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蓮池にいた君(思い出の中)

実家に到着すると祖父母が出迎えてくれた


祖母が

よく来たわね、車はそっちの広い所に

置いていいから早くあがってゆっくりして

と言う

促されるまま、父は車を移動させていた


僕と母は車から降りて

手で持てる荷物を家の中に運んでいた


祖父は寡黙な人だが家に上がると、


よう来た 


と少し微笑んで言った


車に乗っていた土産などの荷物を

ひとしきり家の中に移し終えると

祖母が淹れてくれたお茶を飲みながら

ゆっくりした

そのあと5人で墓参りに行った

あたりは薄暗くなっている

自分家の墓のろうそくに火を灯し

線香をあげる


お墓に来ていた近所の人たちに挨拶を交わし

家に帰ろうとした時、不思議なものを見た


それはお墓が並ぶ山の開けた場所から

さらに奥の山中

微かだが、薄く桃色の光が瞬いたように

見えた


その時、以前にみた夢を思い出した

蓮の花の色、綺麗な桃色

同時に胸に色々な感情が湧いてきた

懐かしく、でも切なく寂しい

もの悲しいとはこういうのをいうのだろうか


少し胸を押さえて俯く

急に俯いたため家族が心配してくれたが

僕は、夕焼けの綺麗さが心に染みたよと

言ってごまかした


家族は、

なに言ってんだと笑うと家路に着いた

僕も家族について行く

途中何度か光った方向を

振り向いたが、もうなにも見えなかった


家に帰ってくるなり、母と祖母が

せかせかと夕飯の準備をする

父は長時間の運転にさすがに疲れたのか

横になっている

祖父は眼鏡を上げ下げして回覧板に

目を通している


僕はさっきのことが気になってボーと

していた

すると祖父が一言


気になるなら確かめに行く、それが一番だな


僕は驚き祖父の方を見るが相変わらず

黙ったまま、回覧板を見ている


ひとりごとだったようだ


そのうちに母が夕飯の支度ができたと

知らせにきた

僕は父を起こし家族で食卓を囲む


夕飯を済ませると疲れていたのか

睡魔がきたため寝室に向かう

すると母が

明日はおおばあちゃんの

家に行くから寝坊しないでね


適当に返事をして部屋に行き眠りにつく


その晩また夢をみた


もうここには来ないで、


あの蓮池の少女だ

僕が言葉を発しようとすると

視界が曇っていく

何も見えなくなっていく


そこで目が覚めた

あたりはぼんやりだが明るくなっている


また寝る気にもなれず、

携帯をいじったり本をよんだりしていた

そのうちに祖母が朝ご飯の支度ができたと

伝えにくる


家族で祖母の作った料理を食べてると

パッとしない表情の僕を見て父が言う


どうした、よく眠れなかったか?


僕が答えるより前に母が


久しぶりだし布団が違うからね

わたしもよく眠れなかったわ


父が

となりでいびきかいてたのは誰だよ


そんな父と母のやりとりで談笑しながら

朝ご飯を済ます


朝の身支度を終わらせ、父、母と3人で

おおばあちゃんの家へと向かう

実家からそう遠くない所に段々見えてきた

見覚えのある瓦の立派な家だ


父と母が玄関のチャイムを押す


中から祖母より少し若いくらいの

おばさんが出てくる

おおばあちゃんの娘さんだ


よく来たわね〜、さあさあ上がって

おばあちゃんにあってってよ


僕のことをよく覚えているらしく

おばさんがニッコリと笑って


きっとおばあちゃんも喜んでるわよ


と言うから僕も思わず顔が綻ぶ


仏壇に線香をあげ、客間で茶菓子を少し

つまみながら昔話に花を咲かせていると

おばさんが思い出したように言った


そういえば、おばあちゃんよくあなたに

山のことを話してたわね

おばあちゃん、村の中でも珍しく

山に何がどこにあるか詳しく覚えている

人だったから


僕はよく覚えていなかったので

ポカンとしていると


無理ないわ、もう何年も経つし


おばさんはそう言うとまた父たちと話だした


父たちの世間話が聞こえてきて、

今年はこの村に若い夫婦が来たそうで、来年には子どもも生まれるんじゃないかという話だ

その夫婦は山野の風景が好きで、遠い所から、わざわざ移り住んできたという


僕はここの風景を見るとなぜか寂しい気持ちになるのにそんな人たちもいるんだなあ、なんて思ってた

それに子どもまで生まれそうなんて、まるでおおばあちゃんとのいれかわりみたいだ


そんな風に思いながら、おおばあちゃんのことを考えていた時、僕はふと思い出した

山について色々聞いた中でたった一度

聞いただけの話があったこと


それは山の蓮池の話だ

山の奥には小さな蓮池があって

お盆になるとご先祖様が蓮池の

綺麗な桃色の花を目印におりてきて

この村に帰ってくるのだと


場所は昨日ちょうど光をみたあたりだ

その話は1度しか聞いていないが

その前にも後にもその1度だけだったから

間違いない


僕は高校生にもなって

子供に戻ったかのように好奇心が溢れた

もしかしたら夢に関係あるかもしれない

行って確かめようかと迷っていると

あの時祖父が

放った一言を思い出した


行って確かめる、それが一番だ


その言葉の後押しもあり

僕はその蓮池があるであろう山中に

行くことを決めた


明日、午前中に行ってみよう、、、




再会と決意へ


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