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召喚勇者カズマの功績を祝う祝賀会

主人公sideのラブコメ?シーンから場面は変り……

チームカズマのおそらく最後になる大きな胸糞回です。

宮廷の長い廊下を歩きながらラファエルは溜息をつく。

その溜息には様々な感情が混ざっていた。


アリシア=レイヴェルナのことは幼い頃から良く知っていた。


彼女は魔道の天才児として誉れ高く、

その才能は帝国の宝と言っても過言ではないほどだった。

またその清楚で可憐な姿は宮廷内でも多くの者たちの憧れの的であった。


「……それが今やこんな形になるとは」

小声で呟いた言葉には深い悲しみが込められている。


かつてアルフォンスと共に帝国の未来を背負うと思われた若き二人。

互いに惹かれ合っていたことまでよく知っている。


それが今では……一方は片腕と片目を失い行方不明。

もう一方は見たこともないほど派手な服装に身を包み、

異世界人の召喚勇者に媚を売るような振る舞いをしている。


ラファエルは思い出す。


アルフォンスが騎士団長に拝命された時に同じく、

アリシアが魔導試験で第一階梯の結果を出したときの誇らしい表情を。


「あれほど優秀な人材を失ったことは帝国にとって大きな損失だ……」


宰相としてだけでなく個人的な感情としても悔しさが募る。

彼はアリシアを単なる魔導士ではなく未来の帝国を支える柱だと考えていた。

それが魅了などという、たいそう卑劣なチカラによって奪われてしまった。


ラファエルの脳裏に浮かぶのはアリシアの最近の姿だ。


派手なドレスに濃い化粧。

以前のような凛とした佇まいは完全に失われている。


「陛下のおっしゃる通り……これはアリシア嬢自身の意志ではないのだろう……」


そう思いつつも現実の光景として、

見せつけられては痛ましくて見るに耐えない。


そして……これから向かう祝賀会での彼女の装いを危惧して頭を痛めていた。


---


一方、皇帝グレゴリウス十三世の内心も複雑だった。


宰相ラファエルがアリシアの変貌に心を痛めていることは十分理解できた。

しかし皇帝の胸中はもっと深い葛藤に満ちていた。


(ラファエルにも秘匿したが……アルフォンスは実は見つかっていたのだ)


皇帝は静かに歩みを進めながら一昨日からの出来事を振り返っていた。


左腕左目を失った彼を掬い上げず放置したままとしたのは、

帝国であり皇帝である自分自身だと分かってはいる。


そもそも帝国の英雄であり貢献した若者を失った喪失感は大きい。

彼に救われる可能性を与えられなかったことにも忸怩たる思いはあった。


(しかし……私には公人としての責務がある)


アルフォンスが皇帝である自分を、帝国を恨んでいるかは分からない。

恨んでいようがなかろうが召喚勇者カズマへの牽制として使えるなら、

今更でも彼を手元に置いておかなければならなくなったのだ。


だが、派遣した元アルフォンスの部下であるエリックは彼に断られてしまった。

エリックは改めて説得の為に出立するが本来なら今日この日に間に合わせたかった。


(アルフォンスは既に帝国……いや私に興味を失っているのだろう)


それが皇帝の冷静な分析だった。

そして召喚勇者の行動次第で帝国が傾く可能性がある以上、

アルフォンスの力を借りるべきだったと後悔せずにはいられなかった。


---


宮殿の大広間──四天王撃破を祝う特別な会場は華やかに装飾されていた。


豪奢な装飾が施され、煌びやかなシャンデリアが幾つも吊るされている。

燭台の灯りが壁面を照らし出し、煌びやかな音楽隊が奏でる音色が響く。

豪華な料理が並べられ、人々の談笑する声が行き交う。


しかし、その賑わいは一転し会場の空気は一瞬で張り詰めた。

皇帝と宰相が到着すると同時に、賑わいの花となっていた、

高位貴族や各騎士団長たちの注目が一斉に集まる。


いや……静まり返る会場の中央で、

今宵もっとも大きい賑わいの花は爛漫と咲き誇っていた。


「…………」


皇帝グレゴリウス十三世は立ち止まるとその一点を凝視した。

宰相ラファエルは見るも可哀そうなほど呆然としている。


彼等の目に飛び込んできた光景は――


---


煌びやかなシャンデリアの光が舞踏会場を照らし出している。

金箔に彩られた壁面。精緻な模様が施された大理石の床。

その上を行き交う高級な衣装に身を包んだ男女の群れ。


まるで別世界のような華やかな空間に和馬は足を踏み入れた。


「カズマさまぁ~♪」

「カズマ様ぁ~♡」


和馬に寄り添い、両腕に絡みつく二人の美少女。


かつて弱冠17歳で魔導師団のエースとなり期待されたアリシアは、

元々はさらさらと流れるストレートの美しい金髪碧眼の美少女だった。


しかし今、美しかった金髪はきつめのカールで内巻きになっており、

メイクは驚くほど変貌しており、まるで日本の「陽キャ」のような顔になっている。


ドレスは胸元が大胆に開き、スパンコールが散りばめられた極彩色のものを纏い、

首元や指にはダイヤモンドがあしらわれたアクセサリーがキラキラと揺れていた。


「カズマさまぁ~♡ 私のこのドレス素敵ですよね?」


甘ったるい声で和馬の腕に絡みつきながら言うアリシアは、

もはや以前の知的で可憐な面影を残していなかった。


一方、ヒーラーの少女ミリアも劇的な変化を遂げていた。


かつては敬虔な聖職者としての信仰心から、

控えめな装いと凛とした佇まいが魅力的だったが今は全く異なる。


明るく染めた髪はショートボブで毛先が外ハネし、

メイクは淡いピンクを基調としている。


服装はミニ丈のワンピースで太腿まで見え隠れするほどの短さ。

腰回りにはフリルがついていて動きに合わせてひらひらと舞う。


「ねぇねぇ~カズマ様ぁ~♡ ミリアの新作メイク見てくださいよ~♪」


甘ったるい声で舌足らずな話し方をするミリアは、

完全に「媚びるメスガキ」そのものの姿だった。


どちらも以前とはかけ離れた容姿と態度。

まるで別人のような二人を両脇に侍らせた和馬は会場の中央へと進みゆく。


「皆さん~♪ カズマさまのご活躍に拍手ですぅ~♡」


アリシアが甘い声を張り上げると、和馬の取り巻きたちは一斉に拍手喝采した。

アルフォンスが和馬に敗れた際にいち早く和馬に組した他の騎士団の幹部たちや

高位貴族の面々がこぞって和馬に近づいてくる。


彼らは口々に勇者の功績を称賛し、中には直接ワイングラスを差し出す者もいた。


「カズマ殿の武勲はまさに伝説! 四天王討伐とはまさに神業!」

「陛下もこの栄誉を心より喜ばれております。さあ一杯」

「この度は我が娘も祝いに参っております。ぜひご挨拶を……」


媚びへつらいの笑顔と胡麻擂りが和馬を取り囲む。

その中で一人の騎士が恭しく膝を折った。


「カズマ様……我が第四騎士団も貴方様に忠誠を誓っております。

 今後の栄光を共に……」


「おおっ、それは頼もしいなっ! 今後もしっかり頼むぞっ!」


和馬は鷹揚に応えると騎士の肩を叩いた。

その傍らではミリアがワイングラスを傾けながら囁いた。


「カズマ様ぁ~♡ 次はどんな任務を受けちゃいますぅ~? 

 きっともっと大活躍ですよ~♪」


「ふん、四天王なんて雑魚みたいなもんだったしなぁ。

 次は魔王の本陣にでも突っ込んでやろうかな」


自信に満ちた口調で笑う和馬に対し取り巻きは更なる賞賛の声を上げた。

そんな彼らの姿を遠巻きに見つめるマトモな参加者たちは顔を曇らせている。


「あれが本当に勇者なのか? 以前はもっと真面目そうだと思ったが……」

「魔導師団の……あのアリシア嬢がまさかあんな風になるなんて……」

「元々清楚だったのに今のあの姿は何だ?まるで夜の商売みたいな格好だ……」

「ミリアというヒーラーは聖教会で期待されている敬虔な聖職者だったはず。

 どうしたらあんな淫らな姿になってしまうんだ……」


ヒソヒソと交わされる嘆息。しかし当の和馬は気づかない。

今はただ自身の力を称える者たちの歓声に酔いしれていた。


会場の雰囲気は二つに割れている。

一方では熱狂的な称賛の渦。そしてもう一方では冷ややかな批評の輪。


そしてその中心にいるのは間違いなく召喚勇者カズマその人だった。


だがその時……。


「皇帝陛下のご入場であるっ! 静粛にせよ!!」


突如として会場に響き渡った声に全員が息を呑んだ。

入口から現れたのは皇帝グレゴリウス十三世。

その後ろには宰相ラファエル。二人の威厳ある姿が祝賀会の空気を一変させた。


しかし……召喚勇者カズマは周囲の緊張など気にもせず、

二人の美少女を抱き寄せ満面の笑みを浮かべて騒ぎ続けていた。


その愚かさを皇帝は冷たい眼差しで見つめていた……



ラブコメ?どうなったっっ!って思ったかた、すいませんでした~

これ以降はもう大した胸糞は和馬に残っていませんので、

すっごく気合入れて楽しく作成しました。本当にアリシアとミリアが可哀そうです。

って、とうとうヒーラーさんは名前が出ました。でも出番はあと……

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