表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/42

19





 闇を払うように何本もの光の線が通路を走っていき、標的に命中して弾ける。長い手足のついた人型のモノや、四足歩行の狼型のモノが転倒して動かなくなる。


 まだ数体残っている。気を休めるわけにはいかない。一体たりとも残さずに片づける。


 暗闇に目を慣らしながら地下の通路を進んでいくと、魔物と遭遇した。やはり地下にまで潜り込んでいたようだ。


 現れたのは、黒い影が人間のような形になっているレベル1の魔物。そして狼のような姿をしたレベル2の魔物。それらが合わせて十体ほどだ。


 凶暴化していて攻撃性が増しており、訓練で戦うときよりも手強い。


「ルリア」


 名前を呼ぶと、ルリアは距離を置いたところにいる残りの魔物たちに狙いを定める。構えた右手が閃いて、【光の矢】を連射。放たれた矢が魔物たちを的確に射抜いていく。


 ルリアは遠距離からの魔術攻撃を得意としているので、命中率は抜群だ。


 しかし、全てを射抜けるわけじゃない。レベル2の狼型の魔物たちは敏捷だ。ルリアの放った矢を避けると、獰猛な息づかいをしなかがらこちらに向かって突進してくる。


「ノエル、頼む」


 ノエルは緊張した表情で右手を構えると、【光の矢】を撃ちまくった。甲高い悲鳴が通路に響く。レベル2の魔物たちを射抜いて転倒させる。 


 先日ノエルは自分の能力に不安を抱いていたが、上手くできている。魔術を使用する際の明確なイメージを持てているようだ。実戦でこれだけやれるのなら、問題ない。


 だけどまだこちらに迫ってくる足音は消えていない。二体のレベル2の魔物が獣性をむき出しにして、唸りながら直進してくる。


「ダイン!」


 俺が声をかけるよりも早く、ダインは動き出していた。近づいてくる二体の魔物のもとに駆けていき、自ら距離を詰めていく。


 魔物たちが牙を覗かせて跳びかかってくる。


 ダインはステップを踏むように右に回避。魔物の牙をよけると、固めた拳で面長な横っ面を殴り飛ばす。一撃、二撃と強烈な打撃が連続で繰り出され、二体の魔物が金切り声をあげて転がった。


 接近戦には自信があるので、魔物に近づくことに恐怖心はないようだ。


 すかさずダインは横転した魔物に向けて【光の矢】を撃ち込み、息の根を止める。


 魔物を全て仕留めると、俺は五感を研ぎ澄ませて周囲を警戒する。他の魔物の息づかいや足音は聞こえない。気配もない。残敵はいないようだ。


「進もう」


 みんなに呼びかけると、魔物たちの死体を避けて先に進む。


 今ので何度目の戦闘になるのだろう。地下に降りてから、多くの魔物を始末してきた。感覚としては、かなり奥まで来た気がする。


 警戒をゆるめずに前進していき、横幅のある通路を歩いていく。


 そうして足を進めていくと、目的地にたどり着いた。


 地下にある広間は四方にひらけていて、天井も高い。けど地上の建物よりも気温が冷え込んでいる印象を受ける。


 ここには勇者の鎧を装着する訓練のために、何度か訪れたことがある。


 奥にある長机の上には鉄箱が置かれている。あのなかに、球体になった勇者の鎧が保管されているはずだ。あそこから教員たちが鎧を取り出しているところを前に見たことがある。


 入り口付近から様子をうかがうと、広間のなかで動いているモノがいた。


 黒い影が二足歩行でうろついている。大型の獣のような姿の怪物だ。レベル3の魔物。それが七体もいる。


 これまでの道中で遭遇したのは、レベル1とレベル2の魔物ばかりだった。ここにきてレベル3の魔物が現れたことに、舌打ちをしたい気分になる。凶暴化しているので、当然いつもより危険度は高い。先日の訓練のことが頭をよぎる。


 アイツらを排除しないことには鎧を手にすることはできない。レベル3なら、なんとか生身でも対処できる。


 まだ魔物たちは、俺たちに気づいていない。やるなら今が好機だ。


 同行している三人と目を見交わす。 


 ルリア、ダイン、ノエルは首肯して右手を構えた。


 俺も三人と同じように右手に魔力を込めると、イメージをふくらませる。


 そして四人で同時に飛び出すと、【光の矢】を連射して奇襲を仕掛ける。一斉に放たれた光が広間にいる魔物たちに突き刺さり蜂の巣にする。


 七体全てを殺しつくすことはできない。倒れたのは五体だけだ。残りの二体は何発か射抜かれたにも関わらず立っている。


 残された二体の魔物のうち片方が、咆哮を轟かせ、荒々しい足音を立てながら迫ってきた。


「任せろ」


 友人たちに一声かけて、俺は走り出した。襲いかかる魔物に真正面から立ち向かう。


 大型の魔物が豪腕を振りかぶる。殺意を込めた一撃が叩き込まれる。


 身を低くしつつ、左斜め前に向かって疾走。強風が頭上をかすめ、魔物の豪腕を潜り抜ける。


 すかさず右手に魔力を集中。イメージ――こいつをブチ抜く瞬間を鮮明に思い描く。


 大型の魔物の脇腹めがけて、至近距離で【光の矢】を撃ち込む。閃光が弾ける。上半身の半分が消し飛ぶと、魔物はその場に崩れ落ちた。


 まずは一体。


 最後に残ったもう片方の魔物を始末して、早くアオハガネを取りに行かないと。


 逸る気持ちをなだめながら、その魔物に目を向けると、唖然とする。


 どういうわけか、最後の一体である魔物は苦しんでいる。頭を抱えて身もだえしていた。


 そして異変が起きる。


 黒い影のような肉体が膨張するように肥大化していった。より頑強な存在へと作りかえられていくように、手足も胴体も太くなって、見あげるほどの巨体に変わっていく。


「まさかこれは……」


 学院の授業で何度も聞いていたが、直に見るのは初めてだ。


 魔物は進化する。戦闘中でも、それが起きることがある。


 この魔物は、レベル3からレベル4に進化したんだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ