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 人間と敵対する存在、魔王が現れたのは数百年前のことだ。勇者一行の活躍によって、魔王を倒すことこそできなかったが、致命傷を負わせて弱体化させることには成功した。


 負傷した魔王は姿をくらまし、数百年経った今でもどこにいるのか所在はわかっていない。


 そして勇者一行が亡くなった後も、魔王は魔物たちを生み出し続けていて、人々に恐怖の種を植えつけている。


 勇者学院は、いずれ外の世界に出て魔物たちと戦うための勇者候補を養成するために、王国が設立した機関だ。


 学院は大陸中に複数あって、俺たちがいる第四勇者学院もその一つだ。


 学院内の敷地は相当に広く、ヘーレスいわく大きな町くらいはあるらしい。


 生徒たちが学習するための校舎や室内訓練場、寝泊まりする学生寮。運動をするための校庭まで備えつけてある。


 それから学院には生徒たちの立ち入りを禁じていて、教員しか入れない区画や建物がいくつかある。学院が広いといっても、生徒が快適な生活を送れているわけじゃない。


 そしてこの学院は巨大な壁に囲まれている。外周に沿って、円を描くように白い壁が築かれている。


 鍛えられた勇者候補の運動能力があれば、壁を越えるだけなら不可能ではない。しかし、実行したところで徒労に終わる。


 なぜなら壁とは別に、学院には魔術で結界が張り巡らされているからだ。生徒が無断で外部に出ることができないように、不可視の壁が置かれている。


 よしんば壁や結界を越えることができたとしても、そのとき生徒は命を落とすことになる。というのも、勇者候補である生徒たちの体にも、訓練用の魔物と同じく【自爆の魔術】が刻印されているからだ。


 勝手に学外に出れば、【自爆の魔術】が発動して、その生徒は見るも無惨な死に様を迎えるわけだ。


 生徒たちに刻印された【自爆の魔術】を外すには、解除用の杖がいる。卒業試験を合格できた卒業生のみが、その杖で【自爆の魔術】を解除されて壁の外に出ることを許可される。


 それ以外では、緊急時であろうとも生徒が壁の外に出ることは許されない。


 あの壁の向こう側にある景色は、学院を卒業するか、退学処分になって別の施設に行くまでは、拝むことができないということだ。


 この壁に囲まれた学院は、魔物と戦う勇者候補を養成する場所なので、身体能力と魔力量に秀でた子供たちが集められる。


 便宜上、勇者候補と呼称されているが、要は身体能力が高くて魔力量が人並み以上にある人間のことだ。


 入学する以前のことは、記憶を操作する魔術で消去されているので、両親の顔や名前、自分がどんな環境にいたのかすら覚えていない。物心ついたときには、ここで教育を受けていた。

 

 学院は八学年制度で、七歳くらいの子供たちが一年生として入学してきて、八年生の後期になったら卒業試験が行われる。


 俺とルリアとダインは最上級生である八年生。ノエルは二つ下の六年生になる。


 そして学院の生徒たちには、それぞれ番号がつけられる。


 俺は444号。ルリアは452号。ダインは453号。ノエルは535号といったものだ。


 けど生徒たちは各々が自分に名前をつけていて、お互いに番号ではなく名前で呼びあっている。その名前は図書室にある小説などの本から取ったものが多い。


 教員たちも生徒同士が番号ではなく名前で呼びあうのは許容しており、口やかましく注意することはない。


 俺のリオンという名前は、以前学院にいた姉さんがつけてくれたものだ。小説のなかに登場する勇者がリオンという名前だったので、そこから取ったらしい。


 昔はなんだか名前負けしている気がして好きになれなかったが、今となっては気に入っている名前だ。なので教員から番号で呼ばれると、苛立ちを覚えてしまう。


 この学院内での競争は厳しく、進級するごとに生徒数は減っていく。  

 

 能力不足で退学処分となった子供は別の施設に送られて、そこで別の仕事をこなすことになるが、どういう扱いを受けるのか、詳しい情報は開示されていない。


 だけど退学になるのはまだマシなほうで、魔物との戦闘訓練などで命を落とす子供だっている。大抵は生徒に命の危機が迫れば、魔物に刻印された【自爆の魔術】を教員が発動させるのだが、何らかの不測の事態が起きて間に合わなくて命を落としてしまうこともある。


 死んでしまうくらいなら、能力不足と判定されて退学処分になった方がいい。


 多くの生徒たちがふるい落とされていくなかで、無事に八年生になれるのはほんの一握りだ。

 

 そして競争を生き残って最後に待っている卒業試験を合格すれば、壁の外に出ていき、卒業生の一人として魔物との戦いに明け暮れることになる。それが勇者候補である生徒たちの運命だ。


 その外界では、人間の敵である魔物が頻繁に出現する。


 魔物と一口に言っても、強さのレベルがあって個体によって能力が異なる。レベル1からレベル3までの魔物なら、勇者候補ではない普通の人間でも、戦闘訓練を積んで魔術を身につけていれば対処できる。勇者候補ならば、数体同時に相手取ることも可能だ。


 しかし、レベル4以上の魔物になると、勇者候補でも生身では対処できない。戦闘能力を格段に向上させる勇者の鎧がなければ打倒は難しい。


 それに魔物はレベルアップして強くなる。レベル3かと思っていたら、戦闘中に突如としてレベル4に進化して、手に負えなくなることもある。


 そんなバケモノどもと渡り合うために、勇者候補の生徒たちは学院で能力の向上を求められる。





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