35 御開帳。
伸びが悪いので投稿時間ズラしてみます。
《何故言わなかったのか理解した上で、敢えて尋ねるわね、何故なの花霞》
私達の馬車に帰って来たと思ったら、隅っこで小さくなって。
理由は分かるけれど、聞きたいのよ。
本人の言葉で、本人の口から。
「ほぼ女だけど、完璧に女じゃないから、嫌がられるかなと、思って」
《私達を妊娠させられるの?》
「無理、どう足掻いても処女膜すら破れないけど」
『なら女性で良いのでは?』
《そうね、アナタは女よ花霞》
「えー、でもお母さんとも姉とも違うんだよ?主に下半身が」
『見せて貰っても良いですか?』
「え、嫌、恥ずかしい」
『良いじゃないですか別に、墨家の医師に見せたんですよね?』
「問題無いですね、しか聞いて無いよ?」
『なら私も医師として見させて下さい』
「湯上がりで良い?」
『はい』
《で、それだけで、湯殿で1人が良かったのかしら》
「よーく見たら違いがバレちゃうので、はい」
『あ、青燕さんも良いですよね、描き残したいので』
「向上心の塊」
『名は記しませんし、他の半陰陽の方の指標に、嫌ですか?』
「それは、まぁ、私だとバレないなら良いけど。けど、ちゃんと偽装して下さいね?」
『勿論』
《でも記録は他にも有るのでしょう、無理しなくても良いんじゃない?》
「そこは、情報は広く多く、の方が良いですから」
《罪悪感で何かして欲しくは無いの、以降はちゃんと相談して欲しいだけ》
『そうですよ、逆に向こうが驚いてましたよ、試し腹の事は言っても半陰陽を言わなかったのかって』
「あー、お任せします、としか言って無かったので、私の伝え漏れで。と言うかあの人が驚くとか有るんですか?」
《笑ってらっしゃったわよ、少し予想が外れた、って》
『と言うか私達も驚きましたよ、半陰陽だって言い切るから、てっきりもう、致してしまったのかと』
「婚約もしてないのに、とんだ小母狗過ぎでは?」
《だってアナタって分かり難い四家の崇拝の仕方じゃない》
『隠れ愛国者ですからねぇ、珍しいですよ、他の子は国を愛してるかどうか考えてもいないでしょうし』
《だからこそ、もう致してしまって、もう何回かしたら諦めて貰う作戦なのかしら、と》
『私はその発想も無かったので、成程な、と』
「いや何も、手を触られただけですし」
《と言うかそこよ、何処で藍家の方にお会いしたのよ?》
『それにどの方が春蕾さん?なのか』
「あー、えー」
『実は遠くでお見かけして、内密にお声を掛けていたそうです、虐げられてはいないかと』
「ご心配して頂いて、そう、心配だけなのかなー、と、はい」
《また、まだ複雑そうな事を抱えてるわね》
『どうしたら信用してくれるんですか?』
「コレは少し、信用問題では無くて、実は」
『お2人は邪教をご存知ですか?女媧教団』
『えっ、居たんですか?四家巡りの中に』
『そこはお答え致しかねますが、そうした事情等が複雑に絡み合い、春蕾様は女装なさって様子を伺ってらっしゃったのです』
そして困っていた花霞を助け、縁が繋がった、と。
《花霞、アナタ気が付かなかったの?》
「いえ、気付いたんですけど、私が私ですし、気付いた理由も言えずで」
『宦官密偵だと思ってらっしゃったそうで、少なくとも居ないワケでは無いので、ある意味で行動は正しかったと言えるのです』
《宦官》
『密偵』
『はい、女媧教団は女尊男卑、一旦後宮に入り込まれてしまえば広まってしまってもおかしくは無い。そして御柳梅様の事も有りますので、数日だけ、お顔を合わせていたそうです』
宦官密偵。
確かに男性側は勿論、頑張れば女性の方でもお話は聞けるでしょうけれど。
『あ、じゃあ、あの飴は』
『はい、春蕾様の手配だったそうです』
《藍家の方を疑うつもりは無いのだけれど》
『品物は総女官長と次長だけが関わっており、しっかり確認もし、お届けしていたそうです』
「貞操帯も付けてるから大丈夫ですよ」
『《貞操帯》』
『鍵は暁霧様がお預かりしているそうです』
「あぁ、そうなんですね」
『はい』
『花霞は、その、それでも良いんですか?』
「ご趣味では無いそうなのと、ぶっちゃけますと似合うので、アリです」
《アナタ凄いわね、女装に貞操帯よ?》
「私に害は無いので、別に」
《何が良いのよ?》
「嫌な所が、無い、所?」
《女装で貞操帯でも?》
「まぁ、はい」
《アナタねぇ、四家だから、と逆に目を瞑ってるのではなくて?》
「そこは無いですねぇ。ただ、今は嫌な所が無いってだけで、コレから先に出るかもですよ。それこそお金使いが荒いのは嫌ですし、欲張りだったり我慢が効かないなら無理です、それに浮気性も嫌です。今は嫌だと思える程の情報が無いんです、どちらのも」
私も、きっと今はそんな状態なんですよね。
良い面しか見えていないだけかも知れない、フワフワと浮ついた気持ちなのは、寧ろ私の方。
《なら、嫌になったら断れるわね?》
「はい、勿論です、自己犠牲も面倒事も大嫌いですから」
《なら嫌がりなさいよ御開帳を、どうして受け入れてしまうのよ》
「だって実物を見れる機会は中々無いんですよ?」
『会った事が無いんですね、他の方に』
「そぉなんですよぉ、他に居たらなとは思うんですけど、中央のお医者先生も初めてだって。記録には有っても他を知らない、って」
《中央でそうなら、他は難しいかも知れないわね》
『でも私達が知らなかった様に、困って無いからって医師に罹ってない方も居るかもですし。同じ方に、会ってみたいですか?』
「まぁ、愚痴が言い合える人が居ると良いなとは思いましたけど、別に、そこまででも。生きるのには困って無いので、寧ろ恵まれた環境ですから、却って妬まれても面倒なので。まぁ、男性体の方なら、お話はしてみたいかな、程度ですね」
《まぁ、確かにそうね、愚か者って妬み嫉みが凄いと聞くし》
『確かに、半陰陽だから賢いかどうかは別ですもんね』
「なのでまぁご縁が有れば、運が有れば、流れで会えたら。程度ですね」
私なら同じ人を探したくなる。
花霞は強い。
と言うか、ずっと考えて来たからこそ。
まださっき考え始めたばかりの私達は、赤子同然。
やっぱり考える時間は必要ですよね。
うん、最低でも10年分は自分を辿りながら考えてみないと。
「あのー、沈黙が痛いんですけど?」
『あ、ごめんなさい、今までの、10年分のおさらいをしてたんです』
《あら奇遇ね、私も、今8才位ね》
「何でそこまで?」
《だって分からないんですもの、じゃあちゃんと順を追って考えないと、でしょ?》
『ですね。私は同じ人が居たら探してでも会いたいな、と思ったんです、でも花霞はそこまでして会いたいとは思わない。なら私の考えが浅いか思い違いをしてるかも知れない、何か抜けてるのかも知れないな、と』
《私も、喜んで隠していたワケじゃないとは分かるわ、けど信じてくれなかった事にどうにも納得がいかない。でも、それは私が良く居る女性だから、その毛色で半陰陽では無いから分からない何かが有るのかも知れない。それは尋ねるよりも前に考えてみてからよね、と思ったの》
「私が普通の女性なら、嫌だろうなと。完璧な女性では無い、男性的な身体的特徴が有る、つまり男性とも取れる。なのに普通の女性として振る舞っていて、裏切られたと思っても、仕方無いかな、と」
《ねぇ、小鈴。見るって事は、見せる覚悟も有るわよね》
『当然ですよ、でも確かに恥ずかしいですね、親兄弟にも大きくなってからは見られて無いんですし』
《でしょ、だからもう、見せ合えば良いと思うのよね》
「何を言ってらっしゃいます?」
『言われなくても私は見せる気でしたからね?安心して貰う為に』
「お2人とも、馬車の振動で頭がちょっと」
《どれだけ違うかで考えが変わると思うの、けれど一方的に見るだけって、何だか凄く不平等で嫌なのよ》
『意外と形状って違うそうですしね、それこそ中の具合とかも千差万別だって、房中術の本に載ってましたし』
《そこよねぇ、外見で分かれば苦労しないでしょうしね、本当》
『あ、アレですよね、大き過ぎて離縁してしまった方も居るそうですよ?』
「そん、そんな事が?」
『はい。そもそもどうして未成年が行為を禁止されているか、1つは体格差なんですよ、口と同じでどうしても限界は有りますし。体躯が小さいと出産時に命を落とし易い、最近は適性年齢以下の出産記録は少ないですが、産後の肥立ちが悪かったり、そもそも血を失い過ぎて命を落とす事も報告されていますから』
《本当に愛しているなら待つべきよね、体が出来上がるまで》
『はい、我慢しないのは愛が無いと思います』
「だから我慢すんの?」
『そ、そこは、こう、私に一時的に興味が有るだけで、外に出て良く見てみたら意外と大した事が無いって、そう捨てられるよりは、友人知人に戻れる状態で、居たいな、と』
「子供っぽさは感じないって事ですよね?」
『そこは、はい、無いですね。同い年の様にも思えたり、それこそ年上に感じる時も有りますけど、そう、そこまで嫌には、今は、なってないです』
《あらあら幼さに愛らしさを感じちゃってる物言いよねぇ》
「ですけど、コレはきっと、私達には見せない部分かも知れませんねぇ」
《あぁ、成程、だから秘匿しておきたいのね》
『そ、う、言うのが、恥ずかしくて』
「あはー、恋ですねぇ」
《アナタにその気配が全然無いのが逆に心配なのだけれど?》
『そう、そうですよ、全然浮ついて無いんですけど?』
「私、今まで減点方式なのですよ、殿方を見る際に満点から減っていってしまう傾向なので。あまり期待しない様にとは思うんですが」
《まぁ、言い寄られた殆どがアレだものねぇ》
『離縁した夫が跟踪狂になってしまって、それで後宮にいらっしゃった方も居るそうですしね』
「何か、情報通ですね?」
『私、そうしたお話に慣れて無いので、色々な方に聞いていて。そしたら皆さん快く色々と教えて下さって、気が付いたら、悲話を書き留める役を任されまして』
《あらあら聞いて無いのだけれど?》
『あ、藍家で女官長様からお受けした事柄なんです。人には堂々と言えないけれど知って欲しい、そうした人の話を纏めて、四家に提出して欲しい、と』
《何だか、私だけ何も無いのだけど、寂しいわね》
「もー、そこはご婚礼の事を散々に相談に乗ってらっしゃったじゃないですかぁ」
『そうですよ、私達だって気を遣って近付かなかった時も有るんですからね?』
《そこは、まぁ、ありがとう》
「やっぱり他と全く同じ婚礼って、嫌がるもんだなーと思ったものですね」
『でも分かります、異国の装束って凄く素敵に見えますから』
《あら、何処のが良いのかしら?》
『回族のお衣装も素敵ですし、苗族も』
「奕车族の衣装って夏場に良さそうですよねぇ」
『足丸出しですよ?』
「田植え用だそうですけど、水遊びに良くないですか?」
《まぁ、子女だけなら良いけれど、アレは絶対に殿方に見せたら大変な事になるわよ》
「見られなければどうと言う事は無いかと」
《まぁ、そうね、道中で良いのを探しましょう》
我々が危惧していた仲違いも無く。
寧ろコチラとしては報告に困る様な流れになっており、正直、どう言えば良いものか。
「あ、青燕さん、お相手ってどうなってます?」
『私、ですか』
『意中の方とか、もしかして既にご結婚を?』
《なさってらっしゃらないなら是非ウチで、お安くしますわよ》
私を居ないモノとしてお話してらっしゃた様に見えて、ただ機会を伺ってただけですね、この子達。
コレはまた、報告が長くなりそうですね。
《見せ合う、と》
『はい』
昼餉や夕餉は別々で、宿に付いてから報告を受けたんだけど。
春蕾が固まってる。
で暁霧は俯いて、多分コレ、笑うの隠してんな。
『春蕾、先ずは息をしろ息を』
《あぁ、いや、息はしてる》
「ぶふっ」
『まだ有りますが、まぁ、他愛無い事なのでお楽しみに取っておいて下さい』
『おう、ありがとう青燕』
『いえ、では、失礼致します』
「はー、顔とお腹が痛いわぁ、予想外の展開ねぇ」
『けど、臘月当主候補は違うんじゃないの?』
《いや、僕も予想外だと思っているよ、もう既に先を読む気を無くす程度には驚いているからね》
「あら、そこまで?」
《僕は万能じゃ無いですよ。人数が増えると複雑で、ココまで読めないのは初めてですよ、外は楽しいですね》
「でしょう」
宮から一切出る事も無く、真面目にしてて、しかも代わりとして表に出てたのは小剌月だけ。
臘月は宮の外はコレが初めて。
何か、普通に可哀想だな。
《僕を可哀想だと思ったのかな》
『そらね、俺は遊びに行ったりしてたし』
「まぁ私もだけど、春蕾ちゃんは、お使いだけかしらね?」
《ぁあ、はい》
「ちょっとヤダ、まだ固まってたワケ?」
《こうして見せ合う流れになるんだな、と》
『まぁ医者か薬師希望も居るからだろうなぁ』
「にしてもよねぇ、驚きだわ」
半陰陽の特徴を見せて、しかも記録まで許可しちゃって。
負い目とか罪悪感かな。




