墨家。
水餃子や棒餃子を食べ比べ、水爆羊肚屋ではピリ辛胡麻ダレで、モツの色んな部位を食べ。
お腹いっぱいになったら、お散歩やお買い物。
お揃いの外出用美肌ベール(マスク)を買い、暖かいので綿の安いベールを買って刺繍したり。
交換してみたり。
刀削麺も食べたし、羊しゃぶしゃぶも食べて、大好きな肉入り焼餅のお気に入りのお店も出来た。
けど。
墨家の後宮(女子寮)に行かなければならないのです。
《土用が楽し過ぎて、今は行くのが逆にちょっと憂鬱だわ》
「ですねぇ」
『でも独り立ちの為です、頑張りましょう』
《そうね》
「よっし、行きましょう」
『はい』
さ、ココで問題です。
墨家ではどうやって組分けするでしょうか。
「組分けも何も無いとは」
《流石に四家目ですもの、しっかりと情報が届いているのでしょう》
『楽しみですね、部屋割』
私と美雨はずっと同室で、花霞は今まで1人部屋だったんですけど。
「まさかお姉様方と一緒になるとは」
《気が休まらなそうだわ》
『でもでも、コレは知ってた方が良い経験ですよね?』
「まぁ、ぅん」
《でも避けたい経験よねぇ》
『ご姉妹が居るのに気が滅入るんですか?』
「あぁ、姉が居ないですもんね、小鈴は」
《兄と妹、だったかしら?》
『はい、兄と妹ですけど、あまり夢を持たない方が良いですか?』
「《相手による》」
『あぁ、はい』
「まぁ、ご挨拶に参りましょう」
《そうね》
お2人は不満そうですけど。
やっぱり姉の居ない身としては、期待しか無いです。
『宜しくお願い致します、玄・小鈴、字は绣墩草です』
長い、私でも長い字だと思います。
《宜しく绣ちゃん》
私は運が良かったのか、皆さん良い方なのか。
柔らかくて優しいお声とお姿のお姉様で、良かった。
《宜しくお願い致します、葉赫那拉・美雨、字は铁线莲を頂きました》
『あらじゃあ、线ちゃんね』
《はい、宜しくお願い致します》
それなりに年上の方だったので、却って凄く助かったのだけれど。
花霞は大丈夫かしら。
『はいじゃあ尚儀へ行きましょうか』
《はい》
小鈴は尚功、易典に関わるのかしら。
「ちょっと良いかしら、金絲雀ちゃん」
『あー、はいー』
あら、警戒されちゃってるわね。
「大丈夫よ、総女官長様も一緒だから」
『はぃー』
「あらあら、怒られる様な事をしちゃったのかしら?」
『そうした誘い文句には乗りませんからねー』
まぁ手厳しい。
「さ、どうぞ」
あら、固まっちゃってる。
『明らかに御当主様とかもいらっしゃるんですがー』
「まぁまぁ、入って入って」
ウチの者にも着けさせてたけれど、子女で火棘と似た時刻に移動し続けてたの、この子だけなのよね。
『中央の嬀・明明、字は金絲雀で御座います』
《そう、先ずは座って》
『はぃ』
《貴女が言った通り、私は墨家当主、臘梅。簡潔に言うわ、火棘は誰と居たのかしら》
『白家で働いてた方です、嬌声も聞いちゃいました』
《ウチに報告する気は有ったのかしら》
『いいえ、個人的な事ですし、同衾者は婚約者なのかと』
「その者の名か字を良いかしら」
ウチでも報告に上がった子ね。
色香に弱い、惚れっぽい子。
『あのー』
「あぁ、その左端の子が本当の婚約者よ」
『あー、えー、この度は御愁傷様で』
『君は誰かに嘘を』
《発言は許可していませんよ、控えなさい》
「アナタは良いわよ金絲雀ちゃん」
『あー、葉赫那拉・美雨様とはお仕事以外に関わった事が御座いません、私的なお喋りをしたり貴方様の事は直接は伺ってはおりません』
この子、焦る様子も無いけれど、全く緊張して無いわね。
《そう、ありがとう、もう良いわ》
『はい、では、失礼致しますー』
「で、どうしようかしら、ウチの子は既に呼んで有るわ」
《そう、個別に事情を聞きましょう》
『あの、美雨に』
《おいクソ餓鬼が、次に勝手に喋ったら皮剝いでぶっ殺すぞ、つか名だけでしかも呼び捨てにしてんじゃねぇよテメェは赤の他人だろうが》
「まぁまぁまぁ、ごめんなさいね少し威嚇しちゃって、でもアナタが悪いのよ、殆ど全て」
気迫も必要だからって、敢えて飲み屋の近くで易者修行してたのよね、この人。
だから少しでも不機嫌になると、ちょっと口が悪いのよ。
《はぁ、そっちの子を呼んで来て、霧ちゃん》
「はい喜んで」
あぁ、下働きのコイツか。
『すみません、婚約者が要るなんて、知らなくて』
マジなんだろうな。
以外に真面目なんだよ、子女の方は男に悪い噂も良い噂も絶対に流さなかった。
《霧ちゃん、この子、嘘を言ってるかどうか》
「んー、雨ちゃん、どうかしら?」
『本当だと思います、少なくとも俺の周りで子女は同性の噂はしなかったのと、罪悪感が凄そうに見えるので』
「そうね、惚れっぽい以外は真面目だとも聞いてるけど、どうだった?」
『仕事だけは真面目ですけど股と頭が緩い、ヤれれば誰でも良いとか、手で抜いて貰った自慢をしてたって噂は聞きました』
《はぁ、そう》
「万が一にも婚約破棄にはならないと思うけど、なったら責任を取る?」
『嫌です、嘘つきは無理です』
「でも妊娠させる様な事はしたのよね?」
『妊娠しないから大丈夫だって、言われたので』
まさかの不妊症か。
「あらそうなの?月経は順調よ?」
『でも、聞いたんです、まだ若いし、大丈夫かって、聞いたら、妊娠しないって』
《それでも、万が一にも子が出来た場合の事を考えなさい、下がりなさい》
『はい、すみません、失礼します』
『質問良いですか』
《殆どの場合順調な月経が有る時点で不妊の可能性は低いわ》
『ありがとうございます』
「さ、次は御本人ね」
《はぁ、呼んで来て》
「じゃあアナタは隣に移動して」
『はい、失礼します』
コレが凄かった。
噂には聞いてたけど、マジでヤバい女だった。
《愛し合えば赤ちゃんが出来るって教えられたので、出来無いと思いました、愛して無いので》
《じゃあ、何故したの》
《喜んで貰える様に練習しようと思って、お料理も練習したら上手になるって聞きました》
何か、コイツ変だ。
《すみません、ちょっと良いですか》
《休憩にしましょう、少し下がらせて》
霧ちゃんが連れて来た朱家の四男、雨泽。
ウチの1番上に近い年だが。
「どうしたの雨泽ちゃん」
《何かアレ、ちょっと変な気がする、聞いてたのと合わない》
「諦め、じゃなくて?」
《それとも少し違う気がする。何か、ちょっと変、違う》
《おいクソ餓鬼、いつもあんな感じか?》
『いえ』
《詳しく言えマジでぶっ殺すぞ》
『明るくて、臆病だけど優しくて、あんな彼女は見た事が無いです』
「あぁ、家で何か聞いたのかも知れないわね」
《はぁ、クソが、両家呼ぶぞ》
「そうね」
《雨ちゃん、君は彼女の何が違うか、考えるか観察か任せる、探求してみてくれ》
《はい》
《お前は暫く絶食だな、皮剝ぎの刑でクソを撒き散らされても困る。お前が道を外れなきゃ、そこそこ良い道だったらしいぞ、お疲れさん》
私は何かの終わりだけが占える、それだけが当たる。
だからこそ迂闊に占う事はしない、占えないと言っても良いだろう。
この婚約者を乗り換えた挙げ句に裏切られた馬鹿な小僧は婚約破棄をした時点で、葉赫那拉・美雨と縁が切れた時点で、商売運が終わる運命が決まってしまっていた。
そして新しい愚かな婚約者と縁が繋がり、終わる運が増えた。
八卦では坎為水、沢水困しか出ない。
亀卜でも、骨卜でも凶が出る。
「あの子、命は終わらないわよね?」
《それは言えないが、少なくとも商売運、結婚運、家庭運、恋愛運、健康運辺りは全滅だった》
「あぁ」
《まぁ、あの娘は幼い頃から既に殆ど終わってたんだ、余程の事が有っても動くかどうか。結局は殆ど親の責任さね》
ただ例外は有る。
易者によって人生を捻じ曲げられる者は、少なくない。




