表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な男の平凡な転生  作者: みけ
7/44

プレラが語る情勢と冒険者のルール

お待たせしました。今回は少し長くなりました。

香しい香りを放つ薄い琥珀色の液体がコップを満たしている。こちらの世界にもお茶はあるようだ。


『もともと、酒場や宿屋から始まっているから、ギルドには食事を出せる設備と宿泊できる部屋がよういされているのよ。さて、冒険者のルールについて話す前に、帝国についておしえるわね』

優雅にお茶を飲みながらプレラは語り始めた。


帝国は、尾底部と言われる南の辺境に暮らす蛮族から興った国である。皇帝ヒデラック一世は王国の生まれと言われるが出自は定かではない。若いころからディプノ族の戦士として名をあげ族長の娘をめとり部族を掌握すると、次々と他の部族を吸収しついに尾底部を統一するにいたった。

尾底部は古くから自由魔力が少なくそこにすむ人々も魔法の素質を持たない者が多い。

底骨山脈により中央部より隔てられ、鬱蒼とした密林と大小の沼、湿地が広がっている。大小たくさんの部族が存在し、互いに覇権を争っていたが、ウィンディアの誕生に前後して、九つの大部族の族長が集まり合議で統治するようになった。

ウィンディアと部族連合は互いに山脈を越え幾度となく争ったが、尾底部がウィンディアに抗う最後の存在となった時、降伏し尾底自治領となる。

以後、部族連合代表が領主として統治することになるが、部族間の紛争は絶えることはなかった。


皇帝ヒデラック一世は冒険者として尾底部にやってきて、後に無敵と称される卓越した剣技と優れた知略、強烈なカリスマ性により、弱小部族であったディプノ族を率いて敵対するすべての部族を打ち倒し部族連合の代表に就任した。


平和の訪れたい尾底自治領では、未開地の探索、中央部との貿易を増やし、中央部と尾底部を結ぶ街道も整備され、湿地で育つ作物を捜し食料の増産に成功、人口も増えていき、野蛮な辺境から活気溢れるフロンティアへと変貌をとげる。

魔法に頼らない技術の研究も進み優れた領主のもと、尾底自治領は着実に力を貯えていった。


そして、今より20年前、突然、自由魔力の枯渇が始まる。

魔法により繁栄していたウィンディアが大混乱に陥るなか、皇帝ヒデラック一世は独立を宣言、ウィンディア王国への侵略を開始した。

頼りにしていた魔法に制限がかかり混乱の極みにあったことに加え、長い平和の中で硬直化し、密かに腐敗が進んでいた行政組織と軍、自由な気風ゆえに退廃的な暮らしに堕落した多くの貴族、繁栄の豊かさに慣れ退嬰的な思考にとらわれた数多の国民たちはウィンディアの斜陽を加速させる。


燎原の火のごとく帝国軍は、瞬く間に領土をひろげていった。当時の王都ハートを目前に行われた決戦において、5倍の兵力で望んだ王国軍は無惨に壊滅し、指揮をとっていた時のウィンディア王ダオルエン6世が戦死する。大敗と王の戦死により戦意を喪失したものが続出し、またたくまに王都ハートが陥落、ウィンディアはその後幾度かの決戦にことごとく敗れ、まさに秋の日の落ちるがごとく領土を失い北へと追いやられていった。


魔結晶の発見と英雄ユキムラの活躍により、頭部地方は善戦していたが、厳しい身分制度と苛烈な実力主義で統治された帝国は、かつての王国民を奴隷兵とし、奴隷から解放されたくば、戦場で武功をたてることを強要し攻勢を強める。

衆寡敵せず、ユキムラが籠る鎖骨砦もついに陥落し、ユキムラは城門前で立ち往生するにいたり、ウィンディア王国は滅亡寸前までに追い詰められたのである。

『ふぅ、これまでの流れはこんな感じね。帝国は王国最後の街ユーブリックを包囲する前に、冒険者ギルドに退去勧告を出したわ。街にいる冒険者は退去しろ、さもなくば、帝国に害意を持つものと判断するってね。だから、今ギルドはすっからかんで、支部長の私しか残ってないわけ。私はごらんのとおり獣人だから、帝国の身分制度の中では、人とは認められてないのよ。亜人や獣人たちは人としての身分を持たずに動物と同じ扱いをうけるわ。ひどい話よね。一応今は、冒険者ギルドとの約束によりギルドに所属している者は、平民扱いされるけど、王国無き後はギルドに亜人や獣人の引き渡しを求めてくるかもしれない。帝国は奴隷たちの鬱憤を亜人や獣人たちに向けることで、コントロールしているから、この差別をやめるつもりはない。そんな帝国に害意を持ってるから私はここにいるわけ。』


プレラは、長い帝国の成り立ちと現状についての説明を終えると、ため息ひとつついてからピンッと耳を立て一気にまくし立てたあとゆっくりお茶をすすった。

『で、ここにいると冒険者に登録していても、帝国から攻撃される現状は理解できたわね。さて、ここからがやっとテンプレートな説明よ。冒険者のルールやしくみについての説明をします。冒険者には、その実力によりランクがあります。FからAまでが通常ランク、その他に、S、SS、Gの特別ランクがあるわ。通常ランクは所定の依頼の達成件数が満たされれば上がっていき、特別ランクはAランク以上の冒険者に特に素晴らしい功績があった時に贈られます。依頼も同様に内容を判断してランク付けがしてあり、自分の一つ上のランクの仕事まで受けることができます。パーティーを組んで依頼を受ける場合、一番人数が多いランクが適用されます。あまり無いことだけど依頼失敗を繰り返すとランクが下がります。失敗した場合、違約金は成功報酬の倍になります。まぁ失敗=死の場合も多いけどね。冒険者には、ギルドからの動員要請に答える義務があります。また、指名依頼をされることもあります。動員は強制で指名依頼には拒否権があります。動員の義務に応じ、指名依頼を受ける代わりに、ギルドは冒険者の生活を最低限保証します。財産の無い冒険者に対し、最低限の食事と宿を提供します。ここまでで、なにか質問がありますか?』


プレラは事務的な口調でランクについての説明を終える。


『剣とか、魔法とかは教えてもらえるのでしょうか?装備を整えるお金の無い場合は貸してもらえるのでしょうか?』


太郎には剣で戦う力も魔法を使う力もない。アイテムボックスに槍にできそうな矢をもっているが、武器も防具も持っていない。


『技能については、各自でみにつけてください。装備についても同様です。装備や技能がいらない依頼から始めることをお勧めします。よろしいですか?では、タロウ・タナカさんはFランクの冒険者になりました。あなたに佳い冒険が訪れることを!』


プレラは、おごそかな顔で三三七拍子を行った。

お読みいただきありがとうございました。次週は、ちょいと旅に出るので更新はお休みします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ