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内縁制度。

 中央の姫様をどうするか。

 私と(ウー)ちゃんと(ユィ)ちゃんとだけで、話を進める事になったんだが。


《で、四家の制度を使う事になった、と》

「そうなのよぉ、すっかり抜けてたわ」

『そもそもココは神話の後宮を下地にしてるのに、何でかなぁ』


「だって百年近く使われなかった制度よ?」

《まぁ確かに、最も最近だと88年前だしな。制度の見直しを図るには十分だが、(ヨウ)家が縁談を持って来たら、だ》


「そこはまぁ、どうにかなるんじゃない?ねぇ?」

『何で俺?』


「良い案出せるでしょ?」

『縁談相手次第じゃね?』

《甘いなぁ小僧、甘い。釣書きだけを見て中身が分かるんなら、ウチはとっくに鞍替えしている》


『慧眼、審美眼を使わせれば良いじゃん』

《アレが素直に言うと思うか?》


『いやー、まぁ確かに、何なら策を巡らして事を有利に進めそう』

(ユィ)ちゃんなら、そうするか》


『まぁ、うん』

「後は向こうの出方次第よねぇ」


 どれだけの人物を宛てがうかは勿論、コチラの利害に関係無く姫様の相手を見定めるのも、四家の役目。


 必ずしも親が全て正しく、絶対に間違わない、とは言い切れないのだから。


『それまで春蕾(チュンレイ)を悶々とさせるのか、何か可哀想だな』

《早馬は出したが、何をするにも、向こうがどう出るか。だな》


 コチラの制度に異議を唱えられたら、計画も何も全てが終わる。

 姫様が乗り気で無い以上、ゴリ押しは。


「で、兔子(うさぎ)ちゃんの事は?」


《元は臘月(ラーユエ)の身体の弱さから始まった事だ、長く生きられないとしか思えない程に弱く小さくてな、当初から存在を公にはしなかったんだ》


 そして私が長男を妊娠した事を、最初に気付いたのはあの子、臘月(ラーユエ)だった。

 私よりも先に気付き、健康でいられる時間が長くなり、慧眼も発揮され始めた。


 だが同時期に身体の成長が遅くなり、あの年でも少年の姿のまま。


 腹の子は自分の陰陽を補う片割れかも知れぬ、と臘月(ラーユエ)に言われ。

 万能薬や不老不死の妙薬を月で作る兎に、跳ねる月に希望を託したんだが。


『あの年で万能薬が作れたら一大事だよ?』

《まぁ、そこまでは期待していなかったさ。ただ子を成したいと思った時、叶えられれば、とね》


「別に、疑っては無いのだけれど」

《父の甥の子が私の夫でな、その血なのか、出て来たばかりの子を見た時はもうな。臘月(ラーユエ)に良く似ていて、皆で大爆笑したものだよ》

『そこ笑うんだ』


臘月(ラーユエ)の様に賢く可愛い子を、と願っていて、そのまんま出て来たんだ、笑うしか無いだろう》


『だからって名まで似せる?』

《だからさ、臘月(ラーユエ)が悪人の手に渡ればどうなる事か。それにだ、あの容姿の事も有る。ただ、ウチの子は予備にさせる気は無い。あの子は外に出る子だからね、育つまで互いの隠れ蓑になればと、そう思った程度だ》


『それさ、自分とソックリなのに大きくなって、苦も無く子が成せたら、捻くれそうじゃない?』

《その前にあの子は家を出る予定なんだ、女を追ってね》

「あらヤダ、まさか花霞(ファシャ)ちゃんとか言わないでよ?」




 ヤダ、ちょっと、何で黙るのよ臘梅(ラーメイ)姐さん。


(ユィ)ちゃん、良い機会だ、当ててみると良い》

『だから何で俺?』


《君は理由が無ければ子女を観察せんだろう、頭が良く面倒臭がりで健康優良児。この先の自由を失いたくは無いだろう?》


 あら、すっかり親だわね、成長の機会を与えようとするだなんて。


 けど、この子には少し足りない。

 もう少し押さないとダメなのよね。


「言う事を聞かないと嫁がせちゃうぞ、って事よね?」

《あぁ、ウチのでも良いぞ、末の妹が良い年頃なんだ。そうだな、成程》


『何か、すっごい嫌な予感がするんだけど』


《相性が良い者か、婚姻を成立させても良いと思う者を選ばなければ、非常に断り難い見合いを5件送り込む》

「あら面白そうね、乗ったわ」

『勝手に決めんなよぉ』


「良いじゃないの年頃なんだし」

(ウー)ちゃんのもだ、褒美に10人は紹介してやろう》

『ざまぁ』


「まぁ、良い年を過ぎちゃってるものね」

《まだまだだよ(ウー)ちゃんは若い方さ》


 そうね、推し進めるなら、私も真剣に考えるべきよね。




『困るべきかな、とは思ったけどさぁ』


 何も俺を巻き込まなくても。


「良かったわね、悩みの種が出来て」

『違う違う、こうじゃない、そうじゃない』


「我儘ねぇ」

『良いと思えないから悩んでんのに、無茶じゃない?』


花霞(ファシャ)には良い所しか無いが》

『驚かすなよ、急に話に入って来るじゃん』

「宦官は後回しよ春蕾(チュンレイ)ちゃん、もしかしたら向こうの家の縁談が纏まっちゃうかも知れないんだもの」


 それな、コレで何の機会も無しに終わるかも。


 けど何か嫌だな。

 そこまで応援してたワケじゃないんだけど。


『でもさぁ、何の機会も無いまま終わるの、俺は何か嫌だなぁ』

「そうねぇ、私も、出来たら情愛を選んで欲しいわよね」


《俺は、花霞(ファシャ)に幸せになって欲しい》

『アレは?幸せにする、みたいなのは無いの?』


《幸せに出来る方法が分からない》


 四家や大きな家は嫌だ。

 中庸の生活をしたい、って。


『いや、そこだよ、抗えない位に良いと思わせたら良いんじゃん。アレって意外と有能さも有るから、もしかしたら普通の男じゃ満足出来無いかもよ?』


「ズルいわぁ、けど良いわね、アレだけしっかりしてると粗にも目が行く筈。内縁制度に姚家が推す者も含めて、行えば良いのよ」


《振り向いて貰えると思えない、変態だから》

『とうとう自分で言った』

「でも気にして無さそうよ?」


『あー、そこもさ、ちょっと感覚おかしいんじゃない?』

「そうね、理由が有るにせよ、物分かりが良過ぎるわよね。それに情愛を過度に恐れてる気がするわ、本人が気にしていない以上は深く追求出来無いけれど、ちょっとずつ修正されてくれれば、もしかすれば、よね」


《それは花霞(ファシャ)の幸せに繋がるんだろうか、どうしても邪魔する様で》

「それこそ姚家次第よ」

『だね、何処まで考えて返事を出すのか』


 子の願いを全て叶えるのが良い親、なワケじゃない、けど制限し過ぎてもいけない。


 面倒だ、子育てなんて出来る気がしない。

 けど選ばないとマジで結婚させられる、嫌だ、面倒はマジで嫌だ。


《良いかな、僕だ、少し話がしたい》


 コレ、臘月(ラーユエ)か?

 どっちの声だ?




『ラーユエ様がお話がしたいそうで』


 水仙(シュェイシェン)さん、忙しくさせてすみません。


「あ、はいはい、今行きます」


 別室で隔離待機中だったんですけど、ぶっちゃけ暇だったので助かります。


 結局は家の返事次第なので、考えるのは止めて。

 けど手持ち無沙汰で。


『先ずは()()()か、聞きたいそうです』


 面白い事を考えますねぇ。

 しかもニコニコして、全く判別不可能です。


「あ、えー、候補の臘月(ラーユエ)さん?」


 あら、違った?


《装いも何もかも変えたのに、良く分かりましたね》

「勘ですよ勘、水仙(シュェイシェン)さんを伴うのは臘月(ラーユエ)さんかな、と」


 ゲームだったらステータス画面とか些細なヒントとか、それこそ攻略情報が有れば良いんですけど。

 マジで勘です。


 こうしてゲームベースで考えると、現実って本当にクソ不便ですよねぇ。


《当てられると僕が喜ぶかも、とは?》

「あー、けどまぁ勘なので、そうした浅い事でぬか喜びはなさらないかと」


《君のその態度、僕の慧眼を恐れない所に好感が持てる、となるとは》

「至りませんでしたねぇ、既に考えるのを止めたので」


 駒が揃わないのに考えても。


《駒が揃わないのに考えても仕方が無い》

「凄い、どう分かるんですか?」


《肝が据わっている所も良いですね》

「何かもう、何でも良く見えてません?」


《かも知れませんが、意外と物怖じするんですよ、年頃の娘さんは特に》

「どう物怖じするんですか?」


《殆どの人は、心の隅々まで知られたら困るからね》


 そこなんですよねぇ。

 ココには転移転生者が居るかもって劇や本で本気で仄めかされてて、現に私がこうで、全て知られるのは超困る。


 本気で無能だからこそ、バレた挙げ句にガッカリされたくない。

 ただでさえ目立ってるのでコレ以上目立ちたくない、四家なんてマジでご遠慮したい。


 何故なら、面倒だから。


 ただでさえ妃教育って大変そうなのに、ココだと更に凄そうじゃないですか、そう無茶な教育をしたら誰だって感情を。

 いや、居るかも知れませんね、適格者。


 サイコパスの人とか、適正有りそう。


 乱世での治世強そう。

 けど今は平時。


 で、何でか見初められてる。


 そうか。

 もう何もかも、詳しく聞いてみるしかないか。


「質問が有るのですが」

《何かな?》


「何を求めてらっしゃるのか、結婚したらどうなるか」

《家訓以外の何かを教え込まれたり、何かを強要されるのが心配なのかな?》


「はい」

《本当に特に無いよ、家訓と道徳、法を守ってくれたら好きにしてくれて構わない》


「性行為の回数の要望は?」


《子作り目的以外での事、かな》

「ですね、出来たら細かい要望含め、文章にして貰えませんか?それから違反した場合の罰則や離縁の条件等々、精査の情報が欲しいです」


《情に訴えかけるのは難しそうだね》

「一時の感情で王家に入れる程の何かを持ち合わせていませんので、流される事は無いですね」


《君は何回したい?》

「薄いんですよねぇ、そうした欲が」


 何かもう、全体的にホルモン薄子なんですよ。

 この身体でムラムラとかした事が無い、勿論ドキドキも無い。


 勿体無い、としか思わない。


 前世なら春蕾(チュンレイ)さんにも土下座してお願いするレベルなんですが。

 無い、何なら前の状態のままが良かった。


《他の男の事を考えていたね》

春蕾(チュンレイ)さんは長い付き合いなので、どうしても対比として考えますね」


《条件が揃えば僕と出来る?》

「容姿の事であれば問題は無いです、けど婚姻は家柄が関わるので」


《触れ合えば情愛も陰陽の気も高められるそうだよ》

「それにしても限度が有るかと。と言うか思い付いたんですけど、私を対比に使って回りと見比べて頂きたいんですが?」


《ココまで理路整然と忌避されると、傷付くね》

「すみません、小規模中規模の商家なら寧ろ土下座してお願いするんですが、面倒臭がりなので」


 全力で面倒を回避する為なら、形振り構ってらんないのですよ。


《分かった、文章にはするけれど、君の手元には置かせられない。それで良いかな》

「はい、宜しくお願い致します」


 後はコレでウチの家がどう出るか、ですかね。

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