アルフォンス・リーンVS魔王軍幹部 -守る為に-
ゴメンなさい2つに分けました……
アルフォンスとリーンは今日もまた別の村に到着していた。
「助けてください……娘が熱病で……」
涙ぐむ母親を前にアルフォンスが駆け寄る。
「安心してください。すぐに診断します」
村の広場には多数の患者が横たわり苦しんでいる。
リーンは魔法でテントを設営しながら必死に治療を続けていた。
「アルフォンス様……こんな大人数は……」
「分かってる。だができるだけのことはしないとな」
彼がそう答えた時――遠くの丘で爆発音が響いた。
「あれは……」
アルフォンスが振り返ると村人たちは悲鳴を上げる。
「魔物だ! 魔物の大群が!」
村人が逃げ惑いパニックに陥る。
爆風の中から現れたのは魔族の軍勢だった。
「こんなタイミングで……」
歯軋りするアルフォンスだが躊躇している暇はない。
彼はすぐさま村人に指示を出し防御陣形を整える。
「リーン。俺と一緒に来てくれ!」
「はい!」
聖女が杖を掲げて光の結界を展開する。
アルフォンスは魔族に向かって剣を構えた。
「いくぞ……!」
魔族の軍勢が迫ってくる。
先頭に立つのは漆黒の鎧を纏った「シャドウナイト」と呼ばれる存在。
驚いた事に魔王軍幹部だ。その背後に数百もの魔物が控えている。
「くそっ……なんでこんな所に魔族の幹部と軍隊が」
アルフォンスは舌打ちする。
帝国の情報を得られない寒村では大規模な魔族の動きが分からない。
「アルフォンス様……」
「リーン。大丈夫だ。まずは避難経路を確保しよう」
「はい、わかりました」
彼女が再び魔法を使い光の道標を作る。
村人たちを誘導しながらアルフォンスはシャドウナイトへ向かって走る。
「オマエガ……勇者カ?」
シャドウナイトの低い声が響く。
仮面の奥で赤い眼が光っている。
「だとしたらどうする?」
右腕で剣を構えるアルフォンスにシャドウナイトが嗤う。
「ナラバココデ死ネ」
シャドウナイトが剣を振り上げる。
同時に後方の魔物たちが一斉に襲いかかってきた。
「アルフォンス様!」
リーンの叫びと共に聖杖から光が迸り魔物の一部が弾かれる。
しかし数が多すぎる。瞬く間に村の外周が包囲されていく。
「くっ……ここを突破しないと避難させられない!」
アルフォンスは剣を振るい近づく魔物を次々と蹴散らす。
だが隻腕のハンデが徐々に蓄積していく。
剣の重さを右腕一本で支え続けるのは並大抵の事ではない。
「アルフォンス様! 私が援護します!」
リーンが聖杖を掲げ聖なる光を放つ。
魔族にとっては猛毒ともいえる光だ。しかし――
「無駄ダ」
シャドウナイトの剣が空を裂きリーンに向かって放たれる。
アルフォンスは瞬時に反応し剣で受け止めたが……
「グッ……」
衝撃で右腕が痺れ剣が手から滑り落ちる。
隻腕ゆえの弱点が露呈してしまった。
「アルフォンス様!」
リーンが泣きそうな声で叫ぶ。
「大丈夫だ……まだ動く」
アルフォンスは懸命に剣を拾い上げるが、
その間にシャドウナイトの追撃が迫る。
避けきれないと判断し咄嗟に剣を盾代わりにする。しかし――
「ギャアアア!!」
背後から悲鳴が上がる。
振り返ると村人の一人が魔物に襲われていた。
他の魔物たちも村の中に侵入を始めている。
「リーン! 村人を守ってくれ!」
「しかしアルフォンス様が……」
「俺は大丈夫だ。早く行け!」
リーンは迷うような表情を見せたがすぐに踵を返し村人たちの元へ向かった。
残されたアルフォンスはシャドウナイトと向き合う。
(ここが正念場だな……)
彼は剣を握り直し呼吸を整える。
隻眼では相手の動きが見えにくい。
隻腕では攻撃の威力が半減してしまう。
しかし彼はそれを補うだけの技術と覚悟を身につけていた。
女神の加護による第六感が冴え渡り周囲の動きを読む。
「オモシロイ……」
シャドウナイトが嗤う。
その表情は仮面越しでも分かるほど獰猛だ。
「ならば試してみろ」
アルフォンスは地面を蹴り上げ突進する。
剣と剣が激しくぶつかり火花が散る。
「ヌゥゥ……」
シャドウナイトが唸り声を上げる。
隻腕のアルフォンスの動きは俊敏で読みにくい。
女神の加護で得た超人的な身体能力を最大限に活用し戦う。
「ハッ!」
横薙ぎの一閃。
シャドウナイトが後退する。
「驚イタゾ……片腕ノオトコニシテハマトモダ」
「それは光栄だな」
皮肉混じりの言葉を返しアルフォンスは距離を詰める。
隻腕のアルフォンスにとって長期戦は不利だ。
早急に決着をつける必要がある。
「だが……まだ終わりじゃない!」
全身の力を込めて剣を振るう。
女神の祝福を受けたアルフォンスの剣技は魔を祓う力を帯びている。
シャドウナイトの黒い装甲に亀裂が走った。
「グオオ……」
初めて苦悶の声を上げるシャドウナイト。
しかし次の瞬間――
「オノレェ……人間ゴトキガァァ!」
怒号と共に暗黒の波動が放たれた。




