不完全と断じられた聖女の白き懐剣
長文になりましたが一息で読んで頂きたく思います。
校了してないので誤字脱字、文の繋ぎにおかしいところがあれば教えてください。
エイリュシオン帝国宮廷謁見場大広間。
静寂が支配する空間に漂うのは異様な均衡だった。
漆黒のローブに包まれた魔王ガルグリム。
床に這いつくばる和馬。壁に寄り掛かるアリシアと名も知らぬ少女
三人は四肢を欠損した憐れな姿で、アルフォンスとリーンを見ていた。
対峙する勇者アルフォンスと聖女リーンは、
和馬たちの惨状に目を奪われながらも隙を晒さない。
アルフォンスは背筋を伸ばし、右手の「聖輝」を構えたまま静止していた。
魔王の意図は測りかねるが……
少なくとも両者共に動きを封じられているかのようではあった。
だが、その静止は完全なものではない。アルフォンスの心の中では――
(この状況……一体どういうことだ……?)
困惑と驚愕を最大限に抑えつつ、彼の中では様々な思考が高速で交錯する。
(なぜカズマ達……アリシアがあんな姿に?)
(俺がここに来る前に何が起きた?)
思考が巡る中で彼の脳裏に浮かぶのは――
かつての輝かしい日々。アリシアと過ごした平穏な時間。
彼女を愛し共に歩むことを己の胸に掲げた日の事……
だが、今の目の前にあるのは……
壁際に倒れるアリシア――その姿はあまりにも変わり果てている。
長く流れる川のような金髪は、巻き髪となり見る影もなくボロボロに乱れ、
可憐だった面差しは崩れた化粧の中で疲れ果て、かつての輝きを失っていた。
(……アリシア……)
アルフォンスの胸を締め付けるのは複雑な感情。
カズマに対する憎しみ。彼によって左腕と左目を奪われた恨み。
そして何よりも――
(……本当に……君は……)
アリシアに対する疑惑と葛藤。彼女が自分の意志でカズマを選んだのか?
それとも何か別の力に操られているのではないか?
それを考えるだけで、アルフォンスの心には計り知れない痛みが走る。
そして――もし彼女が操られているのだとしたら――
(俺は……君を救えなかった)
その自責の念が彼の心を容赦なく抉る。
そして視界に入るアリシアの四肢を喪った悲惨な姿――
胸を突き上げる悲痛が叫びとなり喉から溢れ出そうとするのを必死に堪える。
この空間で下手な言動は命取りになりかねない。
そして、この惨事を仕組んだと思われる魔王への激しい怒り――
腸が煮えくり返るほどの憤怒が腹の底で渦巻く。だが、
今ここで感情を露わにするわけにはいかない。唇を噛み締めて怒りを押し殺す。
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這いつくばる和馬の視線は、ついに現れたアルフォンスと
その隣に立つ銀髪の少女に釘付けになっていた。
(本当に来たのか……アルフォンス)
その名を心の中で呟くだけで虫唾が走る。かつて宮廷で見かけた時の余裕ぶった態度。
騎士団長として成功しているヤツ特有の隠された自信。
どれもこれも和馬にとっては虫酸が走るものだった。
異世界召喚後、「選ばれし勇者」として特別扱いされてきた和馬にとって、
異世界ファンタジーの主役である自分と同等に目立つ存在がいる事は何よりも気に障った。
(脇役が主人公気取りで……あの澄ました顔が心底腹立たしい)
特に銀髪の美少女を連れている様は鼻につく。
魔王達曰く「聖女」の称号を持つ少女が、彼の傍に寄り添う姿が、
和馬の劣等感をさらに刺激する。
(聖女を俺の物にしたい……絶対に欲しい……)
この瞬間だけはアルフォンスに対する反感を忘れた。
彼の目は完全にリーンという「トロフィー」に釘付けになっている。
あの整った面差し、強い意志を感じさせる碧眼の瞳――
まさに物語の中心に置かれるべき存在。彼女が和馬の傍らに寄り添えば、
(……アイツはどんな顔をするか……)
自然と歪んだ笑みが浮かぶ。
そのために彼の思考は素早く切り替わり、目の前の少女――リーンに意識を集中させた。
(今までだってそうだ……どんな女だって俺の魅了スキルには逆らえない……)
かつて宮廷で出会った時から惹かれたアリシアが簡単に堕ちていった様を思い返す。
どれほど誰かを想っていても、意思の強い相手でも関係ない。
(俺の身体を治させて……アルフォンスは魔王を倒して勇者にでもなんでもなればいい)
(勇者は譲ってやるんだ、聖女くらい俺に譲ってくれてもいいよな?)
そんな自己中心的かつ歪んだ独占欲が和馬の心を蝕んでいく。
その一方で――
アリシアとミリアは四肢を失った惨状にも関わらず、奇妙な安定を見せていた。
彼女たちの視線は和馬だけに向けられていた。
かつての正常なアリシアであれば――(アルフォンス……あなたは……)
そんな風に想いを馳せただろうか――
今の彼女は全く違う。魅了による洗脳下にある。
過去の記憶も想いも全てが侵食され、アルフォンスへの関心は完全に消え失せている。
(カズマさまだけが私の全て)
アリシアの濁った碧眼には純粋な忠誠と愛情の色しかない。
かつてアルフォンスと共に過ごした愛しい日々は記憶の片隅にすらない。
ミリアも同じだった。彼女の心は完全に和馬に縛られてしまっている。
そんな二人を尻目に和馬は再び意識を集中した――
(俺の魅了が効くまで……リーンを手に入れるまで……)
誰にも気づかれることなく――
彼の体内から放たれた仄暗い魅了のチカラは静かにリーンへと向かっていく。
その力はまるで粘性を持つ無色の霧のように緩慢で忍耐強く――確実に彼女の元に届いていた。
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魔王ガルグリムは漆黒のローブの奥で静かに息を吐いた。
その動作一つで周囲の空気が微かに震える。
深い黒衣の中で鈍く赤く輝く双眸がアルフォンスを値踏みするように観察していた。
『奴が女神フィリアが選んだ勇者……アルフォンスという男か』
報告にあった通りの隻腕隻眼の姿。
かつての栄光と誇りが剥ぎ取られたような痛々しさである。
しかしその眼差しは揺るがない。
失われたものを嘆くでもなく、残された右目に確固たる意志の光が宿っていた。
それでも……アルフォンスの存在に危機感は覚えなかった。
『魂の質は確かに高い……短期間で鍛え上げたのだろう』
『だが悲しいかな……それでも奴は片翼の天使も同然』
『左腕と左目という器が失われたことで……魂の容量そのものが欠損している』
魂の欠落はチカラの減衰に直結する。
いかに鍛錬を積んでも埋められない空白は絶対である。
魔王ガルグリムは、この帝都への侵攻で多数の眷属をこの地へ転移させた。
それは大きな賭けであり――代償として己の神力は消耗した。
神力とは限りある資源だ。使いすぎれば依り代にも留まれなくなる。
そして回復するのには現世を離れて悠久の時を要してしまう。
まだ微細な影響に過ぎない。だが依り代に留まるだけでも僅かに消費はする。
だから長期戦にされていたら不利となっていただろう。
それでも――ガルグリムの勝利への確信は揺るがなかった。
アルフォンスの五体が回復しないという事は、
女神の遣いである聖女のチカラが不完全だという事だからだ。
女神の勇者と共に大広間に姿を現した銀髪の少女──
あの女こそが女神フィリアの遣いである聖女と間違いないだろう。
戦場となった帝都で多くの命を救ったという報告は耳にしている。
騎士や兵士たちの傷を癒し失われた躰の部位を取り戻させたとう。
しかし――勇者の欠損を修復できない時点で女神の神力が限定されているのだろう。
この勇者が隻腕隻眼のまま現れたという事実が全てを物語っている。
理由は分からぬが……女神の遣わした聖女は不完全。
勇者は致命的な欠陥を抱えている。
左腕と左目を失った彼は、その器の容量すら欠落し本領を発揮できない。
その事実を確認できただけでも十分と言えるだろう。これで私の勝ちは揺るがない。
幾星霜の時を越えて今度こそ……この世界は私が創りたもうた魔の者の世界となる。
ガルグリムはこの決定的優位を確信した。
ゆえに―そろそろこの茶番に終止符を打つかと思い、
その身を静かに動かそうとして――動きを止めた。
漆黒のローブの中で細められた赤い双眸。その鋭い視線はただ一点――
四肢を喪い無様に床に転がる召喚勇者カズマに注がれていた。
彼が異世界から界渡りで得たであろう操心の能力を、
誰にも気づかれぬように聖女に放っていのをガルグリムは気付いた。
そもそも、ガルグリムは和馬がその操心の能力で、
自身の側に侍らかしていた女二人を傀儡にしていたことに気付いていた。
その和馬が操心のチカラを聖女に向けて放っている。
誰にも気づかれないように、確実に成す為に、己の肉体を修復させる為に。
聖女の美貌と力も利用するために聖女を意のままにしようと。
(愚かな……神の力を宿す聖女にその程度の操心が通用するとでも思っているのか)
魔王は内心で冷笑した。だが――すぐにその嘲笑が別の意味へと変わる。
いや……今の不完全な聖女ならばどうだ?
女神フィリアが万全な状態の聖女を用意したなら話は別だろう。
しかし、あの勇者アルフォンスが隻腕隻眼のままで現れたということは……
女神の神力が完全ではないことを示唆しているのだ。
であれば……奴の矮小な操心の力が通じる可能性はゼロではない。
(なら……面白いかもなぁ)
ガルグリムは微かに口角を上げた。この事態は予想外。
単なる滑稽な挑戦として見過ごすこともできるが――
結果がどうあれ面白いではないか。
仮に聖女が完全な状態であれば操心ごとき跳ね返すだろう。
そうなれば奴の企てはあっけなく潰えるだけ。興醒めですらない。
だが……万が一にも聖女が不完全であり、その操心の力が効果を発揮したとなれば――
それはそれで愉快だ。
奴の卑賎な欲望が成就することも。或いは――予期せぬ波乱が巻き起こることも。
そのどちらに転んでも退屈凌ぎになるだろう。
そう考えると……ガルグリムにとってこの一幕は捨て置くに足りないものに思えてきた。
(暫く様子を見るとしよう)
深淵を思わせる瞳の奥で愉悦の光が灯った。
ガルグリムは自らの行動を保留し、この状況を引き続き静観することとした。
何やら面白おかしく転がりそうな展開になりそうだ。ならばそれを楽しむまで。
彼の内には退屈と焦燥ではなく、更なる娯楽に対する期待があった。
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謁見場大広間に入ってから沈黙を守っていた聖女リーン。
彼女の表情には色がなかった。
ただ深い碧色の瞳だけが、静かに前方を見据えている。
その視線の先にあるのは――
床に這いつくばる和馬の姿であった。
双方の視線が絡み合う。しかし互いに言葉を交わすでもなく、
ただ無音の視線で交差しているように見えた。
その光景を前にアルフォンスは僅かに眉根を寄せる。
その無感情な表情が気になる。今まで彼女がそんな顔をするのを見たことがない。
「リーン……?」
アルフオンスの言葉が終わるより早く――リーンは動いた。
無音の視線で繋がっていた先――床に這いつくばる和馬。
彼女はその男をじっと見つめたまま、静かに歩みを進めた。まるで導かれるかのように。
アルフォンスは咄嗟に手を伸ばした。「待て!」制止の声は虚しく響く。
リーンの足取りは迷いなく真っ直ぐ和馬のもとへ向かっていた。
その瞳には一片の感情も浮かんでいないように見えた。
魔王ガルグリムは微動だにせず、漆黒のローブの奥から静観の構えを崩さない。
和馬は這いつくばったまま口元に不気味な笑みを浮かべ――決壊した。
「俺の勝ちだっっっ!」
和馬の喉から甲高い哄笑が迸り、感情の奔流に押されるように言葉が次々と溢れ出す。
「聖女を手に入れられる……! 聖女は俺の女になる!
そうだ……聖女は俺の魅了に掛かったんだ! 完璧にだッ!」
その狂喜じみた声が広間に響き渡る。
異世界召喚者特有の未知の力。魅了というこの世界には存在しない能力。
その単語を耳にした瞬間、アルフォンスの思考が凍りついた。
(魅了……だと?)
一瞬の逡巡が彼を襲う。
脳裏に甦るのはアリシアの顔。かつて愛を誓い合った女性。
その心が突然、別の男へ傾いた不可解な出来事。その原因が今、明確な形を得た気がした。
(アリシアは……まさかこの男に……?)
疑念が棘となって胸を貫く。しかし、それ以上の切迫感が彼を揺り動かす。
「リーン!」
銀髪の少女は確実に和馬のもとに近づきつつあった。
彼女がどのような状態にあるのか判然としない。だが、
この異世界召喚者の得体の知れない能力がリーンに及んでいることは明らかだった。
一刻も早く彼女を保護しなければならない。
和馬はリーンの接近を確信し、笑い声を抑えられない様子だった。
「アルフォンスぅ!! 聞けぇ!! 聖女は俺が貰うっ!
魔王はくれてやる! 倒せよ! 斃して勇者になれよぉっ!
その代わり――聖女も! アリシアも! 俺のモノでいいよなぁ!?」
その言葉はまるで勝利宣言のようで――
四肢を失い這いつくばる和馬の姿は皮肉な勝者の姿を演じていた。
アルフォンスは猛然と前へ躍り出る。リーンとの距離は徐々に縮まりつつあった。
全力で駆け出そうとした刹那――
彼の目の前に漆黒の闇が立ち塞がった。
ガルグリムの黒衣が静かに降臨し、行く手を阻む。
「邪魔だ!どけッ!」
アルフォンスの鋭い刃のごとき言葉が迸る。
隻腕の勇者が咆哮したのはこの場で初めて魔王に対してだった。
左腕の無い体躯、右腕で握られた聖具の剣『聖輝』が青白い光を纏い始める。
魔王ガルグリムは揺らがなかった。
深淵を思わせる黒衣の奥から嗤いさえ感じさせながら応じる。
『奴の操心……魅了とか称している洗脳の力。
仮にそれが女神の遣いである聖女に通じたなら――それは実に面白いじゃないか?』
漆黒のローブが微かに揺らぐ。愉悦に満ちた響きが広間に反響する。
『そうなれば、私の勝利は既に確実。だがそれ以上に……
最も憎悪すべき女神の遣いが、あの愚者の傀儡と化すかもしれぬ様など、
見逃すには惜しい余興。邪魔されたら興ざめだ……ここは通さぬぞ』
ガルグリムの黒衣の隙間から漏れだす闇が蠢き始めた。
漆黒の粒子が周囲の空間を侵食していく。
アルフォンスは歯噛みした。この一瞬が全てを左右する。
魔王の足止めなど望むところではないが――今はとにかくリーンを救わねば。
「ッ!」
聖輝の刃が煌めいた。光の軌跡を描きながら黒衣の影を裂こうとする。
幾重にも繰り出される斬撃は寸分の狂いもなく精密な太刀筋。
その悉くが魔王の周囲に生じた黒い障壁に阻まれる。
グギュン! ギィン!
金属と闇が衝突する異様な音が何度も何度も奏でられる。
剣を振るうたびに勇者の額には汗が滲み、呼吸は荒くなっていく。
隻腕であるが故の膂力の制限。左眼が無いことによる死角からの妨害。
魔王は微動だにせず障壁を維持し続ける。その姿は余裕の塊だった。
聖輝の柄を握る右手に血管が浮き上がるほど力を込める。
(何としても――退かせる!)
再度の突きを放とうとした刹那――背後の状況が脳裏を過った。
聖女リーンはすでに和馬の目前まで歩み寄っていた。
その表情は依然として無機質なままで感情を読ませない。
そして――四肢を失い床に這いつくばっていた和馬が身を捩るように動いた。
恐らくはリーンを迎え入れる為……
彼は四肢のない身体で必死にうつ伏せから仰向けへと体勢を変えている。
その姿は滑稽を通り越して哀れさすら帯びていたが、
狂った喜びに染まった彼の顔は歪んだ獣のごとく醜く歪んでいた。
「聖女ちゃんはリーンちゃんって言うのか……! 来てくれたんだ!
やっぱり君は俺を選んでくれた! そうだよね! 君ならわかってくれると思っていた!
アルフォンスなんかより俺の方がずっと君に相応しい! 君は俺のモノだ!」
狂喜混じりの声が広間に響き渡る。
その声を背中に聞きながらアルフォンスはなおも魔王に斬りかかった。
(魅了なんて力で……アリシアはアイツにっ!
そのうえリーンの尊厳まで汚させるわけには絶対にいかないっ!)
聖輝の一撃が黒い障壁を僅かに揺るがした――ような錯覚が走る。
しかし次の瞬間には漆黒の闇が傷口を埋めていく。
(リーンを、彼女を奪わせるわけにはいかない! 絶対に!)
彼の想いと剣戟が激しく火花を散らせる中、時間は残酷なまでに流れ――
リーンが和馬の傍で跪く姿がアルフォンスの目に飛び込んできた。
その瞬間、彼の心臓が氷の手で握り締められたかのような痛みを伴う。
聖輝の刃が魔王ガルグリムの闇の障壁を叩きつける音が響く。
それは物理的な衝突音ではなく、彼のいまだ諦めない想いが凝縮された叫びのようだった。
しかし、リーンの行動を止めるためには遅すぎる。間に合わない。
魔王ガルグリムは微動だにせず、闇の障壁越しにこの光景を見下ろしていた。
彼の赤き双眸の奥には、聖女への操心が成すことの確信と愉悦が渦巻いている。
その漆黒の観客が見守る中で、和馬は陶酔の中にあった。
両眼に歪んだ狂喜が浮かんでいる。四肢を失い床に仰向けに横たわりながらも、
リーンが自分の元へ来るという奇跡を受け入れる準備ができていた。
「アハ……アハハ!どうしよう先ずは身体を元に戻してもらおうかなっ!?」
和馬は満足げに笑うと、歪んだ笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「そうだっリーンちゃん。まずはキスから始めようか。アルフォンスに見せつけてやろうよ!」
その言葉は、歪んだ情熱と狂喜に満ちていた。
アルフォンスはその場で立ち尽くして諦めるなどできなかった。
どんなに遅くとも諦めることはできない。
今度こそ。かつてアリシアに届けるべきだった言葉が頭をよぎる。
「リーンっっっっ!!」
彼は声を振り絞り叫ぶ。絶望も諦めも忘れたかのように。必死にその名を呼んだ。
そしてリーンは―――
彼女は和馬の言葉に耳を傾ける様子もなく、跪いたまま懐から何かを取り出している。
その指先には純白に輝く短剣が握られている。淡く清浄な光を放つその刀身は美しい。
そして――
ザシュッ!!
聖なる短剣は―――
一切の躊躇もなく。慈悲もなく。恐ろしく正確に深く――和馬の心臓を刺し貫いた。
セレストの帝都疾走、ガルグリムの皇帝達の「指先ひとつ」での消滅に
続いて書きたかったシーンにようやく辿りつきました。すごく難産でした。




