85 赤紙。
『正直、ココを離れるのが億劫です』
『ありがとうございます、宿屋冥利に尽きますねぇ』
「次の月経までに着きましょう、麗江」
《あら良いの?お買い物は、沢山持たせて貰ったのでしょう?》
そうなんですよ、それこそ店舗の譲渡代も何もかも渡そうとして来たんで、流石に止めました。
幾らなんでも旅路で落としたりだ盗まれたりだ、何か有ったら不安じゃないですか、だから証書を貰いました。
要は小切手です。
代金の取り立てはウチの実家に、って出来る証書、署名等は全て手書きの手の凝った品物でして苦労を掛けました。
まぁ、今度はコレを無くしたりしない様に気を付けないといけないんですけど、ココでからくり箱なんですよね。
黒檀よりも良いらしい斧折樺とか言う謎の木材で出来てて、箱の方が高いんじゃないか、と。
うん、重いんです。
硬い木って重いんですね、密度が詰まってるから。
でしかも細工が凄い。
割って壊そうって発想にならない様に、らしいんですけど、この木材は割れ難いんだそうで。
それこそ硬くて粘り強い木こそ、からくり箱には最適なんと薔薇姫様が。
ソレがコレ、なんだそうで、持ち物の中で1番高いのでは。
「最悪は、コレを売ったら」
《そうした物って買い戻すのは殆ど無理よ、何代も使うんだもの、他の方法になさい》
『それこそ髪を売ったら良いんですよ、相当になりますよぅ』
『刺繡して売ってたそうですね?』
『あ、処分させますね』
「えっ、進展してるんですか?」
『勿論ですよぅ、じゃないと出立なんて出来無いじゃないですか』
「あ、そうか月経か、じゃあどうしたって最速で麗江は難しいですよねぇ」
『と言うか月経始まりが金絲雀からって、何か、らしいですよね』
「分かります、もはや鶏ですよね」
《私も思っていたけれど遠慮していたのに》
『言っちゃってますよぅ薔薇姫様』
《あら失礼》
「まぁ、元はお2人にお任せしていたので、なるようになれ、なんですけどね」
《大丈夫よ、向こうとも相談しての事だもの。何事も程々に、ね》
向こう、とは勿論男性陣の事なんですが。
薔薇姫様、何処かで婚約者様と合流するそうで。
うん、大人数だぁ。
『さ、そろそろですし、お支度のご確認をお願いしますねー』
「外にも有るんですよねぇ、私の荷物」
『そらお引越しなんですから、と言うかアレは少ない方だと思いますけどね?』
《そうよ、私だってもう少し有るわよ?》
『どれだけ我慢してたんですか?』
「いや、我慢も何も、寸法計って分かってくれましたよね?」
全体的に大きくなってるんですよ。
いや本当にビックリしましたね、洋装と違うので多少のブレ幅は何とかなるから気付かなかった、と言うか無頓着だったので更に驚いたと言うか。
いやもう伸びないで欲しい、髪を高く結い上げると鴨居ギリギリなんですから。
そうそう、春蕾さん自然に避けてますけど、アレも相当慣れが。
そう言えばルーちゃんも。
身長順は春蕾さん、ルーちゃん、暁霧さんの次にトゥトクさん。
で雨泽様、先生、墨家のお2人の順なんですが。
先生を越したのは、流石にちょっとショックでしたね。
《けれど、もう、流石に、よね》
「そう願ってます、じゃないと困りますよぅ」
『どうやら大きな女性が好きな方も居るそうで』
『そうなんですね』
いや、そう好かれても今は困ります、コレ以上は本当に無理です。
『旅路の方が会えんのな』
今は花霞ちゃんと春蕾ちゃん、翠鳥ちゃんに兔子ちゃん達が船の食堂でイチャイチャしてるらしいのだけれど。
今日の今日まで殆ど会えないもんだから、春蕾ちゃんが大変だったのよねぇ、もう鍛錬か沈むかで。
でも絶対に文句は言わないし、要望も伝えなかったのよね。
逆に我慢強過ぎて心配になったわ。
「後半は月経休みだったものね、仕方無いわよ」
『それもだけど、証文も書いてたもんなぁ』
「本当にお店を譲っちゃうなんてね、少し気が引けちゃうわよね」
『でも子が出来たら店にずっと出るのは無理なんだし、まぁ良いんじゃないの』
「あら、出来ると思ってるのね」
『アレがマジで転移転生者なら、神様達が何とかするんじゃないの』
「アンタ、彼の戯れ言まで信じてるの?」
『冗談だと思ってんだ』
「と言うか半分は牽制よね、それだけお見通しだ、相応の力や後ろ盾はちゃんと有る。って事でしょう」
『まぁ、今は廃れてるらしいけど、それだって相当の数だしな』
「道教者を敵に回す、だなんて流石に儒教者でもしないものね」
『やっぱり有るんだ、呪い』
有ると知る弊害が有るのだけれど。
「知りたい?」
『知りたい』
「有るわよ、それで具合が悪くなって来る者も。蝦餃ちゃんの所にも良く来るんじゃない?」
《殆どは姉が対応しているから、ウチも道教とそこまで繋がりが有るのは知らなかったよ》
『ウチは本当に繋がりが無いだろうし、大猪も知らないって言ってたからなぁ』
「寧ろアンタが知らないのが逆に不思議よ、良く市井に行ってたんでしょう?」
『それこそ同年代、道教と関わりそうな年齢のとは関わって無いし、面倒そうな家とも関わって無いし』
「まぁ、呪われるって相当の恨みを買ってる家だものね」
《若しくは酷い逆恨みか。姉に伝書紙で聞いたのだけれど、殆どは学の浅い者の逆恨みまで、後は道士に頼んでいたらしい》
『姉ちゃん大変だな、阿保の世話もしてさ』
《そう見抜けないのが常人だからね、仕方無いんだよ》
「そうね、それこそ私もだし、蟷螂寡婦で亡くなった方々もね」
『アレは舐めてたからでしょうよ、手に負えない愚か者も居る、善人面で悪の塊みたいなのも居る。って思って無かっただけでしょ』
「アンタはどっちだと思う?本当に白痴だったのか、ワザとか」
『そう聞かれると半々な気がしてきた、何となく分かってるけど、面白そうだから敢えて全てに乗った』
「あらそう?」
『だって財産狙いなら大商家に嫁いだ時点で愚行は避けるっしょ、それに幾ら物知らずにしたって、買わないって事が出来た筈だし』
「そう、良く知ってるのね、そうした子について」
『まぁ、マジのが居たし』
「まさかこの前言ってた子じゃないわよね」
『違う違う、ただソイツが死んでから凄く大人しくなってさ。だから何となくは分かる筈なんだよ、ちゃんとは分からないんだけど、何となく悲しい事が起きてるとか、何が原因かは何となく分かる筈なんだよね』
《若しくは、その類とは少し違う者なのかも知れないね。逆恨みする者の中には極端に言葉尻を捕らえる者も居る、なら、もしかすれば悪意無しに言葉尻を捕らえた者かも知れない》
『あぁ、言葉尻を捕らえてばかりで周りが気に食わなかったから、死んでも良いと思ってヤったか。やっぱソッチか』
《どうだろうね》
実を聞いて私も少し悩んだのよね。
だって結局はどんな子だったのか、全く分からないんだもの。
だからこそ、死んでると知って尚、全くもってスッキリしないのよ。
それこそ万が一、もし、周りに居たら。
もしも、この中の誰かがそんな子なら。
まぁ、流石に言葉尻を捕らえる子は居ないから良いのだけれど。
そうね、確かに結末はコッチの方が良いわね。
だって疑心暗鬼は仲違いに繋がるもの、あの結末の方が幾らかマシだわ。
『お帰り』
《ただいま》
『ホクホクしてんだよなぁ、蒸された芋かよ』
「熱々ねぇ」
《それは俺だけ》
『冷静ですからね、金雉さん』
前は桂花さん、だったんですけど。
香りの印象が良くないと知って、自然と金雉さんになったんですよね。
他にも枇杷や御柳梅の字をお持ちなんですけど、僕としては馴染みが良いのは金雉さん、で。
《映日果は何が気掛かりなんだろうか》
『あ、それは多分、今回同じく乗船してる女性の方について、相談を受けたから、だと思います』
《うん、少し、難しい揉め事を抱えている女性について相談されて》
『色恋沙汰?』
『そうなんですよ』
珍しく女性からお付き合いを申し出て、それでお付き合いしたものの、実はお相手には大して情は無く直ぐに別れる事になってしまい。
けれど女性の方は未だに未練が有り。
《アレは未練と言うか、恨みだと思う。出来るなら死んで欲しい、苦しんでいて欲しいと願っているそうだから》
《そう、成程ね》
『それこそ金雉が恐れてる事じゃん』
『そうなんですよー、そんな事が有ったら私も恨む、って』
「まぁ、未練もあながち間違いでは無いけれど、確かに恨みが強そうだものね」
『何で、大して気が無いのにお付き合いなんてしちゃうんですかね?』
だって、その事をしっかりお伝えして、ならまだ分かりますよ。
けど何も伝えず、結局は別れる事になるって、意味が分からない。
《どう思う、兔子》
『相手や相手のお心持ち、それら全てを軽視し舐め腐ってるんだと思います』
『俺の口調に影響されんな?』
『でも綺麗に言っても実は変わりませんし、寧ろ適切な表現だと思いますよ?』
「まぁ、そうね、すっかり舐めきって根まで腐ってしまっている。腐り掛けが1番美味しいし、成熟し過ぎれば腐ってしまう、ある意味で見極めが難しいって事じゃないかしら」
『しかも情が深そうな方で』
「あぁ、好意から尽くし、あっさりと別れを切り出されたら誰でも恨むでしょうね。本当に見返りが無いと人って動かないもの、差し当たっては多少は餌を撒かれて、面倒となったら捨てられたんでしょうね」
『凄い、え、逆に、良く有る事なんですか?』
「有って欲しくは無いのだけれど、市井での相談では多いのよ。何度か講演会を開いたのだけれど、ね」
《己が自ら同じ事をされたらどう思うのか、そう考えられるにしても、一歩届かない者が多い》
「そうなのよ。すっかりアンタが同じ事をされても平気でしょうけど、その子の心根の強弱や柔軟性を鑑みて考えなさいよ、そこまで言わないとダメな子も居るのよ」
『あー、踏み込めって言わないとダメな方が多いんですね』
「そっちの学問では、そうでも無いのかしらね?」
『弾かれますね、物言わぬ生き物の世話にも関わりますから、思い遣りが無いって事で学位を得られませんし。そうした者に学位を与えて大問題になったそうで、一定以上の業務を任せるな、と各所に通達が行きます』
『厳しいっちゃ厳しいけど、最悪は人死にも出そうだもんなぁ』
『どうやら出ての事みたいです』
『あー、ならアレじゃね?本で有ったアレ、虎のヤツ』
『虎古事記なら、産まれたばかりから育てたのに食べられちゃうヤツですけど』
『あ、いや、ソッチじゃなくて、多虎古事だ』
『あぁ、アレ絶対に虎じゃなくて犬だと思いますけどね、あの書き方』
『やっぱり、だよな』
「それ、どう言う内容なのかしら?」
『ざっと言うと増え過ぎて蠱毒みたいになっちゃったんです、それで最後は食べられて蠱毒は野放し、ですね』
「あら怖いわね」
『今は無い筈ですよ、見回りの官吏が居ますから』
『どうだかね、何にでも抜け穴は有るんだし』
『なら見付け次第報告するのも義務ですから、もし見逃していたら学士全て同罪なので大丈夫だと思います』
『そうしっかりしてんだ、成程ね』
「で、少し戻すわね、その女性について」
『あ、はい』
「兔子ちゃんとしては、どうしたら良いと思う?」
『僕は、と言うかその女性は呪いに行く途中なんだそうで』
《金雉は止めるかどうか迷っていた》
『あー、まぁ、俺は呪われちまえば良いとは思うけど』
「人を呪わば穴二つ、自分にも跳ね返ってくるのよ。でも、理不尽よね、苦しめられたから苦しめたいだけなのに、また苦しむ事になるんだもの」
私は明らかに相手が犯罪者で、罰せられて、そのお陰で心持ちを弄ばれた憂さはかなり晴れたわ。
けれど犯罪未満の酷い行いって、ザラに有るのよね、それこそ色恋沙汰程多い。
『アレ、呪詛返しとか無いのかね』
『そうなんです、そうなって、ココに道士様が居たらな、と』
《それが少し嫌だったんだね》
《少し嫌だと思った事が少し嫌だった、専門に任せるべきなのに、そう思ってしまった》
「そりゃ恋敵だもの、嫌に思って当たり前よ」
『同じ人を好きな仲間、同志じゃないんですか?』
《僕らと少し違うからね、考えや立場が》
「アチラの方が古参だものね、少し遠慮するのも分かるわ」
『遠慮、なんですか?』
「もしかすれば彼が影から守ってくれていた事で、あの子が無事だったのかも知れない、だからこそあの子は四家巡りにも出た。謂わば出会いの機会を与えてくれた恩人だもの」
『けどさぁ、なら唾でも付けとけば良かったじゃん』
「そこは四家への期待よ、まさか毛色に惹かれて見初めるだなんて、四家なら有り得ないだろう。なのに、謂わば裏切りに近いのよ、理想を裏切ったの」
『四家に期待し過ぎじゃね?』
「市井の誰よりも厳しく躾けられ、貴族よりも気高い、四家への印象って大概はそうなのよ」
《その印象を崩す為にも暁兄は異性装をしていたんだね》
「それも、ね、私達は同じ生き物よって。それに楽しいのよ、色々と着飾るのって」
『あ、そこもですよ、金雉さんお仕着せだったんですよ?もう着ないだろうから着古す為にって、翠鳥が侍女みたいになるからって止めたのに』
『いやアレが侍女は相当でしょ、あぁ、薔薇姫が居るもんな』
『僕の翠鳥を馬鹿にしてます?』
『地味豊満だとは思ってる』
「大概の子は化粧でかなり華やかになるもんよ、それに地味って楽なのよ、ド派手な顔の専門家でも実は地味なのは幾らでも居るわ。地味で結構じゃないの」
『まぁ、俺はどうでも良いんだけど』
『少し気にしてるんですよね、派手な方に囲まれてますから』
「けど金絲雀ちゃんが居るじゃない」
『あの方ってお洒落なんだそうです、内着が派手で刺繡も凄いんだそうですよ』
「あら、少し意外だけれど、しっくり来るわね」
『うん、それは何か分かるわ』
《その金絲雀や薔薇姫は、女性に対して何と言っているんだろうか》
『やはり呪詛返しをして尚、呪えば良いんじゃないか、と。何でも色々と尽くしてしまったそうで』
「そこよねぇ、世話されるのが当たり前だと、そうやって労を簡単に蔑ろにしてしまうのよ」
『マジでクソなら処刑人を頼めば良いのに』
「あら何よその物騒な名前」
『ソッチには居ないんだ、私怨処刑人』
俺が知ってるのは、だけど。
早朝に三ツ辻の真ん中で三回左に回って、地面を三回叩いてから、天に向かって三回手を叩く。
すると何処からか色紙が舞って来るから、そこに願い事を書いて飛ばすと、今度は叶えてくれる相手まで飛んで行く。
『で、赤い紙だと殺してくれるんでしたっけ』
『あ、もしかして本が原典なのか、何だ』
『と言うか先生の本屋に有ったんですよ、扶桑今昔物語って短編集の一つです』
「あら扶桑国のお呪いなのね」
『けどマジで叶ったってのから聞いたんだけどなぁ』
「あら、なら詳しく教えなさいよ」
『いやこの場合は兔子が先でしょ』
『僕が読んだのはですね……』
大衆演劇の花形に惚れ込んだ女が、生きる気力を与えてくれたとその花形に好意を伝え、見事に通じ合った。
けれど花形には他にも何人もの女、それこそ男の相手も居て、女はそんな中の一人に過ぎなかった。
その事を知った女は激怒し縁切りを申し出てたが、大して貢がれなかったからか、あっさりと承諾されてしまった。
そうした素っ気無さが更に火に油を注いだが、心根の優しい女は何も出来ず、悲しみ藻掻き苦しんだ。
そして井戸に身投げしようとした時、井戸に女の幽霊が現れ呪いを教えた。
それが三ツ辻の呪い。
その呪いを行った女の手元には赤い色紙が届き、直ぐに書いて飛ばすと。
「待って、当てさせて」
『もー、良い所なのに』
《良いね、少し考えてみよう》
『どうせ花形に女を取られた男の元に届いた、とかじゃないの?』
『惜しいですねぇ』
「あら、じゃあ男を取られた男の手元に、ね」
『はい、正解です』
「惜しかったわねぇ」
『ね』
そして女は男に出会った、その者は世に言う侍、相手の男は商家の若旦那。
単に演劇へ金を払っているだけだ、その言葉を信じきれず後を付け逢瀬を見てしまい、噂の三ツ辻に行く途中だった。
そして二人は花形の元へ。
『さ、どうなったでしょうか』
「コレは、殺しには行ったのよね」
『ですね、問題はどう殺したか』
『あー、成程ね、言わないでおくわ』
「えー、ちょっとは何か言いなさいよ?」
『ほら、楽しみを邪魔したら悪いし』
「そうねぇ、女が花形を、男は若旦那を、かしら」
『惜しい』
「溜めたわねぇ」
『もう少し入り組んでます』
「包々ちゃん」
『そうやって殺した後、心中に見せ掛け、二人は結婚』
『正解です、何で分かったんですか?』
『俺が聞いたのと殆ど同じだからだよ、はぁ、騙されたのかよ、癪だわ』
《それはどうだろうね、もしかすれば本当かも知れないよ》
「なら、その手打ちにした二人から聞いたって事になるわよ?」
『いや、俺とそう変わらない年だったけどね』
《なら子孫かも知れないね。発行はいつだったか覚えているかい》
『二十年前だったと思いますけど、扶桑国の出来事、と偽ってるかも知れないって事ですよね』
『細狗は何か覚えて無いの?』
「有ったのよ、本当、ちょっと寒気がしてるわ」
『マジで言ってる?』
「男色家の心中事件って昔は特に多くて、その中でも歌の上手い方が居たそうなのだけど、同じく商家の方と心中なさってて。けど死因は首吊りなのよ」
『あ、そうですそうです、侍は引っ掛けで、切るんじゃなくて首吊り心中なんですよ』
『まぁ、偶々じゃね?』
「けどまだ続きが有るのよ。その直後、雇われていた用心棒と女中が結婚する事になって、忌事を払う為にと商家が婚礼を執り行う事になった、そうした日取りの相談に来た記録が残ってるのよ」
『だと、マジじゃん』
「そうなのよ、しかも怪しまれず達成されるだなんて」
《そこはどうだろうね、もしかしたら碌でも無い若旦那だからと、商家が目を瞑ったのかも知れないよ》
『あー』
「身の回りを確認するのが少し怖いわね、逆恨みは勿論だけれど、正当な恨みも有るかも知れないんだもの」
《人がどう恨むか分からない、なら多少は寛容になれ。そう言う者の殆どは言葉尻を捕らえる者か、既に恨みを買い開き直ってる者だから大丈夫だと思うよ》
「なら良いのだけれど」
《兔子、他の色紙の事は載っていたんだろうか》
『はい、それこそ好意に関する事は薄紅色、金運なら黄色。ただ叶わないとか、警告するには黒い紙が使われてましたね』
「そう、成程ね」
『あの、この三ツ辻の噂を、先ずは教えて差し上げた方が良いですよね?』
「そうね、どうやら呪詛返しも含んだ呪いの様だし、正しく伝われば正しく行われそうだもの」
『何で分かんの?』
「お祈りと同じよ、要は代行者は神々だと思うの、天と地に願い聞き届けられるかどうか。なら、対価は以降も善き者として生きる事、少なくともアンタが関わったなら悪人ではないでしょうしね」
『本当なら、ね』
《黒い紙の内容が気になるね》
『意外と蝦餃も好きなんだ、創話かもなのに』
《実が隠れていると思うとね、興味は湧くものだよ》
コレ、実は全部先生の創話だったら、とか少し考えちゃうんだけど。
マジで実話が混ざってそうなのが厄介なんだよなぁ。




