100 女体化。
「やっぱり先生が1番可愛い、優勝です」
裸を見せ合うのは明日。
なのでその前に、と何故か先生やルーちゃん、戸の隙間からトゥトクが女体化した姿を見る事になったんですが。
コレ、もしかして励ましのつもりなんでしょうか?
「俺が優勝か、何も嬉しくないな」
「ですよねぇ」
『あの、コレで嫌になったりとかは』
「いえ特には、と言うか美人で、綺麗な体で羨ましいな、と」
「そうなるだろうと思ってな、お前が先に見せ合えルー」
時間帯的に、どうしてもルーちゃんが最後、だったんですが。
『でも先生、順番が』
「最後に少しだけにして、後はフォローしてやれば良いだろ」
「凄い策略、流石先生」
『贔屓過ぎじゃないですか?』
「怖気づいたか童貞、それともトゥトクに確認させるか?」
「あー、それはちょっと困ります、信用はしてますけど」
『花霞にグロテスクだって思われるのが、嫌なんです』
「あー、けど向こうでなら既に見てますし大丈夫ですよ?」
うっかり目にした時は引きましたけど、キモいと思ってたら致せないままだと思って、あらゆる人種のブツを見まくりましたからね。
凄い世界でしたよね、今思うと。
『あ、そうなんですね』
「お前なぁ、心を読み過ぎるなバカが、お前もだ」
「あ、すみません、つい便利で」
「お前もお前だ、流されるな、返したんだからちゃんと両方使いこなせ」
「すいましぇん」
「で、どうする」
「私は大丈夫ですけど、ご準備が必要では?」
あ、自分で言ってて何ですけど、準備しないと出来無いのはちょっと嫌だな。
しまった、つい。
『っつ、あの』
「分かった分かった、お前らなりの意思疎通が有るんだな。俺は向こうの部屋に居るから、絶対に手を出すなよ、したら全て邪魔するからな」
『はぃ』
僕の女の姿を見ても、裸を見ても、本当に何の反応も無い。
『って言うか隣は良いの?』
「“まぁ色々有るんだ、気にするな”」
『じゃあ、どう?この姿』
「“女だな、としか思わん”」
『で、欲情もしない』
「“おう”」
『男の姿でも』
「“おう、前世でも欲情した事が無い”」
『でも嫌じゃない』
「“おう”」
『黙ってた方が良い?』
「“いや”」
『じゃあ次はエンヴィルのが見たい』
「“アレが居なくなったらな”」
『手を出しても良いの?』
「“欲情出来たなら別に良いぞ、特に拘りも無いし。いや、手を出せ、女の快楽は凄いらしいぞ”」
『じゃあ出さない』
「“何でだよ”」
『そっちばっかりになられたら困るから』
「“そこが難しい所だな、俺が女体化を気に入って、お前がダメなら破談だ”」
『嫌だな、このまま何もしないで一緒が良いのかも』
「“我慢出来るか?”」
『離れる位なら、けど、女の快楽が気に入ったら男か女としちゃうでしょ?』
「“だろうな、それこそ快楽目当てに男と結婚するかも知れん”」
『でも、してみないと分からない』
「“おう、前世も男だったしな”」
『そう思えば、出来るかも?』
「“無理すんな、ゲロ吐かれても困る”」
『吐いたの?』
「“いや、前世で嫌悪を持ってる奴がな、そうなった時にゲロゲロ吐いたらしい”」
『無理しちゃったんだね』
「“いや、無理しているとも思わず、その時に初めて自覚したそうだ”」
『あぁ、それは不幸な出来事だね』
「“無性愛者ってのも色々と居るからな、俺はまだマシなのかも知れない、そう思えた珍しい例だった”」
『その人も幸せになってると良いね』
「“だな”」
『やっぱり、しないでおこう?』
「“いや、あぁ、そうか、先ずはお前が味わってみれば良いんだな”」
『えっ』
「“どっちでも構わんぞ、俺は絶対に自分で試す”」
『えー』
「“騒ぐな騒ぐな、つか今は解け、そろそろ出て来ないなら間に入る”」
『えー、分かった』
僕が服を整え終わった頃。
2人が部屋から出て来た。
うん、した匂いは無いから大丈夫そうだけど。
「“大丈夫だったか?”」
『あ、僕は下がるね』
ファシャはエンヴィルの大事な女の子。
だから一緒に居る事は殆ど無いし、話す事も殆ど無い。
アジア人なのに金髪で目は緑、僕には見慣れた外見だけど。
ココだと苦労するよね、殆ど混血が無いし、有っても目立たない。
僕位の肌色や髪の色なら、まだ楽だったろうに。
女の子は本当に大変、ちゃんと身を守らないと望まないのに子を宿しちゃう。
しかも出産で命を落とす事も。
やっぱり嫌だな、エンヴィルに死なれたらどうしたら良いか分からないし。
それこそエンヴィルの命を奪った子供を、ちゃんと育てられる自信も無い。
凄いな、他の男の人って。
「“大丈夫だったぞ、送ってくる”」
『あ、うん、またね』
「“失礼しますね、ありがとうトゥトク”」
新しく出来た妹も、こんな風に礼儀正しくて愛想が良いんだよね。
どうにかファシャも幸せに、長生きして欲しいな。
「“おい、ルー、どうだったんだ”」
『あ、僕』
『“大丈夫でしたし、お陰様で助かりました、ありがとうございます”』
コレ、僕に言ってるのかな。
「“まぁ、大丈夫なら良い。よし帰れ、俺はコレから楽しむ”」
『“は?”』
「“冗談だ、帰れ、じゃあな”」
『“え、先生”』
「“仕事が有るんだろ、ほら仕事をしろ仕事を、良いな”」
『“はぃ”』
今回は粘って欲しかったんだけどなぁ、残念。
「“よし、さ、どうする”」
『興味は有るんだね』
「“好奇心は有るからな”」
けど性欲や情欲は無い。
僕とはある意味で真反対、だから惹かれたのかな。
『僕で試しても』
「“俺は自分でもするぞ”」
『だよね、うん』
いや春蕾が鼻血の出し過ぎで死ぬかと思ったんだけど、鼻血も出さないで死なないで帰って来た。
良かったわマジで。
『あ、つかダメだったって事?』
いや何で今出るのさ。
あぁ、収まってるからか、成程。
つか凄いな、そう御せるもんかね。
《すまん》
『つか凄いな、どう御してんの?』
《訓練で、力を抜いたり、入れたりで抑えてる》
『で代わりに鼻血か、もう別に俺らは気にしないんだし、そのままにしとけば?』
《寝室以外は御せと教えられたから、つい、癖で》
『あー、大変だなお前も』
《俺より、金雉が大変だと思う》
『何で?』
《もう二回見せるのに、真っ赤になってたから》
『あー、見て見せてだもんな、そっか』
励ましてやりたいし情報も欲しいけど、今回は俺らは関わらない方が良いって言われてるしなぁ。
つか臘月が読み取るだろうし、まぁ。
《全然、嫌だとも思わなかった》
『おう、そら良かったな』
俺はコッチの対処でもするか。
とか適当に考えてたんだけど、うん、見通しが甘かったわ。
《実物の方が良かったと僕は思ったんだけど》
《うん、綺麗だった》
俺がこの惚気を聞かされんのね。
うん、そら信者紛いの暁霧には関わらせないとも言ってたし。
けどさぁ、俺も一応は男だよ?
《それに少し、反応した自分にも安心したね》
《うん、それから赤くなってくれた事も》
『あのさぁ、一応は俺も男だよ?』
何その改めて言われて驚いた顔。
《君は全く興味が無いだろう?》
『だから言ってんのかアンタは、本当に腹黒いわ』
《寧ろ君が興味を持てたなら、良い事だとすら思うよ、あの先生も他者と居る努力をしているのだし》
《相手が金雉は少し困る》
『少しかよ、どんだけ俺を過大評価してんの?』
《部屋を移らないでこうして聞いてくれるじゃないか》
『興味本位』
《だけじゃなく聞かせて良いのかも心配してくれた》
『あー、分かった分かった、惚気てて良いから俺の事はほっといて』
《映日果、包々が優しく賢い子で助かったね》
《うん、感謝してる、ありがとう》
もー、無視してやろ。
つかコレは暁霧の範囲じゃんか、何してんのアイツ。
「はぁ、大丈夫かしら」
《分かりますわ、万が一が有りますものね》
『どっちの意味でも、なのが凄くもどかしいですよね』
「そうなのよ、本当、反応しなかったら殴り倒す自信しか無いもの」
『ですけど反応出来ます?あ、いや』
《そうね、大事な事だもの、実はどう思ってらっしゃるのか伺いたいわよね》
最高の状況を考えるなら、雨泽ちゃんに見張って貰いつつ、なら完璧だとは思うのだけれど。
実はどうか、よね。
あまりにも尊敬が過ぎて反応しない、そんなトゥトクちゃんの様になってしまうかも知れないし。
例え反応しても、それこそ雨泽ちゃんに反応しての事、かも知れない。
まだ自身と向き合うのが怖いのよね、私。
「受け皿になる気では居るわ、けれど見てどうなるか、よね。既に他も見てしまってる、そこがどう出るか」
《ほぼ同じと考えて頂いて結構ですわよ》
「あら凄い、本当に見せたのね」
『凄く不安そうだったんですけど、私達にしてみれば些細な違い、ですから』
《そこなのよね、万が一にも他を見てしまったら、お心が離れるとなると残念過ぎて私達でも殺したくなってしまいますもの》
「そこよね、どう心が離れるか、自らの全てを人はそう自覚も出来ず御せもしない」
『うー、どうにか気を逸らして頂けません?』
「そうね、蝦餃ちゃんから聞いたのだけれど、浮気をしたのに円満離縁が叶った。どうかしら?」
『私はどうやって叶ったのかが凄く気になりますけど』
《もう私は大丈夫よ、寧ろどうなればそうなるのか知りたいわ》
「それが意外と言うか、面白い理由なのだけれど」
いやー、次はルーちゃんなんですけど。
こう、この世界で何本も見るって凄い体験ですよね。
ココって売春宿も何も無い世界、それこそ見世物小屋で見れる程度なので。
稀有で貴重な体験なんですけど、逆に、どう反応したもんか。
見られてる事には恥ずかしくて赤くなりましたけど、それよりも反応が怖くて。
けどまぁ、しっかり見て頂いて反応も十分でしたので。
後は、自分のサイズですよねぇ。
中央に帰った時、かかりつけ医に診て貰って、この位までって張型を見せられたんですけど。
うん、全員ギリギリセーフでした。
良かった、意外と受け入れられる大きさで。
と、ドキドキとかよりもう、安心ですよ安心。
性欲?それどころじゃないですよ私は、だってギリギリなんですよ?
ギリギリって、下手すると絶対に痛そうじゃないですか。
やっぱり私も多少は技術を。
『準備が整ったそうですよぅ』
「あぁ、はいはい、どうもどうも」
『すっかり落ち着いてますねぇ』
「まぁ、もう既に見てますし」
『けど違いが有るかもですよ?』
「あぁ、まぁ、大きさが分かれば良いだけなので」
と言うかそこまで違うのって、寧ろ。
『ではでは、良いですか?』
「あ、はいはい、宜しくお願い致します」
あぁ、コレは恥ずかしい。
逆に、2回目ともなると慣れと言うか、意識する余裕が出てしまうと言うか。
うん、コレ凄い恥ずかしい事をしてるんですよね、私達。
『あの、もう、コチラは大丈夫なんですが』
「あ、はい、私も確認しました、はい、ありがとうございました」
って言うか、今更なんですけど。
あの張型、お借りしておくか私が作って男性陣にお見せすれば良かっただけでは。
「いや結果的にはコレで良かっただろ、結局はお前に反応するかどうかも問題なんだしな」
「でもバカだとは思ってますよね?」
「おう、少しな」
「ほらー、けど見栄から皆さんに言えないな、と」
「言わんでも良いだろう、多少は尊敬も必要だしな。つか意識しないもんなのか?コイツが目の前に居るのに」
「いや服を着てらっしゃるので、何とか、と言うかそうやって聞かれると意識しちゃうんですけど狙ってやりました?」
「おう」
「もー」
「まぁ落ち着け、ピザが冷めるぞ」
「ぅう、頂きますぅ」
コイツらも他も大丈夫そうなのは良いんだが、問題はルーの夜の仕事だ。
このままハーレムになったとしても、圧倒的にルーとの時間は少なくなる筈。
なんせコイツは日暮れに眠くなる健康優良児だからな。
「それで胸が大きくなると良いな」
「あ、そうだ、胸は流石に足りないですよね?そこは何とかなりませんかね?」
『あの、僕は別に、そこまでは』
「いや私が欲しいんですよ、もう少し、違和感が無い程度にもう少し膨らんで欲しい」
「妊娠したら大きくなるらしいな」
「それは張ってるだけで萎みます」
「どんだけだよ」
「こう、私が男みたいで嫌なんです、かなり鍛えた男の方が有るって程度で。けど妊娠か胸かと聞かれると妊娠なので、ぅう」
「俺は良く分からんのだが、男の大きさとは違うのか?」
「私からしてみても説明が難しいんですが、コレは他人からの評価じゃなくて自分の自分への評価なんです。褒められても貶されても、例え隠しても、事実を知ってるのは私だから誤魔化せないんですよ」
「あー、ある意味で尊厳みたいなもんか」
「そこまでじゃないんですけど、自分は女として抱かれてるんだと安心したい、みたいな」
「少しでも男と思われて抱かれたくは無いんだな」
「ですね、じゃあ男を抱けよクソが、と思うので、はい」
「どうしてそうなった」
「ネットで論文を載せてた記事を見ちゃったんですよ、同性者と思っても無いのに女の相手も居るのに男を抱ける男が一定数居るって、それ見て凄く嫌だったんですよね。じゃあ男だけ抱いてろよ卑怯者って」
「で、お前からも良く見える胸が気になる、か」
「ですね、両方好きって方は別に良いんですよ、けど内緒でとかもう凄いムカついて、今でもムカついてますね」
「それ本物の論文か?」
「残念ですけど出典元迄は読んで無いんですよ、けど外国でも有名な科学系のサイトだったんで、マジだと思ってます」
「まぁ、真偽を聞く気が有るなら」
《残念じゃがその知識を正確に持った者は知らんでな、残念じゃ》
「ありがとうございます、けど残念半分なので大丈夫ですよ」
『半信半疑なままなんですよね?大丈夫なんですか?』
「嫌は嫌ですけど、死なないので」
「だな」
『でも凄く嫌なんですよね?その胸の大きさ』
「そう我儘を言えばキリが無くなるので、最悪は妊娠出来れば良いな、と」
「死なない事なら殆ど我慢が利くからな、俺らは」
「あー、ですねぇ」
『やっぱり、死を経験しての事なんでしょうか』
「と言うか、俺は逆だな」
「ですね、私もです。既に良い世界に居る時点でご褒美を貰ってる様なもんなんですよ、しかも生かされてる、それ以上は貰い過ぎかなと」
「で、貰い過ぎればどうなるか。いつか代償を支払う事になる」
「ですね」
あぁ、コレは暫く本題に入るのは難しそうだな。
『僕が花霞の望みを叶えたい、そう思うのは、我儘なんでしょうか』
「それはルーちゃん次第なので、私達は何とも」
「だな、そこを考えるのはお前と神々の仕事、俺らが口を挟む事は憚られる。と言うかそもそも、俺らに出来る事は限られる、範囲が違い過ぎるんだよ測るにしてもな」
「ですね」
僕が努力した事を、努力した内容を全て評価して欲しいワケじゃない。
でも、せめて。
『せめて花霞には』
少しでも知って、褒めて欲しかった。
少しでも。
「そこは私が信頼してるだけ、ではダメですか?」
「それとも全て知って欲しいか?」
「あ、と言うか知って欲しい事が有れば聞きますよ?」
やっぱり僕は我儘なんだろうか。
自分からじゃなく、花霞から聞いて欲しい。
『花霞は、僕の事を知りたいとは思ってくれないんですね』
「お前」
「すみません、私が全て知って欲しいとは思って無いので、ルーちゃんが知って欲しい事を優先したいんです」
「俺もだな、俺にもコレにも恥とする事は有る。出来るなら、そこまでの事を俺は誰にも知られたくない」
「私もです、はい」
今は心の声が全く聞こえない。
誰にでも恥ずかしい思い出は有る。
けど、僕と同じ位に知りたいと思って欲しい。
どう思ってるのか、どうしたいか。
言って欲しいし、聞いて欲しい。
『すみません、僕、もう帰ります』
「ごめんなさい、今日は私が先に帰るので」
「おう、すまんがそうしてくれ、じゃあな」
「はい、失礼します」
もう帰ろう、帰って少し仮眠を取って、それから仕事に行こう。
『じゃあ僕も』
「どうした?どうして拗ねた様な考えになる?」
『別に拗ねては、ただ僕はやっぱり我儘なんだなと』
「俺らが突き放した様な事を言ったから拗ねて極論を言ってる様にしか思えんが、どうだ」
『すみません、睡眠不足で頭が回って無いんです』
「緊張でか、苛立ちでか」
『両方です、コレから眠るのに、花霞は裸を見せるんだな、と』
「やっと本題に入れるな、どうするんだ、コレからも死ぬまで夜の仕事をする気か?」
『仕事をしてると気が紛れるんです、それに眠ると、気が紛れてたので』
「本来はどうするつもりだったんだ」
『先生と3人で、外見を気にしないで良い場所に移住して、一緒に暮らそうと思ってたんです』
「で全てが崩れてお前は半ば自暴自棄なワケだが、それでも尚、どうするか訊ねてるんだ」
『殺したいです、全部、それで思った通りにしたい』
「神々が許せばするのか?」
『いえ、きっと、何か少しでも不幸が起こると罪悪感が湧く筈。だから、しません』
「なら考える事から逃げるな、つか話し合え、アレの望みを叶えてやりたいんだろ?」
『でも、僕と同じ様に、同じ位に好きになって貰えないなら、やめます』
「はぁ、試す前から引くなら。好きにしろ、お前の人生だ、俺が苦痛を味わうワケじゃないからな」
『先生なら、先生に聞くのは間違ってると思いますけど』
「俺は試すし話し合う、試して話し合えば必ず解決するワケじゃないにしても、しない後悔まみれの死よりはずっとマシだと思うぞ」
先生も花霞も、死んだ事が有る。
だからこそ、こうして言ってくれてる、それは分かるのに。
『すみません』
「よし、もう寝ろ、ココでな」




