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燃え尽きた灰から蘇るもの  作者: 庵ノ雲


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幕間:真ざまぁされた鈴木和馬のグラグラdays



―――


――


『やっはろー! キラキラな毎日を満喫してるかな~?』


突然だった。突如頭の中に響く甲高い声。


その声にオレは聞き覚えがあった。


――あの悪魔みたいなババアの声!


『誰がババアだっ! お姉さんよっ 私はっ』


頭の中から響く声に、オレは全身から鳥肌が立つのを感じた。


「お前……やっぱりお前が俺をこんな目に……!」


『ひっどぉ~い。せっかも元の世界に帰してあげたっていうのに~』


「何言ってんだよ!! この状況はお前のせいだろ!?」


オレは叫ぶように言うが、周りの人間は何も気づいていない。

いや違う――周りの人間の目には、オレじゃない奴が映っているのだ。


(そうだ――俺じゃないオレだっ)


偽物の……仮初めの鈴木和馬がいる。


そしてオレはその中で、何もできない存在として閉じ込められているのだ。


『偽物……ねぇ~? ど・こ・が、偽物なのかしら~?』


「ふざけんな!」


オレの怒りは収まらない。


コイツに散々殺されて生き返されて殺された地獄の怒りもあるが、

今の偽物の鈴木和馬の生活を見るだけの日々なんて……本当の地獄だ――


その頃、鈴木和馬の身体は体育の授業に出ていた。


体育の授業で活躍する、本当の和馬に偽物と揶揄されている和馬。

彼が走る。彼を囲む"偽物の和馬"の友人の姿が本当の和馬の目に映る。


(俺の身体……すごく足速くなってる……俺の身体じゃないみたいだ

 それに……なんだよ、周りのこいつらは……友達? 俺のトモダチ……?)


周囲からは歓声が上がり、誰もが"この和馬"を褒め称える。


「和馬くんすごーい!」「さすが運動神経抜群だねー!」


皆から注がれる称賛の視線。


それが全部偽物の和馬に向いていることを知った時、

オレの胸に湧いたものは怒りを超えて虚無感だった。


『お~怖い怖い。怒っちゃダメよ? 精神的に参っちゃうゾ?』


「黙れ! こんな事態に怒らずにいられるか……!」


『ふぅ~ん……それって嫉妬? それとも自己嫌悪?』


「なっ……!?」


――図星だった。


自分が置かれている状況に対する苛立ちや怒りだけでなく、

あのキラキラした偽物が、俺の人生を明らかに成功させてて、

幸せを享受していることへの嫉妬があったことは否定できなかった。


『ねぇねぇ〜 もし君があっち側だったらどうするつもりだったのぉ〜?』


女神フィリアの問いに一瞬答えに戸惑う。


――もし自分がアイツだったら。


誰がどう見ても、あの人生の方が楽しそうで満たされている。

確かにそれは認めざるを得ない事実だった。


だが同時に……それは俺が求めていたものではない。

俺はこんなキラキラした人生は求めない……はずなんだ……!


「……俺は……こんな人にチヤホヤされる人生は望んじゃ……」


『じゃあ何であっちの世界=異世界じゃ――

 あんな周りに人を侍らかしてはしゃいでたのさ~?』


その一言が胸に鋭く突き刺さる。


「っ……!!」


――図星だった。


そうだ……俺は異世界で力を得て、女どもを魅了して侍らかして抱いて喜んだ……


だが俺が得た力だっ! 俺の力で俺が何をしても良いだろうっ!


(それに……俺は努力をした……ちゃんとレベル上げに勤しんだんだ……!)


だが、ババア=フィリアがさらに畳み掛けてきた。


『気持ち良かったんだろう?自分が成功して?』


『なんの努力もせずに成功が約束されたような力が手に入ってさ?』


その言葉はまるで俺の過去をすべて見透かしているようだ。


『はっ 見透かしてんだよっ』


(やめてくれ……)


俺が目を背けたい真実を掘り返してくる。


『だから成功を望んだっ目立ちたかった、人を侍らかしかった、女の子を魅了で穢した』

『アリシアちゃんたちの人生を食い物にしたっ』

『全部全部お前のつまんない欲と妹ちゃんへのつまらない負い目からだろっ』


「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいっ!」


叫んでも声は届かない。

表の"俺"は涼しい顔で周りの連中に笑顔を振りまいている。


(どうして俺は……こんなに惨めな気持ちなんだ……)

(どうして俺は……こうまでして拒絶したいんだ……)


俺は偽物の自分が享受する成功を認めたくない理由を探した。

嫉妬しているだけなのをただただ認めない為だけに。


(だけど……これじゃない! これは俺が求めていた人生じゃないっ!)


「うるさい……」


自分を慰めることさえ許されないほどに追い詰められていく。


『ふぅーん……あっ!? 配信が始まるっ! じゃあ私、一旦帰るからねっ

 まっ "偽物"の生活見ながら爪でも噛んで頑張りなよ~ん?』


ババアは呆れたように言って――消えた。


(ふざけんなよ……!)

(なんでこんな俺がこんな思いをしなきゃならないんだ!)

(結局全部コイツが悪いんじゃないか!)


目の前にいる"俺"は相変わらず輝くような笑顔を振りまいている。


その顔を見るだけで吐き気がした。


******


―――


―――――


―――――――――――


教室の一角。


そこには数人の男女が集まり談笑していた。

男子3人、女子3人の計6人。

彼らの中心にいるのは当然のように和馬である。


その中の一人、小柄な茶髪の女の子――"佐倉 千佳"が微笑む。

その笑みはどこか控えめで恥ずかしげなものだが確かな想いを秘めていた。


(あいつ……和馬=偽物のこと好きなのか……!?)


千佳の偽物に対する行動は積極的ではないが――


さりげなく偽物の和馬の方に視線を向けては頬を赤らめている。

その仕草や視線から彼女の感情は誰が見ても明らかだった。


『へぇ~? あれは恋してる顔ねぇ。ねっ?』


唐突に脳内に響く甲高い声。女神フィリアである。


(うわっ……出てきたかババア……)


『誰がババアじゃっ』


反射的に心の中で悪態をつくとすぐに反応が返ってきた。

これ以上絡まれると面倒なので無視することにする。


だが――


『ねぇねぇ? 気にならないの~?』


『あの子のこと。"偽物"に好意持ってるっぽいけどさ~?』


無視できない言葉だった。


視線を向けると確かにそこには"和馬"を見る熱っぽい瞳がある。

それも……俺へ向けているのにそうじゃない感情を……だ。


「……偽物は偽物……俺じゃない。

 それに俺はクラスのヤツなんか殆ど知らないんだよっ」


と小さく呟くと、


『ふーん……そういえば、あの子、なんて名前なのさ?』


「佐倉……千佳」


口から勝手に出た。


佐倉千佳。小柄な体格に茶色のボブヘアーが特徴的なクラスメイト。

陽キャだが分け隔てない……よく教室でノートをまとめてた……。


『へぇ〜、千佳ちゃんねぇ~

 で……なんであんた――苗字じゃなくて名前知ってるのさ?』


(ぐ……)


フィリアがニヤつきながら聞いてくるのが頭の中でわかる。


『おやぁ〜? おかしいぞ〜?

 だってあんたはクラスの人間に興味ないんだよね~?』


その指摘にオレは押し黙る。


(…………)


『ふ~ん無言ね……ねぇねぇ~? もうひとつ聞いてもいいかな~?』


「なんだよ……」


『あんたさー ホントはあの子のこと気にしてたんじゃないのぉ~?』


(な――なにぃっ!?)


「そんなわけないだろっ」


思わず語気が強くなる。


(俺は誰も興味なんかない! ましてやクラスの女なんて――)


だけど――その反応が嘘ではない証拠でもあった。


(くそっ……このババア……分かってて聞いてきてるな!?)


『ふぅ~ん? そっかぁ~』


(なんだよ……!? 言いたいことがあるならハッキリ言えよ!!)


『まぁいいや。じゃあ次の質問ね?』


(次だぁ?)


『あの子……偽物の和馬ちゃんのことが好きだよね~』


(それは見ればわかるだろ!)


『でもさ……それはあんたじゃないんだよ?』


(――は?)


フィリアの一言が妙な響きを帯びる。


『千佳ちゃんはさーあんたじゃなくて、偽物ちゃんが好きなんだよー』


(…………)


『つまり――千佳ちゃんにとっての"和馬"は偽物ちゃんなワケで……

 アンタはどうでもいいってことよね〜?』


「は……はぁ!?」


(ちょ……ちょっと待て!! なんでそうなるっ

 佐倉が俺を好きならっ 俺は俺なんだっ 俺を好きって事だろっ!)


『いやいや違うでしょ? だって考えてごらん?

 ココで"和馬"って呼ばれてるのは偽物ちゃんなんだしさ~?』


(それは……そうだけど……っ)


確かに異世界に召喚される前の俺は、佐倉と話した事は無い。

ただ、クラスの事をしっかりやるヤツだなぁって気になってただけだ……


(でも、佐倉が俺が好きなら偽物も本物も無いだろ?

 俺が鈴木和馬なんだから、俺相手でも好きになるってことだろう?)


そう思うと同時に――胸の奥がチクリと痛んだ。何か引っかかる。


その痛みは"佐倉が好きだ"という感情によるものなのか?

それとも……偽物の存在による劣等感や焦燥感から来る痛みなのか?


「だとしても……偽物は偽物……俺は……俺の生活がしたいんだっ!」

「こんなキラキラした……みんなにチヤホヤされるような生活じゃなくて……!」

「もっと俺らしい……俺らしく生きて――」

『ふ〜ん? あっ! 配信始まるぞ〜じゃあね〜』


フィリアは言いたいことだけ言ってまた姿を消す――


(おいっ 待てっ!)



(くそ……勝手すぎるっ あのババア……)


そんな事を考えながらも視界の中では"偽物の俺"がクラスメイトと談笑を続けている。


今話している相手は――例の茶髪で小柄な彼女――佐倉千佳。


千佳は照れ臭そうに微笑むと偽物のオレの方をチラッと見る。

その眼差しには間違いなく熱い感情が籠っていた――


恋慕。


(俺に向けてる視線なのに……)

(これじゃあ佐倉は偽物に惚れているようにしか見えないな……)


胸の中にモヤっとしたものが広がる。

これは嫉妬か? それとも単なる悔しさか――


――自分自身への情けなさと屈辱。


(やっぱり佐倉は俺じゃなくて"偽物"の事が好きなんだな……)


そう思うと余計に悔しくなってくる。

俺は……あんな嘘くさい奴に負けてるのか――?


いや違う。


確かに偽物の俺は完璧かもしれない。

だがそれは俺じゃない。


俺の本当の力じゃないんだ――


******


――


――


――


数日経っても何も変わらなかった。


今日も偽物はクラス内で注目を集め続ける。


女子達に囲まれては楽しそうに話している様子はまるでスターそのものだ。


しかも――時折千佳の視線を感じることがある。

その熱い視線は間違いなく偽物に向けられていた。


(やっぱり……佐倉は俺のこと見てないんだな……)


(いや佐倉だけじゃない……親も、美咲も、名前も知らない友達も……だ)


嫉妬とも違う――複雑な感情が胸を締め付ける。



――俺の居た世界での鈴木和馬とは偽物のことを指しているのだと――



そう理解した瞬間、足元の地面が崩れ去っていく感覚を覚えた。


目の前で繰り広げられる光景――


仮初の「和馬」がクラスメイトに囲まれ談笑している。


その鈴木和馬の輪の中には自宅での親や妹の美咲も含まれている。


みんな笑顔だ。あんな笑顔は俺に向いていたことなど一度もない。


「ふふっ……和馬くん、最近明るくなったよね〜」


「そうね、最初は大人しかったけど今じゃクラスの人気者だもんねっ」


「お兄ちゃん、最近付き合い良くなって楽しい~」


「和馬ったら……いきなり変わって怖かったけど、今は普通に見えるわ」


皆が口々に言う言葉には、俺がかつて感じた孤独や疎外感など微塵も感じられない。


(これが俺の望んだ生活……?)


違う。


違うと強く思うのに、それを否定する声すら俺は出せないからだ。


足元が崩れる。自分の人生が完全に乗っ取られた気がする。



『ふぅ~ん? やっと気づいたか~?』


不意に頭の中に響く耳障りな声。


女神フィリア――いや、いつも通りババアと呼んだ方がしっくりくる。


俺がこの状況を"初めて飲み込めた"のを察して声をかけてきやがった。


『ねぇねぇ~元クズ勇者(偽)? どう? "現実"を知った気分はぁ~?』


(くそ……)


『あんたの居た世界での"鈴木和馬"ってもう"偽物"のコトなんだねぇ〜?』


ババアは心底愉快そうに嗤いながら言う。


「俺が……俺が鈴木和馬なんだよ!この世界の人間にとっての鈴木和馬は俺のはずだ!」


『……はぁ?』


「偽物と入れ替えさせてくれ!! アイツじゃなくて俺がそこにいるべきなんだ!!」


『ぷっ……あっはっはっはっはっはっ!!』


盛大な嘲笑と共に彼女が現れた。白いワンピースに銀の髪――相変わらず目障りだ。


『あーっはっはっはっ!! アンタなに勘違いしてんのよっ!』


「勘違いだと!?」と叫びたいのを堪えて睨みつけた。


『いいかい? クズ…… あんたの居た世界では、

 もう"鈴木和馬"って言えばあの偽物くんのことなの!』


「だからっ……それは誤解だろ!」と噛みつこうとするが、


『いいえっ"誤解"じゃなくて"確定事実"さ!』


ババアの声が鋭く俺を貫く。


『だってさ〜 今あそこでクラスメイトにも家族にも愛されてるのは偽物くんなんだよね〜?』


「だけど俺が……本物の俺がそこにいるべきじゃないのかよっ……!」


『はぁ〜? まだわかんないわけ? 本物だと思ってるのはアンタだけ……』


『だって現に――あんたは誰にも認識されてないんだよ?』


「はぁ……? あ……あぁ……!?」


『だから〜 あんたは本物の鈴木和馬なのに……』


『本物だったけど偽物の和馬ですらなくなったわけ』


『誰にも気づかれず居ることすら知られない"存在"のない"存在"なんだよ〜?』


ババアの言葉が頭の中で反響する――


本物だったのに偽物ですらナイ。


存在しない存在。


俺は――俺がいた筈の世界で――影にすらなっていない俺になっていた。


---


(くそっ……こんなはずじゃ……!)


『悔しいよねぇ~ でもしょうがないじゃん?

 アンタは異世界で暴れた挙句 あのクソみたいな悪事を繰り返してたんだから』


「それでも……俺は俺だろ……」


『はいはい……じゃあ聞くけどさ 今のアンタに価値はあると思う?』


「――っ」


『ねぇよ。だって誰もあんたのこと見てくれない。誰もあんたに話しかけない。』


『存在はしてる。けど存在してるのを誰にも知ってもらえないんだよ。アンタは』


ババアの言葉が残酷に突き刺さる。


(俺は……俺はただ……誰かに認められたかっただけなのに……)


それが叶わないどころか――俺は"存在しない"ことにされていた。


「……ふざけるな!! 偽物のアイツより俺の方が――!!」


『何ができるっていうのさ? 今まで他人の気持ちを考えずに傷つけてきたアンタが』


「そ……それは……」


『ほらぁ〜 今更言い返すこともできないんでしょ〜?』


『あんたはさ……結局いまだ何も気づいてないから。反省もしてない。

 ただ自分の思い通りにならないから騒いでるだけ』


(くっ……)


『あっ あとねー この状況ってさ』


(な……なんだよ……)


『アリシアちゃんの希望なの〜!』


「は? え? アリシア……!?」


『そっ "あの"アリシアちゃん! 異世界であんたが散々痛めつけた私の大切な子』


「はぁ……!? なんで……」


『そりゃあね〜 あんたが異世界でやった酷いことの数々……』


『アリシアちゃんにすれば……そりゃ許せるわけないじゃん?』


「――っ」


『彼女の奪われ続けてた人生を考えたことあった? きっとないだろうねぇ〜』


ババアは肩を揺らして嘲るように笑う――


『だからね これは彼女が望んだのはあんたへの"因果応報"ってやつなの』


――アリシアの名が出て思考が止まる。


頭が真っ白になりそうだった。


おそらく……アリシアと何か繋がりがある聖女が、

俺を短剣で刺し 恨みと憎しみに満ちた眼差しを向けていた。


そしてあの白い世界で――


俺を愛していたはずのアリシアに何度も何度も、

フィリアの授けた勇者の王者の剣で剣で斬られ 貫かれ切り捨てられ――

絶え間ない激痛と苦痛の中で俺は死んでは生き返らせられた。


あれを思い出そうとすると――全身の皮膚が粟立つ。

身体が震えて 喉の奥から声にならない呻き声が漏れそうになる。


――あれだけの暴力に晒されて まだ俺に復讐したいのか。


そう考えると 自然と口から声が漏れていた。


「ふざけるな……」


『ふざけてなんていないよ〜?』


ババアの声色の温度が一段下がる。表情は……初めて見る無の表情だった。

口調だけが変わらないのが逆に恐ろしくなる。


『アンタにどんな暴力を振るったところで アリシアちゃんの心が満たされることはない』


『"尊厳"を踏みにじられた痛みは、どれだけ相手を殴っても癒されないの。

 せいぜい周りの人の溜飲が下がるだけかしらね』


『だけど……だからって、受けた痛み以上に尊厳を踏みにじり続けたい、

 アリシアちゃんたちの受けた何倍もの人生の苦しみをあんたにもっていうの希望でね――』


『だから……"偽物"をあんたの世界に送り込んだのよ』


『あんたが居るべきだった場所で、生まれ変わったあんたとして生活して

 周りから認められ、そこに本物だったあんたが戻ってきて閉じ込められた。

 そのまま"元偽物"の輝ける人生を"元偽物"の鈴木和馬の人生終わるまで見続ける』


『それがアリシアちゃんが決めた、あんたへの罰ってことなの』


(俺は……偽物の人生を……俺の人生を乗っ取った偽物の……)


(死ぬまで……? 俺だった身体が……偽物の身体になったまま死ぬまで……?)


---


彼は未だ自らの行いを懺悔していない。いや……そもそも反省していないのだ。

人の心を思いやる機微が未熟ゆえに。彼はもっとソレを世間で身につける必要があった。


しかし労せず手にした能力で得た仮初の成功により――


目立つ存在でなくとも少なくても無害の少年だった彼は怪物となり、

怪物となった彼の心は人としてではなく、怪物としての抜け殻のまま絶望し蹲り続けた。


自分の身体であった、いまや本物の鈴木和馬となった"元偽物"の身体の中の……魂の牢獄で。


彼が蹲って嗚咽を漏らし続ける最中、女神フィリアの姿はいつの間にか消えていた。


----------------------------------------------


女神フィリアは神域である白い空間で横たわり、肩肘をつきながらテレビを見ていた。


彼女のお気に入りのスナック菓子「ス○ーン・海○のとりこ味」を

口にほおり投げて咀嚼し、冷えたエ○スビールで喉を洗い流す。


そして深く息を吐き出した。

テレビには元偽物の中で蹲る和馬が映っている。


彼の憔悴し切った姿を見つめながらフィリアはひとりごちる。


「やっぱり……アリシアちゃんと違って心が弱すぎねぇ。

 これじゃたまに発破をかけに行かなきゃ直ぐに潰れるじゃない。

 死ぬまで苦しめてもらわないと困るんだけどなぁ……」


彼女は苦笑交じりに呟きつつ、視線を少し遠くへ向けた。

今回の出来事では色々と"借り"ができてしまったのだ。


「全く……あの世界には無茶な頼み事しちゃったわねぇ。

 いつもはだいたい沢山人がいる世界だし、普段はタダで人を貸してくれるけれど、

 今回ばかりは因果を弄った分だけ何か目に見える形でお礼をしないといけないなぁ」


そう言ってフィリアは一瞬思案するような顔を見せたが、

すぐに柔らかく微笑む。


「さてと……アル君とリーンちゃんはどうなったかな?

 今度はそっちの様子を見ておかないとね♪」


ぽつりと呟きながら彼女はテレビのチャンネルを切り替えるように画面を動かした。


そこに映し出されたのは――


---


舞台は異世界エイリュシオン帝国。


その帝都の宮廷謁見場大広間。


そこは今まさに女神によって選ばれた真の勇者と聖女が、

魔の創造神であり真の魔王であるガルグリムと命運を賭けた最終決戦が始まろうとしていた。


フィリアはゆっくりとその光景を見つめながら呟く。


「ああ~ ガルのやつ 怒ってるわねぇ……。

 世界線Aが消えてあっちのガルが統合されたんだもんねぇ……。

 私がなにしたか知って、過去最高の怒り具合よぉ。まあでも……大丈夫♪」


そう言葉を続けながら 彼女は、両手で神具「聖輝」を構える真の勇者アルフォンスと

聖女リーンの姿を見据えた。


「ふふっ……ねっふたりとも♪」


フィリアは楽しそうに笑う。


「ガルに勝ったら良いご褒美をあげちゃうからね♪」


そう言うと 再びエ○スビールに口をつけた―――。



真の勇者アルフォンスと女神の遣わす聖女リーン、

真の魔王にして魔の創造神ガルグリムとの雌雄を決す戦いの結末が迫る!


待てっ! 次回っ!!


うっひゃあ~まぁた長くなっちまったぞっ オラァおでれえたなぁ~~

※登場人物の動きに変な箇所があるかもしれません。教えて頂けたら幸いです。


私はお酒は飲めますが普段は飲まないです。

「ス○ーン・海○のとりこ味」は瞬で胃の中に入ります。

悪ふざけが過ぎてしまいました。すいません。


エピローグのひとつとして、クズマはあと一回の登場がございます。まあ経過程度ですが。

今作はエピローグのあとにエンディングを予定しております。

恐らくあと3話といったところでしょうか。。。悪ふざけしたら4~5話になるかも。

次回は真面目に「バトルファンタジー」です。


ep44話に燃え尽きた灰から蘇るものイメージイラスト集UPしてます。

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