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⑤対人戦(PvP)訓練(中)

「紹介しますわ。わたくしのお父様とお母様です」


「娘の友達になってくれて、本当にありがとう」


「彩里はずっと家から出たがらないから心配していたのよ。よかったら仲良くしてあげてね」


 PvPの訓練を了承すると、人を呼んでくると家に入っていった鵯彩里(ひよどりさいり)が連れて来たのは、彼女の両親だった。

 見た目からして奇抜に見える鵯彩里とは違って、少なくとも俺の目には普通の大人に見える。

 中一ぐらいに見える鵯彩里の年齢から考えると、ちょっぴり年配に見えるかなってぐらいだ。


 但し、父親が鎖付きのトゲトゲハンマーを持ってて、滅茶苦茶凶悪そうに見える。

 満面の笑みで人をぐちゃぐちゃにしそうな印象…かな?


 それにしても、全員プレイヤーか。

 家族でNOT THE GAMEに登録した人っているんだな。

 娘が心配だから、取り敢えず自分達も登録しておいたってところか?


 思考を巡らせて数瞬の間が開くと、その隙に東雲鈴音が大きく動いた。


「友達!?そうです、私はさりさりの友達で東雲鈴音と申します。以後お見知りおきを」


 友達と聞くと異様なノリになる東雲鈴音。

 鼻息荒く鵯彩里に迫る姿は、『美人が台無し』の極致と言って過言ではないだろう。


「わたくし、この方とお友達になった覚えはありませんわ。勘違いしないで下さいまし。それと、さりさりなどと言う幼稚な呼び方は止して下さいませ。わたくしはサリー。強くて可愛い魔法少女ですの」


「がーん!」


 冷たくあしらわれて項垂れる東雲鈴音。

 今時『がーん』を口で言うって、親世代でもいないのではなかろうか。


 東雲鈴音の扱いは正しいと言わざるを得ないが。

 ただ一つだけ指摘するならば。


「幼稚と言うなら魔法少女も十分幼稚では?」


「魔法少女を馬鹿にしたら許しませんわよ。近頃の魔法少女はターゲットが大きいお友達ですの。つまり魔法少女は大人の嗜みなのですわ」


「いや、うん、はい。すいません」


 余計な事を言ったのか、棍先を向けられて凄みを掛けられた。

 瞳は見えないけれども、全身から湧き上がる威圧感が凄い。


 確かに魔法少女という巨大マーケットを買い支えているのは美少女アニメ好きのおっさん達かもしれない。

 純粋に魔法少女に憧れる少女たちでは、円盤や馬鹿高いエロ風味散りばめた生々しいフィギュアを買うだけの経済力が足りていない。

 鵯彩里に言葉は正論と言って申し分ないだろう。


 そう心に言い聞かせておかないと危険な気がする。


「それでは、まずはルールを決めましょうかね」


 PvPをするとして、訓練なのだから明確なルールが必要だ。

 特にNOT THE GAMEで死ねば現実世界でも死ぬという仕様上、致命傷を負えば、与えれば、取り返しのつかない大事故になる。


 ここは仮想現実であって仮想現実とは言えない。

 死が現実とリンクする別世界なのだから。


「そうですわね。まずはこちらの提案をお話致しますわ」


 鵯彩里が口にしたルールは、大筋で妥当な内容だった。


 1、首を含む頭部、左胸への攻撃は禁止。

 2、体を貫通する威力、致命傷を与える攻撃は禁止。

 3、ステータスの状態が悪いになる程の損傷が起こった場合は訓練を終了とする。

 4、装備は耐力が上がる物を優先して装備し、力が上がる物は極力外す。

 5、訓練時間は最大5分とし、5分が過ぎた時点の状態で勝敗を決める。


「こちらはそれで問題無いが、勝敗を決めるなら勝った場合に何かあるのか?」


「そうですわね…。あまり考えていなかったですけれど、単純に貸し1ではいけませんこと?」


「貸し…貸しね…」


 貸しってのは受け手によってどうとでも拡大解釈出来る怖い言葉だ。

 しかし常識の範囲内で使うとすれば、貸しを作っておくのは悪くない。

 NOT THE GAMEでは【いつ】【何が】起こって【どんな】状況になるのか、推測する以上に何もする事が出来ないのだから。


「東雲さんとオイラはそれで良いか?」


「構わないよ」


「サリーと戦うのは気乗りしないが、わかったんだぞ」


『楽しそうな事してるにゃぁ。あたしもそっちのエリアが良かったにゃ』


 招木猫が羨ましそうな声を漏らす。

 確かに命懸けではない対人戦ってのは、ほんのちょっぴりワクワク感がある。

 今までは同じような魔物を狩り続けるばかりだったからな。


「開始地点は互いに姿を確認出来ない物陰から。開始の合図は俺の銃声で良いだろうか?」


「結構ですわ。開始のタイミングを決められる有利と、何処にいるのかを相手に知らせる不利のトレードですわね」


「その通りだよ。一応何分0秒からプラスマイナス5秒以内に撃つよ」


「了解しましたわ」


 鵯彩里の両親が俺とお話しする娘の姿を温かい目で見守っている。

 何だこのほっこりした空間は。

 殺伐とした、と思われるNOT THE GAMEの世界で、こんなほっこりが許されて良いのだろうか。


 この親子は結構イカレていると思うぜ。

 こんな状況になっても平常心と変わらない俺達も割とイカレてる側の人間なのかもしれないが。


 まあ、どうでもいいか。


 命を掛けずにPvPを経験出来るこの機会。

 存分に有効活用して勝利を勝ち取るとしようか。

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