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ちょうど食べ終えたアイスの棒を、一応確認する。まあ、そう簡単に当たりなわけがなく、俺は棒をそのままごみ箱へと投げ捨てた。
「今回もはずれだったか」
背後からじいちゃんの声がした。
「安定にはずれだったよ。これ逆に当たった事ある人いないじゃねーの」
「ははは、そう簡単に当たってはこのわくわく感も味わえんだろう」
「ま、そーだけどさ」
「ああ、そうそう。アイス食べ終わったんなら、ちょっとお使い頼まれてくれんか」
「いいよ、どうせやることないし」
「ありがとなあ。園崎商店に、頼んでたものを取りに行くでけでいいんだ。場所わかるか?」
「えーっと確か、坂下ってまっすぐ行って、橋を右に曲がってすぐのとこだっけ」
「そうそう、そこだ。行ったことあるのか?」
「昨日の夕方、散歩行ったときに見た。オンボロの店だった」
「そうそう壊れかけの…ゴホン、まあ、場所がわかってるならいいんだ。頼んだぞ」
「はーい」
じいちゃんに頼まれたので、俺は出かける準備をする。近所だから、別に制服のままでいいか。園崎商店は歩いて10分ほどの場所にあるが、何となく自転車に乗りたい気分だったので乗ることにした俺は、玄関を出て左の縁側近くに停めてある自転車を押し、漕ぎ出す。気をつけてなー、と、じいちゃんの声が聞こえたので、はーい、と大きな声で返事をした。
俺がなぜ、父親ではなくじいちゃんと暮らしているのかというとそれは、約一か月前に遡る。
一か月程前、父親が死んだ。
ひき逃げだった。何処のだ誰かもわからないやつに、父親は殺された。犯人は未だにわかっておらず、一か月経った現在でも、事故現場には情報提供の看板が立てかけてあるそうだ。
父親の遺体は見るに堪えない程に損壊部分が激しく、事故現場には飛び出た内臓やどこの部位かもわからない肉塊が散乱しており、顔は原型を留めておらず、目玉がなかった。医者曰く、即死だったそうだ。これだけひどい亡骸だ、苦しまずに即死できたのであればそれは、父親にとってある意味の救いだったなと、俺は唯一の家族に対してひどく冷たい感情を持っていた。
父親の葬儀は、土砂降りの雨の中執り行われた。葬儀に、母親の姿はなかった。母にとって、父の存在は、死してなおも会いたくないものであったようだ。その事実を随分と前から分かってたはずだったのに、俺は少し、ほんの少し、悲しくなった。
葬儀が終わると俺を待っていてくれたのは、父方の祖父、通称じいちゃんだった。俺は心優しいじいちゃんに引き取ってもらえることになり、これを機にじいちゃんの実家がある、この村に引っ越してきた。
そして現在に至る。今はじいちゃんと家事を分担しながら生活をしている。
質素な生活だが、心優しいじいちゃんとの二人暮らしは、俺にとって大切な存在だ。




