不審者な散歩
不審者な散歩
日頃のストレスからか、最近よく食べるようになった。食事の量も増えたし、そればかりかとにかく間食が酷い。以前はお菓子なんて殆ど買わなかったのに、習慣って本当に怖いのね。
そういうことで、今日から散歩することに決めました。そう、毎日ですよ。
私はパートだから午後三時半には帰宅する。それから、直ぐに散歩の準備。準備ったって、まあ、それなりの歩く格好に着替えるだけなんだけど。
さて、行きますよ。天気も私の散歩を祝福してるみたいで嬉しい。初日だし、取り敢えずは一時間でいいか。
橋の真ん中辺りで下校中の小学生とすれ違う。私は気持ちよく挨拶をした。
「こんにちはー」
男の子二人はぎょっとした表情で私を見た。そして、逃げるように走って行った。
「あらあら、元気だこと。転ばないでね」
私は苦笑した。
それから20分ほど経った時に防災放送が流れた。
「只今、下校中の小学生の児童二人に、こんにちはという声掛け事案が発生しました。格好は、黒い上下の運動服に白い帽子を被った女性とのことです。下校中の児童は注意して下さい」
そういう内容であった。
「ん?」
私は、改めて自分の格好を見てみた。
「合致してる・・・・」
前から歩いて来ているご婦人が私を見ている。
「まずい」
私は慌てて引き返した。このまま行くとまたあの橋だ。どこか横道に入らなければ。橋の手前の河川敷沿いの道に入った。また前から走ってくる人が居る。逃げるように道から外れる。暫く、あっちこっちへと歩き続けた。
「ここは何処なんだろう?」
見覚えの無い住宅街へ出た。
「しまった。スマホ持ってくるべきだった」
軽い散歩だからと置いてきたことを後悔する。
家から出てもう1時間以上彷徨っているだろう。西に向かう太陽を見て不安が頂点に達してきた。
そうだ誰かに道を教えて貰おう。丁度良いタイミングで女の子が歩いてきた。
「ちょっとごめんね。道に迷ってしまったから教えて貰えるかな?」
「きゃーー!」
女の子はダッシュで逃げて行った。
「え?」
そして、すぐに防災放送が流れた。
「只今、小学生の女子児童に道を聞く声掛け事案が発生しました。格好は黒い・・・・」
「きゃあーーーーー!」