
新しく学校へ入学する者、そして卒業していく者。各々が新しい気持ちで前へ進む。微笑ましい光景が目に浮かぶような季節。
皆が思い描くのはそんな他愛のない学生たちの姿だろう。だがこの街は、そんな世間のイメージとは少しかけ離れている。大人たちの知らない深い闇が10代の少年少女たちへと広がっている。
黒曜学園はこの街に存在する男子高校で、不良のレッテルが貼られた札付きのワルや、落ちこぼれたちが集まるこの近辺の人々にとっては有名な学校の1つだ。
学校へ通うのは中学時代に地元を占めていた頭だったの者や、鑑別所、少年院に入っていたは当たり前の問題児ばかりで、喧嘩で名をあげることばかりを考えている。しかし、このアンダーグラウンドの頂点ともいえる黒曜学園は一筋縄ではいかず、不良をかじっていたや腕に自信がある力自慢程度では、すぐにスクールカーストを最下層にまで成り下がる。
黒曜で頭を張ることはアングラの世界を生き抜く不良たちにとっては憧れであり、暴走族の総長やギャングのヘッドになることよりも魅力的なことなのである。
3月に中学を卒業したばかりの、美波 シンは黒曜学園への入学が決まっていた。
入学を決めた理由は当然、黒曜の頭をとることで、喧嘩の実力も自分を信じて疑わなかったからだ。
シンは中学時代に地元で頭を張っていた。自分の中学はもちろん回りのいくつもの中学を傘下に収め、地元の不良の間では名前を知らない者はいないほどの有名人となっていた。
喧嘩は鬼のように強く、物心ついた頃から負けたことは一度もない。相手が大人だろうが、高校生だろうが売られた喧嘩は必ず買って最後には必ず相手を地面に転がしていた。また人情味に溢れ仲間思いで、彼に憧れるものは多く人望も厚かったことから中学制覇も力でねじ伏せるよりも、周りから彼についていく形で成しとげたことだった。
シンが黒曜学園入学を決めたことの周りへの影響は大きかった。シンは地元の先輩たちの暴走族やギャングなどのチームからも声がかかっていた。シンほどの男がチームがいれば、そのチームは瞬く間に最強になるであろうから、皆喉から手が出るほど欲しがったのだ。逆に自分たちのチームへ来なかった場合には敵対することも考え、恐れた。
シンの同級生たちは彼をついていくことを望んだが、その行き先が黒曜学園となると少し状況が変わった。シンの様に喧嘩最強ならともかく、地元で粋がっていた程度では到底黒曜学園でやっていけるわけがなかったからだ。また、シンほどの男でも黒曜学園ではどうなるか分からない中ついていき地獄を見る勇気はなかったし、シン自身も仲間たちに黒曜入学を勧めなかった。だが、それでもシンと共に黒曜学園を目指す仲間は二人いた。
一人はシンと同じ中学で幼い頃からずっと一緒に育った親友の塩原 ユウ。美少年にしてイケメン、周りの中学にファンクラブができるほどだ。喧嘩の腕はもちろんのこと、頭もキレ、シンの中学制覇にも大きく貢献し、シンが一番信頼できる仲間でもある。
もう一人は、かつてシンと敵対していた中学の頭をしていた浜島 ダイジ。中学時代に力でのし上がり、周りのいくつかの中学も制圧していた。自身では隣町にいるシンのことをライバル視していて、中3の夏に遂にタイマンで激突するもワンパンでK.Oされるという経歴をもつ。その後はシンの下につき、更なる勢力となった。
他の仲間たちは別の高校や就職、先輩のチームへ入るなどバラバラの道を歩むことになったのだった。
そして、この4月に美波シン、塩原ユウ、浜島ダイジの3人は黒曜学園の入学式迎え、誰も予想しなかった深い闇の中へと進んいく。