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㉚勧誘

 さて、これからオイラの勧誘に入る。

 問題はどうやって勧誘するかだが、まずは無難に正面からいってみるか。


「扉も開けられないんじゃふべんだろう。俺達の仲間にならないか?」


「おいらは孤高の一匹狼なんだぞ。誰とも群れる気はないんだぞ」


「犬が狼を名乗るんじゃあないよ」


 正面からは駄目か。

 何かとっかかりを知っていそうな招木猫は、また扉の中なのか回線が遮断されている。

 あまり長時間勧誘するのも悪印象になりかねないから、ここは招木猫に頼らず早期決着してしまいたい。


 無難で駄目なら、褒めてみるか。


「オイラは優秀なわんわんおだから、是非とも仲間になって欲しいんだ。オイラには素晴らしい才能が幾つもあるからさ」


「ふむ…続けるんだぞ」


 褒められるのは嫌いじゃないのか、続きを促してきた。

 この線で攻めるのは、存外悪くないのかもしれない。


「ほら、オイラってあれじゃん?あのー、あれだよあれ。足がさ…短いじゃん?あとは…あれだ。野良犬にしては毛並みが整ってて身綺麗にしてるし。あとは、えーと…。東雲さん、他にオイラの良いところってある?」


「可愛くてもふもふだよ!」


「そう、それだよそれ。それしかない」


「少しも気持ちが入っていないんだぞ?まず褒めるべきは人智を超えるおいらの頭脳なんだぞ?この人間達は馬鹿なんだぞ?」


「人智は超えてないだろう」


「冷静にツッコミするんじゃあないんだぞ?おいらだって、それぐらいわかってるんだぞ?自分で言ってて悲しくなるんだぞ?だが、将来人智を超える可能性は秘めているのだぞ?」


「脳の大きさ的に、犬が人智を超えるのは、将来的にも不可能と言わざるを得ないよな」


「だから冷静にツッコミするんじゃあないんだぞ?おいら泣いちゃうんだぞ?」


 だって絶対的にありえない発言をするんだもの。


「人間は本気でおいらを仲間にする気がないんだぞ?少しも本気度が伝わって来ないんだぞ?」


「本気で仲間にしたいと思っているが?なあ、東雲さん」


「ああ、私は一生この子をもふもふしながら生きていきたい。亡骸になって大切にするよ」


「怖い怖い怖いんだぞ!?目が血走ってるんだぞ!?この人間はイカレているんだぞ?」


「イカレてるなんて単語を教えたのは誰だ?教えるならもっと美しい日本語を教えなさいよ」


 交渉は手詰まりか…。

 東雲鈴音が怯えさせてしまったから、一歩後退の難しい局面だ。

 この不利な状況で、どうすればオイラを仲間に出来るか考える。


 さてさて、どうするか。

 言うてオイラは犬だからな。

 人間と同じ切り口じゃあ通用しない訳で。


 あ―――。


「仲間になるなら、この硬い骨をやろう」


「仲間になるんだぞ。これからよろしくなんだぞ」


 買収は一瞬で完了した。

 犬はどれだけ賢くても骨の誘惑には抗えないのだ。

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