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追われし勇者、旧知の邂逅 - 共に前へ -

「それとな、エリック……」


アルフォンスは一息つき、声を潜めた。


「実は……既に四天王のうちヴェイン以外の2体を倒している」


「なんですとっ!?」


エリックは思わず声を上げてしまい、慌てて口を抑えた。

周囲の村人たちが驚きの表情で彼らを見つめている。


「隻腕隻眼になってからの話だ。グラヴィウスとリザミアを……


リザミアはともかく……グラヴィウスはかなりの強敵だったよ」


アルフォンスの言葉にエリックの目が大きく見開かれる。

彼の表情からは「信じられない」という感情がありありと見て取れた。


「そ、そんな……。しかし、それならば残る四天王は……」


「恐らく1体だけだ。カズマがヴェインを倒すだろうからな」


「では……」


「ああ。だがな……この状況を喜んでいる暇はない」


アルフォンスの表情が一層厳しくなる。


「ヴェイン以外の四天王が倒されたという事実は……

 むしろ新たな危機を呼び寄せるかもしれない」


エリックが首を傾げる。


「新たな危機?」


「つまり……魔王自身の出陣だ」


「……!」


エリックは息を呑んだ。その意味を理解したからだ。


「だが魔王は……恐らく俺を狙ってくる。召喚された勇者ではなく、

 真なる女神の勇者である俺を相手に選ぶはずだ。

 女神の力と魔王の力が正面から激突する……そういう展開になるだろう」


アルフォンスは冷静に語っているが、その内容の重大さに

エリックの顔色が見る見るうちに変わっていく。


「だからこそ俺は帝都に行かないんだ。帝都を戦場にはできない。

 もし俺の居場所が漏れれば……間違いなく魔王は真っ先に帝都を狙う」


「団長……」


「もう俺は"騎士団長"じゃないよ」


アルフォンスは微笑みを浮かべたが、その瞳には悲しげな影があった。


「だが……人々のために戦おうという意志は変わらない。

 ただその方法が違うだけだ。誰の目にも触れない場所で……ひっそりと、

 魔王との決着をつける。それが今、俺ができる最大の貢献だからな」


エリックは黙り込んだ。長い沈黙の後、


「……団長……いやアルフォンス様……」


彼の目に涙が溢れそうになっていた。


「私たちも共に戦わせてください。あなたを一人で戦わせるなんて……」


「駄目だ」


アルフォンスは即答した。


「これは俺個人の……いや、勇者としての責任だ。

 君たちを巻き込むわけにはいかない」


「しかし……」


「それに」


アルフォンスは真剣な眼差しでエリックを見据えた。


「皇帝陛下への報告義務があるのは君たちだ。

 俺が帝都には行かないと伝えてほしい。説得が必要なら改めて来てくれ。

 ただし……一つだけ条件がある」


「条件……ですか?」


「四天王を倒した件は一切伏せておくこと。少なくとも今はまだ」


「それは……なぜ?」


「今の俺のチカラを陛下が知れば……

 カズマが暴走した際の対策して利用するかもしれない。

 今の時点で余計な波紋を広げたくないんだ。

 それに……俺にも私情はある。カズマと会えば争いが起きるかもしれない」


「団長……そうですね……」


エリックは苦渋の表情を浮かべたが、やがてゆっくりと頷いた。


「わかりました。陛下には『アルフォンス様は帝都には戻らない』と報告します。

 そして改めて説得に参ります。ただし……」


彼は真剣な眼差しでアルフォンスを見つめた。


「私たちはあなたの側に参ります。どんな形であれ」


「ありがとう、エリック」


アルフォンスは心から感謝の笑みを浮かべた。


「それじゃあ……村で少し休ませてもらったあとにでも発ってくれ。

 君たちには陛下への報告という大事な任務があるし……また強行軍だろ?」


リーンが横から声をかけた。


「アルフォンス様……」


彼女の目には不安と期待が入り混じっていた。


「これからどうなさるのですか?」


アルフォンスは一瞬だけ遠くを見つめ、そして決意を秘めた表情で答えた。


「まず……こちらから動いて残る四天王を倒さなければな。

 その後は……魔王と向き合う時が来るだろう」


彼の声は静かだが、揺るぎない強さに満ちていた。


「女神とリーンに救われて与えられた俺の使命……果たしてみせる」


窓の外では雪が静かに降り続いていた。

しかし今は孤独ではない。側にはリーンが……

そして遠くからもエリックたちが支えようと歩み始めている。


アルフォンスは小さな笑みを浮かべた。


凍てつく風雪の村で彼の心は決意の炎に包まれていた。

その炎は消えることなく、やがてこの世界を覆う闇を照らすことになるだろう。



帳尻合わせ三部作の3つ目です。

何故、カズマが凱旋した際に"解放者"が

四天王を倒したのが広まっていたのかに対するanswerでした。

わざとらしい展開ですいません。まだ続きます。

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