大人びた幼馴染
東京から来斗兄ちゃんが遊びに来た。来斗兄ちゃんのおばあちゃんがこの町に住んでいるから、お盆とお正月に家族で毎年来てくれる。来斗兄ちゃんが来る度に、山や川で遊んだ。でも、去年と一昨年は来てくれなかった。お姉ちゃんも来斗兄ちゃんたちのことを心配していた。
「よう明里、元気してたか?」
来斗兄ちゃんは私に変わらず接してくれた。私はこの二年で中学生になっていた。来斗兄ちゃんは二年前と同じ大学生。でも、髪型のせいか誠実そうな印象を強く持った。就職活動が始まったのかもしれない。
「来斗くん、久しぶりだね」
お姉ちゃんが役場から帰ってきた。今日は来斗兄ちゃんたちが来るから残業しなかったみたい。
「あ、こんばんは。お邪魔してます」
来斗兄ちゃんはお姉ちゃんが見えなくなるまで、視線を逸らさなかった。それを私に隠す素振りもなかった。
「来斗兄ちゃんって、お姉ちゃんのこと好きなの?」
「そりゃ、あんな大人っぽい美人は中々いないぞ? しかも小さい頃から遊んでくれた人だし、好きにもなるさ」
「ふぅーん。なら告白すれば?」
来斗兄ちゃんは乾いた笑い声を上げた。
「俺には高嶺の花だよ」
来斗兄ちゃんらしくない言葉だった。やってみなきゃわかんないだろ、が口癖だったのに。
「きれいな花なら、自分のものにしちゃえばよくない?」
「無理無理。俺にはそんな勇気ないよ。……どうした? 明里?」
そのときの私は来斗兄ちゃんには怒っているように見えたらしい。実際、怒っていたかもしれない。だって来斗兄ちゃんがたった二年で全然知らない人になってしまったような感じがしたから。変に格好つける来斗兄ちゃんが格好悪く見えた。子どもみたいに、考えるより先に行動するこの人が、いいなって思っていたのに。