102 男之矜持。
あばあばと歌にもならない声を出してたんですけど、阿保とも思わないって、どんだけ思考が曇ってるんですかねルーちゃん。
あ、アレか、痘痕も靨。
靨って今世でも書くのギリギリ、何ですかね、大して使わないだろうからこんなごちゃごちゃした字に。
『あの、喉は大丈夫ですか?』
「あ、うん、大丈夫ですよ、丈夫なんですよねこの体」
半陰陽以外は完璧。
と言うか今思うと、前世では無理なダイエットのせいで疲労感だなんだ、下手すれば思考も鈍ってた気が。
あれ、もしかしてダイエットも陰謀の1つ?
分断工作に当て嵌まるし、思考力を削るのも。
先生の陰謀論って、マジ?
マジかも、利益は生み出せるし、分断工作は出来るし。
ヤバ、絶対に戻りたく無いんですけど。
『ふふっ』
「あ、あー、けどそう思いません?」
『かも知れませんね。凄く無責任な事を言いますけど、戻れませんし、どうでも良いなと思っちゃうんですね』
「でももし、一緒にこのまま戻れたら?」
『もし僕が1番強くて魔法が使えるなら、一緒に戻って、世界を、世界征服になるんですかね?』
「あー、片や救世主、片や魔王と呼ばれそうですよねぇ」
『でも、僕だけの考えで全て決めるって、やっぱり無理だと思うんですよね』
「ですよねぇ、経済とか大まかには分かりますけど、細かくなればなる程分からないとか、逆に細かい事しか分からない事も。そこですよねぇ、人が万能になる様にって対価を支払ったら、知恵の神様に対価を支払うだけで寿命が凄い縮みそう」
『寿命か花霞か聞かれたら、凄く困るなと思いました』
「それは出来るだけ私と一緒に居たい、と言ってらっしゃる?」
『あ、はい、そうです』
やっぱり、どうにも何で私、と。
「あ、それだけルーちゃんに価値が有ると思っての事ですからね?」
『それで、自分にはそこまでの価値が無いんじゃないか、と』
「ですです、どんなに多めに見積もっても差がデカい」
『花霞は自分の価値を正確に見極められてますか?』
「あー、それ悪魔の証明ですよねぇ、じゃあ誰が正確に見極められるのか」
『神々の評価ならどうですか?』
「且つて居た国では天邪鬼と言う妖魔が居りましてですね、嘘しか言わないなら良いんですけど、微妙に捻じれた事を言う悪鬼なんです。しかも鬼は神に近い存在、鬼神ってのも居ますから。となると神様は絶対に嘘は言わない、とは思えないんですよねぇ。それに本当の事しか言えないってのも大変そうじゃないですか、良い嘘も言える神様も、まぁ、大変だとは思いますけどね」
『そう慮れる所が好きです』
「いや穿った見方とも言えますよコレ」
『自分が絶対に正義だ、正しいんだと思わない所が好きです』
「そう言える立場でも無いですしねぇ」
あ、否定ばっかりしちゃってる。
『素直じゃないって、賢いんだなと思いますよ』
「ごめんよぉ、褒め言葉の裏を読んで身を守れって教えが、ココは素直なのに」
素直って何でしょうかね。
『何でしょうね』
「ルーちゃんの方がよっぽど素直ですよねぇ」
『そ、確かに否定しちゃいますね、難しいですね会話って』
「あ、疑っての事じゃないですからね、見誤らず傷付いて欲しく無いからでして」
『そう思い遣って、思い合える仲で居たいです、ずっと』
「その為には、ハーレム問題、労働について考えないといけませんよね」
『ですね、そうやって真面目で優しい所も好きです』
凄い好きって言われまくってる。
「あ、で、お仕事の内容はぶっちゃけあんま知りたく無いです、お互いの為に、弱点にはなりたくないので」
『今日みたいに、日暮れじゃなくて日中から起きようかな、と』
「それでお仕事って可能なんですか?」
『はい、僕だからこそ、なんですけど。ただ周りにも怪しまれない様にとなると、本当は一緒に住みたいんですけど、そうなるともしかしたら花霞が大変かなと、思って』
「あー、ぶっちゃけ私も何も考えて無かったんですよねぇ。ルーちゃんが通い婚的に通って来るのに合わせて生活するかな、って程度で。でも日暮れ前からは助かります、日の出と共に起きる生活が合ってるんで、時間をズラすのがぶっちゃけ惜しいんですよね」
『最初から、ちゃんと話し合えば良かったんですよね、色々』
勢いで結婚って、時代がどうこうじゃなくて、子供の為になるかどうかですよね。
それこそ輸血とか気にすると、ココでは特に両親が揃ってた方が良いし。
「あ、じゃあ次は子供について、欲しいですか?」
『2年は欲しく無いです』
真っ赤。
やっぱコレが普通なんですよねぇ。
「ずっと我慢してたんですもんね、ですよねぇ」
『あ、そんなに、あまりしたくないなら』
「いや痛いのは嫌いですけど気持ち良い事は、あ、そ、按摩とかの事でして」
『あ、はぃ』
「失礼しました」
うっかり卑猥な事を言っちゃいましたけど。
可愛いなぁ、真っ赤な顔を押さえてんの超可愛い。
あ、耳まで真っ赤。
『あの』
「可愛いって嫌でしょうけど、素敵って事だと思っといて下さい」
『はぃ』
はい可愛い。
コレ、キスしたらどうなっちゃうんでしょうか。
「あ」
『あ、すみません』
ココってそんなに乾燥して無い方なんですけど、皆さん元気ですねぇ。
「どうもどうも、見張りご苦労様でした、金絲雀」
『途中から言い争って和解した様に見えたんですけど大丈夫なんですか?』
「ルーちゃんが過労で倒れての事なので大丈夫ですよ」
『あぁ、アナタの為にと無茶をしたか、ハレムが嫌で働き詰めか、その両方ですかね?』
「ですねぇ」
『で〆に鼻血を出させる何かを言った、と』
「いやアレは不可抗力ですよ、そんな赤面に接吻しちゃったらどうなりますかね、とつい」
『あー、意外とウブい方なんですねぇ』
「意外も何もウブですよウブ」
『えー?どうやって確かめたんですか?だって房中術の元祖道教の者ですよ?』
「アナタも相当に疑り深いですよね?」
『アナタがしっかりしてる所と阿保っぽい所がマダラだからですよ』
「そりゃ面目ない」
『全く、四家巡りで私が居なくても大丈夫かと思ってたんですけど、まだまだですねぇ』
「いや結婚しに帰りなさいよ」
『大丈夫ですって、ウチの者達が教育してくれてますから』
「向こうのご両親が良く承諾しましたね?」
『そら宿には様々な情報が集まりますから、あんな家程度は容易く揺さぶれますし』
「えっ、こわっ」
『半分は冗談ですよ、多分』
「あぁ、ご家族に任せての事なんですね」
『ですねぇ』
仕事で全く繋がりの無い家なので、どうとも出来たんだとは思いますけど。
それよりもまぁ、周りの援護のお陰でしょうね。
自分の娘に手を出されたくないって者の方が多い、しかも男を選ぶのは女。
なら、味方が多いのはどちらか、ハッキリしちゃいますからねぇ。
ご相談なさっての決断にしても、それらを左右するのは、結局は周りなんですし。
「そう言えば、細狗さんはどうしてます?」
『挨拶回りに行ってますよ。それよりどうなんですか本当、大丈夫なんですかね、先生』
「あ、聞きそびれた、って言うかどんだけ知りたいんですか」
『いや翠鳥と兔子が軟膏を作ったそうで、出来たら試して欲しいそうなんですよ』
「あの方達も相当な仕事中毒ですよねぇ」
『やっぱヤベぇ薬でも使ってるんじゃないですかね?』
「いや寧ろ無いでしょう、効能を良く知れば手出しをしないって先生が言ってましたし」
『何が有ってそんな話になります?』
「ルーちゃんの気晴らしについて、ですねぇ」
『あー、酒精も色も無いとなると、一体気晴らしには何をするんでしょうね?』
「あー、そこも聞き忘れてた」
『ほらー、コレだからほっとけないんですよぅ』
「すいませんねぇ、お世話になりますぅ」
お母様には負けますが、意外と私ってかなり懐かれてるんですよねぇ。
《こう、やっぱり、と言わざるを得ないわね》
『ですね、全くデレデレもイチャイチャも無いですからね』
『道士様とすらも、相変わらず清い仲ですからねぇ』
予想はしていたのだけれど、残念だわ。
私達が心配していた通り、全くもって花霞が色恋に染まる事も無く。
清い距離、清い関係を保ったまま。
《良い事だとは思うわ、けれどねぇ》
『もしかして、私達がはしたないんでしょうか』
『いやそれは無いですから大丈夫ですよ、中にはもっと凄い方も居るんですし』
昆明ではあまり見掛けなかったのだけれど、本当、大胆よねココの方達。
やっぱり気候のせいかしら。
なら花霞も、もう少し。
いえ、もしかして服装が関係するのかしら。
でもそこまで違いって無いのよね、山間部ならかなり違うと聞くのだけれど。
あぁ、どうしたら見れるのかしら、花霞のイチャイチャを。
《はぁ、やはり婚約式しか無いのかしら》
『私もそう思いますけど、でも、どうにか急いでも』
『昆明からも集めると言ってらっしゃいましたしねぇ、往復を考えるともう数日は、って言うか場所ですよね場所。もう庭に全力を出しましょうか』
『助かりますぅ』
『いえいえ、出来る事からコツコツと、ですから』
《それこそ、道士様にも少しは協力して頂きたいわよね》
『『確かに』』
《少し、文を出してみましょうか》
『じゃあ墨を磨りますねぇ』
『では文言はどう致しましょうか』
《そうね》
出来れば家の事で手伝って欲しい、と。
花霞からじゃないのが残念だけど、協力はしたい。
『でも、どう、どこまで手伝うのが良いんでしょうか』
「あぁ、お前が全力を出せば一夜で可能か」
『はい、加減が難しいですね、こう表の事って』
「そうだな、お前の場合は出来る事とすべき事の差を考えないと、悪目立ちじゃ済まんからな」
『しかも道教院の力も既にお借りする予定なので、はい』
「あぁ、もうアレだな、道教者総出で手伝った事にしちまえよ」
『先生面倒だからって適当に言ってません?』
「いや、見張りが居るし、動かせるだろう最大人数を」
《大体は日に5人程度じゃな》
「あぁ、女媧教団がココにも影響してるんだったな」
《じゃから寺院の者も動かせば良かろう》
『そこは四家の者が動くのでは?』
《いや、どうやらお主の動きを見たいらしいで、敢えて要請はしとらんそうじゃ》
「コッチに譲ったか、随分と向こうは余裕だな」
『ですね』
「ほら落ち込むな、こう言う時はな、売られた喧嘩は買うもんだ」
『でも先生、四家の方と各方面を回ってたんじゃ』
「お前が愚図ったんで暫く休ませて貰った」
『あ、すみません』
「いや、良い機会だ、俺はあまり徒党を組むのが好きじゃないんでな、コッチはコッチで動くぞ」
『良いんですか?』
「この方が果てはお前らの為になる、最効率最適解を目指すぞ」
『はい』
午前中は寺院の方々が、お昼は儒教の方々、そして夜間は道教の方々が手伝いに来てくれて。
庭園が、すっかり綺麗になってしまいました。
凄いですね、ルーちゃんと先生のコンビ、最早最強では。
「ふん、こんなもんだろう」
「何をムキになってたんです?」
「男同士の戦いだ、売られた喧嘩を買っただけだ」
『はい、ですね』
「成程?」
「あぁ、お前は知らないか、文が来たんだ。ほれ」
どうやら薔薇姫様達が、ルーちゃん達に少しは手伝えないか、と。
私の頭の上を飛び越して、いやまぁ良いんですけど。
「それがどうして男同士の戦いに?」
「四家が寺院への要請を態々遠慮してくれたんでな、そう舐めた態度を取るなら、完膚なきまでにしてやるしか無いだろ」
「協力関係だった筈では」
「コレが倒れた時に離脱した、使われるのは好かん」
「あぁ、にしても凄い、負けず嫌いですよね?」
「負けても楽しく無い事は絶対に負けん」
「まぁ先生は良いですけど、ルーちゃんは大丈夫ですか?」
『流石に何もしないのは嫌だったので、こうして何か出来る機会が有って助かりました』
「真逆、先生は好戦的ですよね?」
「コレは男の自尊心の問題だ、若人にはまだ分からない事だろうな」
「で、やり遂げちゃう。尊大に思われないのって実力が有ってこそですよね、流石先生」
「おう」
『僕、凄い嫉妬深いみたいで』
「ルーちゃんは勿論凄いですよ、ありがとうございます」
んー、自分でも何か素っ気無いなと思うんですけど。
この場合、どうするのが正解なんでしょう。
『頬で良いので、キスして欲しいです』
「まだ早いっ」
「先生手が出るの早過ぎですってば」
先生の正拳突きが脇腹に。
ルーちゃんも避ければ良いのに、どうして受けちゃうんですかね。
『避けると怒られるんですよね』
「そこが対等で居られんなら離れるべきだろう、コレは躾けも兼ねてるんだしな」
「あー、力量差は圧倒的ですもんね」
「幾ばくかは冗談だ。最初は痛みを知り、受け慣れればと思っての事だったんだが、避けられるとクソ苛立つ事に気付いたんで、避けるなと言ってある」
『そこまで痛く無いので大丈夫ですよ』
「ちょっと横暴」
「おう、こんな大人になるなよ」
『善処します』
「よし、茶と茶菓子を持って来い」
『はい』
分かんないですねぇ、男同士の付き合いって。
「最初は追い払うつもりでな、だがコレだ」
「何故?」
「俺には子育ての経験が無い、親戚のガキの面倒すら見た事も無い、しかもアイツにしたらココは異国だろう。この地に居るより、他の国に行けば、とな。だがコレだ、少しばかり無駄な苦労をと思ったが、それだけお前を好いてるんだろうな」
「クソプレッシャーなんですが」
「お前とアレが海に出て行方不明になったとしても、それはそれで俺は良いと思うぞ。幸せの数は無限に有るんだ、絶対的に正しい形なんて無いだろう」
「で、男色家の道へ」
「そう言えば試してみたが、凄いな女の快楽は、初めて気を失った」
「は?」
「いや前も今も男なんだ、興味が湧いて当然だろうが」
「え、いや、え?」
「お前もウブか、可哀想に」
「いやそこで非童貞の余裕を出されましても、何で?いや、何で?」
「分からんか、男の考えは」
「分かんないですねぇ」
「興味本位だ」
「そこだけなら、分からなくも無い、かも」
「まぁ、行方不明の案はマジだ、そこも考えてやれ」
「もう少し早めに言ってくれても良かったのでは?」
「あのな、幾ら天才でも全てが得意なワケじゃ無い、しかもコレはトゥトクの案だ」
「ぉお」
「お前の事はバレてないから安心しろ、ちょっとした喩え話から出た事だ」
「それが報いるには最適解ですよね」
「だがそう望まれてはいないだろう」
「望んでも良いとは思いますけど、それってルーちゃんらしくないとも思いますし、でももしかしたら奥底ではらしいのかも知れない」
「お前は、そうなったら受け入れるんだな」
「抗えない強い愛に対する憧れは有るんですよ、幸せとか不幸とか気にならない程の、物語みたいな愛。でも、いつか後悔するんじゃないかって不安も有るんですよね」
あぁ、戻って来たかルー。
「例えば、だ」
「どうして私にはおじいちゃんもおばあちゃんも居ないの?そう聞かれて、ありのままを言えない様な事はしたくない。自分勝手な行動で子供から祖父母を取り上げた、そう思いたくないし思われたくない、けどそう気付く賢い子になって欲しい。そうやって子供の事を考えると、2人で行方不明になるのは無理ですね、子育ての補佐は多い程に良いと思ってますから」
『あの、行方不明って』
「お前とコイツだけになる方法だ、海に出て行方不明になる、流石にアイツらも諦めるだろうってな。元はトゥトクの案だ」
「喩え話で出た事だそうですよ」
『僕がまだ子供なので、子供の事を考えきれず、すみません』
「良いと思ったんだな」
『一瞬、はい。でも祖父母を奪うのは自分勝手だと思います』
「でもハーレムも大変だと思うんですよね」
「いや定住しなきゃ良いだけだろ。ココで根付こうとしてダメなら、様々に協力していた事から手を引く、そうして後悔させて少しは受け入れるべきだったと前を向かせる。そうして再び訪れた時、受け入れるんであれば協力してやる、そうするつもりだろアレは」
「アレ?墨家の?」
「おう、頭が良いんだろ?なら、俺ならそうするがな」
「わーこわい、天才こわい」
「いや神々の方が俺は怖いが、お前は怖くないんだろ?」
「そりゃ色々いらっしゃるでしょうけど、嫌いなら関わらない、見守らない筈じゃないですか?」
「何か裏に条件が有り、厭々見守ってるだけかも知れんぞ」
「ならルーちゃんに言えば良いのでは?」
「で、何か聞いてるか?」
『特には無いですね』
「ほら」
「いや、全ての神々とは関わって無い筈だ、俺が考える様な神が居ても不思議は無い筈だ」
「まぁ、そこは否定しませんけど」
「はぁ、ココの菓子も美味いは美味いが同じは飽きる、中央の菓子職人も呼んでやるかな」
「切り替え早いですよね本当」
「おう」




