㉒推論
疑問と言えばもう一つ。
現実とNOT THE GAMEのNPCの行動が酷似していた点。
これは判断材料が足りていないので憶測にしてもお粗末な内容にしかならないだろう。
それでも考えるだけの意味はある。
きっかけは柊だ。
東雲鈴音と試練の扉を攻略後、ログアウトした俺は、NOT THE GAMEでスライムと戦った場所に立っていた。
理由を聞かれても【何となく】としか答えられない。
すると、柊が家から出てきて、『米を買いにスーパーへ行く』と口にした。
NOT THE GAMEのNPC柊が口にしたの同じ内容。
そして俺は【俺の意思で】柊の買い物に付き合った。
柊とした会話の内容は、NPC柊としたそれとは別の内容だった。
そこで俺は、柊とNPC柊の行動が一致したのは、偶然だったと、ほっと肩を撫で下ろした。
ように思える。
しかし帰り道。
コンビニの前で鮫島が齋藤に絡んでいる所に遭遇する。
これは状況的にもかなりの確度で一致していた。
NOT THE GAMEでは鮫島がNPCで齋藤はプレイヤー。
状況も台詞も既視感しか感じさせない内容だった。
俺が何の気なしに助けに入って事を収め、結果としてはNOT THE GAMEと異なる展開になった。
実際【齋藤が鮫島の腹を刺して殺してしまう】、なんて展開は、あり得なかったのだろうが―――。
さて、以上の事から仮説を立ててみよう。
『NOT THE GAMEのキャラクターは現実にいる人間と同一行動を取るように作られている』
これはありえないと言って良いだろう。
何故ならNOT THE GAMEには【プレイヤー】という不確定要因が存在するからだ。
今回で言えば、俺という存在は、少なくともNOT THE GAMEと別の行動を取っていて。
鮫島は齋藤に刺されず、補修を受けに学校へ向かっていった。
もしも全ての人間がNOT THE GAMEと同一行動を取るのであれば、俺は柊と物陰に隠れてやり過ごしていなければおかしい。
つまり現実をNOT THE GAMEと完全に一致させるのは、プレイヤーという存在がある以上不可能と言えるだろう。
では次の仮説。
『NOT THE GAMEのキャラクターは現実にいる人間が取るであろう行動を基にして作られている』
この方がまだ現実的だろうか。
これならばプレイヤーという不確定要因が入り込んでも、現実によく似た行動を取るのも頷ける。
【どんな技術で一体誰が何の為に】って疑問を、遥か彼方に退かしてしまえば、って条件付きだが―――。
【NOT THE GAMEは現実とリンクする】
この言葉の確信は、案外これなのかもしれない。
『プレイヤーは現実とNOT THE GAMEのリンクにおける不確定要素である』
これは確定として、ここまでの推論が仮に当たっていたとして、やはりこの疑問だけは外せない。
『現実とNOT THE GAMEの時間軸がずれていたとして【現在】の俺が【未来】にいる東雲鈴音の【現在】に接触した場合、果たして【未来】にいる東雲鈴音の【過去】は塗り替えられるのか』
俺がもしNOT THE GAMEより以前から東雲鈴音の友人だったとして。
招木猫と出掛けて戻った後のタイミングで。
NOT THE GAMEからログアウトした俺が【現在の】東雲鈴音と連絡を取り、二人が遊んでいる混ざって一緒に遊んだとして。
果たしてNOT THE GAMEにいる東雲鈴音は、俺も一緒に遊んだ【過去】記憶を持っているだろうか。
記憶としてだけではなく、体験として―――。
ありえない。
こればっかりはありえないだろう。
となれば、やはりこうだ。
『現実世界はNOT THE GAME以降から一人一人を主人公にした並行世界になっている』
非現実的。
されど濃厚。
ありえない。
ありえないけれど、ありえる。
最低限、論ずるに値する推測ではなかろうか。




