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106 演技。

「んー、それは、本当に区別する必要が有るのかな。寧ろただ失敗する事が嫌なだけ、じゃないかな」


「かも知れないとは、思いますけれど」

「うん、それは誰もがそう思う事、恥や傷は受けたく無いからね。けれど君の場合、諦める言い訳を探してる様にしか思えない。どうしようも無い理由を探し、淡い夢を見続けようとしているなら、君が考える通り手を引いた方が良いと思うよ」


「それは」

「苦難を乗り越えた分だけ幸せになれるとは限らない、強く求めたからと言って心を得られるワケでも無い、何も一緒になる事が全てでは無い。それらを理解し君が選んだ事は、妥当な理由を見付け彼を選ばない事。そう思いもせずに行動している者は多い、けれど大丈夫、何も悪い事では無いよ」


 僕は優しくは無い、そして全く仲を気にしない。

 だからこそ、敢えて決め付ける。


 その方が却って決められる場合も有るからね、完全に切って捨てる事も有る。


「すみません、ありがとうございました」

「いえいえ、差し入れ助かったよ、ありがとう細狗(こいぬ)ちゃん」


 相当に堪えたんだね、愛想笑いに翳りが出てしまって。

 本当に純粋な子だ、騙されなければ真っ直ぐ歩む事が出来て、もうとっくに子も居ただろうに。


 うん、死刑は妥当だね、生まれる筈だった子を作らせなかった罪は重い。


「お前、加減が無かったな」

「あぁ、エンヴィル、差し入れを食べるかい?」


「おう」


「彼は純粋だね」

「な、騙されなきゃココにも居なかっただろうな」


「子を成し、良い子に育ててくれただろうに、実に惜しいよ」

「あぁ、そうだな」


「心配して来た割に素っ気無いね?」

「俺が完全に切って捨ててやれば、お前に手間を掛けさせずに済んだのかも知れないと思ってな」


「いや、僕だからこそきいた技。それにこの程度、気にしないでくれて構わないよ」


「おう、アレにはさせない様にする」

「そうだね、頼むよ」


 口が凄く悪いと言うか、キツいのだけれど、根は優しい。

 だからこそ付き合う相手を選ぶ、それこそ身近に置く相手は特に。


「はぁ、やっぱり美味いなロバは」

「だよねぇ」


 物分かりが良いと助かるよ、うん。




「加減をと、お願いした筈だったんですが」

《コレでも、加減した方なのだけれど》


「本当ですか?」

《うん、僕はまだ出来るよ》


「いやアナタの回数じゃなくて私の回数を手加減して欲しい、と」

《すまないね、つい》


 コレをご商売にされてる方って、本当に凄い。

 凄い体力と、精神力と皮膚の強さが無いと出来無い事ですよね、コレ仕事にするだなんて。


 まぁ、少なくともこの国には売春宿は無い、筈。

 もしかして、私が知らないだけで。


 多分、先生やルーちゃんなら知ってる筈、後で念の為に聞いてみよう。


「まぁ、今回は」

《何か考え事をする余裕が有るみたいだから、もう少しお願いするよ》


 あぁ、気配を読めるんでしたよね、忘れてた。




『お疲れ様でした、今お布団を綺麗にしますねぇ』


金絲雀(カナリア)、アナタ良く見張りなんて出来ますね?」

『まぁ、慣れてますし、勉強にもなりますから』


「見ないで勉強になります?」

『まぁ、と言うか今回は少しは平気そうですねぇ、流石に慣れましたか』


「いや、あ、そうそう先生に聞こうと思ってた事が、流石にお呼び出しは不味いですよね」

『ですねぇ、七日間は男子禁制、ですけど月経が来たら別に良いんじゃないですかね?確か五日後でしたっけ、予定』


「何かちょっと早まりそうなんですよねぇ、と言うかどっちの気怠さか分からないんですけど」

『あー』


「何か、変な所とか無いですかね?大丈夫ですかね?声とか特に」

『もっと凄いの居るんで大丈夫ですよぅ、もう襲われたんじゃないかって位に大声出す方とか居ますから、ありがちですよありがち』


 まぁ、丸一日本気で抱き潰される方は稀ですけどね。

 だって殆どの方って、演技ですから。


 いや、寧ろ花霞(ファシャ)の演技?


 いやー、まさかね、まさかですよ。

 うん、多分アレは本気ですよ、多分。




「おう、月経が早かったな」

「そぅなんですよぉ、でも気になってる事が有ってお呼び出ししちゃったんですけど、大丈夫でしたか?」


「おう、俺が居なくても現場は回る様にして有る。で何だ」

「本当に売春宿って無いんですよね?」


「あぁ、そうした心配か」

「半ば興味本位も有りますね、お仕事にしてる人って凄いな、どうなってんだって思いまして」


「そら演技だからだろ」


「気付かないもんですかね?」

「おう、気付いた方が不都合だからな」


「あぁ。にしても凄いですよねぇ、そんな事が出来るって」


「お前、俺は演技かどうか分からないヤツにしか効かない程度の演技の事を言ってるだけで、完全に真似る事を指してるワケじゃないからな?」

「あー、そこどうなんですかね、何処まで真似てるのか、先生でも流石に分かりませんよね」


「あぁ、俺は興味も無かったし、まさに未知の領域だな」

「ですねぇ」


「でだ、この国に売春宿は無い。が全く無いとも言えん、それこそ世界各国なら尚更、稀に誰かが作ってしまうんでな、転移転生者や魔王が駆逐してるらしい」


「魔王」

「おう」


「マジで居るんですねぇ」

「らしい」


「あ、流石に会った事は無いんですね」

「流石にな、何でも、会う様な事態になった時点でその国は滅びる。らしい、スペインの事が有るんでな、迂闊に笑えん」


「あー、1度滅ぼされたそうで」

「良いのか?事実を知って」


「そこ、あんまり避けても今度はルーちゃんとのお喋りに弊害が出ますし、危険が有るにしてもじゃあどんな危険だ、と。なら信頼しちゃった方が楽じゃね?となりました」


「まぁ、うっかり喋るにしても何とかなるだろうしな。お前は結構な不思議ちゃんと化してるらしいし、良いんじゃないか」

「えー、不思議ちゃん嫌だぁー」


「お前の影響は凄いぞ、あの包々(パオパオ)まで俺が仙人だと信じ始めてるぞ」

「おぉ、無神論者も真っ青なお方が、何したんですか?」


「俺は何もしていない。が、アイツら凄いな、喋りながら囲碁打ってやがったぞ」

「あー、先生ダメですもんね、聞いたり喋ったりしながら何かするの」


「拾い溢しも気になるしな、考えるなら考える事だけに集中したい」

「真面目」


「おう」

「あ、ちょ、そうそうどうして私が不思議ちゃんなんですか」

《若いのに神様でも何でもガッツリ信じとるからじゃよ、真面目に信仰しておるのは稀有じゃ。しかも容姿について恨むならまだしも、妄信でも無いのは珍しいで》


「他は何かしら神に助けられた、と思ってから信じるのが多いが、そう真逆なのが不思議さを醸し出しているんだろう」

「まぁ、ココに転生したから信じてる、だなんて言えませんからねぇ」


「あぁ、だが俺は仙人って属性を得てかなり楽だぞ、誰も突っ込まんのが実に面白い」

「まぁ、半ば嘘では無いですからねぇ」


「偉大な転生者も仙人の中に含む、便利な装置だよな、異世界であり他にも転移転生者が居ると気付かせられる」

「ですよねぇ、ただ私は全く気付きませんでしたけど、後に先生が仙人と呼ばれても違和感無しですからねぇ」


「身を守る為だろう、そう気付きたく無いからこそ、考えもしなかったんだろうな」

「あー、で演技か気付かない」


「だな、ただ女同士はバレ易いからこそ、肉欲の追求にもなり易いんだろうな」

「あー、逆襲してやりたいですね、ヘトヘトにしてやりたい」


「あぁ、良い事を教えてやる、男をヘトヘトにする方法だ」

「ほうほう、是非是非」


 まぁ凄い技を教えて頂きました。

 流石先生。




『そうだんしていいかな?』


 ウムト氏の息子、何で俺。


『内容による、けど』

『ぼくのエンヴィル、せんせいのこと』


 どうして自分の、って枕詞を使いたがるんだろうな、相手持ちは。


『何で俺?』

『ちょっとにてるから』


『何処が』

『きょうみ有ることとないの、らくさはげしいから』


『あー、まぁ、けどだからって相談に乗れるとは限らないんだけど』

『いちおうきいて?』


『まぁ、聞くだけ、なら』

『じつは……』


 で何かと思えば、もう飽きられるのが怖い、と。


『にしたって三月も経ってなくない?』

『かれってほかとちがうから』


『あー』


 マジで仙人かも、とか俺も半ば思ってるしなぁ。


『きょうみからぼくとねたのはわかってる、でもじょうあいもあるとおもってる、けどあきられるかもとおもってる』


『何か不安になる原因でもあんの?』


『かいすうがへった』

『いやそれ単に落ち着いただけじゃね?つかそんなにヤりまくってたの?制限はした?』


『うれしくてつい、おちついたのかもだけど、しんぱい』

『いや話し合えよ』


『あきたかきいたらあきてないとはいう、でも、いそがしそうだからふかくきけない』

『いや聞けよ』


『じゃああきた、しつこい、とかいわれたらしねる』


『つか落ち着いたんじゃないの?』

『それどうやってたしかめる?』


『聞く』


『おちついたっていうけど』

『あぁ、何か改善したいのね』


『うん』

『いや俺は専門外、聞くなら、暁霧(シャオウー)だな。呼んでやるよ』


『うん、ありがとう』


 で、呼び出して貰ったんだけど。

 まぁ暗い、こう言う話に喜んで飛び付きそうだけど。


「どちらか、なのよね。我慢して相手に距離を合わせるか、飽きられる覚悟で自分が居たい距離に居るか、でもまだまだベタベタしていたいのよね」

『うん』

『でもなぁ、単にマジで忙しいだけだと思うけどなぁ』


 それこそお互いに、トゥトクは現場に出て補佐して貰ってるし、先生は現地民から来訪受けまくってるし。

 でしかも落ち着いた、だけ、っぽそうだけど。


 俺には分からないからなぁ。


「忙しいにしても、もう少し理由が知りたい、でも深く追求してウザったいと思われるのも嫌」

『うん』


「それこそ落ち着くまで、落ち着いたらまた話し合うのはどうかしら?」

『なんもしないほうがいい?』


「そうね、何かすると逆に相手の負担になるかも知れない、だから落ち着くまで仕事に集中。向こうにも何か考えが有るかも知れない、先ずは思い遣り、ね?」

『うん』

『つかココに住むならお前も慣れた方が良いんじゃない?金雉(ズィンシュィ)よりは容姿が違うってワケでも無いけど、少し違うんだし、もう少し集まりに呼ぶか?』


『うん、おながいします』


 あぁ、もしかして先生が頑張ってんのって、そこかもな。




「はぁ」


『なに』

「アンタを諦めろって言われちゃったの」


『は?』

「凄い気になるから構いたい、けど自分の為が殆どなら関わらない方が良いじゃない?」


『何それ、性的な意味で?』

「そこまででも無いのよねぇ、だってほら、私って異性愛者だし」


『あぁ、いざとなればトゥトクに女装でもさせてやれば良いのか』


 あぁ、私、それ最高だわ。


「そうね、ココの衣服にも慣れて貰う必要は有るのだし、アンタもやんなさいよ?」


『なんで?』

「気を付ける点を教えるついでよついで、良い気分転換になるじゃない」


『誰の』

「私とトゥトクちゃん」


『俺への配慮は?』

「そんな別に死ぬ程嫌ってワケじゃないでしょ?それに先生の女装姿も見てみたいじゃない?」


『そんな誘い水に乗るかね、あの先生』

「そこは枇杷(ピィパァ)ちゃん使うわよ」


『どんだけ見たいの』

「そんだけー」

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