ぜん住人死亡物件
暑いのでショートホラーをかきました!
ぜひ涼んでくださいなのです
「本当にここを格安で借りれるんですか?」
内見をしながら大家に改めて聞く。
「はい、ただ事故物件でして……」
大家は顔を暗くし、うつむきながらそう答える。
やはりそうかと俺は思った。
都内駅近、2LDKなのに家賃は三万ぽっきり。
事故物件か釣り物件でもない限りありえない値段だ。
「どういういわくがあるんですか?」
「ぜん住人が行方を消していまして……。荷物とかはこちらで処分してますがそんな感じです」
汗をしきりに拭きながら、大家は目を泳がせてそう教えてくれる。
「そんな事か。てっきり、自殺とか殺人とかかと思いましたよ」
「それは安心して下さい。この部屋に死体の一つもありませんから」
にこりと笑って大家がそう言ってくれた。
「よし、ここを借りるぞ! 早速手続きを頼む」
「ありがとうございます! 了解しました」
よほど借り手に困っていたのか、大家はすごく喜んでいる。
俺はその場で契約を済まして、このマンションに住むことに決めた。
初めの一週間は新しい部屋になれずに寝付けなかったが、徐々に慣れてきた頃。
俺は視線を感じて、目を覚ます。
誰だ? ベット横に白いワンピース姿が見えた。
金縛りか体が動かず、顔だけを何とか動かす。
女性だ、髪の長い女性がなにかを言っている。
ただ、声は聴きとれない。
疲れてるだけだ! 俺はそう思って目を閉じて眠るように努めた。
その日から毎日その女性は俺の枕元に現れて何かを言ている。
俺はさすがに気味悪くなって寝る場所を変えてみたが、その女性は現れ続けた。
マンションの事を調べようと休みの日にパソコンで検索をかけてみる。
今年も被害者が!? ○○マンションの怪異という記事がヒットし記事を読んでいく。
読みながら俺は目を疑った。
303号室全住人行方不明に……。
去年もその前の年にも何人ものこの部屋の契約者が行方をくらましているようだ。
俺はそこで大家の言葉を思い出した。「ぜん住人が行方不明でして」
俺はてっきり前住人だと思っていたけど、全だったなんて……。
あの枕元に立っている奴が原因か?
俺は除霊方法を検索して、夜に備えた。
その日の夜もそいつは現れた。
四隅に置いたしおなんか役に立たない。
次の日は空気を入れ替えようと小窓を開けて眠りにつくことにした。
小窓を開けるとどこからか甘い匂いが部屋に入ってくる。
お香? 仕事帰りにも廊下で匂ってるやつだよな?
でもこのフロアは俺以外住んでないはずだけど? 不思議に思いながらベランダに出る。
やはり隣りから煙が少し出ていた。
誰か住んでるのか? でも大家は誰もいないって言ってたはず……。
その香りをかいでいると余計に眠くなってきて、明日にでも大家に聞こうと俺は部屋に戻りベットに倒れ込んだ。
「今回は男だけど、我慢するか」
どこからか男の声がする。
ぼーっとした頭だと分からない。
「……ぐぅ」
突然走った痛みに声を出したが、口に何かが付いていてうまく声が出せない。
「今楽にしてやるよ」
かすれた視界に大家の顔が見えた。
甘い匂いが部屋に充満している。
目は覚めたのに力が入らない、頭が痛い。
この匂いのせいか?
大家の手に包丁が見える。
俺は殺されるのか……。
その大家の後ろにまたワンピース姿の女性が立っていた。
女性の口の動きを俺はジッと見続ける。
「だから、逃げろって言ってたのに……」
こいつは警告してくれていたのか。
身体に痛みがはしり、意識がそこで途切れた。