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アルフォンス・リーンVS二体の四天王 -神具『聖輝』-

神殿の入り口で交わされる戦いは、

アルフォンスの限界を超えようとしていた。


「まだ……倒れるわけには……!」


アルフォンスの剣が火花を散らしながら砕け散る。

同時に彼の鎧も砕け散り、全身に無数の傷が刻まれていた。

グラヴィウスの鉤爪が顎を掠め、リザミアの魔法が左肩を焼く。


それでも彼は内なるチカラで肉体を強化し戦い続けていた。


「どうした! その程度か!」


グラヴィウスの嘲笑が風を切り裂く。

アルフォンスは片膝をつきながらも剣の柄を握りしめた。


その時――


「アルフォンス様!!」


最奥から駆け寄るリース。

両手に抱えた剣を振りながら走ってくる。


しかし四天王たちも気づき、


「小娘! それが狙いか!」


グラヴィウスの影が稲妻のように疾駆。リース目掛けて突進する。


「危ない!!」


アルフォンスの身体が反射的に動いた。

盾のようにリースの前に立ち塞がり鉤爪の一撃を受ける。


「あぁっ! アルフォンス様っっ!」


鮮血が雪原に広がりリースは泣き叫ぶ。

それでも彼女の手から放たれた剣は確かにアルフォンスに渡った。


「これが……俺の……!」


痛みを堪えながらアルフォンスは剣を引き抜く。

リースは必死に治癒魔法を唱えアルフォンスを癒そうとした。


「大丈夫……もう少しだけ……頑張ってください……!」


リースの祈りと共にアルフォンスの傷が僅かに癒える。

完全にはいかないが体内から沸き上がる力を感じていた。


(そうか……これが……勇者のチカラ!)


アルフォンスの右手の中で剣が脈動するように輝きを放ち始めた。

神具の剣と内なる勇者のチカラが共振している。


剣を握る瞬間、アルフォンスの頭の中に古の声が響いた。


『我が名は――』


それは言葉ではなく感覚だった。

剣そのものから魂の共鳴のような波動が伝わる。


(星を貫く刃……?)


そうではない。もっと根源的な何かだ。

アルフォンスの指が鍔の装飾に触れた時、突如として名前が閃いた。


聖輝(せいき)


光輝く星々を束ねたかのような剣。


アルフォンスがその名を認識した刹那――刀身が虹色のオーラを纏い始める。


「これが……俺の剣……!」


聖輝を構えたアルフォンスの隻眼が鋭く研ぎ澄まされる。

失われた左腕さえ今は問題ではない。


「馬鹿な……!」


グラヴィウスが怯んだ。聖輝から放たれる波動は明らかに異質なものだ。


「聖輝……!」


リースが息を呑む。その名こそ剣の真の姿なのだと直感する。


「覚悟しろ……四天王!」


アルフォンスの右腕が白く輝き聖輝が雷光のように走った。


周囲の時間が止まったかのように錯覚する斬撃が、

グラヴィウスの翼を斬り裂きリザミアの魔法陣を粉砕した。


---


雪嵐が荒れ狂う戦場で、アルフォンスは聖輝を掲げた。

刀身から放たれる光が吹雪を割るように放射状に広がり、

グラヴィウスとリザミアを眩惑させる。


「何だ……このチカラは!?」


グラヴィウスの鱗が逆立ちリザミアの唇から血が滴る。

聖輝を中心に世界が塗り替えられていく感覚──

かつて女神から授かった真の勇者の剣は今こそ主を迎えたのだ。

 


リーンは吹雪を避けながらも治癒魔法を送り続けた。 

強化魔法も重ねてアルフォンスの速度を上げていく。


「もっと……アルフォンス様に力を!」


聖痕の杖が淡く輝く。彼女の祈りが白い吐息となって昇華していく。


アルフォンスの身体から青白い蒸気が立ち上る。

聖輝と融合した勇者のチカラが溢れ出しているのだ。


「行けぇぇぇっ!」


一閃。


グラヴィウスの尾が断ち切られリザミアの魔術障壁が砕けた。

四天王たちが動揺する中さらにアルフォンスは距離を詰める。


「これで終わりだ!」


聖輝に天を衝くような光を纏わせ、四天王たちを切り掛かったその時──


「まだだっっ!」


グラヴィウスが地面に鉤爪を突き立て地脈を乱す。

大地が裂け巨大な亀裂がアルフォンスを飲み込もうとする。


「こんな搦め手を使わざるを得ないとはな……!」


リザミアもまた禁呪を解き放とうと魔力を凝縮する。


その時──


「やらせない!」


リーンの声が響いた。彼女は杖を振るい聖痕の杖から紅蓮の炎を巻き起こす。

聖痕の杖から放たれた炎はグラヴィウスの鉤爪に直撃して地脈の乱れを阻止した。

さらにリーンは禁呪を唱えていたリザミアをも炎に包み込む。


「僧侶の分際で……!」


グラヴィウスが炎に包まれ苦悶の咆哮を上げる。

リザミアも禁呪の詠唱を中断し後退せざるを得なかった。


「リーン……!」


アルフォンスが驚愕に目を見開く。


「アルフォンス様! 私も一緒に戦います!」


その声に迷いはなかった。彼女は勇気を持って杖を振るう。

彼と共に戦いたい、彼を守りたいという想いだけが今の彼女の全てだった。


「ならば俺も負けてられないな……!」


アルフォンスの笑みが戦意を漲らせる。

リーンの援護のお陰で決定的な隙が生まれたのだ。


「終わりだ四天王!」


聖輝の光が膨張し周囲を照らし出す。

グラヴィウスが炎の中から突進するがその牙を打ち砕くように斬撃が走った。


「ごふぉっ!」


グラヴィウスがアルフォンスの斬撃に吹き飛ばされたのと同時に、

聖輝の輝きがリザミアを捉えた。


聖輝の刀身が光を帯び回転するように斬り上げられた。

リザミアの胴体は斜めに深く切り込まれ、悲鳴も上げられずに雪原に倒れる。


「まだだぁぁぁ!」


怒りに震えるグラヴィウスが最期の力を振り絞り突進する。


アルフォンスは正面から受け止めることなく、

最小の動きで回避すると背後から袈裟斬りを入れた。


「聖輝……これぞ勇者の剣の力!」


聖輝から放たれた衝撃波がグラヴィウスに致命傷となる一撃をもたらす。


かくして、二体の四天王は雪原に沈んだ。



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