69 霊言道士。
《桂花、あの道士様は、本当にアナタの知り合いなの?》
「知り合いの知り合いっぽいです」
『1番危ないやつじゃないですか』
「けど玉牌は本物の筈なので、なので半々ですね、はい」
物凄い寒気を感じたので、取り敢えずは1番安全そうな最高級の茶楼でお話し合いを、と。
なのに、転移者だなんて、しかも私を名指しして。
いや、桂花呼びですし、もしかしたら本当に詐欺師?
でも、あの玉牌は作るのが凄く難しいしあまり見せないから、そう偽物が作られる事も無いって。
あ、え、あの人もマジで転移転生者?
うわ、めっちゃ関わっちゃってる、どうしよう。
え、無能なクセに目立ち過ぎで殺される?
あ、戸を叩いてるのは。
『失礼します、少し彼女をお借りしても?』
あぁ、盧・埃蘭さん。
今世の両親様、どうか先立つ不幸をお許し。
《お知り合いのお知り合い、かも知れないとは伺いましたが、何か示せる証を提示して頂く事は》
『黄茶と当草が大嫌いで、好きな料理は炒飯に青椒肉絲を掛けた物、甘い物は黒糖をまぶした胡桃ばかり食べ、良く熱中するので睡眠は不規則。好きな色は青、部屋中が青く、着る物は』
「あ、それ以上は」
『お分かり頂けましたでしょうか』
「確実に、私の知り合いを良く知ってる方です、そう関わりの少ない方ですから、多分、大丈夫です」
《多分、では》
『コレから内々に話し更に信用頂くつもりですので、そうですね、中庭で話すので様子を伺って頂ければ問題無いかと』
「分かりました」
虎穴に入らずんば、です。
まぁ虎子は要らないんですけど。
『ふふっ、虎子は要りませんか』
「なっ、あ」
聞こえてらっしゃいますか、凄く困るんですけど。
『まぁ、そう言う事です、この宝貝のお陰ですね』
「それ外すと凄く嫌な感じがするんですけど」
『はい、そうなってますから』
「説明になってなぃ」
『君とあの人を接触させたのは、僕なんです』
「求めてる答えと違ぅ」
『すみません、つい、こう気兼ねなく話せる相手はそう居ないので』
「あぁ、いや、じゃあ何でバラしちゃったんですか」
『普通、そう信じませんよ、戯れ言として片付けるのが一般人ですから』
「一般人って単語、結構、年代が近いでらっしゃる?」
『そうですね、2000年代です』
「あー、マジですか凄い」
『ほら、こうなりますよね』
「ですね、それで何を心配してます?」
『先に君に目を付けたのは僕なんです』
「ん?」
『成人するまでと待ってたんですけど、まさかこうなるとは』
「あの、20代でらっしゃいますよね?」
『9才の時にココへ来て、ココで言う仙人様や神様に道具を与えて貰い、あの人の知り合いに引き合わせて貰ったんです』
「ほう」
『そこで、まぁ、君にも引き合わせて貰ったんです、神様や仙人様に』
「私、神様とかと会って話せます?」
《ワシで良いならの》
「ほ?」
『君の故郷で言う、恵比寿様だそうです』
《じゃの》
「そん、こん」
《他の者には見えんで大丈夫じゃよ》
彼の肩に、どう見ても、都市伝説とかの小さいおっさんですよ。
どうしましょう、コレ法術での幻覚かもですし。
『そう疑われるともう、どうしたら良いかを散々考えたんですが』
「まぁ、難しいですよねぇ」
《願えば与えるぞい》
「何故ですか」
《与える福の神じゃてな》
「こう、西洋には悪魔なる概念が」
《そこじゃよ、疑えばキリが無いじゃろ、転生者の特性じゃけど、ワシらちょっとは傷付くんじゃよね》
「あ、すいません。となると彼は」
《幼いわウブだわで、コヤツはもうホイホイ信じたでな》
『色々と頂きました』
「あの、因みにご出身は?」
『デンマークです』
「あー、もー、そこ最初に言って下さいよぉ」
『あ、すみません』
《形無しじゃのぅ》
「あの、すみません、疑問はまだまだ有りますけど、答えてくれます?」
『天使に頼まれたんです』
『はい、どうも、伝令の天使ガブちゃんです』
一瞬、思考停止を味わいました。
いきなり目の前に出ますか、天使、ダブルピースて。
『あの』
『まぁ、そう思いますよね。ですが本来ならアナタの望み通り、我々は接触しない筈だったんです、何も無ければ』
「と言いますと」
『少なくとも私の主の予想では、彼が現れる事も惚れる事も予想されていませんでした』
《ワシら転移者が来る事は読めんでな、半ば対処療法なんじゃよ》
『はい、来てからで無いと分かりません、しかも気持ちを操る事も禁じられていますので』
「出来るんだ、実際」
《まぁ、もう少し細かく言うと、誘導も禁じられとる。と言うかそもそも介入を禁じられとるんじゃよ》
『僕の様な転移者には介入、接触が出来るんです』
「あぁ、セーフティーネットとかカウンターですか」
《じゃの》
「随分とお言葉が通じるんですね?」
《コレが知っとる事の殆どが共有されとるでな》
『僕が共有を許可したので、はい』
『心を読ませて貰い、善人だと把握してるので大丈夫ですよ』
「情報過多」
《じゃろうな》
彼女を困らせる気は、本当に無かったんです。
ただ、少しは邪魔をしようとかは思いましたけど。
『大丈夫ですよルーちゃん』
「ルーちゃん」
『あ、名前は本名なんです、エレン・ルーカス、エレンが名です』
「良く知らないんですけど、どっちも名っぽいですね」
『親が再婚して、こうなりました』
「あぁ、有るんですね外国でもそう言う事。因みに今のお年は?」
『一応、同じ年です、少し老けて見える様に術を掛けて貰ってます。ただ解くと皆さんにも見えてしまうので、今度で』
「それが素ですか?」
『はぃ』
『ね、可愛いでしょう、どうするかずっと仙人や神々と相談していたんですよ』
『すみません、僕、女の人の事は良く分からなくて』
《男の事もじゃろ》
『文化が随分と違いますからね』
「あぁ、西洋と東洋じゃかなり違いますもんね、大変だったでしょうに」
『アナタの為に、頑張りました』
恥ずかしい。
カッコつけたのに何とも思われなかったし、今も、だし。
「ありがとうございます?」
『ぅう』
『気持ちを伝える宝貝をお渡し出来れば良いんですが、生憎と』
《ワシに願うか?》
「良いんですか?」
《こう言う状況じゃし、コレが関わっとるでな》
「あぁ、でも、知ったら知ったで色々と面倒に」
『はい、巻き込まれる可能性は高いかと』
『すみません、関わらない方が良いとは言われてたんですけど、諦められなくて、ごめんなさい』
「あの、質問なんですが、どうしてこの国に留まったんですか?この外見が多い国に行けば」
『ココで頑張ってる君を見て、僕も頑張ろうと思ったんです、変な贈り物をする奴らをどうにかしたかったけど、ごめんなさい』
「いえ、そこはココの、地元民と言うか何と言うか、ココの人達がどうにかすべき事なので、気にしないで下さい」
『ほら、大丈夫だと言ったでしょう?』
『疑ってたワケじゃないんですけど、僕なら嫌に思うかもと思って』
「あ、全然バレて無いんですか?その外見」
『はい、普段は、あ、あまり知らない方が良いですよね』
「ぁあ、はい」
《焦れったいのう、早う願ってくれんかね》
「あ、心を読める宝貝を一時的に貸して下さい」
《賢い子じゃの、うむ、暫し貸してやろう》
そう言うと神様は翡翠の指輪に触れて、そのまま姿を消しました。
「消え、ましたよね?」
『はい。あ、僕の気、オーラに』
影響は神様や天使の加護の強さに比例するんですけど、多分、知らない方が良い事ですよね。
『ココで言う陰の気では有るんですが、コレを付けていれば日頃は出ませんし、悪寒等を感じる以外は特に害も無いので、大丈夫ですよ』
『すみません、そう説明する事が殆ど無くて、ありがとうございます』
『いえいえ、では』
後、多分、何で出てるかの説明も要らないですよね。
それに、聞いても怖くなるだけだろうし。
「あ、じゃあ、指輪をお借りしても?」
『はい、どうぞ』
「先ず、何で気が出てるか聞くと、転移転生者しか知らない事に触れますかね?」
『多分、少し、けど考えちゃうと筒抜けになるので、指輪を外して貰えると』
「あ、はい」
俺らは花霞の様子を、薔薇姫とかは道士の方を、其々の部屋から確認してたんだけど。
途中から気を許し始めちゃって、偶に談笑しちゃったり、指輪を付けたりして。
もう、マジで春蕾が超不機嫌で。
薔薇姫とかと合流して、花霞が説明に来ても、超不機嫌なまま。
『では、僕ではなく桂花から説明をお願いしますね』
「先ず、この方は安全です。そもそも共通の知り合いと私を引き合わせてくれたのは、彼だったみたいで、そこはちょっとした恩人でも有るのでどうか警戒を解いて下さい」
『いや陰の気を出しちゃってた説明が欲しいな、俺は』
「道士様だからこそ、迂闊に気を読まれない為、それと霊や亡骸を探知する為、だそうですが。蝦餃様としてはどうですか?」
《僕より、先ずは》
「やだー、私遅れちゃったかしら、ごめんなさいね道士様」
『いえ、丁度良い頃合いでしたよ、お席へどうぞ』
「ありがとう。けど、何?この変な雰囲気、もしかして道士様が怖いのかしら?」
「多分、薔薇姫は相当かと」
《私は、別に》
『大丈夫ですよ、この指輪を外したりしなければ何も起こりませんから』
『じゃあ外す以外にも手は有るんだ』
『道士其々に手段はバラバラですから』
「なによ包々までビビってるワケ?」
『いやどう見ても桂花を口説いてたんだよ、さっきもだし出会い頭もだし』
「あら、そうなの?」
『僕も、こうなので』
暁霧、顔を見ずに信じたのかよ。
「あら、あらあらあら」
『前に顔見なかったの?』
「あのね、この方の玉牌を当主に確認させたら即座にそのままって、アンタ達も見た事が無かったのね?」
『桂花から中央の特殊な家のだってのは聞いた』
「そうらしいのよ、私と当主しか見せるなって、ね?」
『はい、万が一にも偽造されては困りますから』
『俺らに見せて良いワケ?』
『彼女の相手になりたいので、皆さんに身元を明かさないワケにはいきませんから』
あぁ、コレ、マジな感じの声っぽい。
『その姿でバレずにどうやって生きてきたワケ?』
『桂花との共通の知り合いのお陰です、それ以上の事は当主のみに言える約束になってますので、すみません』
『顔が見えないからなぁ』
『すみませんがコレも気を収める道具の1つなので、どうかご理解下さい』
「この着てる物も全てそうなのよ、ちゃんと清められた道具、僧の袈裟より重要なのよ」
『例えば?』
「最初は師となる方に作って頂いて、以降は4年に1度ご自身でお作りになるの、この紗もね。流石にお仕事に出られる方は素材からだと大変だから、ウチで直接購入する方も居るわよ?」
『暫くは毎年作る事になるので、殆どが道具作りに追われますが、その合間に座学で様々な事を学びます。今は中央で代理に素材の購入をお願いしているので、中央の桂花が知らないのも無理は有りません、本来道士は夜間や日暮れのみ移動しますから』
「大変よねぇ、お仕事の前は出来るだけ陽の気に触れない様にしてらっしゃるんですって」
『寺院にも良く出入りしますので、外聞も有りますから』
『薔薇姫達は知ってた?』
《道士様の存在は知ってはいましたけれど、詳しくは、ウチの国では少し別の、祈祷師と呼ばれる方しか居りませんので》
『私も、ココまで詳しくは、そもそもお会いしたのも初めて、お見掛けした事すら無かったですし、家族に尋ねる事も無かったので』
『本来有ってはならない事に対し、内々に呼び出されますし、忌避して然るべき死に関わる者ですから。殆どの者は寺院等に寝泊まりし、夜間に移動しますので、そう見られる様な事が殆ど有りませんね』
「あ、あの昼間の女性の幽霊って」
『すみません、僕のせいです、陰の気の残渣で見える様になってしまって。ですが彼女に害は無いですし、既に成仏されたので大丈夫ですよ』
「何であそこに居たんですかね?」
『本当に知りたいですか?』
「やめときます」
『俺は知りたいな』
『病死です、ご親族の方が遺言通りに少しだけ池に遺骨を撒いたんです、池の蓮になりたいと。早世でらっしゃいましたので、ご両親の美しい思い出になれれば、と願っての事だったのですが。僕の陰気で幾ばくか呼び戻してしまったんです、まだ忌引も明けてませんでしたから』
「迂闊に外せませんね」
『園にはそういらっしゃる事は無いですから、大丈夫ですよ』
話し方、最初と全然違うじゃん。
ぁあ、マジで前から知ってんのか、花霞を。
「ねぇ、ちょっと良いかしら、私お昼もまだで、お腹が減ったのだけれど」
「あ、空きっ腹にお茶は辛いですよね、何か食べに」
『でしたら僕はお暇を、先程の寺院に泊まっていますので、ご連絡頂ければいつでもどうぞ、僕はあくまでも世話になっている身なので』
「あらごめんなさいね本当、また宜しくお願いしますわね」
『はい、では』
嫌だわ本当、道士様からご連絡頂いて急いで来たのに、茶楼に着いたら明らかに皆がピリ付いてたし。
しかも春蕾ちゃんは馬車に乗って点心茶館に着いても、凄く不機嫌なまま。
コレこそ修羅場、かしら。
「春蕾ちゃん、こうなる事は予想してなかったのかしら」
《本気ですか、桂花の事》
あら、先ずは私の事からなのね。
真面目ね、本当。
「本気よ、私は崇める桂花ちゃんの為なら何でもするわ」
《崇める》
「尊ぶ、若しくは敬愛する、でも良いけれど。私にもあの子が必要なの、生き仏様を毎日拝めお手入れしたい、そして出来れば定期的に後光で喝を入れて欲しい」
《桂花には俺達が》
「春蕾ちゃん、私の場合はアナタと違って子が出来るかどうかは関係無い、つまりどうなろうともずっと傍に居てあげられる。もし仮にアナタ達に子供が出来なかったら、あの子は泣きながらでもアナタ達の元を去る筈よね。だから私はその高潔さを支えたいの」
《暁兄は、本気で僕達を引き離すつもりなんだね》
「どんなに納得させようったって無理な事も有るのよ、それでも捻じ曲げさせてまで傍に置くって言うなら、私は私の信念で動く。もっと言うとアナタ達と信念は同じ、一緒に居て幸せになりたい、その邪魔をするなら私は桂花ちゃんとアナタ達に水を差し続けるわ」
そう、誰の為と言えば私と花霞ちゃんの為、こうする事にした。
それにもし子が出来ても、お世話が出来る手は多い方が良いのだし。
『じゃあ子が出来たらどうすんの?』
「流石ね雨泽ちゃん、どっちにしたって同じよ、安心して預けられる人手は多い方が良いでしょ、それとも子は1人だけで十分なのかしら?」
《暁兄は、そのつもりだけなんだろうか》
「嫌なら降りたら?あの道士様と花霞ちゃんを引き離すのは無理だと思うわよ、あの感じだとね」
同じ容姿の者を引き離すだなんて、無理よ。
馬と驢馬より馬と馬、なら受け入れる覚悟をしないとね。




