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刀削麵好吃。

 水仙(シュェイシェン)さんが昼餉を持って来てくれたのは良いんですけど。

 春蕾(チュンレイ)さんの私物をいきなり物色し始めたかと思うと、包みを突き出され。


 1つは飴、1つは干し肉。


「あの、コレは、春蕾(チュンレイ)さんが?」


 コクコクと頷いて、出て行ってしまった。


 コレ、嬉しいは嬉しいんですけど。

 男性からの贈り物を受け取るって事は、悪い気はしていない、なんなら受け入れる気が有ると示す事になるワケで。


 宦官では無く男性、しかも藍家の若様と知ってしまった以上は。


 あー、男性に宦官扱いがそもそも失礼で。


 コレ、何処から片付けるべきなんだろう。


 相談したいけど、誰に?

 誰に何を相談すれば?


 本当、どうしよう。


 あぁ、美味しそう。

 澄んだスープにお肉と青梗菜が乗った刀削麵、紅龜粿が赤いのと黒いの2個。


 多分、赤いのがアンコで、黒いのがゴマ餡かな。


 まぁ、食べよう、食べてから考えよう。


 うん、美味しい。

 きしめんより平たくて、すいとんみたいにツルツルでモチモチ、好き。


 お肉は。

 東坡肉(トンポーロウ)じゃなくて紅焼肉(ホンシャオロウ)、揚げ焼きしてから煮る手間を掛けて頂いて。


 美味しい、あっさりスープと相まって美味しい。

 コレ絶対に薔薇姫様大好きですよね、お醬油ベースだし。


 はぁ。


 本当の事を言ったら嫌われるかな、って。

 多分、春蕾(チュンレイ)さんもそう考えて、私に言い出せ無かったんでしょうね。


 でも、何で女装?




『どう、でしたでしょうか』

水仙(シュェイシェン)さん、紅龜粿、食べました?凄い手が込んでて驚きました、赤いのがピーナッツ餡で紅白。黒いのは中に白と黒のゴマが半々に入ってて、それで陰陽を表すとか、玄武の墨家だからこそなんですかね、凄いですよねぇ」


『あ、あぁ、どうも』

「あ、どれも美味しかったです、凄く。紅焼肉が余ってたら、ご飯に乗せて食べたいですよねぇ」


 本当に、普通じゃんか。

 今日だけで2件の婚姻の申し入れが有って、片方は当主候補、もう片方は変態。


 なのに、普通。


 凄いな肝っ玉、つか切り替え早いなコイツ。


『そう、伝えておきますね』

「後、ご相談なんですけど、春蕾(チュンレイ)さんが藍家の若様だって事は?」


『はぃ』

「コレ、男性と知ってしまったので、どうしたものかと」


『変態、だから?』

「あ、何で女装なさってたかご存知ですか?私、邪教の事を探る為の密偵宦官だ、とばっかり思ってて」


 妖精だの密偵宦官だの。


 マジか、マジで考えてそこに至ったのか。

 しっかりしてるんだか危なっかしいんだか分からないな。


『お話し合いを、しますか?』

「あ、はい、お願いしたいんですけど、私が出向いた方が良いですかね?」


 あぁ、貞操帯の事は知らない筈だし、流石に想像も付かないか。


『他の、暁霧(シャオウー)さんもお呼びになるなら、移動して頂いた方が良いかと』

「あ、じゃあそれでお願いします。すみません、お手数お掛けします」


『あ、いや、頭を上げて下さい、行きましょう』

「はい、ありがとうございます」


 この金髪娘は何も悪くは無い筈なのに、深々と頭を下げんのな。


 多分、今までこうして周りが大騒ぎしてばかりで。

 苦労したんだろうな。




《今まですみませんでした》

「あ、いえ、先ずは理由を聞かせて貰っても、大丈夫ですか?」


 隠れて様子見させて貰ってるのだけど。


 大丈夫か、だなんて。

 本当なら花霞(ファシャ)ちゃんは怒って詰め寄っても良いのに、本当に良い子。


『邪教について調べている、密偵宦官だ、と、思ってらっしゃるそうで』


 あら可愛い裏声。

 ちょっと掠れてるのがまた似合うわね、雨泽(ユィズーァ)ちゃん。


 あぁ、こうして盗み聞きに抵抗が無くなるのって良くないわよね。

 コレは悪い事、良くない事よ。


《邪教、密偵》

「何で私に構うのかな、と。で、女尊男卑の女媧教団について調べてらっしゃるのか、と」


 あぁ、宦官が女装してまでする事、で邪教についての調査ね。

 成程。


 女の園なら広まってもおかしくは無い、と普通の子は思うものね。


 けど、異性が居ないと繁殖出来無いのは女も同じ。

 しかも数少ない男が病気持ちなら、直ぐに病が広がって全滅し易いし、数によっては直ぐに近親婚に繋がってしまう。


 しかも男って性行為においては特に精神的負担に弱いから、ちょっとした事で使い物にならなくなる事も多いし。

 何より回数に限界が有る。


 どんなに後ろを開発しても、結局は有る程度溜めないと出ない。

 つまりは実在してても小規模の筈、なのよね。


 大規模な行動をしてる報告も無いし。


《最初は、見張りや見回りの為だけで、誰にも接触せず、初日だけで終わらせるつもりでした。でも、一目惚れをして、その事に後になって気付いて、どうしようも無くなって、続けてしまっていました》


 もう、後悔とか懺悔の念が凄い滲み出てて、気の毒が過ぎるわ。


 それと切なさ。

 甘酸っぱいは苦いわで、胸がキュンキュンしちゃうんですけど。


「毎回、見回りを?」


 本当に冷静な子ねぇ。


《いえ、今回が初めてです。報告を聞いたり読んだだけでは、分からない事が有るかも知れないな、と》


 真面目は真面目なのよねぇ、春蕾(チュンレイ)ちゃん。


「で、私がウロウロしていた、と」

《あの仕掛けは元々難問で、人に頼れるか、頼る際にどう振る舞うかを見るモノだったんですが。難問過ぎて、周りに誰も居ないままで、このままだと時間が掛かりそうだな、と。特に、寒い日だったので》


 直ぐに聞きに行っちゃう子か、間違いとは疑いもしない子ばっかりなら、そうなるわよねぇ。


「で、戻って来てくれたんですね」


《それと、一目惚れの自覚も無しに、はい、関わりたかったんだと思います》


「あ、気付いたのは、いつ頃で?」


 やっと本題ね。


《刺繍入りの手帕(ハンカチ)を、貰った時に、赤くなってるのを見て》

「あー、すいません、てっきり違う意味で照れてらっしゃるのかと」


 ココ、照れられるならまだしも、ガチ謝りされると傷付くわよね。

 分かるわ、コレは渋い味わいね。


《あぁ、いえ、好意が無いと分かっていたので、大丈夫です》

「あ、じゃあ、押し花は」


 押し花?




《故意に、選び取り、ました》


 目の前には雨泽(ユィズーァ)、隣の部屋には暁霧(シャオウー)が居る。

 自分でも恥ずかしいと分かっているからこそ、2人には言っていないのに。


 ココで、言う事になるとは。


『あっ』

「あ、そうだ、飴と干し肉を水仙(シュェイシェン)さんから渡されたんですが。その、保留にさせて頂く場合、保存とか大丈夫ですかね?」


 俺の荷物を漁ったのか雨泽(ユィズーァ)


 しかも、押し花を、コレは見られたか。


『すみません、勝手をしました』


 見られた。


《すみません、コチラで全て処分します》

「あ、いえ、押し花は、あ、誰かに、保管をお願いした方が、良い、ですよね」


 藍家の者だからこそ、受け入れ難いなら。


《例え宦官になってでも》

「それは勿体無いですよ、そのつもりでお育てになったんじゃないだろうし、親不幸をされては困ります。私には際立った才も何も無いんですから、あまりにも荷が重過ぎます」


 当主候補の臘月(ラーユエ)さんが言う通り、花霞(ファシャ)は優しくて慈悲深い。


 けれど、だからこそ、家を出て宦官になってしまえば俺の方が有利。

 宦官の処理をするには良い時期、寒く乾燥している、場所も良い。


《今まですみませんでした》

「あの、本当にダメですからね?」


 抱いてみたいとは思っていたけれど。

 離れる位なら。


『あの、暁霧(シャオウー)さんをお呼びした方が』

「あ、お願いします」




 もう、この子絶対に宦官になる事しか考えて無いわよねぇ。


「どうも、じゃあちょっと整理してみましょうか?」

「あ、はい、宜しくお願い致します」


 花霞(ファシャ)ちゃんも真面目なのよねぇ。


「何故お2人に対して、色よいお返事が出せないのかしら?」

「四家だからです、ウチは大家族の商家でも、他と少し違いまして、非常に細かく家が分かれているんです。責任は各家が持つ、けれども困れば手を貸す、ですが全員が絶対に手を貸すワケでは無い。全体の資産で言えば大商家や豪商と同じだとしても、先祖代々の家訓により、(まつりごと)には決して関わってはいけない、と言われてますので。貴族との繋がりは仕事だけ、ですので他の商家より、明らかに、分不相応なのが1つ」


「後ろ盾が無いだけじゃなく、家訓によって制限が有るのね」

「はい」


 確かに珍しいけれど、決して少ないワケでは無い。

 1つ間違えば賄賂を要求されたり、やっかみを受けたり、それらを回避する為に直接四家や貴族に関わらない家も有る。


「もう1つは?」

「四家だからこそ、お世継ぎは絶対です。例えどんなに安定していても、病が流行ってしまえば、何処かで災害等の問題が起きた際には数がものを言います。民を支えて頂いている王家には、是非とも子孫繁栄を望むべき、です」


 アレだけ情念を傾けられても、コレ。

 しっかりし過ぎてて攻略の糸口が見出せないわ。


『そこまでご心配なさる理由が本当に有るのでしょうか、どうにも断る口実にしか思えませんが、具体的に彼らの何がダメなのでしょうか』


 良いわ、流石雨泽(ユィズーァ)ちゃん。


「そこは何も無いです、はい」


 あら意外。

 結構、変態と言えば変態よ、春蕾(チュンレイ)ちゃん。


「つまり、家柄だけがダメ、なのね?」

「はい、ぶっちゃけ申しますと、当主候補様で無ければ臘月(ラーユエ)様も素敵だと思います。ですが四家と言う大きな場所的に私が無理なのです、生きる信条と相対してしまうのです。この毛色ですが、安寧に平穏に、のんびりと生きたいのです」


 折角、今さっきの発言で立ち直りかけてたのに。

 春蕾(チュンレイ)ちゃん、撃沈。


「念の為に聞かせて欲しいのだけれど、何故?」

「先ず私の能力的に無理なんです、私は何にもなりたく無かった子で、今は多少の事なら何でも出来ますが得意分野が本当に無いのです。料理人やお針子を考えた事も有りましたが、料理人は舌や腕が悪くなれば生きるのに困ってしまう、お針子は目や手が悪くなれば職を失う。そう考えると何にもなりたくない、なれない、そう思っていたんです」


「それは、例の事が有ってから?」


「んー、多分、はい、多分ですけど、あの後だと思います」


 凄い人生の捻じ曲げ方をされたわね。


「今も、かしら」

「ですね、でも器用貧乏に育てて貰ったので感謝してます、生きるのには十分な経験になりましたから」


「そう思っているからこそ、孝行の為もあって、子供の事を良く考えたのね」

「はい、子が出来ない場合、大きい所なら妾か離縁でしょうから。出来たら小さい、大きくない商家に嫁ぎ、子が出来ず離縁となっても問題無い相手と、婚姻を結べればな、と」


「アナタの体の事だからアナタが1番良く分かっているとは思うわ、けれど達観し過ぎじゃない?諦め過ぎじゃない?」


「でも、好きなのに離縁って、お別れするって辛くないですか?」


 正確に言えば、私は離縁を経験していないのよね。

 ほぼ、元から無かった、単に幻想が消えただけ。


 でも、離れ難さや離れる辛さは良く分かる。

 今でも思い出せる。




『あの、1つ宜しいでしょうか』

「あら、何かしら水仙(シュェイシェン)ちゃん」


 今さっきまで詰んだ、みたいな顔をしてたクセに。


『四家には特例が有ったかと』


 婚姻を成立させても子無し離縁を繰り返すと、戸籍が大変な事になるし、凄いややこしくなる。

 だからこそ。


「あぁ、そうね、そうだったわ、古い慣習だからすっかり。流石、詳しいわね水仙(シュェイシェン)ちゃん」


 折角助け舟を出したのに、ニヤニヤしやがって。

 後で絶対に何かしてやる。


「あのー?」

「子供が出来無いからって、婚姻と離縁を繰り返してたら大変な事になるでしょ?お金も戸籍も」


「まぁ、はい」

「だから四家の者しか知らない特別な制度が有るの。特別な内縁制度、子が3才を過ぎるまで、内縁の妻や夫になれるのよ」


「それ、気が長い制度ですね?」

「複数人を相手にする事も想定に入っているから、その中でより良い子を育てられた者が正室になる」


「あー、成程」

「最近はそこまでしなくても良いから、すっかり忘れてたわ」


「あぁ、本当に1人しか居ないと、そこまでしないとですもんね」

「だからまぁ、あの神話の後宮もある意味では理にかなってるとは思うけど、情を利用し過ぎよね」


「ですよねぇ、お互いに産む道具と種馬として生きるべきなのに、情愛だ権力だ何だと。そんなんじゃ国が滅んで当然、って感じですよねぇ」

「本当、恨みを買う前提の制度過ぎなのよね。既に上下関係が有るのに、更に寵妃、とか呼ばせたらダメよねぇ」


「先ず評価すべきなのは、純粋に産んだ数ですよね」

「で、次にどれだけ無事に育ったか、良い子に育ったか。だけで良いじゃないねぇ?」


「ですよねぇ」


 コイツら、話が逸れてんのに。


『あの』

「あ、そうそう、で、その制度を使えば良いのよ。臘月(ラーユエ)ちゃんと春蕾(チュンレイ)ちゃんの内縁の妻」


「そんな前例、有ります?」

「そこは四家全体で調べてみるけれど、多分有るんじゃない?」


「えー?」

「だって良く考えてみて頂戴よ、このままなら奪い合い争う事になる、そう仮に娶っても出来無かったら結局は譲る事になる。しかも時は待ってはくれない、なら、そうした方が利が多いでしょ?」


「あー、まぁ、でも一気に2人とお別れしてしまう事にもなるんですよね?」

「子無しの時期が3年続いた場合でも、確か、無事に産めないにしても妊娠の兆候が有った場合は、何年が継続させられて、最長で5年、だったかしらね」


「あー、最悪は遠縁や似た顔の者に子を成させる準備期間、ですかね」

「あぁ、そうねぇ、そうかも知れないわ」


「極まってますねぇ、流石王族」


 本当、それな。


「少なくとも臘月(ラーユエ)の子を当主は望んでるわ。だからこそ、情勢が安定している今だからこそ、出来る制度だと思うの。ほら、本当に極まってしまったら争いを産む、けど今なら制度の見直しをする良い機会にもなると思うの。その点でも国や四家、民に貢献が出来る、アナタにしか出来無い素晴らしい事だと思うの」


 凄いな、ちょっと助け舟を出しただけのつもりなのに。

 ココまで完全に流れを持って行った。


 けど。


「外見コレですけど、中身ポンコツですよ?妖精だの密偵宦官だの言っちゃいますし」

春蕾(チュンレイ)は有能な子が欲しいの?」

《いえ、寧ろ有能じゃない方が良いと、兄に言ったんです、他の誰かに、目を付けられて欲しくなかったので》


「もう少し高望みすべきかと」

「あら、どう?」


「んー、小鈴(シャオリン)とか、葉赫那拉(イェヘナラ)様みたいに何か得意分野が有るとか、特別なのとか」

「じゃあアナタが王族だったら、そう望むの?」


「いやー、四家の皆様が十分に人材が揃ってると仰るなら、臘月(ラーユエ)様が言ってた通りかな、とは思いますけど」


 相当、嫌な事を経験したのか、良く耳にしたのか。

 全然、浮かれるとかが無い。


「全然冷静ね。何か、嫌な事でも有ったの?」


 コレ、俺、聞いてて良いのかな。




「そんな凄い事は特に無いんですけど。お客さんモドキに、思ってたのと違う、とか言われて付き合っても無いのにフラれるとか。付き合っても無いのに付き合ってる、って言い触らされたり。アレですね、付き纏いは勿論ですけど、変な贈り物が来たりとか、跟踪狂(ストーカー)が特に多いですね」


跟踪狂(ストーカー)

「呼び込みはしてないですし、そこまで酷い愛想の売り方をして無い筈なんですけど。見知らぬ人からのお手紙や贈り物、見知らぬ人同士が私の事で言い争ったり。いきなり、恋人を奪った、とか言い掛かりを付けられたりだとか。殆どが中央が初めての方だったり、新しく移住して来た方とかで、何かもう、風物詩と化してまして」


「何か、されたりだとかは」

「あ、実害は無いんですよ。食べ物の贈り物はお店から直接渡される以外、口にもしませんし。お手紙は読まずに放置か、お返しするか、お花も放置かお返しするか。意外と近寄られ無いんですよ、周りも守ってくれてますけど、大概はオナラ1つで吹き飛びますから」


 前世でモテたい、とか思った罰なのかな。

 とか思いましたよね、最初。


 けど外見に寄って来てるだけで、別にコレ私個人がモテてるのとは違うんじゃないかな、と。


 で、一時期借り物感覚だったんですよね、この外見って前世と乖離してますから。

 金髪碧眼の着ぐるみを着てて、それにワーキャーされてるだけで、私が好かれてるワケじゃない。


 って。


 けどまぁ、私なんですよね、コレが。

 前と姿形は違いますけど、少なくとも今の私はコレ。


 黒髪に変えても、青い目の(ヨウ)花霞(ファシャ)になるだけ。


 しかも半陰陽。


 東洋で金髪碧眼に生まれて転生者で半陰陽、こう考えると設定盛り過ぎなんですよ。

 何重苦ですかコレ。


「大変だったわね」

「いやー、意外とそうでも無いんですよ、やっぱり実害が無いので実感が無いんですよね。襲われたりとか精液ぶっかけられる事も無いですし、飲食物への混入は避けられてますし。ちょっと周りが騒々しいだけで、私は至って平和なんです、有り難い限りです」


 本当に、マジで被害が無いんですよねぇ。

 そもそも見知らぬ異性からの贈り物は受け取らないですし、って言うか知り合いでも、異性からの品は受け取る事は交際の合意を意味してしまうので。


 何かのイベントの時、お店から直接品物を受け取るだけで、結構良い思いが出来てしまっているんですよね。

 俗に言う貢がれ、初めて体験しましたよ。


「本当に有るのね、異物混入」

「アレ女性だけがやるモノだと勝手に思ってたんですけど、どうやら精液を口に入れさせたいみたいで。お酒に入ってた時は流石に怒りましたね、勿体無い、作ってくれた人とお酒が可哀想そうだって」


「あぁ、中央は特に高いものね」

「だから飲ませました、飲み干して吐かない様にさせて、それから追放ですね。永久に中央に入れない方も居ます」


 あぁ、コレも損失は損失ですよね、消費者が消えたんですから。


 けど手加減したら見せしめになんないですし。

 同じ事が起きても困りますし。


「嫌なら嫌だって言って良いのよ?」

「あ、男性が怖いとか無いから大丈夫ですよ、逆に女性が怖いとかも無いので大丈夫です」


 男に酷い事をされたからと言って、父や兄や弟を憎むのは違いますし。

 女だから、半陰陽だから、と。


 私だって悪人と一緒くたにされたら、ちょっとキレちゃう。


「その、念の為に聞くけれど、想い人や何かは」

「居ませんねぇ、知り合いに良い人が居ても、幸せになってくれと思うだけで興味を持つ事も無いですし。お声を掛けて貰っても、結局は看板にしようって魂胆が見え見えの商家か貴族で。外見が違うって、やっぱり大きいんですよねぇ」


 異物の排除か、取り込もうとするか。

 仕方無いんですよ、どんなに親しい人の子供でも、凄い人見知りされますから。


 怖いんですよ、違う生き物に思えて。


「そう、じゃあ、そうね、内縁の縁組を進めても良いかしら?」

「あ、親に報告をお願いします、意外と良い縁談を用意してくれてるかもなので」


「だとしたら、そちらへ?」

「ですね、辛い事は避けたいので」


 求められたからと言って応えられる程、ウブじゃないんですよねぇ。

 私の中身。

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