蓮池にいた君(はじまり)
待って!
行かないで!
まだ君に伝えられてない、、、
目の前の女の子は
花が散るように静かに消えていった
高校生活も慣れてきた頃の
7月終わり、僕はおかしな夢を見た
それは行った覚えがない
美しい蓮の花が映える池
そこに1人の少女がいる
その子は僕に優しく微笑むと
消えていなくなってしまった
その子が消える瞬間、
何故だか僕は胸が締め付けられるように
苦しい気持ちになった
そこで目が覚める
あの夢はなんだったのかと
考えていると母の呼ぶ声が聞こえる
起きて〜夏休みだからってまだ寝てるの?
僕は自分の部屋を出てリビングへ向かう
時間は昼近間、遅いが朝ごはんにしよう
僕がご飯を食べていると掃除機をかける
母が言う
今年のお盆はお父さんの実家に行くから
その日は早く起きてよね
父の実家は、僕がまだ小学生の頃に
何度か行ってそれっきりだった
実家は山の麓の村にある
そこは自然が奥深く、村の人でさえ
山のどこに何があるかははっきり
覚えているひとはそんなにいないそうだ
小さい頃から街の方に住んでいた僕は
所謂、田舎の暮らしには慣れていなかった
だから、あまり父の実家に行くのは
気乗りしなかった
何より、最初に父の実家に訪れてからかは
はっきりしないが、父の実家に行ったり
そこの山野の風景を思い浮かべると
無性に寂しい気持ちが溢れてくるのだ
そうなる理由を僕は街の騒々しい感じが
田舎にはないから寂しく感じるのだろう
としか考えていなかった
今年はなんでも、父や父方の祖父母が
お世話になっていたという近所のおおばあちゃんが去年の暮れに亡くなっていて
その葬儀に出れなかったため、
せめてお盆は顔を出しに行こうという
話だった
僕自身はよく覚えていないが、
僕も家の中にいるのが退屈になると、
そのおおばあちゃんの所に行っては
話をしたり、お菓子をもらっていたと
親から聞いていた
そのため今回は僕も事情が事情なだけに
行くことにためらいはなかった
母に返事をしてご飯を食べ進める
その日は昨夜見た夢のことを思い出し
考えていて特に何もせず1日が終わった
次の日からは課題をやったり、
友人と遊びに行ったりして過ごした
そんなこんなしていたらあっという間に
父の実家に帰省する日がきた
いつもより早く起き朝食を済ませ
父の車に乗って3人で父の実家へと
向かう
数時間後、懐かしい山々の風景が見えてきた
同時にあの寂しい気持ちも少しずつだが
湧き出てくる
ふとあの時の夢が頭をよぎる
何故なのかわからないまま
考えているうちに父の実家に到着した
思い出の中へ