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アリシアとアリシア´ ~そして膝蹴りと16文キック※改修済

あらかじめ綿密に練り上げた啓示、神託と言う名の予測でも

与り知らないイレギュラーで崩れるものらしい。


それが私にとって吉と出るか凶と出るかは未だ判らない。だが、

ここからは……私の与り知らない未来として絶対に失敗をしてはならない。


聖女リーンになってからの日々は凡そ、女神フィリアの予測通りだった。

だが予測よりも日程にズレが発生したらしい。そのズレの原因はおそらくクズ(カズマ)のせい。


魔王との戦いのドサクサでヤるつもりだったが――やはり先にしたほうが良いか。

アルフォンス様のお身体を治すのも早い方が良いでしょうしね。

なんとか……チャンスがあれば良いのですけど……。


本来なら魔王が帝都を襲撃するのは今夜ではなく、おそらくあと2~3日後のはずだった。

女神フィリア様の予測を狂わせた原因はただ一つ――異世界人のカズマの存在。


ヤツがこの世界に現れてからというもの、

その予想外の行動のせいでフィリア様の予測が乱れてしまうそうだ。


本来ならもっと正確に把握できるはずの未来が……こうも簡単に狂ってしまう。


(……まさかここまで影響が出るなんて)


思わず唇を噛む。


先の宿場町オルデン……

10年以上前にかつての私がアルフォンス様との遠征で泊まった町。

その変わらない賑やかで……優しい雰囲気に思わず泣き崩れそうになってしまった。


今回の旅で久しぶりの野宿ではない宿。

私は今日がアルフォンス様に真実を告げる最後のチャンスだと意を決して、

アルフォンス様の……男性のお部屋に赴き室内に入れて頂いた。


正直――緊張しました。アルフォンス様より本当は7歳も年上なのに。

クズのせいで経験はたくさんあるのに……いえ、違います期待したわけじゃ無いです。


今夜あの部屋で、あの世界線でのアリシアとしての罪深き行いを告白し、

今まで臆病でずっと逃げてましたけど……真実を打ち明ける覚悟を決めてました。


出来れば……その前に最後だけ本当の初めてを……


そうすれば私は……ずっと独りでも生きていけるから……そう思って……


正直……心残りはある。この世界線で……ようやく10年の時を超えて、

アルフォンス様と出会い共に時間を過ごせてきたんだ。……だけど、

私は――魔王を倒した後は全てを告げて私はアルフォンス様の前から去らないと……


ああ、女神フィリア様――貴女は御赦しになって下さいましたが……


聖教会の主神、女神フィリア様。世界中の人々が信仰している女神様。


そのフィリア様のお言葉。


初めて知ったフィリア様の性格を思い出して少し笑ってしまう。

あの方は……世界中の人々の想像とは遥かに異なる性格をしていらっしゃった。


その言動を思い出すと、不思議と胸の奥が温かくなる。


女神フィリア様の言葉の一つひとつが胸の奥に刻まれている。

彼女は私を哀れむことなく私の望みを尊重してくれた。


(そう……フィリア様は私に全てを委ねて下さった)


私は聖女リーンとして生きていくことを選び取った。


あのアリシアの罪深き過去を背負いつつ、

この世界でアルフォンス様の隣に立つ資格を得るために。


(決めた事を貫き通す。そして……思いっきりやろう)


そう思うと少しだけ心が軽くなる。私は一度深呼吸をして背筋を伸ばした。もう迷わない。


先ずはあのクズを……カズマを確実に始末する。

そしてこの世界線のアリシアをフィリアと創りかえた『聖炎』で燃やして……


「リーン?」


突然アルフォンス様が声を掛けてきた。

驚いて振り返ると彼が怪訝そうな顔をしている。


「どうしたんだ?急に黙り込んて」


その問いに我に返り慌てて微笑みを作る。


「……いいえ。なんでもありません。ただ少し考え事をしていました」


するとアルフォンス様は安堵したように小さく息をついた。


「そうか……ならいい。だがもし何か悩んでいることがあるなら言ってくれ」


その言葉に胸が締め付けられるように痛む。

ああ、アルフォンス様……貴方の優しさが嬉しくもあり悲しくもあります。

いえ……臆病な私が全ていけないのです。


このタイミングで全てを話したら、確実に魔王戦に影響が出てしまうのに。

結局、最後まで言い出せなかった臆病な自分が……


「ありがとうございます。でも大丈夫です。今は……急がないといけませんから」


そう答えながら視線を前へ向ける。


目の前には謁見場大広間への扉が見えてきていた。

あの部屋で待ち構えているであろう真の魔王、魔の創造神ガルグリム。

そしてこの世界のクズと皇帝や貴族たち。そしてアリシア。


(ここで終わらせる。全てを清算するために)


扉のはますます近づいてくる、私は深呼吸をする。


ここから先に本当の未来へと繋がっていく戦いがある。でも恐れない。

私は飽きるほどの恐怖も、後悔も、悔しさも啜り続けてここにいるのだから。


----------------------------------------------


エイリュシオン帝国帝都グランフェリア宮廷内訓練場――


ここは記憶に刻まれたあの忌まわしき場所。


クズ(カズマ)がアルフォンス様の尊厳を踏みにじる為の舞台だった場所。


あの時――この世界の私、アリシア=レイヴェルナという名の愚か者は

魅了に抗えずクズの言いなりとなりアルフォンス様の左腕と左目を……。


焼いた。この場所で。


この日から10年後、あの世界線の私がこの帝都を炎で焼き尽くしたように、

今度はこの世界のアリシアを一瞬で灰に変え光に消した。


この私の手で。私の『聖炎』で。


(この訓練場で……あの世界線の私はアルフォンス様を裏切った)


焼かれた左腕とお顔の光景が脳裏に蘇る。

アリシアが……私が焼いてしまったアルフォンス様。

そして同じ私と同じ罪をもつアリシアが、私に同じ場所で燃やされる。


(これで少しは救いになったかしら)


この世界のアリシアもきっと私と同じ気持ちだったに違いない。

身体が勝手にクズに媚びてしまい、それを厭い苦しみ続けていただろう。


「……ああ」


ふと私の口から漏れた声が耳に届いた。


(この世界のアリシアは……今頃フィリア様と出会えたでしょうね)


この『聖炎』はその為の炎。


アリシアの願い、私の私への怒りを叶え、フィリア様の元に送る為の炎。


ああ、ヤツもまだソコに居るかもしれないわね。なら少し羨ましい……

フィリア様のいらっしゃる魂だけの世界でもクズへの復讐は出来るでしょうから。


本当に羨ましい。私の世界のクズではないけど――もっと殺したい!

いや、クズへの制裁はまだ続く……私のように魂の牢獄で絶望に浸れっ!!!


それにしても皇帝も貴族も全て魔王に消されてたとは……予測と違ってましたね。

ああ、その場に立ち会えなかったのが心残りです。


おっと……つい感慨に浸ってしまいましたね。急がないと!


ミリアは……大丈夫そうですね。今は苦しみも消えて安らかに眠っています。

神力を残してきた甲斐がありました。後で孤児院に送ってあげましょう。


「さて、行きましょう! アルフォンス様が待ってます。早くお身体を治さないとっ」


私の責務を果たす為にアルフォンス様が戦ってらっしゃる大広間に再び転移する。


聖女リーンとしての責務を遂げるため。


アルフォンス様に私の真実をお伝えするために。


----------------------------------------------


ズゴォォォッッ!!!


「ぐはぁっっっ!」


「………」


あれは……お腹に穴が開きましたね……

まるで口から卵を出しそうなほどに、大きく口をあけて苦しんでます。


それにしても……私は何を見させられているのでしょう……


ああっ!? 今度は膝蹴りがカズマ(クズ)の上半身を吹っ飛ばしました!


先ほどはハイキックでカズマの頭蓋を砕いていました……

その度に"あの方"はカズマを復元されて再び破壊に勤しんでいます……


あの方――説明して頂いた通り聖女様……いえリーンと言う名の私に似ています。


そう、まるでリーンのお母様……いえお姉さまですね。また叩かれます!

ああっ!? 私のほうを見ておられますっ!? 怖いですっアルフォンス様っ!


『なーに? 喰われそうな顔しちゃって?

 私の可愛いアリシアちゃんを取って喰う訳ないでしょ?』


『ああでも……食べちゃいたいくらい可愛いわよ、アリシアちゃん♪』


ストレスを解消なされてスッキリしたようなお顔の女神フィリア様が……

私に満面の笑みで微笑んでおられます。……怖い。


そう……あのお方――この私を、

10年先の私を掬い上げてくださった女神フィリア様が……です。


前回が超説明回だった為、出来る限り感情が入る様にしました。

これぐらいの文字数だとやはり楽です。

そう――シリアス回が終わって来たってことですね。


ep44話に燃え尽きた灰から蘇るものイメージイラスト集UPしてます。

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