闇深き玉座にて明かされる世界の真実 - 魔王side
説明回です……
魔界の中心に聳える漆黒の宮殿。
その最奥の玉座に鎮座するのは魔王・ガルグリムであった。
漆黒のローブに包まれた痩身の姿は人間の成人男性を思わせるが、
ローブの中の肉体は常に闇に覆われて見えない。
「……報告は受け取った」
ガルグリムの声は重く冷たい空気のように室内に響き渡る。
その眼前に跪いているのは残された唯一の四天王—最古参のガルドム。
「申し訳ございませんっ! ヴェインが討たれるとはっ!
さらにグラヴィウスとリザミアまでも……!」
灰色の肌に六本の角を持つ老齢の魔族が額を床に押し付けたまま震えている。
四天王三人の喪失。それは計画の致命的な損失を意味していた。
「落ち着けガルドム。これは私の失策であったのだ」
「……と申されますと?」
ガルグリムの声音に怒りはない。むしろ静かな悲しみが滲んでいた。
「我が配下である四天王が倒されるのは必然であったようだ……
なぜなら『解放者』と『救済者』こそが女神の真なる勇者と聖女なのだからな」
ガルドムは一瞬言葉を失った。魔王の言葉が理解できなかった。
「意味が分かりませんっ! 四天王が負けるなどと……!
それに『解放者』と『救済者』が女神の真なる勇者と聖女とはいったいっ!?
召喚勇者ならば理解できます! あやつがヴェインを討ったのも!」
ガルドムの脳裏に浮かぶのはヴェインの部下による最後の報告。
西部戦線でのヴェインと召喚勇者の一騎打ちは召喚勇者が制したという信じ難い結果。
「召喚勇者は人間たちが作り出した偽りの勇者に過ぎん」
ガルグリムの声は氷のように冷たく重い。
「ガルドムよ、教えてやろう。この世界の真実を」
ガルドムは固唾を飲んで聞き入るしかなかった。魔王の言葉には抵抗できない。
「人間の有史以降現れた魔王たちは全て魔族の中から選ばれし力ある存在。
彼らの目的は魔族領を広げることのみ。
それに抗すべく人間が編み出したのが召喚術であり、
異世界より呼び寄せたものが召喚勇者という輩だ……」
「それは存じております……ですがっ!」
「召喚勇者は召喚時に己の願いに応じた異能を得る。
確かに強い。だが真の魔王の敵ではない」
「では今回の召喚勇者がヴェインに勝ったのも……」
「おかしい事では無いが……奴は特別に強かったようだ。
おそらくは過去の召喚勇者よりも遥かに大きな願いを持っていたのであろう」
ガルドムの困惑は深まるばかりだった。召喚勇者が強いのは分かる。
だからヴェインに勝利したのも理解は出来る。
だがグラヴィウスとリザミアはこの世界の人である"解放者"と"救済者"に倒された。
魔王の言では、その二人は女神の真なる勇者と聖女なのだという。
「真の魔王は魔の創造神そのものなのだ」
「……魔の創造神……様ですか!?」
「この世界には二人の創造神がいる。
魔の創造神は人の創造神—女神フィリアの対となる存在」
「神は直接的に現世に干渉出来ないが現世に顕現する為の依り代があれば別だ。
この私は真の魔王にして、魔の創造神が顕現した姿なのだ。
もっとも、神としての全能が使えるわけでは無いがな……」
「真なる魔王、魔の創造神の望みはただひとつ。女神の造りし生命の根絶。
だがな……私を止めるために遣わされたのが……女神の真なる勇者なのだ」
ガルドムはようやく理解し始めた。
今回の騒動が単なる魔族と人間の争いではない事を。
女神が造った人間を滅ぼしたい魔の創造神、守りたい女神の争いでもある事と。
「その勇者と聖女こそが……『解放者』と『救済者』なのですね!」
「そうだ。ゆえに四天王がやられた事も必然だったのだ。
私の力不足が原因とも言えるであろうな……」
ガルドムは震え上がった。自らの判断が招いた惨事だと思っていたが、
魔王自らの失策と言われてはどうしようもなかった。
「では……残された私にどうすれば……『解放者』と『救済者』……
それに召喚勇者に対して如何なさいますか?」
魔王は闇に染まった瞳を上げる。
「本来であれば……国々ごとに辺境からじっくりと根絶したかったがな」
そして揺るぎない意志が籠った声でガルドムに伝えた。
「即座に帝国を墜とし、私の神力が減ろうとも勇者を滅してやろう……」
元々、見切り発車で魔王の事も考慮してなかったから後付けになってます……
プロット立てないで突っ走ってきた弊害が出てきてしまいしまた。
領土侵犯くらいで世界の危機とかいうと大げさだと思われそうですね。
それに魔族に対して人間はまったく対抗できないのかとか矛盾に感じますよね。
話しの中に上手く組み込めなかっただけで、それぞれの理由はあります。
本作の中身を手直しすることは無いと思いますが、
完結するタイミングで説明用の用語集をアップしようかなと考えています。




