55 問答。
文を頂いたので昼餉の後、お話をする事に。
もう頭がお花畑だと思われても良い、そんな開き直り半分で妲己様のお話をしたんですが。
《それで、あの文は一体何だったんですの》
『いや若いのなら桂花みたいな考えが多いのかな、ってだけだよ』
「成程?」
『それに俺』
《包々は覇王の性質を持つ、とされているんだ》
「成程、それで皇帝の言葉に引っ掛かりを覚えたんですね」
《乱世の王ともなれば情に流されるべきでは無いからね、けれども平穏な世には不要な冷酷さ。そうした考えを忌避する年寄りは多いんだ》
『まぁ、平穏だからねぇ』
「ですよねぇ」
ココで終わると思ったんですけど。
厠から戻る途中、雨泽樣に呼び止められ。
『あの文の解釈はお前ので合ってる、俺がそうだった』
「ん?だった?」
『お前を笑えないんだけど、靈丹妙藥が売ってて、飲んだら普通っぽくなった』
「流石万能薬ですね」
『はぁ、けど半分後悔してる、分からなかったから楽だったって、大変さを理解した。あのままの方が楽だったかも』
「例えば?」
『今は大猪が死んだら寂しいと思う、多分、泣ける』
「例のご友人には」
『弱かったし愚かだったし、仕方無いな、ってのは同じままだけど。桂花がそうなったら、悲しいと思う』
「けど、凄く立ち回りは上手でしたよ?」
『マジで信じてんの?』
「嘘を言うにしても、もう少し笑える嘘を言う方かな、と。冗談だったんですか?」
『冗談じゃないから引き籠もってたんだよねぇ』
俗に言うサイコパスさんだったんですね、雨泽様。
けど、確か、共感が上手く出来無い筈じゃ。
もしかして、四家の加護?
「あの、加護ってご自身のを詳しく知れるんですか?」
『ぁあ、有るかどうか知らない、多分、長だけ』
「成程」
って言うか流しちゃいましたけど、靈丹妙藥て。
ほら、やっぱり神様や仙人様はいらっしゃるんですよ。
『まぁ、認める、仙人か神か知らないけど、靈丹妙藥をくれたんだし』
「ほらぁ、ふふふふ」
雨泽様、相当な良い子さんだったんでしょうね。
私ももっと善行を積んで、靈丹妙藥ゲットを目指そう。
《雨泽》
馬車から雨泽と花霞を見ていたけれど、気軽で親しげに話していて。
凄く、羨ましかった。
『妬むな僻むな羨ましがるな、花霞はただの友人知人』
「と思っていたけれど、ついぞ芽生えてしまう恋」
『昨今の恋愛草紙みたいですね』
『兔子さぁ』
『あははは、僕も厠に行ってきますねー』
『マジでアイツ、本当に良い性根をしてんだよなぁ』
《雨泽、俺も普通に話したい》
照れてくれる嬉しさ反面、以前の様に近くで、親しげに会話をして欲しいと思ってしまう。
惚れて貰えている証でもあるのに、戸惑われてしまうと寂しさを感じる。
『女装でもすれば?』
《成程》
《そう言えば僕らの順番が未だだったね》
「あら確かにそうね」
《移動の際にあまり女性が多いのは良くない》
『あー、確かにな、ならアッチには男装させるか』
「ヤダもう天才が過ぎるわ雨泽ちゃん」
《けれど花霞は、嫌がらないだろうか》
「あら臘月様でも読みが難しいのね?」
《彼女の事は表面上しか読み取れないんだよ》
『成程ね、半分馬か麒麟か』
《ふふふ、そうかも知れないね》
『花霞の男装、見たいか?』
《見たい》
「叶うと良いわね」
『はー、ただいま戻りました』
「じゃあ、出発しましょう」
別々の夕餉の後、兔子が文を持って来てくれたんですけど。
次は暁霧さんから、私達へ。
『異性装での、馬車の乗り合い』
「薔薇姫様はそのままでお願いしますね、押さえ付けてお胸の形が悪くなったら私が泣きますから」
《そこはまぁ、良いのだけれど》
「あ、私ですか?何ならしたいですよ?」
《良いの?男と錯覚されてしまうかも知れないのよ?》
「致した後か前か、なら致す前の方が傷口は浅いかと」
『どうしてそこで二者択一になるんです?一生しない手も有るんですよ?』
「嫉妬に狂った方が、私を誘拐して男装した姿を見せないと家族を殺す、とかなる前。今こそでは?」
『そうした物語も有りますけどぉ』
《有るのね》
『あ、男性同士の、そう、逆の、で』
「何で私に貸しませんか?」
『前の、白家で少しだけ、とお借りした本で』
「題名を覚えてますか」
《アナタねぇ、どうしてそこが乗り気なのよ》
「だって、もう最初から禁断の愛だと分かってて突き進むなんて、逆に純愛過ぎません?」
『分かります。それに動物でも雄同士は稀に存在しますし、種が豊かな良い証拠だ、って父が言ってました』
「あぁ、成程」
《だとしてもよ、もう少し熟考なさい?》
「ふぇぃ」
それでも結局、花霞は男装する事に。
どうして、こう思い切りが良いのかしら、と美雨が呆れていたんですけど。
私には少しだけ分かる気がします、だって体を重ねる前と後は全然違う、って。
他の選択肢を残してしまってるからこそ、不安なんですよね。
「我ながら、似合い過ぎですよね」
《全くだわね》
翌日、花霞と青燕が異性装をし、男性陣の馬車へ乗る事になったのだけれど。
本当、花霞は良く似合ってしまってて。
「他には、どうです?変な所は?」
《アナタが男性寄りの半陰陽だったなら、間違い無く私から求婚してるわね》
『なら結局はハレムですね』
「いや、やっぱり男性1人に女性大人数は無茶ですよ、男性は回数が限られるんだそうですし、年を取ると衰えるだけ。絶対に争いが起こりますって、神代の後宮」
『ですよねぇ』
《もうあの方々がダメなら神様にお願いして、すっかり男性になってしまいましょう》
「で商隊へ。完璧では?」
《異国の言葉を学ばないとダメよ?》
「あー、お飾りはダメですかね?」
《アナタなら出来るわ》
「いや期待が大き過ぎですよ、広く浅く薄くが私なんですから」
『あ、着きましたね』
《兔子様のお姿、私も見て良いのかしら》
『良き品は皆で愛でるモノでは?』
《まぁ、そうだけれど》
「なんなら自慢したいですか」
『はい』
小鈴がこう言うのだから、良いとは思うわ。
けれど花霞よ、青燕が付き添うのだけれど、本当に大丈夫かしら。
《青燕、お願いね》
『はい』
「もー、過保護なんだから」
『わぁ』
感嘆の声を上げた小鈴の視線の先には、異性装をなさってる兔子様と臘月様。
コレ、どちらがどちらなのかしら。
《あの》
『あ、どちらがどちらなのか分からない方が、僕は嬉しいですよ。そう誤魔化せる様にと努力してきましたから』
《そうだね、互いに寄せ合ってきた面も大いにあるからね》
「と言う事は、コチラが蝦餃様、ですかね?」
《どうだろうね?》
「いや紛らわしいですね本当に、お酒を塗っちゃいますよ?」
『僕が兔子で合ってますよ』
『可愛いです本当、お人形として飾っておきたいです』
『触ってはくれないんですか?』
『ぅうっ』
《こら兔子、程々にしないと旺盛過ぎると心配されてしまう知れないよ》
『欲は程々に有ります』
《すまないけれど、頼むね薔薇姫》
《はい。では、参りましょう》
僕と兔子、花霞と青燕が異性装をし、兔子は女性陣の馬車へ。
花霞と青燕は、僕と春蕾と雨泽が乗る馬車へ。
そして僕の横には雨泽、青燕。
目の前には花霞、その横には春蕾。
「お似合いです、と言って良いんですかね?」
《まぁ、特に嫌な気はしないね》
『しないんだ』
《意外とね。ただ花霞はどうなんだろうか》
「明らかに似合いますよね、私」
『こうなるとマジでどっちか分かんないな』
「ですよねぇ」
心配していた不安や緊張感は無く、寧ろ機嫌は良さそうにも思える。
《少し不安だったのだけれど、大丈夫そうだね》
「あ、脱がないから大丈夫かな、と思ったんですけど、やっぱり似合い過ぎますかね?」
《過ぎる事は無いよ、ね》
《体が女性寄りで良かったと思う》
「そこですよねぇ、男性だったらどうなってたか」
『それなぁ、けど春蕾は手を出しちゃってそう』
「またまたぁ、女性同士ならまだ分かりますけど、男性同士って結構高い壁なのでは?」
『ソレ軽く越えそう』
《僕はまだ予想が難しいけれど、春蕾はどうだろうか》
《俺は、男同士の作法を知らないんですが》
「あ、じゃあ考えるのも難しいですよね」
『そんな事もあろうかと、宿の人間に頼んどいた』
《あぁ、それで何かコソコソしていたんだね》
『おう、向こうにもクソ変な目で見られたわ』
《だろうね、ありがとう雨泽》
《ありがとう》
「どれどれ」
春蕾は多分、大丈夫そうだけれど。
本当にもし花霞が男性寄りの体か男性だったとすれば、どうなっていたんだろうか。
『にしてもさ、臘月が分からないって言うの珍しいんじゃん?』
《そうだね、そう迷う事も判断に困る事も少ないと思っているし、そう評されてもいるからね》
『花霞は男か男寄りだったら、とか考えた事はあんの?』
「男寄りだったら、とは考えてみた事は有りますけど、そうなると出会ってもいないと思うんですよ、商隊へ入る想定でしたから」
『似たのを探しに?』
「と言うか馴染みそうな場所に定住しようかな、と、周りに気を遣わせてしまいますから」
『流石に見慣れたけど、やっぱりそうなるか』
「ですねぇ、私は常に私を見れませんし、けど自分が周りなら気が気じゃないですから」
『まぁ、商隊なら守り合って当たり前だもんな』
「ただ仕事が傾けば商談に使われるかもなので、ずっとは考えてませんね」
『全然違う道になんのな。俺は性別が違くても特に変わらないだろ、とか思ってたから、不思議な感じだわ』
「まぁ大きな要因が多いですからねぇ」
『商隊は海?陸?』
「海ですねぇ、早く遠くに行けますし。行ってみたいですか?」
『いや無いね、安穏と暮らしてたい』
「女性だったら妥当そうな方と結婚して、それなりのご家庭を築いてそう」
『だなぁ、四家巡りして適当なの捕まえてな』
「気が乗らなくても出来ちゃうそうですからね、女性って」
『本当、生まれる性別間違えたのかも』
「ですよねぇ、分かります」
《成程、もしかすれば全員が生まれる性別を間違えたのかも知れないね》
「と言いますと?」
《君は中央で店番をしながら学んでいる中で、僕らが其々に中央へと向かい、其々が君に出会う》
『あー、確かに面白そうだからって俺は声を掛けるかもだけど、女の春蕾って、ちょっと分んないな』
《多分、同じ様に一目惚れをすると思う》
「相当、しょっぱい態度になると思いますよ、塩漬け肉も驚く塩加減」
『アレか、とうとう四家を名乗るヤバいのが来たか、ってか』
「あー、けど、男性寄りならもう逆に、受け入れちゃうかもですね」




