81 疑問。
《私なら、最も稼げそうな相手、かしらね》
「本気ですか?」
《何を大事にするか、と言えば情愛は大前提でしょう?なら次は何か、稼ぎ、ね》
『ですよねぇ、私もですけど、そこに楽さを追加したいですね。あまり強情だったり意見が合わないと、それだけ刻も無駄になってしまいますから』
『そうですね、情愛が有る事が大前提で、楽なお相手が理想ですけど。私を御して下さったりしっかり注意して下さる方が良いですね、単に甘やかされるのは嫌です、下手をすれば死人が出てしまいますから』
『頑張りますね』
「でだ、お前も言え、聞いて得るモノが有ったと思うならな」
まさか、侍女の私にまで尋ねられるとは。
『私が夫を選んだ理由は、好きにさせてくれるからです。勿論、居心地も良いですし、稼ぎも生活には困りませんし、情愛も頂いておりますので、はい』
「それは妥協しての事か、それとも自分が選べる最上級か?」
『そう選べる立場でも無かったのですが、最上級でした』
「でだ、ルーが拘っているのは最上級でありたいと思った事だろうな、違うか」
『出来るなら唯一無二でありたいです』
「なら聞くが、お前は夫こそ唯一無二だと思うか?」
『いえ。ですが唯一無二を探し出すのは困難かと、人は数多居りますから』
「でだ、俺が男色家かも知れないと思ったからこそ、敢えて聞く。お前らがルーに惹かれない、と断言出来る何かを出せ。花霞には男の要素も有る、なら同じ金髪碧眼の男に惹かれない証を示すべきじゃないか?」
「先生、流石に突飛が過ぎるのでは?」
「ならルーに女装でもさせるか、下手をすればお前より良い女になるかも知れないぞ」
「体が違うのでは?」
「ならお前も単なる女とも全く違うだろ」
決して軽視する事では無い、と私も思いますが。
『失礼ですが、そもそも本質が違うのでは』
「何がどう違う、それとも既にルーを良く知ってるのか?」
『いえ、ですが』
「考えを形にしろ、決め付けるな。仮にだ、ルーと同行する様になりコイツらがルーに惹かれたとする、ならコイツはどうなる、あまりに悲劇が過ぎるだろう。それとも、考え過ぎだ、と無責任に言うつもりか?」
『いえ』
もし、本当に最悪の事態になってしまった場合、私に出来る事が有ったとしても限られる。
突飛だ、と言う事こそ無責任、無知の証。
大きな傷は死を招く。
『要するにさ、誰にも直ぐには答えが出せないって事でしょ?』
「そうだ、俺にもコイツにも。まぁ、お前達が急いで答えを出したとしても、浅慮だと俺が莫迦にしてやるだけだがな」
「先生、同行含めマジで考えてます?」
「理屈、道理を通すならコレが筋だろ。お前らの心持ちに報いる為にも、俺は努力すべき筈だが、1人朽ちても俺は別に構わんぞ」
「えー、絶妙に脅します?」
「いや、少なくともお前の様に無理に選ぶ気は無いぞ、元は1人で生きるつもりだったんでな」
「何で?」
「良い思いをした事が無いからだ。だが全ての者に対して諦めてるワケでも達観してるワケでも無い、それにだ、俺が努力してもダメなら、お前らも少しは諦めがつくだろ?」
「すみません、ありがとうございます」
「で、お前は何か無いのか、疑問だとか他に」
「あ、アレですアレ、嫉妬なのかどうか。利益が害される事への嫌悪、所謂執着なのか嫉妬なのかどうか、皆さんどうやって判断してるんでしょう?」
「よし、頼んだぞお前ら、俺は専門外だ」
私は違いが良く分からず悩んでいたのですが。
花霞の疑問に最初に口を開いたのは、美雨でした。
《ふふふ、少し隣に座っただけで、そう思ったのね》
「そうなんですよぉ、何か嫌だな、とは思ったんですけど。良く分からなくて」
《そう、利益が阻害されてしまうから嫌なのか、情愛が奪われるのが嫌なのか、ね》
「両方合わさってるのかなとも思うんですけど」
『私もそう思うんですけど、どう分けるんでしょうか?』
『皮算用になりますけど、失った場合の、得る筈だった得と損失を考えれば良いのでは?』
「そうなると文を読む事になるんですけど」
「あのな、どんな国でもどんな世でも、条件ありきだろ。読め、そもそも情報が揃わないで考えてどうする、それに例え読んでも本当かどうか。と言うか、だ、コイツらが己の全てを分かってるとでも思うのか?己を知る者が少ないからこそ、問題が起きるんだ、違うか」
先生、強いです。
うん、同行して下さったら心強いですね。
「けど」
『こんな事もあろうかと、用意しておきましたよぅ』
『流石です金絲雀』
『いやマジでこうなるとは思ってませんでしたけどねぇ』
「ほれ、読め」
コレ、他の方に読ませられないんですけど、特にルーちゃんの。
「ルーちゃん、コレって」
『僕のはズルいかも知れませんが、僕が成してきた事の対価でも有りますから』
神様にお願いして子が成せる様に出来る、って。
「いや、嫌とかじゃなくて、いや、コレ、他の事に使いません?」
あ、ココで指輪を触らなければ良いのか。
この功績を、他の事に使う考えは有りませんか?
『最低限は先生や師匠と話し合いながら使うつもりですが、僕はそう使いたいんです』
それこそ世界を、この国を救って下さったんでしょうけれど。
なら、それこそ、ルーちゃんこそハーレムを行うべきでは?
「もう少し高望みを」
『僕の我儘は通してるつもりです』
私の独占、ですか。
なら。
「ハレムを受け入れる私を受け入れられませんか?」
最悪の場合、子供の事を無しにしても、私はハーレムを選ぶかも知れない。
選んだら選ばれなかった者が出る、なら選ばないかも知れない。
私は聖人君主でも何でも無いので、飽きられたり捨てられるのが怖い、嫌です。
その被害を最小限に抑えるには、やっぱりハーレムなんです。
来る者拒まず去る者は追わず、完全に絶対に信用し続けるのは難しいと思います。
だって心変わりするのが人間ですから。
『心変わりをしない、そう』
「皆が皆そうなら離縁は無いかと」
魔法か何かで縛るのは嫌です。
それこそ縛りが万が一にも解けたら、結局は同じなんですし。
『結婚しても、信じられませんか』
「そう、結局は私が皆さんを信じきれないんです。信じた先、裏切られるのが、辛い思いをするのが嫌だから信じきれないんです」
「人を良く知ってるからこそだと思うぞ。理想は心変わりをせず添い遂げる夫婦、だがどうだ、離縁する者は勿論、仲違いや浮気、それこそぞんざいに扱うだ関心が無くなるだ、もうキリが無いだろ。だが誰が裏切る前提で婚姻する、誰が子を蔑ろにする前提で産む、誰しも己を知っているなら、全て先が分かったなら、問題は起きない。ならどうするか、保証は可能だろう。俺が考えてやるよ、コイツらに最も似合う対価をな」
「先生、楽しそうな顔をしてますけど」
「先ずはルーだな。どうにかして花霞から記憶を消す、お前の記憶をな、そして花霞への好意を復活させてから、他の女に嫁がせる。で、その女は花霞らが選ぶ」
《任せて下さい》
『良いですねぇ、ウムトさんにも頼みましょう』
『ですね、凄い方を選んでみせます』
「おう、で次はお前だな、藍家の。お前は宦官になれ、んで同じく忘れられろ、そして同じく好きなまま、そうだな、男色家に嫁がせる」
「エグ過ぎでは?」
「お前がどれだけ傷を負うか分からんし、そも記憶を消す前提だ、だから俺らの溜飲が下がる方法を選んでいる」
《素晴らしい案だと思いますわ》
『ですねぇ、それに私達が手を下さないで済みますし』
『確かにそうですね、ありがとうございます先生』
「まぁ、その記憶を消す方法を探る為にも俺は同行するつもりだ、上手く使えば良い方向へ人を導けるからな」
「まぁ、そこは、ですけど」
「で、お前、墨家の。まぁ、お前もだな、精々頑張れよお前ら」
《はい、お任せ下さい》
『頑張りましょう』
『はい』
「嫌なら諦めろ、1度心根に付いた傷はどうにもならん、下手をすれば死を選ぶ者だって居るんだ。その覚悟を持って挑め、良いな」
過保護、と思うのはやはり私に前世の記憶が有るからでしょうか。
前の世界なら、そこまでしなくても、と言う声が聞こえてきそうなんですが。
もし私の子が、と思うと。
もしこの言葉が叶うなら、お願いしたいな、と。
「出来たよー、さ、キョフテだ、気に入って貰えると良いんだけれどね」
あー、良い匂い。
『はぁ、美味かったわ』
「だろう?」
「味を合わせてくれたんですか?」
「全く同じ、とはいかないからね、少しだけだよ」
「美味しかったです、ありがとうございます」
「いやいや、まだだよ、ココから先は大人の時間、お酒と甘味が待ってるよ」
『じゃあ僕は甘味だけ頂いて先に帰りますね』
『俺も帰るわ、腹いっぱいで眠いし』
『ではでは私達2人も帰りましょうか、大人数ならではの面倒を省きたいですし』
『ですね、ありがとうございます金絲雀』
「お前も別に帰って良いぞ、単なる信奉者だろ」
「あら、どうしてバレてるのかしらね?」
「さぁ、何でだろうな」
残念だわ、少し良いと思ったら直ぐに恋敵が現れちゃうんですもの。
って言うか綺麗過ぎてちょっと、何だか萎えちゃったのよね、私。
綺麗なモノって好きな筈なのに、何でかしら。
「一応、お酒につられた、って事で良いかしら」
「好きにすれば良いが、そんなに興味が有るのか?」
「いやね、男女の論が面白かったものだから、あわよくば続きは有るかしら、なんてね」
「先ずはそこからにするか」
「いや無茶では?心根の隠れた部分を判別するんですよ?」
「何を女だと思うか、だ」
「そんなの有ります?」
「ココから先はお前らだ、有るなら言ってみろ」
出ないわよねぇ。
それこそ私って言う例外も居るし、花霞ちゃんも居るのだし。
「私が言っても良いかしら?」
「ダメだ」
《なら、僕かな》
「おう、言ってみろ墨家の」
《仕草や態度、言葉遣いに纏う物。内面の違いは実の処はそう無いと思う》
「ほう」
《子を思う母親も居れば、思わない母親も居る、そして父親も同様。では何が男を男たらしめるか、体の作りや周りの扱い、後は本人が自身を男と思うかどうか》
「で、お前はどう思ってるんだ」
「一応、女、って程度ですかね」
「でお前はどうなんだ」
『“男です。ただ女になりたいとは思ってはいません、僕は男に愛して欲しい、ただそれだけです”』
『男だと思っているんだそうです。ただ女になりたいとは思っておらず、男に愛して欲しい、ただそれだけ。だそうです』
「で、お前は?」
「私は男よ、商売半分、着飾るのが楽しいのが半分。男色家じゃなかったけれど、まぁ、可愛いなと思うわね、抱くだ抱かれるだ程度には」
「切っ掛けは何だ?」
「それが良く分からないのよねぇ、ただ突き詰めたら、抱けるわね、って。私四家に引き籠ってたから、そう刺激が無くて良く考えなかった結果、だとも思うわ」
「まぁ、こうだからお前達も良く考えろって事だ」
「もっと言うと、何が花霞ちゃんを花霞ちゃんたらしめているか、よね」
「出せるか、その結論」
「私は出せるわよ」
「流石信奉者だな、言ってみろ。あ、お前は耳を塞げ、会話の邪魔になる」
「えー、はぃー、分かりましたぁ」
「この毛色で心根が曲がらなかった処、良い子だけれど良い子過ぎない処、明る過ぎず暗過ぎない、理想論ばかりを追求しない、優しい子」
「こう誰にでも分かる面を、当たり前に良い処を好きになられて、じゃあお前らは直ぐに受け入れられるのか?そんな程度が低い女が良いなら、さっさと他に行って貰いたいもんだな」
「と言うか僕からも言わせて貰うけれど、何も変わった面を好きになれと言っているワケじゃないのは分かるよね。要は何をどれだけ好いているか、ご両親に変わって僕達にも分かる様に説明して欲しいんだよ」
「見守って来たからな」
「君にとっては家族も同然だね」
「まぁな」
「大変よねぇ、家族に同行されて説得しなきゃならないんだもの」
「まぁ、情に流され体に流されて欲しいのは分かるけれど、それで後悔しない子かどうか、だよね」
「だな。よし、もう良いぞ」
「あの、次はエグい話ですかね?」
「そうだねぇ、実物を見せてあげるよ」
そう言ってウムトさんは箱から色々とお出しになったんですけど、何か、凄い変わった形のお道具達でして。
「コレは」
「嘗て、異国で王族の子種を残す為に使われていた道具、だそうで。その古い文献から復刻した道具、らしいよ」
「効果の程は?」
「流石に僕は使っていないけれど、まぁ、評判は良いね」
「コレで少しは不安が、紛れるか?」
「いやー、言葉にならないですねぇ」
「まぁ、詳しいのは陸の商隊やジプシーだからねぇ」
《あ、その事なんですけれど》
「見に行くか」
「え、私はもう何回も見たので別に良いです」
《青燕、お願いね》
『はい、畏まりました』
「じゃ、まぁ解散するか」
「いや君も見に行き給えよ、特別講演を行させるからさ」
「え、じゃあ私も行きます」
そうして夜更けに、と言うかすっかり辺りが暗くなった頃、お出掛けし。
まぁ、結論から言いますと、演技か。
って思わず疑ってしまう程で。
いやマジだ、ってのは知ってるので、疑ってるワケでは無いんですけど。
《アレって、ジプシーの方々なの?》
「あ、いえ、内緒ですけど地元の者だそうなので、マジ、だそうで」
《あぁ、そうなのね》
うん、言葉を失いますよね、生の睦ごとを目にしたんですから。
「まぁ、帰ったら、お湯にでも入って切り替えましょうか」
《そうね》
大丈夫でしょうか、男性陣。
まぁ、心配だからと言って何が出来るワケでも無いのですが。
あ、先生大丈夫かな。




