104 婚約式。
はい、家も半ばなんですが。
先ずは1棟建った段階で、婚約式が執り行われる事に。
はい、私との仲が遅々として進まない事に痺れを切らした薔薇姫様の提案により。
本日、婚約式を迎える事に。
と言うか、婚約式なんてモノは全くココには存在していないので。
先生と薔薇姫様を主体とし、考え出された行事なんですが。
結婚式と同じく赤い装束を身に纏い、お酒を酌み交わし、どストレートにも初夜を迎える。
いや、要するに結婚式です。
でも結婚しない、子が出来るまでは、なので婚約式なんですが。
うん、やっぱりコレはちょっと、色々とぶっ飛ばしてる感が有りますよね。
でも皆さん、大概はこうなんですよ。
いや薔薇姫様とか小鈴は愛を育んでますし、確かに私が潔癖過ぎたきらいも有りますけど。
何で結婚するのかって言ったら子供を作る為で、そうした問題が2人には特に。
『花霞?』
「ひゃい」
『本当に避妊して良いんですか?』
「そこは、一応、ルーちゃんへのご褒美、と、言う、事で」
ダメだ、免疫が無いんですよ本当、こう言う事に。
全く。
『一旦、湯浴みでもしましょうか、念の為に沸かして貰ってるんですけど』
「すみません、ちょっとお願いしますぅ」
ずっと心の準備はしてたんですけど。
うん、はい、多分永遠に心の準備って出来ないですよねコレ。
『じゃあ、一緒に入りましょうね』
「へっ」
いや、一緒に入る気で返事をしたワケじゃ。
『大丈夫ですか?』
「いや、コチラこそ、その、声の出し方が変だとか、何か嫌な所は有りませんでしたか?」
『特には、と言うか、そうなんですか?』
「あ、いや、聞き齧っただけなので詳しくは知らないんですけど、最中の声って西洋東洋で違うそうで」
『へー、そうなんですね』
「でしかも西洋圏でも更に違うそうで、なので、本当に満足頂けましたか?」
『回数で納得は難しいですか?』
「それはほら、若いから、とか」
『じゃあ、他の人で試してみますか?勃つかどうか』
「それは、ちょっと、追々で、考えておきます」
『しないで欲しいって言われるには、どうしたら良いですか?』
「そこは、分かんないですけど」
『もしかして満足してません?』
「いや本当、うん、初めてがコレで慣れたらどうなっちゃうのかと、はい、寧ろ怖い位なので」
『それって、どうやって証明してくれます?』
「ルーちゃんって、ちょっと意地悪ですよね?」
『そうですか?満足して貰いたいだけなんですけど、ダメですか?』
「あの、満足って、具体的には」
『満足して暫くしたくないって思う、ですかね』
「んー、今はもう完全に体力の限界なんですけど、だから暫くはしたくないのかどうか」
『成程、じゃあ満足してるかどうか、確かめてみましょうね』
「ちょ、お」
そうやって、一緒に居る間は平気だったけど。
離れると苛立ちと寂しさで、またしたいし会いたいと思ってしまう。
さっきまでずっと一緒だったのに、また触りたいし、話したいし会いたい。
でも、どうしたって常に一緒に居られるワケじゃない。
それこそ向こうの世界でだったら、働いてる時間の方が長くて、家に居る時間はもっと短い。
先生みたいに死ぬまで誰も好きにならないで、ただ1人で生きるか、皆で花霞を守るか。
どちらか、ならコッチの方がマシ。
常に自分の願いだけが全て叶うべきじゃない、僕はそう在るべきじゃない。
問題は、どう思うか。
『あ、先生』
「おう、迎えに来てやったぞ」
『ありがとうございます』
ぁあ、俺もこんな緩んだ顔を晒してたのかと思うと、実に恥ずかしいな。
「おいルー、ちょっと殴らせろ」
『えっ、何でですか?』
「俺もこんな緩んだ顔を晒してたのかと思うと恥ずかしくてな、八つ当たりだ」
『いえ先生はいつでも無表情で、え?しちゃったんですか?』
「おう、少し前にな」
『あんなに忙しかったのに、いつの間に』
「ほら、疲れたら勃つだろ、でそのままだ」
『いやもう少し情緒を大事にしましょうよ?』
「そう良い思い出が無いんでな、勢いも必要だったんだ」
『あぁ、それで、その、大丈夫ですか?』
「おう、吐きもしなかったしトゥトクも満足してたな」
『いや先生はどうなんですか?』
「俺は最初から産まれる性別を間違えていたのかも知れん、クソ楽しいわ」
『ぁ、あぁ、良く出来ましたねトゥトク』
「そこだ、疲れた所で、だ」
『あぁ』
「ただな、もう少し慣れた方が」
『いえそこまでで結構ですから、はい』
「良いのか、もしかすれば花霞と同等の感想が得られるんだぞ」
『そこは大丈夫です、ちゃんと言って貰えてますから』
「ほう、言わせてるのか、やるな」
『あ、いや、違く、それは、置いておきましょう』
「だな。次は他のヤツの番だが、どうなんだ」
『寝逃げします、暫くは』
「あぁ、寝てないのか」
『と言うか惜しくて、はい』
「腹一杯に美味いモノを食って、そうだな、ウチの猫も貸してやる。それでもダメなら、昔みたいに読み聞かせをしてやっても良いぞ」
『はい、ありがとうございます』
もう少し、花霞に時間を与えても良かったんだが。
幾らコイツらが考えても、結局は経験してみてどう感じるか、人生1周目は特に想定が難しいからな。
体験させた方が早いだろう、と。
コイツの補佐は俺だけで何とかなりそうだが。
向こうはどうだかな。
『大丈夫か?』
《少し、死にたい》
『いやそれ大丈夫じゃないじゃん』
アレ、花霞の先生が心配して来てくれたんだけどさ。
やっぱり覚悟しててもコレなのな。
「だな、嫌なら今直ぐ帰れ、絶対にその方が良いぞ」
ハッキリ言うんだよなぁ、この人。
《それは、もっと嫌です》
「ならどうにか気を紛らわせ、大波を何度か越えたら楽になる、かも知れんが余計に苦しさが増すだけかも知れん。引き返すなら今だ」
『うん、それは俺もそう思うわ。前は大丈夫そうだったのにさ、今コレじゃん、勃たなかったらアイツ悲しむんじゃね?』
「あぁ、だろうな。やっぱりダメか、と、どんなに言い訳を並べても目の前に証が有るとな。そうして負の連鎖は抑えられなくなる、勃たないわ追い詰められるわ罪悪感が増すわ、一度落ちると暫く上がれんぞ」
『やっぱ先生って経験者?』
「おう、どっちもな」
『すげぇ』
「興味本位だ」
『どんな感じ?』
「己の状態は勿論、相手による、状況による。その気が全く無いのに致しても、全くもってつまらん、相性と土台ありきだな」
『やっぱ有るんだ、相性』
「大きさの問題だ、それこそ仙人や神の法術でも無い限りは大きさを自由に変えられんだろう。どんなに情が有ったとしても、合わないなら諦めるしか無い」
『土台ってのは?』
「下準備だ、どちらにしろいきなりは無理だからな」
『あー、怪我しちゃうって言うもんね』
「お前、童貞か」
『そうだけど』
「童貞ばかりだな」
『あぁ、まぁ、うん』
「どうしてお前は相手を探さないんだ?」
『先生は何で探さなかったの?』
「全く興味が無かった」
『俺も』
「ぁあ、お前もだったな」
『先生、やっぱり俺と同じ?』
「少し違うが、同じだった。欲の絡む情愛だけ、特に興味が無かった」
『そんなに男相手って良いの?』
「男だからと言うより、いや、確かに男だから敢えて探究してみようとは思った。だが知ると、性別はどうでも良くなる。お前もどうだ、と言いたい所だが、興味が無いのだろ、全てにおいて」
『やっぱり仙人なの?』
「あぁ、おう、そうだ」
『いや絶対に違うでしょうよ』
「どうして言い切れる」
『そこだよねぇ、暁霧は綺麗な顔してるから仙女だ、とか言って。じゃあ仙人だって認めて貰おうとしてない相手に、証を出せって言っても出すワケ無いし、じゃあもう勝手に思うしか無いじゃん、って』
「でも仙人だとは思っていないんだろ」
『うん』
「少し向こうで話すか」
『あぁ、うん』
春蕾、マジ凹み中だもんなぁ。
「お前は常人と同じ考えが欲しいんだったな、本当に得る気は有るか?」
『ちょっとだけ旅して思ったんだけど、常人ってそれなりに大変じゃん?だから、ちょっと迷ってるんだよね。少しはマシになったけど、まだまだ全然違う。春蕾の思いとかマジで全然分かんない、予測してるだけなんだよね、あぁ分かるって思えない』
「が、それが当たり前で楽な面も有る」
『そうそう、辛そうだとか苦しそうだとは思っても、別に胸が痛いとかは無い』
「母親が死にそうになっても、か」
『誰から声掛けて補佐しようかな、とか、先生は違うよね、苦痛そうな顔してるし』
「お前のソレは、相当に厄介だからな」
『ね、でも俺みたいなのが居ても、このままでも良いのかなって思う』
「それは俺もそう思う、だが変わりたいんだろ」
『でも相手が欲しくなっちゃうんでしょ?面倒そう、大変そう』
「ぁあ、成程な、両方か」
先生、やっぱり分かるんだ。
凄いな、マジで仙人なのかも。
『何で、そんな何でも分かるの?』
「そら仙人だからな」
『マジで困った時、どうやって証明すんの?』
「んなもん証明せずに消えるに決まってるだろ」
『あぁ、成程ね』
「満たされてると思う限りは無理だろうな、何か足りないと思って初めて努力する、変わろうとする。だが別に良いだろ、他と同じである必要は無い」
『でも先生は他と同じになろうとして、じゃないの?』
「努力する理由が有るからな、安心させてやろうと思ったのと、俺を言い訳にされたら堪らんからな」
『で男色家』
「楽だぞ、妊娠させて命を落とさせる心配が無い。それに同じ様な構造でコツも直ぐに分かる、お前も相手が居れば試してみると良いぞ」
『途中まで試したけどなんの反応もしなかったんだよね』
「お前、相当だな」
『だって皆が楽しいって言うなら試すじゃん?』
「まぁな、ぁあ、お前も産まれる性別を間違えたのかもな」
『あ、え?ソッチなの?』
「いや両方だが、一先ずは相手、なんだが。まぁ、しても良いかと思える相手が居ないから、こうなんだろうな」
『だねぇ』
「誰かを好いてみたいか?」
『んー、そこもねぇ、どうでも良いかなぁ』
「だろうな」
『先生は好いてみたかったんだ』
「あぁ、昔は常人とは違う事に快さと苛立ちが有ったが、結局は拘っているだけだと悟って考える事を止めた。だが機会が与えられた、で試さずに逃げるのは男らしさに欠ける」
『で試したら変わった』
「変わったと言うか、寧ろ追加された、正しく新境地、だな」
『あー、俺は今のままで良いからなぁ、本当、どうでも良い』
「だろうな」
変だとか言われないのは勿論、変われとも言われない。
兎に角居心地が良いんだよね。
それだけでも良いのかな、とは思う。
『あ、アイツどうしたら良い?』
「アレはほっとけ、今まで家族だなんだと構われて生きてたんだろ、偶には一人で死ぬ程考え尽くす事が有っても良いだろう」
『けど細狗が構いそうなんだよね』
「あぁ、ならソッチを構ってやれ、構うって事は構われたいも同義だろうしな」
『あー』
私を構いに来てくれるなんて。
理由がまぁアレだけれど、それでも嬉しいものよね。
「でも、本当に大丈夫かしら?」
「死ぬ事は無いだろう」
『で、コッチ来たワケ、何か構ってやんよ』
「先生と囲碁もしたいし、包々にも構って貰いたいし、悩むわぁ」
「両方叶えてやるからアイツを構うのは我慢しろ。ただ俺はクソ弱いぞ、囲碁に全く興味が無いからな」
『あー、流石に万能じゃないんだ』
「おう」
先生と包々って少し似てると思ったけれど。
こう比べてみると全く違うのよね、寧ろ言動は真逆。
先生は強い言葉で優しい事を、けれど包々は優しい言葉は言うけれど、どこか冷たくて距離が有る。
根本的に違うのよね、全く。
「じゃあ、包々と囲碁をしながら先生とお話ししたいわね」
「おう、良いぞ」
『何か賭けてよ、ヤる気になんない』
「そうねぇ、一日、何でも言う事を聞かせられる権利」
『ガチじゃん』
「勿論よ、その位はして貰わないと気が逸れないもの」
『一日な』
「さ、始めましょう」
『はいはい』
「で、俺とは何を話すんだ」
「そうねぇ、仙人様や神様について」
「あぁ、俺は仙人だ」
『で証を出す位なら消えるんだって』
「おう」
「上手い手口、詐欺師が使う典型例ね」
「捕まってんなら偽者だろうな」
「成程ね、本物なら捕まらず綺麗に消えてしまう」
『でも間抜けな仙人が捕まる草紙も有るじゃん』
「他は知らん」
『あー、仙人は仙人って分かんないのか』
「いや分かるが、捕まった間抜けの事は知らん」
「成程ね、仙人様同士って繋がってるワケじゃないのね」
「数が少ないしな」
『あぁ、それもそうか』
「でも仲間同士で繋がりたいとは思わないのかしら?」
「無いな、俺は馴れ合いも集団行動も好きじゃない、関わる意味が分からん」
「そこは似てるのね」
『俺に?』
「アナタの場合も、気に入らないと黙って消えそうじゃない」
『まぁ、言っても無駄そうなら言わないかな』
「お前ら器用だな、俺は1つの事しか出来んぞ」
『惰性だよ惰性、慣れ慣れ』
「まぁ、そうよね」
「で敗けたら洒落にならんだろうに」
『そんな嫌だって思う事も無いからなぁ』
「まだ二十年も生きて無いんじゃ、だろうな」
「先生は相当ご経験なされてそうですもんね」
「おう、男も女も生も死も、だが生んだ事だけは無いんで分からんな」
『マジっぽいよねぇ』
「そうねぇ」
「俺ならソコに置くが」
「あぁ、それは悪手だわ、せっかちね先生って」
「おう」




