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71 十堰市。

 西安に着いて3日目の朝には、湖北省の十堰市から川船で中央へ。

 ココでも夜間航行です、特に中央へは船の往来が多いので、早く着く為にもコレが1番だとか。


 私達は5日後、中央への到着予定でして。

 私は相変わらず男性陣とは接触しないまま、日の出てるウチは運動したり刺繡をしたり、本を読んだり。


 でずーっと悩んでるんですけど、佩玉(コレ)と指輪を受け取っちゃったの、やっぱり間違いなのではと。


 幾ら私の心を読めてるからって、幾ら私を知ってるにしても、私に執着してるだけかもで。

 そしたら自分が居たのと同じ国に、あれ?何で彼はココの言葉をスラスラ喋れてるんだろ。


 慣れ?

 でも私の頭の中、日本語の筈なんですけど。


 あれ?


『どうしたんですか?犬猫みたいに首をかしげて、海豚でも居ました?』

「あ、ココら辺にも居るんですか?」


『広東省の珠江の河口で見れるそうですよ、白海豚。揚子江には揚子江河海豚も居るそうで、もしかすればココにも居るかも知れませね』

「へー、見てみたいなぁ」

 

『それが滅多に見れないらしいんですよぉ』

「あ、だから珠江と揚子江は殆どが夜間航行だけなんですね、観光船が朝や昼に出るから」


『みたいですね、食べてもそこまで美味しく無いそうですから、見る専用なんですよ。せめて乗れれば良いのに』


 確か、海豚の調教には犬笛みたいなのが必要なんでしたっけ。

 ルーちゃんなら何とか出来そうですけど、多分、しない理由が色々と有るんでしょうね。


「馬みたいに、どうにか出来ると楽しそうですよねぇ」

『ですよねぇ』

《ねぇ、海豚って?》


「こう、デカい魚です」

『けど鱗が無いんですよ』


《ナマズ?》

『あー、近いかもですね、けど海豚は明るい色だそうですよ』

「灰色とか、薄紅色なんだそうで」


『そうですそうです、良く知ってますね』

「例の知人ですよ、何でも知ってるんじゃないかって位に博識なんです」

《けど、会えないかも知れないのよねぇ》


「ですねぇ」


 今なら人除けをしていた理由が良く分かります、転移転生者だとバレ無い様にするのは勿論、厄介事に関わらない様にする為だったんですよねぇ。

 私とルーちゃんと自分の身を守る為に。


 だからこそ、出来るだけ会わせない様にしないと。




《川船の旅が1番良いかも知れないわね》

「だから混んでたんですかね?」

『新婚旅行にオススメだそうですし、もう啓蟄ですからねぇ』


「あー、だからお宿も混んでたんですねぇ」

《そうねぇ》


 花霞(ファシャ)美雨(メイユイ)が言う通り、休憩だけなのにも関わらずお宿が混んでまして。

 私達が川船で下っている間は、四家の移動日とは関係無いんですが。


 ご結婚なさる方が多かったみたいで、ご夫婦方とお宿は一緒でも、夜間航行の船と船には距離が有ったんですよね。

 船頭の方々にお気遣い頂いてたんですよね私達、一応、生娘ですから。


『もう、どうして2人して私を見ながらニコニコなさるんですか』

「分かってるでしょう翠鳥(ツェイニャオ)さん、ねぇ?」

《そうよねぇ》


『全然分かりませんし』


 多分、日中、私と兔子(トゥズィ)が毎日一緒に居た事を誂っての事でしょうけど。

 まだ私達は清い関係ですし、寧ろ話す事は、殆ど学問の事ですし。


「お、コッチも混んでますねぇ」

《気候が良いものね、この時期って》

『ですねぇ』


 船着き場は大混雑。

 品物の流通も観光客も多く、南京や上海へ向かう方もココへ寄るそうで。


《人の多さが桁違いね》

「まぁ、だから包袱(パオフー)屋でも食べていけるんですよねぇ」


 水の都、とも呼ばれる中央に流れる川は海に繋がっており、物流の大拠点とも言われていまして。


『四家巡り中と全く違いますねぇ』

「アレのお陰で定期的に休みが入るから頑張れるんですよねぇ、毎日コレは疲れる」

《でしょうねぇ》


 そして宿泊先は勿論、金絲雀(カナリア)さんのお宿。

 花霞(ファシャ)のお店の近くだそうで、馬車で向かう事に。


 そして。


『凄い』


 女人専用のお宿、外観は簡素なんですが、内装が実に華やか。


『あー、どうもどうも、お疲れ様ですー』

『宜しくお願いします、凄い、お洒落ですね』

「借金してまで建てたそうですよ」

《宜しく、お世話になるわね》


「あ、私は店の様子を見て来ますね」

『では私が付き添いを』

《宜しくね青燕(チンイェン)

『宜しくお願いします金絲雀(カナリア)さん』

『ではでは、先ずは2名様ご案内ー』


 私達が案内されたのは3人部屋なんですけど、他と違って広さは倍、良い値段のお宿並み。

 そして戸も窓も三重で、まだまだ日陰は冷えるんですが、炬燵ですっかり暖かくなってて。


 しかもしかも、隣に人が居るのか居ないのか声すら聞こえない、静か。


『凄い、凄いんですが』

『はいー、でも中位のお宿と同じ値段ですよ』

《コレで、お食事はどうなってるのかしら》


『出前も受けますし、専用の調理場を貸し出す事も出来ますし、ココ独自の精進料理も頼んで頂けますよ』

《独自の精進料理だなんて、絶対に気になるじゃない》

『調理場の貸し出しって、まるで湯治場ですね』


『はいー、欲張って詰め込みました』

《借金しただけの事は有るわね》

『あ、そこは大丈夫なんですか?』


『お陰様で予約が先まで埋まってるので大丈夫でーす』

《流石ね》


『いえいえ、ではただいまお茶を淹れますね』


 お茶を淹れ終わった頃、鈴の音が。

 どうやら戸を叩く音の代わりだそうで、何かと思えば、温かい桃饅頭と。


『コレ、金雉冠羽糖では』

『はいー、お陰様で名物が出来ました、なのでコチラをどうぞ』

《あら、割符?にしては細かく装飾されているけれど》


『はいー、私の店の特別割符です』


 本来の割符と言えば、割っただけなのでどの面も殆ど真っ直ぐなんですが、金絲雀(カナリア)が出した2枚の割符の片面は複雑に入り組んでいて。

 一見すると、装飾の多い単なる木牌にも見えるんですが。


 金絲雀(カナリア)が出したもう1つの牌は、玉牌。

 そして左右に複雑な切り込みが有り。


『凄い、通して確かめる割符なんですね、成程』

『新しい偽造防止牌なので、見せびらかしたらダメですからね?』

《この職人さんを紹介して下さらない?》


『良いですけど、既に2年は予約でいっぱいですよ?』

《お願いするわ》


『ふふふ、しょうがないですねぇ、良いですよ』

《ありがとう》


『では洗い物はどうしますか、館内着をご用意してるんですが、どれにします?』


 この宿の家紋が入った部屋着に帯に足袋、もう、至れり尽くせり。


《この家紋は、月に影千鳥、で良いのかしら》

『月に影冠羽千鳥です、更に言うと月に金絲雀(カナリア)です』

『凝ってますね、流石です』


《盗難防止も兼ねてるのよね?》

『はいー、あ、個室湯へご案内しますか?それとも湯殿か、湯屋への送迎も承りますが、オススメはウチの湯殿ですね』

翠鳥(ツェイニャオ)、先に行ってらっしゃい、私は少し書き物をしたいから》

『あ、はい』


『では案内の者を呼びますね』

『はい』


 そして美雨メイユイ金絲雀(カナリア)に墨を摺って貰い、私は湯殿へ。


 何処も石鹸1つ借りるだけでお金が掛かるんですが、ココは殆ど宿代に入っていて、何かを追加でお願いする時だけ追加料金が掛かるだけ。

 四家巡りの子女用だとしても、コレだともう、他に泊まるのが億劫になっちゃいますよコレ。




「あら開いてますねぇ」


 私は御柳梅(リュウロウメイ)様のお供をし、包袱(パオフー)屋へ。

 場合によってはお店を開けている、と聞いたのですが。


『ご連絡はしたのでしょうか?』

「いや、お任せで、とだけ。あ、妲己婆や何か有ったの?」


《お帰りなさいませ》

「ただいま、何で開いてるの?」


《本当のお誕生日がバレたらいけませんし、お祝い事は相変わらずですので、少し前から開けたり閉めたりしておりました》

「あぁ、流石、どうもどうも」


《はい、コチラ帳簿で御座います》


 売り上げは看板娘が居ないにも関わらず、定期的にご収入がお有りでして。

 確かにコレだけで、従業員2人とご本人様は食べてはいけますが、贅沢は厳しそうで。


『いつも、この売り上げなのでしょうか』

「まぁ、私が縁起物ですので、去年のはこうですね」


『失礼致します』


 金額は倍以上、蓄財は贅沢をしなければ可能な範囲ですが。

 贈答品用の帳簿も有るので、そこを鑑みるに、貧する程でも無さそうですが。


 店内は簡素、ですが手入れは完璧にされており。

 畳からは真新しい香りが。


 まさか、畳も、ですか。


「あ、畳も、ですよ、はい」

『成程、ありがとうございました』

《いえ》


「どうもどうも、お疲れ様で御座います婆や、お土産は届きましたか?」

《はい、既に職人には届けて有りますよ》


「どうもどうも、では暫く開けておいて下さい、知り合いが見に来るかもですから」

《はい》


 かくもあっさりと店の確認を終え、宿へ。


「ただいま戻りまし、あら、すっかり寛いでらっしゃる」

《あら早いわね》

『お帰りなさい』

『お帰りー』


「ただいま戻りまして、いや帳簿の確認だけですから、はい。このままお店を続けてみても大丈夫そうです」

『でしょうね、その場合は姪っ子さんが引き継ぐんでしたっけ?』


「ですねぇ、急にお店に出たがって、でもまぁそこそこ売り上げは有るので、まぁ、良いかなと」

《拘らないのね》


「新作は私が相変わらず関わるので、そこは問題無いですねぇ」

『次は何を出すんですか?』


「今回の蓮の幽霊さんですねぇ」

『おや?幽霊とは?』

《任せたわ小鈴(シャオリン)

『実はですねぇ……』


 号外に載っていた内容は、次の日には美談として後日談が載せられていました。


 園の付近を徘徊する帯刀していた者が、身寄りの無い者を殺しては園の池に捨てていた。

 けれども孝行者の娘が園の蓮に乗り移っており、化けて出て悪を成した者を成敗した、と。


 私も実態を知っているのですが、相当に省かれ盛られているな、と。


『成程、確かに美談ですねぇ』

「池の蓮の美女と悪鬼、良い物語になりますからねぇ」

『なります?ですか?』


『作家先生が知り合いに居るんだよね』

「と言うか話の収集家なんですよ、今は貸本屋さんをしてまして、で市井に無い本は出してって形ですね」


『で、そこから図案を出してんの、ズルい』

「そうなんですぅ、先生はお金の成る木なんですよぉ」

《なら紹介してくれても良いんじゃない?》


「気難しいし凄く人見知りが激しいので、お手紙は出してみますけど、あまり期待しないで下さいね?」

『ですねぇ、私も会った事が無いんですよ、コレの知り合いだって言っても全然ダメで』

《そう、でもお願いね》

『ですね』


『んじゃ、墨も擦ってありますし、どうぞどうぞ』

「せめてお湯に入らせてくれません?」


『仕方無い、少しだけですよ?』

「いやしっかり入らせて」


 そうして御柳梅(リュウロウメイ)様は個室湯へ。


 下見させて頂きましたが、衣類の洗い場が併設されており、覗かれる心配も無く館内着も体系が分かり難い型。

 もしかすれば、ココは御柳梅(リュウロウメイ)様の為のお宿、なのかも知れませんね。




『はいはいはい、お疲れ様で御座います、どうだった?』

「良き」


『でしょ。では朝食をどうぞ』


 お風呂に入ってから。

 やっと朝食です、しかも部屋食。


 主食盛り合わせは定番の花巻のミニサイズとミニ粥、それと麺は肉もどきのジャージャー麵、コレもミニサイズ。


 オカズは定番の豆腐皮と葱の和え物、鹹豆漿、蕪の餡かけ。

 汁物はキノコ汁、青菜炒め、から揚げ風厚揚げ。

 副菜は葉物の塩漬け炒め、皮蛋(ピータン)、キクラゲの佃煮。


 で、デザートも3種類。

 かりんとうみたいな崩砂、月餅、ドライフルーツ入りの蒸しパンケーキみたいな鬆糕。


《はぁ、コレの真似は難しいんじゃないかしら》

「そうでも無いですよ、甘味は地元の店のですから」

『はい、お品書きに店名を書いてあります、どうぞ』

『凄い、毎回手書きで大変そう』


『いえいえ、コレも専用の者を雇ってるので何とか、はい』

「品数は寺院と手を組めば良いんですよ、大量に作って皆で分ける」

『成程』

《あら、バラしちゃって良いの?》


『私が相談したんですよ、なので料理に不満が有るなら花霞(ファシャ)か料理人にお願いします』


 四家巡りの事を調べる中で、四家の方々が寺院に料理を下ろしてるのを知って、提案しただけなんですよ。

 そもそも品数についても、向こうの世界の旅館の朝食をココ風にアレンジしただけ。


 考えるも何も思い出す()()、で。

 天才は違う、とか思ってたんですけど、あの人も転移転生者だったとは。


花霞(ファシャ)

「え、はい?」


《この宿の事、協力してくれるわよね?》

「勿論ですよぅ」

『あ、花霞(ファシャ)の割符は?』

『アレにもお金が掛るんでコレのは無いですよぉ、見た目がもう割符みたいなもんですから』


「あー、確かに」

『その分は何処かで上乗せするから、期待しといて』


「あ、付き添いどうする?忙しそうじゃん?」

『私が居なくても回る様に教育したから大丈夫、つか店主が居ないと動かない様な仕事場はダメでしょうよ』


「まぁ、はぃー」

『で、店は?畳むの?私が居るのに咪咪(ミーミー)が店に出て無いから、アレがウチの前でウロウロしてんだけど』


「あ、忘れてた」


 例の幼馴染ストーカー。

 今回、ハレム候補の皆さんに何とかして貰おう、と思ってたんですけど。


『紫陽湖館に行って相談かねぇ』

「ですねぇ」


 このまま別行動でも楽は楽なんですよねぇ。

 喧々した空気って苦手なんですよね、金絲雀(カナリア)と違って。


《何だか、新鮮だわ》

『ですね、丁寧な言葉遣いじゃない金絲雀(カナリア)さん、不思議』

『あ、小鈴(シャオリン)さん、以降は私への敬称は不要ですよ、侍女として私は付き添うんですから慣れて下さい』


『あ、はい』


 うん、お腹いっぱいで眠い、頭が回らない。


「よし、向こうに全て任せましょう」

《眠いのね、分かるわ》

『あ、花霞(ファシャ)の侍医を呼びますけど、皆さんどうされます?』


《お願いするわ》

『私もお願いします』

『はいー、ではでは、失礼致します』

「宜しくー」


 それから歯磨きをしたり、何だかんだ過ごしていると。


『どうも、連れて参りましたよぅ』

「お久し振りですー」

《アンタ、また伸びたんじゃないのかい?》


「お婆が縮んでるんですよぅ」

《はいはいはい、アンタ達も布団に座って待ってなさい、脈を診るから》

《宜しくお願い致します》

『お願いします』


 私の体調は相変わらずで、相変わらずの漢方のまま。


 薔薇姫様は芍薬を中心にした処方なんですが、温める作用の有る人参と当帰は処方しない方が良いそうで、新しい処方で暫く様子見。

 小鈴(シャオリン)は実家に帰った際に新しい処方になったんですが、暫くはそのままで良さそうだ、と。


 其々に針やお灸を据えて貰い、漢方の飲んで、暫しお昼寝をさせて頂きました。

 いやー、至れり尽くせりですねぇ。


《ちょっとした事、と言うのは失礼かも知れないけれど、ちょっとした事で凄い贅沢さを感じるわね》

『そう仕組ませて頂きました、計画通り、ですねぇ』

『1度ココに泊まったらもう、他のお宿が苦痛になりそうなんですが?』

「その点を抑える為に、ココは紹介制、会員制度なんですよ、ね?」


『はいー、そもそもこのお宿の秩序を守る為、だったんですけど、ヤベェの泊めない方法としても一役買ってくれてるので助かってます。阿呆に病を持ち込まれたら、幾ら清潔にしてても一撃ですから』

「妬み嫉み僻み虱、四大持ち込まれたら厄介な事、ですからねぇ」


『はいー、それに中央には四家が無いですから、逃げ場を作ってあげたかったんです。ある意味、四家の模造品なんですよ』

《あぁ、従業員も子女だけだものね》


『力仕事は店の外か分担か、男専用の宿も有りますし、まぁ意外となんとかなりましたねぇ』

「黄鶴楼を超えて反対側で、二兄が仕切ってるんですよね?」


『うん、相変わらず。向こうはまた少し違うのでお見せしたいんですけど、何せ女人禁制だもんで、私も建ったばかりの頃に見ただけなんですよねぇ』

「あ、皆さんソッチに?」


『いえいえ、二兄の方のは1人か2人用だけなので、ウチの実家の方ですよ、紫陽湖園の近くのお宿です』

「へー、そっかそっか」

《絶対、真似されると思うわよコレ》


『だからこその紹介制、会員制度なんです。私や家に黙って真似してたら、ウチの名前を出すか出さないかを確認して、最悪は強硬手段に出るから大丈夫ですよぉ』

「定期的に見回りする予定なんですよねぇ」


『はいー、真似されるの大前提ですから』

《なら素直に真似したい、となればどうするのかしら》


『そらもう何割か貰います、監督料を。代わりに看板に名や家紋を載せても良いですし、勿論しっかり監督もしますしココの会員にも加えますし、却ってお得だと思いますよぅ』


《なら、直営もするわよね?》

『勿論、その予定ですけど、マジで一枚噛みます?』


《是非お願い》

『コチラこそ宜しくお願い致します、はいー』

「あ、お手紙お願いします」


『はいはいはい、先生の所とご子息様達の所ですね』




 花霞(ファシャ)ちゃんから文が来たけれど、まぁ、そうよね。


「件の事は全てお任せします、ですって、ふふふ」

金絲雀(カナリア)、コレ向こうにも届けんの?』

『はぃー、と言うかまさかお2人がコッチに泊まってるとは、何か有ったんですか?』


『クソ面倒な雰囲気だから俺らだけコッチに来た』

『成程、ならどうしますかコレ、抜け駆けします?』

「面倒だから譲るわ」


『相当ですねぇ』

『つかさ、桂花(グイファ)の知り合い紹介してよ、ヤバくない奴』

「そうね、私達は別の事をさせて貰おうかしら」


『ならアレですかね、職人さん達、私のせいで友達が減った時にお世話になったので』

「あらアンタ気にしたらダメよ、あの子の為にやったんでしょ?」


『そうなんですけど、桂花(グイファ)が言い出すまで我慢すれば良かったかな、と。ぶっちゃけ子供の奔放さを舐めてました、マジであんなに人が離れると思って無くて、悪い事をしたなと思ってます』

「アンタ達が少ししっかりし過ぎた所は有っても、それでも関わる子は居るんでしょう?」


『最古からの付き合いは片手に余る程度なんです、後から友人知人は出来ましたけど、それも職人さん達の子なんです。この地区の子は、まぁ、跟踪狂(ストーカー)のお陰で、半ば恋敵になっちゃって、はい』


「ん?どう言う事なのかしら」

『あ、詳しく聞いて無いんですね』


 で、いざ詳しく聞いてみると。


「この地区で1番有望でモテる子が、跟踪狂(ストーカー)なのね」

『はぃー、アレですアレ、子供の頃にモテる子って偏るじゃないですか。で、その1番の子が問題が起きた時にアレを好きだと周りに言ってしまって、まぁ、後は、ね』

『いやハッキリ言えよ』


『ぶっちゃけ言うと、練習した方が良いって口車に乗って、他の女の相手をしてしまったんだそうで』

『あー、ダメじゃん、アイツそう言うの無理でしょ』


『そうなんですよねぇ、だからもう、跟踪狂(ストーカー)になるしか無い、と』

『あー』

「でも、バッサリ切られる勇気は無いのね」


『そこはどうなのかは、結局は分からないんですよ、私も直接はお話しした事は無いので』

「あぁ、そうなのね」

『優良物件じゃん、喰っちまえば?』


『まぁ、半ば弱味は握ってますから楽そうですけど』

「あ、アナタ婚約者とか、好いた者は?」


桂花(グイファ)に興味が湧かない人なら、と思ったんですけど、どうしたって惹かれますよねぇ、あの毛色だし良い子だし』

『俺は大丈夫だけど、お前の家は忙しそうだから嫌だわ』


『あー、私も、私と似た身長の方はちょっと。せめて高いか低ければお願いしたかも知れませんが、無いですね』

「アンタ達ねぇ」

『うん、跟踪狂(ストーカー)の件は向こうと組もうぜ、コレにくっ付けさせるの面白そだし』


「アンタねぇ、人の心情を何だと思ってんのよ。ダメよ、負い目から引き取ろうと思ったり」

『あ、そこは無いです、申し訳無い事をしたとは思ってますけど、仕事で返そうと思ってるのでコレは別件ですから』

『その仕事に使えそうだから心配してんでしょ』


『抱くだ抱かれるだには好みを大いに差し挟みますから大丈夫です、アレは良い背丈ですしアリです』

「中身はどうでも良いの?」


『ウチは商店以上に人を雇ってます、つまりは教育する事に長けていますから、実家総出で教育させます』

『ほら、コレだコレ、うん、無いわ』


『私もそう思いますぅ』


 そして金絲雀(カナリア)ちゃんと雨泽(ユィズーァ)ちゃんと共に、春蕾(チュンレイ)ちゃん達の居る紫陽湖館へ。


 あら、着いて来るのね跟踪狂(ストーカー)ちゃん。

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