クーヤんの魔術講座
頭の中で考えていた魔術の理論をとりあえず文章にしてみました。
それは違うだろうといった指摘や、ここはこうじゃないかといった報告がありましたら連絡を宜しくお願いします。
クーヤんの魔術講座
まず本編でも述べたように魔力とは魔素の集合体という認識から始める。
さて、魔術を使うにあたって理解、読み取り、想像、アクセス、放出といった5つの過程があるがそれを先に説明していこう。
最初に魔術の理解とあるが、これは基礎中の基礎だな。後に続く4つの要素一連の流れを理解しなければならない。
全ての要素に繋がる重要な部分だがそこまで難しいものでもないな。
実際に使う魔術がどういったものかというのを知っていれば問題ない。火系統なら火を灯し、風系統なら風を巻き起こすといったものだな。その魔術がどんな現象を起こすかというのを知っていなければ始まらないからな。
次に読み取り。体内に巡る魔力の流れを感知するという作業だ。まぁこれもそれほど難しいものでもない。ようは血管の流れを感じる事によく似ている。
普段ではまったく気にならないが、首筋や手首に指を押し当てると血管が跳ねる鼓動が感じられるだろう。運動した後だとさらに分かりやすいかもしれない。まぁ読み取るというのはそんな感じのものだ。
さて想像だが……これは人それぞれだな。例えとして火系統の魔術を使う場合、空中に炎がいきなり現れるのを想像する者もいれば、マッチを発火しその周囲を飲み込んでいくのを想像するものもいる。
方向性の想像は重大だな。その魔術を使って火を灯すのか、標的にどのような軌道で放つのか。どんな規模のどんな軌道を描くかは人それぞれだが、あまりに突拍子もないと次のアクセスで引っかかるので注意しなければならない。
例えば指先に火を灯す魔術で空から火球を降らすような想像をしても失敗するだけだ。
4つ目にアクセスだが、これは教わればなんてことはない。詠唱ならばその言葉と発音があってればいい。術式や魔方陣といった魔術文字も書く文字が間違っていなければ支障はないな。
だがこれが一番重要視されている。発音を一句間違えば、文字を一画間違えば世界と繋がる鍵になりえない。失敗の4割がこの工程だ。
最後に放出だ。これも先程説明したものをこなせていればあとは放つだけで比較的簡単だが、失敗も多い。
中級魔術の詠唱をしておいて、放出した魔力は下級魔術だった場合は世界を騙す力が足りず何も起きない。ラビが暴発したように指先に灯す魔術に火の雨を降らすような魔力を注いだ場合も同じく失敗だ。ようは適正な魔力を注げばいいだけだが、最初はなかなか難しいもんだ。失敗の半分がこれに該当する。
ああ、後はそのまま放出するだけか、持続し続けるのもここの要素だ。
さて、少し脱線するが、魔術を早く行う為にどれだけ省略できるかという事は考えられている。5工程のうち省けることが出来るものを説明していこう。
第一工程:魔術の理解。一度理解していれば、使用する時に確認する作業は含まない。
第二工程:魔力の流れ。常に体に流れる魔力を意識していれば、魔力の流れを読む作業は省かれる。
第三工程:方向性の想像は必要だ。その魔術の威力はどれほどか、魔術を向ける対象はどこかなどを決めなければならない。しかし想像と詠唱を同時に行うこともできる。というかそれが主流だ。
第四工程:詠唱はしなければ世界と繋がる事は出来ない。
第五工程:魔力を放出しなければそもそも魔術は使えない。
よって第一工程と第二工程は省くことができる。そして平行作業となるが第三工程と第四工程も同時に行われ時間短縮が可能だ。
しかし無詠唱ということはありえない。それが魔術師達の常識だ。
それじゃ、ここからさらに詳しく説明していこうと思う。
魔素についてと、属性付与についてだ。
ここでは魔素のことを、Maという記号で表す。
魔術の失敗は先程説明した5つの要素が殆どだが、他にも失敗する原因は有る。これから話すことは属性についてだ。
世間の魔術師は相性とか言っているが、事実は多少異なる。元々魔素とは無属性のものとして体内に巡っているのだが、魔術を使う時その魔素に属性が付け加えられる。もちろん無属性のまま魔力を放出する魔術も存在するが、ここでは割愛しよう。
魔素に属性を与える工程は実は無意識で行われている。順番的に言えば読み取りと想像の間だな。体内の魔力を読み取り、その術の方向性を決めている最中に魔素の属性は決められている。
無意識下で行われている作業なのでその事実を知るものは少ないがな。失敗するのはある系統の魔術を使おうとしているが、魔素に他の属性をつけてしまう場合だ。
傾向として一番自分に得意な系統が付与されるな。ラビとアリスはこれに属する。まぁ、そういうのを踏まえて相性という言葉で区切るのも悪くないが、この事実を知ることで改善出来る可能性もある。
ラビとアリスは無理だ。魔術の情報が魂に刻まれてるから無意識の領域を改善出来そうにない。
次に魔素がどのような動きをしているかだな。例えとしてやはり火がわかりやすいか。
火系統の魔術を行使する場合、体内に巡る魔素に火の属性を付与する。付与するといっても殆どの場合無意識下なんで、火の魔術を使おうと思えば勝手に付与されるがな。
原子の中にも電子、陽子、中性子といったものがある。陽子、中性子から成り立つ原子核それが魔素のエネルギー、核と言う事だ。つまり属性という因子はその周りに回る電子の部分に当たるな。
魔素の核をMa(核)と表し、属性の部分をe(各属性)とする。今回は火で説明するから、e(火)だな。
つまり、Ma(核)とe(火)が合わさり、Ma(火)とされる。
そのように属性の決められた魔素はその数を増やし、魔力として集まる。大抵掌にその魔力を集めるが、魔力の操り方を知っていれば他でも可能だ。
ここまでの話しで火薬の調合が整ったといったところか。
魔素は他の元素と結びつきやすい。この魔素は物質の最小単位原子に干渉して物質を集める。
火で言うなら、酸素(O2)を媒介とするな。水ならH2Oだ。
ここで O-O と Ma(火)が結びつき、O-O-Ma(火)となる。これでようやく現実世界へ干渉する準備が整った。
弾丸でいうなら薬莢に火薬を摘め、弾頭で蓋をした状態だ。
その後、詠唱や術式などといった世界の鍵、撃鉄を起こす作業が行われ、放出といった引き金が引かれる。このような現象により魔術は使われている。
ああ、ちなみに今話した内容を知れば森の中で使った魔術を説明する事も簡単だな。
まず、煙という微粒子を含んだ空気の固まりにMa(雷)を付与し、吐き出す。だが、それだけだと属性の決められた魔素、火薬を振りまいただけだ。
その次に、葉巻の火が発する光源にMa(光)を結びつけ、魔素を操り空中に留めた。魔方陣を描くためにな。後は想像しながら魔力を放出すればいい。
以上述べたように魔力を、魔素を操るというのは無意識下の領域をどう制御するかによるところもある。
最初に魔術を広めた者が何故この事を言い伝えなかったのか疑問に感じている。あえて言わなかったのか、それとも理解出来ないという理由で廃れていったかは定かじゃない。
まぁ、魔素を知るという事は原子を知るという事だからな、この時代で理解する事は到底無理な話しかもしれない。
以上で魔術の講義を終了する。
寝ているラビと疑問符を浮かべているアリスは配った教科書を読み直すように。
質問は随時受け付ける。ここは変、その考えはおかしいと思う人は連絡をして欲しい。