95 朱家。
黔南からは再び日の出からの航行で、貴陽、安順、晴隆、黔西南、羅平と進み。
やっと、昆明へ。
いや陸路よりは遥かにお尻とかも楽なんですけど、働くって何だろう、とか思っちゃう位に優雅で。
船頭さん達のお陰でかなり壮族の言葉にも慣れましたし、良いですねこの道程。
「いやー、数日の余裕を持って来れましたねぇ」
『ですねぇ本当、逆に怖い』
「麗江に着かない事には、始まらないと思ってね」
《ですわね》
「なら、気が早くてすみませんが、次の行程は?」
「南下して玉渓市、石屏まで行き、異龍湖から川船か、倍の陸路の山道か」
《川船にしましょう》
『ですねぇ』
と言っても月経が終わらないと始まらないので、暫くは昆明に泊まるんですが。
翠湖の睡蓮が咲き始めていて凄く綺麗なので、四家とは翠湖を挟んだ反対側に有るお宿へ。
そして、ついに。
「あの、鶺鴒さん、お話しする事が」
『あ、もう聞かれたので言っちゃいました、中盤辺りで』
「え?何処で?」
『黔南ですかね』
「え、あ、すみませんでした」
流石にこの旅について聞かれたんで、覚悟して貰ってから、ちゃんと言ったんですよぅ。
まぁ、反応としては。
何だ、そんな事か、と。
『お母様が非童貞のお父様をずっと虐めてて、嫌になって茶楼で下働きを始めて、四家巡りに行ったそうですよ』
「あー、成程」
『しかもハレム、妾になるのを嫌がってご結婚したのにそうなってしまってるので、妾にどうだと誘って頂いた方の家の様子を伺ってみたそうで。まぁ、ソッチの方が遥かに良い暮らしをしてらっしゃって、何なら妾擁護派だそうです』
「流石にそれはどうかと、あの、私。あぁ、そうです、決めかねているのも勿論なんですが……」
流石に半陰陽の事は花霞に任せますよ、言うかどうか。
何処までの付き合いになるか、考えるのは花霞ですから。
因みにですが、この方は大丈夫だと思います。
何なら男色家、と聞いて目をキラキラさせる様な方ですし。
ほらね。
『ですよねぇ、ちょっとゴツい女にしか見えませんからね。けど不妊かもって、そうそう、そうです、月経が有っても妊娠出来るかは別ですから』
家に問題が有る子って許容範囲が大きいんですよね、自分も変な境遇ですから、まぁ稀に極小の子も居ますけど。
大概はガバい、だからだと思いますよ、お相手を見誤ってしまったの。
「ありがとうございます、貧乳友達ですか、ふふふ」
『私もそこそこ有りますからねぇ』
「いや私達を入れてやっと中の下じゃないですか」
『大丈夫ですよ、噂では芋を食うとデカくなるそうですから』
「あ、いや違いますからね、好きで食べてるんですけど、因みに何処の芋なんです?」
『南だか西だかの芋だとか、それと豆も良いとか聞いてますけど、結局は食べ過ぎたらダメですからね?』
「お砂糖ジャリジャリはもうしませんて」
『そうなんですよ、だから身にも胸にも付かないんですよこの子』
「あぁ、大丈夫ですよ、湯薬もお願いしてありますから」
ほらね。
大丈夫なんですって、若い子は特に。
「アイツら、まだか」
《今は昆明じゃよ。何じゃ、ついに嫌になったか、アレが》
「いや、そう、嫌じゃないのと好きの違いが分からん」
嫌悪感が湧かないのは勿論、鳥肌が立つ事も無ければ、拒絶する気も起きない。
だが居なくなられても別に、困らない。
《ふむ、嫌いでは無い、じゃよね》
『ですね』
「どうしたら好きになるんだ?」
『アナタの思う好き、とは何でしょう?』
「何度も食いたくなるメシ」
《じゃが、別に要らんのじゃよね、アレは》
「居れば便利だとは思うが、コチラから何かしたいとは思わんな」
《してみてから考えるしか無さそうじゃよね》
「不得手か」
《そうなんじゃよねぇ》
「専門は、誰になるんだ」
『やはり女媧神でしょうかね』
「誤解だったとは理解しているんだが、まだ無理だな」
《では妲己じゃろうかの》
「あぁ、それは面白そうだな」
そう期待してみたんだが。
《コレは仮の姿、と言う事にしておいて下さい》
どう見ても花霞の侍女で乳母の妲己なんだが、まぁ、良いか。
「好意に詳しいらしいが、実際の来歴を聞かせて貰おうか」
《私も、転移転生者に作り上げられた存在です。ですので、ある時にふと、ココに居て私が何者かを瞬時に理解し、何を成すべきかも既に理解しておりましたので、その通りにさせて頂いております》
「介入については不可侵なんだな」
《はい、既に神々や仙人として存在しておりますので、外れる事は不可能です》
「そうか、なら良い、無理に妲己と名付けられ同じ様な道を歩まされたんで無いなら、それで良い」
《ご心配頂きありがとうございます》
「だが惜しいな、アレはどっちなのかを聞きたかったんだが、向こうの知識は有るか?」
《知識は御座いますが、お答えは難しいかと。ただ、予測はしております》
「なら聞かせてくれ」
《噂の通りかと》
王を誑かした悪女。
まぁ、どうせ向こうはクソだしな。
「不満は有るか?」
《いえ、昔から存在している私への信仰が御座いますので。寧ろ、悪しき者に手を出せないのは、やはり悔しいものですね》
「それなんだが、転移者を代理とし、どんどん裁いたって良いと思うがな」
《器に違いが御座いますので、それは難しいかと》
「あー、俺とルーが反対だったらな、ガンガンぶち殺してやるのに」
《それはそれで、叶わなかったかと。法術は想像力が豊かな者程、容量は大きいそうですから》
「俺が転移していても、大して暴れられない、か」
《ですがココから転移すれば、あるいは》
「ココに転移が無理なら無理だな、もうクソみたいな世界で生きていける自信が無い、向こうへの転移ならさっさと自死を選ぶだろうな」
《法術はそこも関わりますので、はい》
生きたいと願う気持ち、か。
「はぁ。まぁ良い、じゃあ好意について頼めるか」
《お茶とお茶菓子を頂けるのであれば、ですね》
「取り敢えずは、俺の知る妲己の好みの物を出すぞ」
《はい》
安徽省の紅茶、祁門と。
「今は雪片糕しか無いんでな、コレで我慢してくれ」
《はい、頂きます》
所作を見る限り、妲己なんだが。
いや侍女の妲己に、で。
ややこしいな。
「それで」
《誰かに取られるのも構いませんか》
「おう」
《では、博愛主義者との違いは?》
「あー、面白い視点だな。そもそも博愛主義とは何か、だが、こうなると俺は博愛主義者だな」
《その真逆に位置する好意を好意と言ってらっしゃるかと》
「だな、となればヤるしか無いんだが。折角だ、アイツらが着くまで我慢させるか」
《配剤も十分ですし、それでも問題は無いかと》
「そうか?俺は僅かでも罪悪感から嫌な気持ちになっているぞ」
《全ては話し合いかと、手練手管は十分でしょうから、全ては話し合いです》
「あぁ、だな」
3人が最も効率的だ。
先生が仰ってましたけど、まさにその通りで。
正式加入となった鶺鴒が侍女として動いてくれてるお陰で、今回は月経が早めに終わった私は家を見回っております。
はい、四家に、朱家にお邪魔しております。
「お久し振りで御座います、総女官長様、大奥様」
『お久し振りですね、どうぞ薫風とお呼び下さい』
《そうよ、私は思規と。ウチの子がご迷惑をお掛けしてるのでは、あ、言えないわよね、本人の前では、さ、行きましょう》
大奥様、雨泽様のお母さん圧が凄い。
でもまぁ、実際に雨泽様には何のご迷惑を掛けられた事も無いですし、不満も無い。
「寧ろお世話になっております、本当に、マジで」
《あら、そうなの、なら良いのだけれど》
『良いと思う様な方が居たかどうかは』
「出ませんねぇ、探ってはいるんですが、あ、金絲雀はご存知ですよね?あの子もダメ、それこそ今回の鶺鴒さんも。早茶の茶楼にも行ってお伺いしたんですが、どうやら幼く若い子はダメみたいでして」
《あぁ、そうなのね。あの子、私達にも全く何も言わないから、そう、そうなの》
「あ、男色家と言うワケでも無いそうで、と言うか本当、コレはアレなんですが」
《興味が無い、のよね。男の子の強がりかも知れない、とも思っていたのだけれど、そう》
「ただ、私の知り合いも似た様な方で、でも他人に興味を示しまして。今回、お相手と共に麗江で待って下さってるので、もしかすれば、あるいは、と」
《良いの、確かにあの子が頑張らなくても、朱家が途絶えるワケでも無い。例え無理に沿わせても、お相手に何も良い事は無い、と》
「あの、雨泽様をお慕いしてらっしゃる方、とかは」
『私は聞いてはおりませんが』
《居ないそうなの、病弱でしたからね、仕方の無い事だけれど。あぁ、市井に降りてた事は知っているわ、しっかりとした護衛を雇っているらしくて、だからウチの者を1人だけ付けて見張らせてたの》
凄い、お互いに何となく知りつつも距離を取るって。
無理ですね私には、つい白状しちゃいそうですもん。
「成程」
《そこで何か有れば、と期待していたのだけれど。そうね、直接尋ねてみると良いわ、如何に何も無かったか。はぁ》
「やはり、お子さんは見たいですよね?」
《そうね、出来たらそう、でも最後に1人になる事が心配なのよ。どんなに孤独に生きてた方も、結局は1人を恐れる、それこそ呆けた方も他者を求めてしまうから》
アレですね、認知症で物取られ妄想する方。
思ってるからこそ出ちゃう症状らしいですけど、コッチにしてみたら。
「難儀ですよね、老いや病って」
《そうなのよ、だから散々心配していたのだけれど》
『その、御無理をしてる様子は?』
「いえ全く、すっかりお元気になられましたよ、長年の太極拳の成果が出たんですかね?」
《良いのよ、私は、この家はあの子を上手く導く事が出来なかった》
「世が安定してらっしゃるから、かと」
《でも騒動に巻き込まれたのでしょう?大丈夫?》
「あ、はい、私も特には」
《付き添いの侍女が攫われそうになり、ご実家に帰ったのでしょう?》
あ、そこは濁されて伝わってるんですね、成程。
「ほんの少しの間だけで、攫われると言うか、少しお話しなさっただけで、お相手の方も全く悪い方では無いとご理解頂けてますから」
《でも、後になって男性を怖がるかも知れないわ、そうなるとお嫁にも》
「失礼致します、凛風です、大奥様はいらっしゃいますでしょうか」
あ、ご当主様の奥様ですね。
何か有ったんでしょうか。
《ごめんなさいね。どうぞ、どうしたの凛風》
「どうしても大奥様にお話をと、お願い頂けますでしょうか」
「あ、私の方は大丈夫ですよ、どうぞどうぞ」
《そう、ごめんなさいね》
「いえいえ、ありがとうございました」
「では」
何でしょうね、急なお話って。
『すみません、どうにも女子は嫁でこそ、と言う方でして』
「あぁ、それで、ありがとうございます」
『大奥様をご案内次第、凛風様が尋ねてらっしゃいますから、暫くお寛ぎ下さい』
「あの、こう丁寧に話されると何だか、不思議ですね」
『そりゃもう前はウチの従業員と言っても過言では無い、謂わば手元の人材、それを過ぎれば全てはお客様ですから』
「お客なんですかねぇ」
『四家に見初められ四家の姻戚となるんですし、親戚筋と言えば親戚とも言えますね、確かに』
「そうなっちゃいます?」
『癒着や問題を起こさぬ為、今まで四家はお互いとの関わりを控えていたそうなんですが。外戚となれば別、しかも四家の領外ともなれば問題も起きないだろう、と。と言うか外戚の外支えは良く有る事ですから、それよりも問題視は起きないかと』
「あ、アレはどうですか?予備舎については」
『願ったり叶ったりですよ。相当な子は事前に篩い落とせますが、どうしても多く迎え入れてから理由を付けて篩い落としているので、出来る事なら良い子だけを抱えたい願望は何処も有ると思いますよ?』
「成程、御不浄に行ってきますね」
『はいはい、場所は覚えてますか?』
「出て右、左の突き当り、でしたか」
『はいはい、行ってらっしゃいませ』
余裕を持って行かないといけないのが、ココの不便な部分でしょうか。
と言うか服、上等な服は皺にならない様に捲り上げてから、下着を解いて。
これ、雨泽様、こうしたんですかね。
そうなると、春蕾さんも?
しかも暁霧さんに至っては手慣れてるでしょうし。
となると、脱がせるの上手そうですよね、暁霧さん。
「失礼します」
『あ、まだ大丈夫ですよ、お戻りに』
お、良いタイミングですね。
「お待たせしたわね」
「お帰りなさいませ奥様」
『お帰りなさいませ凛風様、大奥様のご機嫌はどうでしたか?』
「道士様が大奥様に話を聞いて欲しい、だなんて喜ぶに決まってるじゃない、頼られるのが大好きな方なんだもの。しかも話し上手な方なのか、相談する側とされる側がすっかり逆転して、つい聞き入ってしまったわ」
凄いですね道教って、世慣れた方が多いみたい。
「そうなんですね、成程」
「あぁ、アナタがハレムについて悩んでる事も、あの子が漢方をすり替えて売ってた事も、新築家屋の見張りや見回りの事も、異性装していたのも聞いているわ。ごめんなさいね」
「いえいえいえ、迷惑は皆無で寧ろ助けて頂いております」
「本当に?悪戯や何かは?」
「何も無いんですけど、あの方って悪戯なんてします?」
「前は、ね。大奥様が知らない事なのだけれど、良く諍いを起こさせてたのよ、市井で。幾人も仲違いさせたり繋げたり、まぁ、結果は良い方向へ向かうから良いのだけれど。いつか悪化させるんじゃないかと、心配していたのよ」
あぁ、サイコパスですからね。
「今は何も、寧ろ宥め役と言っても過言では無いですけど」
「その才をウチで生かせなかった事を後悔しているわ、私も、大奥様も」
「あの、それはやっぱりココが平穏だったからかと。見極めをしっかりなさる方なので、自分が何かをする必要が無い場では言う事もしませんから」
『面倒臭がりは治って無いんですねぇ』
「まぁ、責任を負えない事には口も出さない、賢い方だと思いますよ」
ウチの義弟が好かれなかった理由は。
賢さ、賢過ぎて恐れを抱き離れてしまうのよね。
「そこまで見抜いても、嫌に思わないのね」
「もっと上手の先生が居ますので」
「少しだけ、噂の先生にお会いしたけれど、天が二物を与えた方よね」
「そうなんですよぉ、綺麗で賢くて性根が素晴らしい、どうかしてますよね?」
「ふふふ、そうね、どうしても驕り高ぶりそうなものだけれど。アナタが謙虚で控え目なのは、あの先生のお陰かしらね」
「ですねぇ、家族と先生のお陰です」
「だからこそ、あの子を嫌がらないのかしらね」
「嫌がるって、あぁ、本当にもっと上の方が居ますから、そうなると無気力になっちゃいますね。抗っても何をしても無駄、息をする事も全て計画の中に入っていて全てを利用されてしまう、そう思うと無気力になっちゃうんですけど。雨泽様は先生と似て優しいので、心配した事も無いですね」
「そう」
「ただ、ココから先はあまりにも利が無いでしょうから、後はご自分の人生を生きて頂ければ良いかなと、まだまだお若いんですし」
ココでは怠惰で狡賢い子が、より良く生きている。
なら
「あの子はウチでは生かせないわ、だからあの子には自分で居場所を探して貰おうと思うの。夫とも相談はするけれど、多分、そうなると思うわ。だからもし嫌になったらいつでも追い出して、方便はコチラで用意しておくわ」
「はい」
「それで、予備舎の事だけれど。そうね、そろそろ夫を呼んで来るわね」
「はい」
ココで一番あの子を分かっている人は、彼だけ。
弟を見本に飄々と、まぁ、性根が良いから良いものを。
『で、俺が居ない間に俺を頼むって言われた、と』
「一応、どうするのかな、と」
俺の何も知らない所で勝手に。
まぁ、それで良いならそうするけど。
何でそんなに俺を信用してるんだろ、兄貴も嫁さんも。
『まぁ、そうするわ』
「もしかして方針をお伺いしてらっしゃらない?」
『直接言わないんだよ、あの人達、それこそ親は顔を合わせるのは嫌がるクセに探ろうとするし。明らかな厄介払いにしても、ごめんな、迷惑掛けるわ』
「いや持て余してらっしゃっただけかと」
『だとしても、まぁ、どうでも良いけどね』
臍の緒が切れた時点で、所詮は他人だし。
「こざっぱりしてらっしゃる」
『散々、可愛くないって言われてたし、コッチも血の繋がった親族だとしか思って無いからね』
『雨泽様、流石にそれは言い過ぎかと』
『青燕さ、何を知っててそんな事を言ってんの?』
『失礼しました』
他の奴は大概、ココで気まずそうにすんだけど。
しないんだよな、花霞。
『寧ろ、ココで何も言わないお前の方が不思議だわ』
「え?だってお二人共に間違った事は言ってらっしゃいませんし、取り持つまでも無いかと?」
『幸せな家に育った奴って、必ず取り持とうとすんだけどね』
「それこそ無知だからでは?内情すら知らない、誰かの奥深くを知ろうともしない無知な者の言葉、いつか恥ずかしい思い出になるでしょうね」
『申し訳御座いませんでした』
「あ、違うんです違うんです、青燕さんが知らないってワケじゃなくて、知ってて尚も言って深追いしなかっただけで、コレは若人への言及ですからね?」
『昔に取り持とうとした俺の知り合いに対して、な』
『ですが、知ろうとしなかった事は事実です、その前に言ってしまった事を謝罪致します』
『母親の具合が悪い時にカエルやトカゲを持って行ったんだよね、漢方になるから良い事だと思って、そしたら見せるなり凄い怒られてさ。で更に母親の具合が悪くなって父親にも怒られて、ちゃんと理由を尋ねてくれたのはウチの三男、当主だけ』
で未だにその誤解について謝られて無い、今も昔も俺は怒って無いよ、単に莫迦で阿保としか思って無いから話し合う気も無いだけ。
で、周りにこの話をすると大概は許せだ誤解だ、果ては話し合えって。
じゃあさ、躾けるべき親が謝罪の見本すら見せない事はどうなのかって言うと、親は仙人や神じゃないんだから、間違える事も有るって言うわけ。
そこは分かるけどさ。
なら、それこそちゃんと謝れば良いじゃん?って言っても、また最初に戻るわけ。
で仕方が無いから、じゃあどうしろっての、って尋ねるじゃん?
そうすると今度は他愛無い事から話して機嫌を伺って、その話題に入れ、って。
それ、もうとっくにやってるワケだよね、コッチは莫迦じゃないんだからさ。
って言うと、今度はコッチを狭量だと責め始めるか、そのウチ誤解も解けるよって投げるか話を流すか。
他の者を挟めってのも居たけど、三男が間に入って無いワケ無いんだよね。
なのにコレ。
「うん、ご両親が悪いですね、親だからこそ謝らないと」
『そこがクソ卑怯なんだよね、使用人を使って、謝ってらっしゃいましたよって言わせんの。そんな人間をマジで尊び敬って良いと思うワケ?って言うと、今度は厳し過ぎるってコッチを責めるか、流すか』
「で、周りが揉めたり繋がったりするワケですね」
『そうそう、コッチは問題にすらしてないのに、周りが勝手に盛り上がる。良い試金石になるから良いけど、もう決まった問答しか起きないからしてないだけ、新しい答えが無いのつまんないじゃん』
「まぁ、色々な方と接しての事なら、寧ろ世の解答は殆ど出尽くしてそうですもんね」
『それ坊さんに言われたわ、上手いなと思うよ、否定も肯定もしないの得意だよなアイツら』
「考える考えないを器用に使いこなす事がご専門でしょうからね、あ、良い意味で」
『それは儒教者が言ってたわ』
「となると、残りは道教の方ですね」
『今日言われた、何だと思う?』
「一緒に考えたり答えを探れる方が居ると、もっと楽しいですよ、とか?」
『凄いなお前、それ、成程なと思ったんだけど、何でそれ出た?』
「対が居てこそって思想なので、まぁ、そうかな、と」
『そこに至れず一人で問題無いと思えてるウチは若いからでしょう、けれど一人が性に合う者も居るから、性質の対となる者を大切にって。で、その後に初めてちゃんと両親から謝られたから超驚いたわ、道教凄いな』
「あ、謝られたんですね」
『まぁ、もう二度と戻って来ないかもって思ってたんだろうな、コッチは何も考えて無かったのにさ』
「マジで何も考えて無かったんですか?」
『もう既に考え終えて、なんとかなるだろうと思ってた』
「あぁ、やっぱり雨泽様の方が凄いですよ、大体を考え尽くしてるんですから」
『大体、だけだから抜けも多いけど、まぁ、そう食うに困る世でも生まれでも無いしな』
「ですよねぇ」
だからこそ、何処に居るのが楽しいか。
ならもう、コイツの近くじゃん。




