帝都凱旋の行進と"解放者"への嫉妬 - カズマside
「皆の者! これが英雄の帰還だ!」
皇帝の使者が帝都の門前で高らかに宣言すると群衆から歓声が沸き起こった。
和馬は馬車の窓から顔を出し、得意満面で手を振る。
「俺こそが英雄だっ! 四天王の一人・魔獣王ヴェインを
打ち倒した召喚勇者カズマ様の凱旋だぁっ!」
帝都の大通りは祝祭の雰囲気に包まれていた。
色とりどりの旗が風に揺れ、沿道には数千人の市民が押し寄せている。
馬車の中で和馬は隣に座るアリシアに目を向けた。
アリシアは白い包帯に巻かれた左腕を隠すこともなく和馬に身を寄せる。
彼女の巻き髪に変えさせられた美しい金髪が、
和馬の頬に触れそうになるほど身体を擦り寄らせて甘えた声を囁く。
「カズマさまぁ♡ 私のために勝ってくれたんですよねぇ♡」
「当たり前だろう? 俺はアリシアの勇者だからな!」
和馬は調子に乗ってアリシアの腰に手を回す。
しかし内心では別のことを考えていた。
(しっかし……治療魔法じゃ時間が掛かるのは分かるが、
醜い火傷の跡は気持ち悪いなぁ。城に帰ったらさっさと直させないとな……)
「カズマ様ぁ♡ 私の為にも戦ってくれたんですよねっ♡」
ヒーラーの少女が和馬の逆側に座り同じように腕に抱きついてくる。
和馬はにやりと笑いながら少女の細い肩に手を置いた。
「もちろんさ。アリシアも可愛いけど君も大切だからな」
アリシアは和馬の言葉に小さく俯く。焼け爛れた左腕がジクジクと痛みを訴えていた。
しかし魅了の呪縛からか彼女の表情は苦痛ではなく、どこか寂しげなものになっていた。
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馬車内で和馬を中心としたハーレムのような状況が展開されていた。
一方で、魔導師団のエースだったアリシアの痛ましい姿に気づく市民も多い。
しかし彼らは声に出すことはできなかった。
召喚勇者が連れている側近に言及するのは禁忌とされているのだ。
群衆のざわめきの中で和馬は鼻高々と手を振り続けた。
だがそんな中、市民たちの会話が断片的に聞こえてくる。
「聞いたか? あの噂……」
「"解放者"様と"救済者"様も勇者様と同じように四天王を倒したらしいぞ!」
「勇者様が倒した西部戦線のヴェインだけじゃないってことか!」
「なんでも四天王二体を"解放者"様が打ち破ったらしいぞ。
"救済者"様も"解放者"様を支えて共に戦ったらしいなっ!」
和馬の眉間に皺が寄る。
「おい! "解放者"とはなんだ!?」
皇帝の使者は噂の概要を詳しく聞いて、和馬に伝えようとするが……
「カズマさまが四天王を倒したんですよぉ♡」
「そうそう♡ きっと噂が錯綜してるんですぅ♡」
アリシアとヒーラーの少女が甘い声で囁く。
和馬は二人の美少女の言葉に一瞬気を良くしかけたがすぐに立ち直る。
(そうだ……! 俺は本当に四天王を倒したんだ!
それなのに何故こんな噂が広まっているんだ!?)
馬車内での雰囲気が一変する。
「ふざけるなっ! 四天王はこの俺が倒したんだ!
それなのにアルアォ……"解放者"も四天王を倒しただとっ!?」
怒りを露わにする和馬に対してアリシアがそっと囁く。
「どこの誰だか知りませんけど、カズマ様の相手じゃないですよっ♪」
ヒーラーの少女も同意するように和馬の胸に顔を埋めながら頷く。
しかし和馬の耳には届かない。
沿道から聞こえる市民たちの"解放者"と"救済者"についての称賛の声は増す一方だ。
「四天王を二体も!?"解放者"様ってどんな方なんだろう……」
「しかも"救済者"様も一緒って言うし……まるで本物の勇者みたい!」
和馬の顔から血の気が引いていく。
(俺が英雄扱いされるはずなのに……どうしてアイツがっ
"解放者"だの"救済者"だのが出てくるんだ!?)
彼の中でハリボテのプライドが崩れ始める音がした。
四天王を倒したはずなのに……。
召喚勇者として絶対的な地位を確立したはずなのに……。
街角では老若男女問わず"解放者"たちについて語り合う声が絶えなかった。
和馬に対してちょびっとだけザマァになりましたかねぇ……
逆にヘイトのほうが溜まったかな。




