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エルナトの女王  作者: Naoko
13/52

13. 獲物の少女

セフォラは向きを変え出口へと向かった。ここにいるべきではないと思ったのだ。嫌な予感がする。そして誰かにぶつかった。


「何だ?」

ぶつかった相手は男性で、軍服ではなくきらびやかな礼服を着ていた。すると彼はセフォラの背中をわしづかみにしてその鎧のような服と共に持ち上げる。「何という力!」と彼女は思うが恐ろしくて声も出ない。彼はまるで狩りで仕留めた獲物を皆に見せびらかすかのようにセフォラを掲げる。するとその腕にモモが噛みついた。


「こいつ!」と彼はセフォラを離しモモを振り払おうとする。次の瞬間、黒い何か腕のようなものが伸び、彼を突き飛ばした。それはセナ夫人で、黒い女豹のようにしなやかに動いてセフォラを自分に引き寄せる。モモもセフォラのスカートの下に隠れた。セナ夫人は歯をむき出しにし、周りをぐるっと見渡す。その夫人の形相にも驚くが、セフォラにはもっと驚くことがあった。今まで品良く振舞っていた紳士淑女らが、ハイエナが獲物を狙うかのように自分たちを囲んでいたのだ。仮面のような化粧をしている淑女らの目も興奮しギラギラしている。血の気を失ったセフォラは、院長のあの酷い傷を思い出した。自分もあんな姿になるのだろうかと。


すると急に空気が変わり、その囲みは解かれた。ライーニア将軍がやってきたのだ。「王に問うた者だ」と彼らはひそひそ話しながら後ろへ下がる。それはまるで力の弱い獣が強い者に服するかのようで、群衆は何事もなかったかのように元の状態に戻ってしまった。


「ライーニア将軍、良かったわ。流石に私だけでは止められなかったでしょう。ところであなたは、この娘をエスコートするはずだったのではありませんか?」女豹のセナ夫人は、野獣の王の将軍に進言するかのように言った。

「いや、急に足止めされ、彼女を迎えに行くと、すでに出たと聞かされたのです」

「なるほどね。そんなところでしょう。レディ・エレイーズを阻む者もいますからね。今となっては誰が仕組んだのかどうでもいいことです。この娘の秘密を知られるのではないかという心配の種は消え、次に移っただけですもの」


「あの」とセフォラは震える声で言った。「どうか私を院長様の元に戻してください」

セナ夫人と将軍は彼女を見る。

「エレイーズはあなたを守れないから将軍に委ねたのでしょう?戻ってどうするの?」

「私を守るとは、どういうことでしょう?」

「あなた、たった今それを経験したんじゃない?」

「いえ、あの、私の何が悪かったのでしょうか?」

「あなたは悪くはないわ。周りがおかしいのよ」


セフォラはどういう意味だろうと思ったが、それ以上聞く気になれなかった。聞けばもっと嫌なことを知らされるかもしれない。


「とにかく、将軍。これであなたはゲルノアに仕えることになります。球体の前で彼に問うて気は済みましたか?」

「球体は、新王が陰謀に関わってなかったと証明してくれました。それが分かりさえすれば良いのです。私は王に仕える者で、王を暗殺する者に服することはありません」

「陰謀者はゲルノアを操っているとも言えますよ」

「陰謀者は、恐らく特定の者たちではない。この国民全体かもしれませんがね」

「そうですわね・・・」


その時、戴冠式が始まる合図のラッパが轟き、セナ夫人は顔を上げ高座を見た。

「この国民は、あの王と共に行きたがっている。そして」と言って将軍を見る。「あなたは、いずれ全てを終わらせてくれる」

将軍はそれに答えず、表情も変えなかった。


セフォラにはこの二人の会話の意味は分からなかった。とはいえ自分が何かに巻き込まれているのは明らかだった。生まれた時から何か秘密があったようだし、院長のもとで、知らされずにいただけなのだ。


セナ夫人と将軍が歩き出し、セナ夫人は振り返って言った。

「セフォラ、付いてきなさい。離れては駄目、あなたは獲物です。また襲われますよ」

「獲物?」

「ええ、ライーニア将軍が来て下さらなければ、あなたは八つ裂きにされていたでしょう」


セフォラは慌てて二人の後を追った。

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