表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
燃え尽きた灰から蘇るもの  作者: 庵ノ雲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/76

2アリシア1リーン ~炸裂する女神の32文ロケット砲

……私は今、どこにいるんだろう……。


白い空間。何も見えない。音もない。


私の身体は……確か……聖女様に……燃やされて……灰になって……


ああ、そうだ。最後に見たのは聖女様の顔。でもその瞳の奥には、

どこか見覚えのある感情が揺れていた。あれは……なんだろう?


まるで私の内に蠢く……ナニかのような……


---


この白い世界に飛ばされた私は、女神フィリア様がとお会いした。

銀髪の美しい女神フィリア様。お会いした時は聖女様に似てると思いました。


……似ていて当然なのです。


だって聖女様は未来の私がフィリア様の御力で生まれ変わった姿なのですから。

その事を知った今、改めて考えると確かに聖女様と私は似ていた気がします。


そう……私はフィリア様から全てを教えて頂きました。


聖女様が……いや10年後の彼女が魅了に抗えず……カズマに媚び……

アルフォンス様の腕を……顔を……焼いてしまったのは私と同じ。


あの時の絶望。罪悪感。自分で自分を許せない気持ちは共にある原罪。

だけど彼女は私よりも苦しんでいた。


10年間……アルフォンス様の死を知り、何もかもを憎み続けた日々。

そして……カズマへの世界への復讐の炎で……帝都を焼き尽くした、その人生を。


---


そのように……私が目の前で起きている事の現実逃避をしていたら、

フィリア様が私の前に立たれて、腰に両手を当ててニコリと微笑まれた。


『アリシアちゃん? 何難しい顔してるのよ。可愛いのにもったいないわよ?』


その笑顔に裏などないと分かります。

深い慈愛と……私への強い思いやりが伝わります。


(でも……フィリア様のお優しい慈愛の御心は伝わるのだけど)


その瞬間だった。修復されたカズマの身体がビクリと震え、次の瞬間――


「さっきから何度も何度も殺しやがってっっ!

 痛くて死んじまうだろうっ! この女神様気取りのババァが!!」


その醜い叫び声が響き渡った。私は思わず顔を背けたくなる。

カズマが女神フィリア様に向かって吠えている。


『………』ピキッッ……


フィリア様の表情が一瞬だけ険しくなった。ああ青筋をたててらっしゃる。怖い……


その瞬間――ボウッ……ビュンッッッ!!!


女神フィリア様の目から放たれた白い光線がカズマの喉を貫く。


「グフッ……カハッ……!?」


声にならない呻きを漏らしながら地面に転がるカズマ。

息ができずに苦悶の表情を浮かべている。あんな状態では長くは持たないはずだ。


しかしフィリア様は何も言わずにカズマを見下ろし続ける。


(ああ……これが本当の女神の怒りなんだ……)


白い空間にはただ静寂だけが広がっている。そしてカズマは"また"事切れてしまった。

その様子を呆然と見ていた私にフィリア様が柔らかな笑みを向けてくる。


『どう? もう怖くないでしょう?』


私は戸惑いつつも小さく頷く。


「はい……」


フィリア様はしばらく考え込んだ後、


『うーん、元気ないなぁ~ そうだ! あなたもコイツを殴ってみる? んん?』


と、満面の笑みで提案してくださった。



「はあ……え…ええ?」


思わず……女神様って……と思い固まってしまいました。


『恨みあるんでしょ?スッキリしたら?』


「え……そ…それは……」


と口ごもる私にフィリア様はお優しく語りかけてくださる。


『大丈夫、この世界なら死なせちゃっても生き返るから、ほら遠慮しないで?』


……私は無言となる。


ええ……そうですよね。知ってます。先ほどから見ておりますから。


『武器要る? この神具を使う? この剣オリハルコン製で鳥をモチーフにした剣柄が』


と話していらっしゃる裏で私は思う。


(殺したい)


殺したい。いくらでも。何度でも。


(でも……)


このクズを殺したい気持ちは溢れ出ている。

だけど……カズマに……ずっと抱かれていた悍ましい記憶が……

コイツの身体の感触が……それらが私の記憶に染みついているのだ。


今こうしてフィリア様と対面していても、カズマへの激しい憎しみは募る一方なのに、

魅了から解放された私は……今は……アイツに近づくことができない。


もしも……今この場であいつに触れたら……私は吐いてしまうかもしれない。

もう二度とアイツには無様を晒したくない。女神様にも迷惑をかけたくない……


フィリア様の言う通りに私は恨みを晴らしたい。でも身体が思うように動かない。

私は……私は……カズマを自分の手で葬りたいのに。


その思考の最中――


『ねえ……アリシアちゃん……』


フィリア様が再び声を掛けてくれる。


『吐いたっていいわよ。そんなの気にしなくていいからっ』


フィリア様……私の心を……。


その言葉には優しさがあった。私の気持ちを察してくれている。

女神フィリア様……まさに慈愛の女神様……


私は……もう我慢できなくなった。その瞬間――


「うおおぉぉぉぉっっ! 俺がっ!! 何したってんだぁぁぁっ!」


突然叫び出したカズマの声に驚きつつも私は拳を握りしめる。

この男が……あの日から私の人生を滅茶苦茶にした元凶なのだ。


「私は……」


そして意を決して私は一歩前へ出る。


「私は……あなたを絶対に許さないっ!」


怒りと憎しみが入り混じる感情に押されてツルギを掴む。


フィリア様が用意してくれた神具のツルギ。剣柄の鳥の意匠が素晴らしいツルギ。


そして私はカズマに一歩、また一歩と歩み寄っていく……


----------------------------------------------


俺は恐怖で震えるしかなかった。


目の前には聖女に似たババアの厭らしい笑顔があった。

眼が笑ってない。瞳の奥で何かが……何かが蠢いている。


聖女に殺された俺は気が付いたらこの世界にいた。

そして何度も何度も、何度も何度もこのハバアに殺されては治されている。


『ふふ……大丈夫よ? 息ができるようにしてあげるわ♪』


ババアの白い指が俺の首元に触れた瞬間―「グハッ!?」


喉が焼けるような痛みが走る。

同時に息苦しさが消え去り、空気を求めて肺が大きく膨らむ。


(また……こ……殺されてたのか……そして……修復されている……?)


「ゲホッ! ゲホッ!」


咳き込みながら必死に呼吸する。すると突然視界が歪み始めた。


(今度は……どんな殺し方で俺を……)


「……んぐっ!?」


腹部から焼けるような熱さが広がる。いや熱いというより……「燃えている」?


(ああ……今度は喉を焼いて愉しむのかよっ……)


そうした地獄が延々と続いた。不思議な事に時間の経過を感じない。

そう感じないのだ。時間の経過を感じない事が分かる。それがまた怖い。


そして今……アリシアが俺に近づいてくる。ああ……やはり"似ている"。


聖女とはコイツ…………俺の意識は……命はまた途絶えた……。


----------------------------------------------


白い世界。


カズマが顔を恐怖で歪ませボロボロになっている。


(ああ……ついに……)


私は恍惚としながらカズマを見下ろす。かつて彼に媚びていた時とは違う。

今は晴れやかに満ちた"恍惚"とした顔をしているはずだ。


「……これが私の……彼女の10年の恨みよ」


口から漏れた言葉に力が漲る。


女神フィリア様から授かった神具の剣。その刃がカズマの身体を抉り続けた。


何度も。何度も。何度でも。


「……ぐ…ああ……」


呻く声が上がるたびに、私の胸の奥で沸き起こっていた憎悪が

少しずつ浄化されていくように感じた。でも同時に……罪悪感が積まれていく。


カズマの身体は延々と傷ついていく。皮膚が裂け、血が飛び散る。で

もこの白い空間では死んで終わりはない。フィリア様の御力によって修復されるのだから。


『アリシアちゃん、まだやり足りないの?』


フィリア様の柔らかな声が聞こえる。私は剣を握りしめたまま、大きく息を吐いた。


「まだ……全然足りません……でも……もう良いです」


(もう……これ以上は……)


私は思った。もう晴れやかな気持ちでいられる時は終わった。

まだまだいくらでも殺せるし殺したい。でも私が本当に私で無くなってしまう。


私の心の中を占めているのは"アルフォンス様"――大切な人のことだけだ。

だから私はここで止めるべきだと思う。私の心をこれ以上濁らせたくない。


「もう……十分です」


私は女神フィリア様に向かって返事を返す。手を見つめればまだ微かに震えていた。


(まだこんなに憎しみが残っているのに……)


でも……それ以上にアルフォンス様に会いたいと思ってしまった。

彼の笑顔を見たいと。その再会に澱みを増やして会いたくは無い。彼女の為にも。


(もう十分……これ以上……私は壊れたくない)


「もう終わりにしましょう。女神フィリア様」


『……うん』


フィリア様はゆっくりと私に向き直った。その顔には一抹の寂しささえ漂っている。


『そうだね。これからアリシアちゃんは"元いた世界線"のリーンちゃんとひとつになるんだもんね』


女神の言葉に私は深く頷く。その言葉は私の胸にしっかりと刻まれた。


(リーン……10年先のアリシア……私…あなたとひとつになるんだ……)


そう思った瞬間――私の心に風が舞い始める。それは優しく、温かい風だった。


「うぅ……」


呻き声が耳に入った。カズマの修復が始まっていた。

顔を地面につけて息も絶え絶えにこちらを見ている。その目は恐怖と苦痛に満ちていて……


『まだアリシアちゃん達がされた事の怒りは解消してないけど……ココはもう良いか』


『"次は"最後の罰で反省しなっっっ!!』


女神フィリア様が言った瞬間――飛んだ――低空飛行で飛び蹴りが放たれたっ!


なんて美しいフォルム。


私が幼少の頃に見た、アルフォンス様の御父様であるゼノおじ様が、

奥様のカミーラおば様に放たれた飛び蹴りよりも美しい……


『32文ロケット砲っっっ!!!』


フィリア様が放たれた飛び蹴りで、カズマの身体が宙を舞った。


「があぁぁっ!?」


ゴキゴキッと嫌な音が響く。カズマの骨が折れる音だ。

私は思わず目を伏せる。でも……どこか清々しい気持ちになった。


(やっと……終わった……)


私のと彼女の10年越しの復讐……これで"少しだけ"留飲は下がる。

そう思えるようになった。


そして――


「ぐあぁぁっっ!?」ドォンッ!!


轟音と共にカズマが遠くへ吹き飛ばされていく。

白い世界の果てにある見えない壁まで飛ばされ、壁にぶつかると衝撃が走った。

壁がひび割れ、ガラスのように崩れ落ちて彼は消えた。


まるで虚空の彼方へ吸い込まれるように。


「はあ……はあ……」


息遣いだけが残る。カズマの姿はもう見えない。


『ふう……』


フィリア様がタオルを取り出し額を拭う仕草をする。

そのタオルは一体どこから出したのだろうか?

不思議に思いながらも私は尋ねる。


「……それで……これから……」


私の言葉にフィリア様が振り返り微笑んだ。


『じゃあ既に説明したけど、これからあなたは"この世界"の1年前に遡って……

 あちらの世界から来たアリシアちゃん――聖女リーンちゃんとひとつになる』


「はい……お聞きしました」


『これは別々の人間の融合じゃなくて……別れた世界のあなた達がひとつになるだけなの。


肉体はアリシアちゃんの方から私の因子が多く入った身体になるけど……

アルフォンスくんに会うならその方がいいんでしょう?』


私の心の中で彼女が答えているのが分かった。


(その通りです……)


私は大きく息を吸い込んで返事をする。


「はい……お心遣いありがとうございます」


(アルフォンス様に会うなら……この穢れた身体じゃない身体で……)


女神フィリア様が私の返事に頷き、話を続けてくださる。


『アルくんなら、アリシアちゃんのままでも気にしないって言うと思うけど……

 まあ、あなた達の気持ちは分かるわ。それでね……』


そう言いながらフィリア様が少し考える素振りを見せて続ける。


『そう、あちらの世界の元アリシアちゃんとあなたがひとつになると……

 私はあちらの世界線を、一時的にこちらの世界線から切り離せるの』


「世界線を……一時的に切り離すのですか?」


『ええ』


フィリア様が柔らかく微笑む。その笑みは安堵と優しさを含んでいる。


『そうすると、あなた達はリーンちゃんとアリシアちゃんとして……

 互いに違う立場になり続ける円環……ループから解き放たれるの』


正直……少ししか意味は分からない。でも、私は胸が高鳴った。

永遠に続くように思えた憎しみと苦しみが終わるということなのだろう……


『それで』


フィリア様が再び話を続けながら私に顔を向ける。


『こちらの世界を主軸に変えれるから……あちらの世界もこっちに吸収されて……

 あちらのガルグリムの天下は無くなるわ』


(ガルグリム……あの怖ろしい魔の創造神……)


心の中でその名が反芻される。見ているだけだったが四肢の無い身体は恐ろしかった。


『あとはアルくんとリーンちゃんが、こっちのガルグリムを倒しておしまいってわけよ』


フィリア様が笑いながら言う。その姿には自信と安心感があって……

私は思わず頬が緩んでしまった。アルフォンス様とリーン……私が共に頑張れるんだ。


考えただけで嬉しくなる。


「アルフォンス様……」彼の名を呟くだけで胸が締め付けられる想いに包まれた。


『ふふ……ほんと君達って相思相愛よね?』


フィリア様がクスクスと笑った。


『さっきの戦いの時もそうだし。ふたりはすごく信頼してた。

 アルくんはリーンちゃんとアリシアちゃんを同じ女の子に見えてたみたい

 無意識で気付いているのかもしれないわね』


「……はい」


私は小さく頷く。確かに……リーンさんは本気で戦っていた。

それはアリシアとしてのアルフォンス様への愛情の表れなのだろう。

そして……これから私もリーンとして……


「私にとって、アルフォンス様はとても大切な人ですから……」


そう答えるとフィリア様が優しく微笑んでくれた。


『うん……いい表情してるわよ』


そんな声が聞こえたので私は恥ずかしくなり俯いた。

それでも嬉しさの方が大きくて自然と顔がニヤけてしまう。


『さて……そろそろあなたを過去へ送らないと』


フィリア様が言った。私はハッと気づいて顔を上げると尋ねた。


「はいっ……あ…そう言えばリーンさんと……

 もうひとりの私となった後、アルフォンス様をどうやって探せば……」


アルフォンス様の場所はなんとなくだが知ってはいる。

だけど急いで確実に見つけないとアルフォンス様の身に危険が迫ってしまう。


そう言っていたが、もし自分がアルフォンスを探しに行ったらどうなるんだろう?

そんな疑問が浮かんできて思わず聞いてしまった。しかし……フィリア様の答えは簡潔だった。


『大丈夫よ~私の勘……じゃなくて、

 啓示の記憶があるからリーンちゃんは迷わないから』


「え? えぇ……?」


困惑した様子を見せているとフィリア様はクスクスと笑っていた。


『元のリーンちゃんに私の啓示の記憶があるから大丈夫なのよ』


「分かりました……」


啓示の記憶があるから……どういう意味なのかは良くわからないけれど……

なんとなく伝わってくるものがあったので納得して頷いた。


『それで、アリシアちゃんにお願いがあるんだけど……』


フィリア様は少し申し訳なさそうな顔をして言葉を続けた。


『私が手出し出来るのはここまでだから……あとの事はお願いね』


その言葉に私は力強く返事をする。


「はい、必ずアルフォンス様と魔王ガルグリムを倒します!」


『よろしくね♪』


そう言って微笑むフィリア様を見て私も安心することができた。


(アルフォンス様に……もう一度会うんだ……たとえその後がお別れでも)


「そういえば……フィリア様はどうして私にそこまで親切にしてくださるのですか?

 それに今回のことって魔王に対しては反則だったんじや……」


ふと思い浮かんだ疑問を投げかけると、

女神フィリア様は少しだけ驚いた表情を見せたあとすぐに答えてくれた。


『ガルグリムはねぇ~ 確かに今回の件に関しては今回ちょっとだけ、

 反則ギリギリだったかなーって思うけど……あんまり好きじゃないからね……』


『そもそも何回も負け続けているのに手を出してくるし、

 私が魔族の存在も認めてるのに、アイツは人間を殺そうとするしさ~』


『だいたい負けて力を溜めて顕現してを繰り返すアイツよりも、

 私のほうが強いのよ? だってずっと勝ち続けて力もたっぷりあるものっ!』


『だから良いのよっ 今回くらいは私がズルしてもねっ

 それにクズのせいっていう不可抗力でもあったしねっ!』


フィリア様のいきなりの怒涛のお言葉に思わず黙り込んでしまった。


もしかしたら……バツが悪いと思ってらしゃるのかもしれない。

ああっジト目をしてらっしゃる……マズイです……


『怒らないわよ……あと何であなたちに優しいかについてだけど……

 アリシアちゃんとアルくんは、私の大事な眷属なんだから当然のことよ』


『他の人間種と違ってね……』


そう言うフィリア様の横顔は何処か悲しげで寂しさを感じさせるものがあった。

だからなのか思わず問いかけてみたくなったのだと思う……


「あの……それってどういう意味ですか?」


そう尋ねるとフィリア様は苦笑いをしながら応じてくれた。


『私はね……滅びかけない限りは人間種にあまり干渉するつもりはないの』


「え?」


予想外の返答に戸惑っているとフィリア様はさらに続けた。


『人間種は私が生み出した存在だけどね……』


そう言って少し躊躇うような素振りを見せたものの意を決したように語ってくれた。


『今は人間種に私の眷属の因子はとても薄く少ないの……』


「少ないのですか?」


私の問いかけにフィリア様は悲しそうに頷いた。


『そう。だから管理する存在って感覚が強かった……』


「管理する存在ですか……?」


『ええ。だけどね……アルフォンスくんとアリシアちゃんは別よ』


フィリア様が真面目な表情になって話を続ける。


『アルフォンスくんは勇者になれるぐらい濃い因子を持っているし

 アリシアちゃんは聖女の依り代になるほどだから……』


「???」


突然出てきた単語に戸惑っているとフィリア様は微笑みながら答えてくれた。


『要は先祖返りしたようなものね』


(先祖返り……)


よく分からない単語ではあったが理解できたような気がする。


『だからね……二人は娘と息子みたいな感じなの……』


そう言ってフィリア様は少し照れ臭そうに笑った。


『もちろん愛しているわよ~?』


「は、はいぃぃ」


フィリア様の真っ直ぐな言葉に照れてしまい変な声が出てしまったけれど構わずに話を聞いた。


『だから……愛する家族の為なら何でもするの』


そう言った後フィリア様は優しく微笑んでくれた。


その笑顔を見て心から感謝している気持ちが溢れてくるのが分かった。


「ありがとうございます……!」


改めてお礼を言うとフィリア様は嬉しそうに笑ってくれた。


『ふふ……アリシアちゃん本当に可愛いわねぇ』


「そっそんなことありませんよぉ」


褒められて照れてしまい慌てて否定するとフィリア様はクスクスと笑っていた。


『さてと……それじゃあそろそろ時間みたいだから送るわね』


「はい……」


「最後に……」私はフィリア様に向き合って言う。


「本当にありがとうございました……」


深々と頭を下げると女神フィリア様は優しく微笑みかけてくれた。


『うんっ さぁ行ってらっしゃい!』


フィリア様がそういうと同時に私の足元から眩い光が溢れてきた。


その光によって視界が遮られる中でフィリア様の声だけが聞こえてきた。


『頑張るのよ! アリシアちゃん!!』


その言葉に返事をしようと口を開いた瞬間―――


―――――


―――――


―――――


***


―――――


―――――


―――――


***


―――――


―――――


―――――



白い空間に浮かぶ女神フィリアは、遠く離れた現世を透視するかのように、

優雅な指先を虚空に滑らせていた。


金色の瞳に映るのは帝都ではなく、森の奥深くを彷徨う隻眼隻腕の影だ。


(可哀そうな姿……でも、アルくんならきっと大丈夫)


フィリアは静かに微笑む。しかし次の瞬間、彼女の眉が僅かに曇った。


(問題は……ふたりのアリシアちゃんね)


(まさかここまで拗らせるなんてね……)


過去の原罪が現在を歪めた。アリシアの苦しみは深く、リーンの犠牲的愛は重すぎる。


(すべてが終われば……ふたりともアルくんから離れようとしてる。

 そんなこと……許すはずがないでしょう?)


フィリアの声は静かだが、そこには確固たる意志が宿っていた。


(さあて、あのクズの様子でも見に行ってみましょうか)


女神は微笑を浮かべたまま、白い世界から姿を消した。


----------------------------------------------


帝都北西部にある深い森林地帯。

昼なお暗い針葉樹林の中を影が一つゆっくりと進んでいた。


隻眼隻腕の男。

その背中に刻まれた孤独と痛みは、見る者の心を締め付けるだろう。


影の名はアルフォンス。


かつて彼が纏っていた輝かしき名誉も栄光も、今は跡形もない。


隻腕で持つ剣は血錆びて折れ曲がり、失われた左腕は付け根で赤黒く変色している。

左目は漆黒に窪み周りは焼け爛れている、全てが彼に刻まれた苦痛の象徴だった。


肩まで届く銀髪は乱れ汚れ、かつての煌めきを失っていた。

そして……その碧眼の右目にかつて灯っていた炎は消え失せ黒く濁っていた。


理性はほとんど残っていない。彼の思考回路は単純化されていた。


(殺せ……殺せ……)

(全てを壊せ……)


まるで別の生き物のように体が動き出す。

獣道を徘徊しながら小さな魔物を見つけては襲いかかる。


彼の目的地は不明瞭だ。だが求めている。自分が果てる場所を。


そして幾ばくかの時間が過ぎ――


ボロボロになった身体で地面に倒れているのはアルフォンスは、

巨大な……翼開長五メートル以上もある圧倒的な鳥類系の魔物と対峙する。


----------------------------------------------


その刹那、空気が震えた。


「見つけたっ!」


突如響く女性の声。


森全体が一瞬停止したかのような静寂の後、

茂みを掻き分ける音と共に一人の少女が飛び出してきた。


ふたりのアリシアがひとつに戻った……アリシアだったリーン。


彼女は迷うことなく一直線にアルフォンスに向かっていく。


「アルフォンス様!!」


リーンは駆ける。


再び最愛の彼に会う為に、ここからふたりの旅を始める為に。


----------------------------------------------


静寂が漂う宮廷内の訓練場で聖女リーンが静かに佇んでいた。


ミリアは規則正しい寝息を立てて眠っている。

いつどこから調達してきたのか、外蓑が彼女に掛けられていた。


リーンの表情は決意に満ちている。


アルフォンスが魔王ガルグリムと戦う謁見場大広間へ向かうため、

彼女は静かに転移の為の祈りを唱え始めた。


しかし――リーンは不思議な感覚に包まれる。


(これは……)


何かが自分の中に入ってくる。

いや、これは元々自分の一部だったかのように馴染んでいる。


リーンとしてアルフォンスと出会ったあの時の記憶が彩られ、

その"想い出"が胸に込み上げてくる。


そしてリーンは、静かに呟いた。


「おかえりなさい……私」


その一言とともに、訓練場に光が満ちる。


転移の扉が開かれ、リーンの姿は次第に薄れていった。


アルフォンスが魔王と激しく戦う謁見場の大広間へと向かって—。



----------------------------------------------


女神さまは地球の……日本のテレビが大好きです。

アニメ。昭和プロレス。懐ドラとか。

T〇Sの『日曜〇場・本日も晴れ。異状〇し 〜南の島 駐在〇物語〜』が

好きだったらしいです。


色々と悪乗りしてしまいましたが、

これで最終回でもいいんじゃないかなぁ……という出来な気がします。

もちろん、もうちょっとだけ続きますが。


しかし……また長文! ただ仕方ないですね。

フィリア様にしか話せない説明回でもありましたから。

あと、なんとかループではなくなり綺麗におさまったかなと思います。


ep44話に燃え尽きた灰から蘇るものイメージイラスト集UPしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ