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アルフォンス・リーンVS魔王軍幹部 -勝利と告白-

シャドウナイトが放つ暗黒の波動が村全体を覆うように広がっていく。


「アルフォンス様っ……!」


リーンの声が聞こえる中、アルフォンスは反射的に左腕を翳して身を守る。

隻腕のアルフォンスにとって左半身は本来死角であるはずなのに―

今は不思議な程に自然な動作で動けていた。


(女神の加護……これが『庇護』のチカラか)


全てを失い絶望すら持たずに、ひとり彷徨っていた孤独とは全く違う。

かつての、あの時までと同じように自分が守る「何か」が今はあるのだ。


そしてそれはリーンと共にあるからこそ強く感じられる。

暗黒の波動に飲み込まれながらも、アルフォンスは意識を保ち続けた。


(必ず生き抜いて見せる……)


決意を固めながら波動の中心に向かい走る。

視界は奪われたものの感覚は研ぎ澄まされていた。


魔族の気配。大地の震動。

そして人々の叫び声―その全てが彼に道を示してくれる。


(今だ―)


剣を一閃すると―まるで鏡面のような空間が割れ、眩しい光が溢れ出した。


「グアアアァ!」


シャドウナイトが叫ぶ。漆黒の鎧が砕け散る。

"女神の勇者"アルフォンスの放った斬撃は闇を切り裂いた。


「何故ダ……! 片腕デ……隻眼ノ男ガ……」


仮面を剥がされた魔族は驚愕の表情を浮かべる。


「人は……どんな障害があっても……乗り越えることができるんだ!」


隻腕となったことで得た新たな均衡感覚。

隻眼となったことで鍛えられた直感。


それらはアルフォンスの潜在能力を開花させ、新しい可能性をもたらしていた。


「バカナ……! 我ラガ魔族ニ対シテ……ソンナ力ナドアルハズガナイ!」


シャドウナイトは後退る。しかし―


「もう遅いっ ここまでですっ!」


背後からリーンの声が響いた。彼女は聖杖を高く掲げていた。


「聖光……浄化!」


聖なる光が闇を貫く。

シャドウナイトの身体から黒い煙が噴き出し始めた。


「ギャアアア!」


断末魔の叫びを上げながら漆黒の魔族は霧散していく―


---


戦闘が終息を迎えると同時に村全体が静寂に包まれた。


「アルフォンス様!」


リーンが駆け寄ってくる。


温かく柔らかい彼女の微笑みは、

白く小さな花のように戦闘の緊張感を和らげてくれる。


「ありがとう。リーンのおかげで助かったよ」


アルフォンスは右腕で剣を収める。

既に体力の限界を超えていた。両足が震えている。


「よかった……ご無事で」


リーンは安心したように息をつく。

しかしその瞳には僅かに涙が滲んでいた。


「そんな顔をするなよ……聖女様」


「でも……今回は本当に……危なかったんですからね!」


彼女の言葉にアルフォンスは苦笑する。

確かに今回ばかりは命を落としてもおかしくなかったかもしれない。


(それだけ俺も成長したってことか)


過去の自分では到底及ばなかっただろう。

隻腕隻眼となったことで逆境を乗り越える精神力が培われた。

女神の祝福もそれに呼応するかのように力添えをしてくれていた。


「リーン。これからどうする?」


周囲を見回すと村人たちは恐る恐る出てきている。

多くの建物が壊れており被害は甚大だが死傷者はゼロ。


「とりあえず……怪我人の手当てをして食糧の配給を手伝いましょう」


リーンが答える。彼女は既に冷静さを取り戻していた。


「そうするしかないな。でもその後はどうする?」


アルフォンスは尋ねる。

勇者の神具を見つけるための旅は一旦中断せざるを得ないだろう。


「私は……この村の人々を助けたいです」


聖女らしい強い意志が込められた言葉だった。


「そして……少し休憩してから……また旅立つのです」


「分かった。俺も協力するよ」


こうして二人の旅は続いていく。

勇者の神具を見つけるまでの長い道のり。途中で何度も困難に遭遇するだろう。

しかし今は互いに信頼できる仲間がいる。それだけで充分だった。


---


数日後の夕暮れ時。


修復作業が続く村の一角でリーンが呟くように言った。


「アルフォンス様。一つお願いがあります」


「なんだ?」


彼女の表情はいつになく真剣なものだった。


「私は……魔族との戦いが終わった後もあなたと一緒にいたいと思っています」


突然の告白にアルフォンスは言葉を失う。

リーンは目を逸らすことなく彼を見つめている。


(まさか……そういう意味で言ってるのか?)


考えたこともなかった。聖女としての使命感を持ちながらも――

彼女は一人の人間としての感情を持っている。


「それは……どういう……」


口ごもるアルフォンスにリーンは微笑む。


「今すぐお答えいただかなくても結構です。

 ただ……私の気持ちを知っておいてほしかったので……」


そう言い残すと彼女は去っていく。


残されたアルフォンスは呆然とする。


「おいおい……勘弁してくれよ」


独り言を漏らす。


彼自身も気づかないうちにリーンを特別な存在として見るようになっていた。

しかし彼にはまだ女神に選ばれ、己に定めた「勇者」としての使命が残っている。


それにアリシアの事も完全に吹っ切れたわけではない。

思い出したくない程の恨みがあった。

だが……もしかしたら彼女の意思では無いのではとも思い始めている。

女神の奇跡でも復活しない隻腕隻眼がそう訴えているのかもしれない。


(神具を見つけて魔王を倒し、魔族との戦いを終えたあとには……)


その時はきっと答えを出すべきなのだろう。アルフォンスは確信する。


「まったく……俺は元に戻ってきたのかな?」


彼は苦笑しながら村の夜景を眺める。

破壊された家屋の傍で子どもたちが遊んでいる。笑い声が聞こえてくる。


(俺自身のかつての誓いにかけても……この世界を守らないとな)


その思いがより強くなった。

女神の祝福を受けた「隻腕隻眼の勇者」アルフォンス。

そして彼と共に歩む決意を固めた聖女リーン。


二人の物語はまだ始まったばかりだ。

そしてその運命の糸は大きく動き出す兆しを見せ始めていた―



こういうバトル展開って需要ありますかね?

もっと短い方がいいのかな……

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